オフラインのアトリビューションも盛んに
オフラインのアトリビューションも盛んに
有園 2012年に入ってから日本でも、オフラインを含めたアトリビューションのニーズが増えています。米国では、Market ShareやVisual IQなど複数のアトリビューションベンダー企業がオフラインでのアトリビューションについて語り始めています。
オンラインの場合はコンバージョンに至る経路を分析するのが主流です。しかし、オフラインを含めたものは数理統計的な相関分析や確率論のベイズ統計を使ったモデル化なので、伝統的なメディアミックスモデリングなどと手法は本質的には変わりません。
治田 扱えるデータが増え、深さが変わりましたね。
有園 CRMと連動して、店頭の販売とテレビ、そしてオンラインのデータを結びつけ、仮想のシングルソースのような状態のデータベースを作り上げて分析できるようになりました。技術的にオフラインを含めたアトリビューションができるようになりました。
治田 そうですね。
米国のアトリビューションは日本より進んでいるのか
有園 そこで気になるのが、米国のアトリビューションはどのような状況にあるのか、ということです。
治田 日本よりも米国のほうが技術的にも先をいっていますが、それは想定の範囲内です。米国は、アルゴリズミックやオートメーションの部分が進んでいます。でも、日本とまったく違うわけではないので大差は感じません。
有園 治田さんはad:techサンフランシスコへ行かれたそうですが、何か発見はありましたか?
治田 「自分の考えていることは間違っていない」ことを再認識できたのが一番の収穫です。
有園 なるほど。
治田 米国のほうが進んでいる部分は沢山ありますが、進んでいる部分も自分のベクトル上にあり、しかも距離は離れていないと感じました。
有園 たとえば、動画配信の効果分析について何かありましたか?
治田 実は、私も米国へ行く前はリッチメディアの解析や効果分析の話を楽しみにしていたのですが、残念ながらその辺の話はまったく出ませんでした。そこが意外というか、日本が米国に先行できる部分かなと思いました。
アトリビューションが単なるバズワードではなくなった
治田 米国の話でいうと、アトリビューションのコンサルティング会社の存在感が増していたことも印象的でした。AdometryやEncore Mediaなどのアトリビューションコンサルティング企業が登壇するときの司会の紹介が「いまやホットトピックになったアトリビューションのエキスパートの方々に登壇していただきます。どうぞ
」といった表現でした。専門分野としての知見が求められていると感じました。
有園 アトリビューションが単なるバズワードではなくなったということですか?
治田 間違いないです。2011年8月にSESへ行ったとき、Googleアナリティクスのコーナーで「Multi Channel Funnels」(マルチ・チャンネル・ファンネル)という機能が紹介されました。いわゆる接触チャネルを分析できる機能です。それを世間はアトリビューションだと言い始めたんです。そのときに「アトリビューションってどうやるんだろう」「これ、流行るのかな?」という状況になったわけです。
有園 いわゆる、きっかけですね。
治田 そうした「エマージング(新しく出てきた話題)」の状態だったアトリビューションが、今や「ホットトピック(注目の話題)」になったと感じています。ここから「ポピュラー(人気の話題)」になって、最終的にメジャーの階段を上れるかは今後次第だと思います。
いずれはコンバージョンした後のアプローチに力を入れる傾向に
有園 キャンペーンマネジメントのプラットフォームとして第三者配信を考えてもらうときに必要な要素の1つとして、CRMとの連携があると思います。その辺のデータ連携の盛り上がりはいかがでしたか?
治田 アトリビューションという言葉が一番多く出てきたセッションはEメールでした。刈り取ったお客さまの購買データなどの情報でセグメントして分析し、カスタマーのライフタイムバリュー(LTV:生涯価値)を上げる方法を考えると、効果があるのがメールであると。
カスタマーをよりマーケティド(Marketed)なカスタマーにするには、どのようなアトリビューションを行うべきかという文脈が非常に多かったです。
有園 マーケティド(Marketed)というのは、具体的にどのようなことを示すのですか?
治田 マーケティング(Marketing)という言葉はマーケット(Market)の進行形です。つまり、お客さんを自分の市場に招き入れるというイメージです。その後、招き入れてコンバージョンしたお客さんに対してライフタイムバリューを上げる施策が「マーケティド(Marketed)」です。マーケティド(Marketed)する人を、マーケティドカスタマー(Marketed Customer)と呼ぶように定着しないかなと密かに思っています。
有園 ナーチャリングみたいなことですね。
治田 そうです。以前、有園さんがおっしゃっていた顧客育成、顧客教育に近いですね。コンバージョンした後にそういった動きが必要であるという考えです。いずれはコンバージョンした後のアプローチに力をいれる傾向になると思います。実際、米国ではそういった傾向が見え始めています。
アトリビューションとEメール
有園 ライフタイムバリューを上げるために、より顧客をマーケティド(Marketed)するために、アトリビューションの貢献度を考えた施策が始まっているわけですね。先ほどのメールのセッションの例は、具体的にどのような話ですか?
治田 2011年か2010年に、ユナイテッドエアラインがコンチネンタルを買収し、マイレージプログラムを統合することになりました。そもそも、この2社はユーザー属性が違うので、これを機会にユーザーを徹底的にセグメントすることになったのです。
そこで、各ジャンルに分類して、それぞれに適切なEメールの文章、コンテンツ、配信タイミングでメールを送ったところ、従来の費用対効果と比較して9倍以上の改善が見られたという事例がありました。
有園 興味深いですね。
治田 DSPの解説でCRMリターゲティングという言葉も出ていました。
有園 最近では、メールでのアプローチを最適化する事業を行っている企業がCRMデータや配信技術と連携することによって、さまざまなパターンでのアプローチをしていると聞きます。
ユーザーがバナー広告経由でウェブサイトを訪れても、コンバージョンした場合とコンバージョンしなかった場合で、アプローチは違います。リターゲティングで追い、資料請求をした方にはそれ用のメールを送る。
・マーケティド(Marketed)したお客さん向け
・マーケティド(Marketed)しそうなお客さん向け
・マーケティド(Marketed)しそうにないお客さん向け
と、アプローチを分ける時代になってきました。
治田 そうですね。たとえば、商材Aに興味のあるユーザーがいるとします。その人にとっては、商材Aと関連性のある内容を扱うウェブサイトで商材Aの広告を見た場合と、商材Aと関連性がないウェブサイトで商材Aの広告を見た場合では、見え方が違います。もちろん、前者(関連性のあるサイトでの広告接触)のほうが良いです。
だから、この2つのウェブサイトでの広告接触を同じ1ビューとカウントするのはどうかと思います。違うものとして考えるべきです。米国ではその辺は重要視されていますね。
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