検索ログは、顧客理解の宝の山
検索ログは、顧客理解の宝の山
有園 話は変わりますが、私はお客さんからこんな質問を受けます。
コンバージョンした後は検索行動も変わるのですか?
たとえば、住宅メーカーさんだと、実際に住宅を購入した後と前とではその住宅メーカーのウェブサイト上での行動パターンが異なりますよね。それと同じように、住宅購入以前と以後では検索行動も異なるのではないかと。だとすると、そうしたデータを有効活用してターゲティングできないかということです。
クロスリスティングでは検索ログデータを分析していますが、具体的にどのような分析をしているのでしょうか?
クロスリスティングは、多数の国内ポータルサイトにおいて検索連動型広告を提供しており、現在保有するログデータを活用した分析サービスを展開している。
石橋 検索ログ分析サービスの説明をクライアントさんにする際、次のように話します。
有園 A(Attention)、I(Interest)、S(Search)、A(Action)、S(Share)のすべてに、検索は関わってくるということですね。
石橋 そうです。クロスリスティングでは、ユニークユーザーの行動を時系列で追えるので、ユーザーがどのようなキーワードをどのようなタイミングで検索しているかがわかります。そのログデータをもとに、より良いアプローチ方法を模索したり、ユーザーの悩みやウェブサイトの抱える問題を解析して解決策を考えたり、広告の影響度を調べてアトリビューションの重み付けに役立てたりしています。
有園 最近の発見はありますか?
石橋 検索ログからはユーザーの行動をいろいろな面から見られるので、消費行動のデータマイニングの一環として分析でき、一般的なマーケティングとは異なる手法がとれます。たとえば検索ログ分析から、ユーザーの行動を把握すると、ユーザーがコンバージョンする場所が見えてきます。そうすると、あとはコンバージョンする場所へ導くアプローチを考えるだけです。
有園 なるほど。いろいろなデータを分析してデータマイニングを行っているわけですね。岡野さんはどのようなことをやっていらっしゃいますか?
岡野 検索ログを使って広告の効果を測定したり広告を改善したりするだけでなく、マーケティング全般にも広く使える分析サービスの企画をしています。
有園 具体的にどのような使い方をしているのですか?
岡野 新しいサービスを立ち上げる案件の場合は、市場調査の観点でマクロから検索傾向を分析します。
また、会員制サービスを提供している場合では、ミクロで会員一人ひとりの検索ログから検索傾向を分析します。検索ログを使えばかなり広い解析ができますし、退会の可能性なども把握することができます。
有園 携帯電話で例えると、auの携帯電話を使っているお客さんがソフトバンクに関するキーワードを検索し出したら、auを解約してソフトバンクに乗り換えてしまう可能性があるということですね?
岡野 そのとおりです。現在も会員の方とすでに解約した方のデータに絞り込んで、それぞれの傾向を分析して比較すれば対策も練りやすくなります。
有園 実際にやってみていかがですか?
岡野 まだノウハウを溜めている段階ですが、あるサービスを解約した方は、解約する前に競合他社のサービス名で頻繁に検索をする傾向があります。品質や価格とのアンド検索をする方も多いです。検索ログを見れば解約理由まで把握できるようになっています。
有園 ユーザーの傾向を把握して問題が把握できれば、そこに最適なアプローチをすることで解約を回避できるかもしれないということですね。
岡野 そういうことです。
有園 すでに、そのようなサービスは他にもあるんですか?
治田 ヤフーやグーグルはやろうと思えばできると思いますが、今のところはやっていないですね。
有園 検索ログデータの分析でもコンバージョン後の検索行動に着目しているということで、アトリビューションが単なるメディアプランニングの最適化から、マーケティド(Marketed)するためにメールや検索ログデータを活用してモデル化する段階に入ってきたことを感じます。
アトリビューションを流行で終わらせてはいけない
有園 まだまだ深くお伺いしたいテーマなのですが、時間がなくなってきました。最後に、それぞれ、メッセージをお願いできますでしょうか。
治田 結局はマーケティングであるということです。「アトリビューション」という言葉が注目を集め、「画期的なサービスである」「最先端なツールである」と騒がれています。でも実際には、アトリビューションは、昔からある考え方の1つでしかなく、可視化できる1つの方法論としてアトリビューションが存在していると思っています。本質的には、やって当たり前なことであって、概念としてはさほど新しいものではありません。だから、「これはすごい」「きますよ!」とか言われることに違和感と危惧を覚えます。このままでは単なるブームで終わってしまうのではないかと心配しています。
岡野 私からは、最後に検索ログを使う3つのメリットを紹介します。
- 検索ログには、具体的で詳細な消費者のインサイトが入力されている。
- 検索ログからは、自社と接点がない部分の情報が得られる。
- 検索ログは、ほとんどフィルターがかかっていない人たちが分析の対象である。
非常にリアルでおもしろいデータです。メリットの多い検索ログをぜひ活用していただければと思います。
有園 ありがとうございます。では石橋さんお願いします。
石橋 以前、有園さんがどこかで「すばらしいマーケティングプランを練っても、商品やウェブサイトに問題があれば意味がない
」とおっしゃっていましたが、まさにその部分が重要だと思っています。商品やウェブサイトの抱える問題が検索ログを見ることによって浮き彫りになります。マーケティングプランを練る前に、検索ログをチェックしていただきたいです。
有園 Twitterやブログなどで語られている自社のサービスや商品の問題、お客様の声を拾いましょうという話があります。検索ログを見れば、検索行動に現れる消費者の声がリアルに把握できますね。
石橋 ソーシャルメディアでの情報発信は人に見られる前提でおこなっているため、ある意味ではセーブされた表現のはずです。それに対して、検索をするときに他人の目は気にしません。ですから、検索ログのほうがより本音に近い生身の声だと思います。
有園 おもしろい視点ですね。治田さん、岡野さん、石橋さん、ありがとうございました。
【アトリちゃんの視点】
「アトリビューション」という言葉や定義の一人歩き現象はよく耳にするようになりました。新しい取り組みによくある現象ですが、きちんと理解したうえで使われるように働きかけていきたいですね。
「マーケティド(Marketed)」の考え方は興味深いですね。顧客育成するための中間施策/KPIについてもよく語られるようになったので、自然な流れなのかもしれません。
それにしても、検索ログに触れたことがある身としては、クロスリスティングさんの検索ログデータ、ものすごくインサイトが豊富だと理解できますし、何と言っても見てみたいですね~。
治田さん、岡野さん、石橋さん、ありがとうございました!
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