ソーシャルメディアの投稿・データ分析・広告管理、御社ではいつまで別々のツールでやっていくのですか?/サミットレポート
デジタルマーケティングに関する大規模イベント「アドビ デジタル マーケティング サミット」のレポート第4弾をお届けする(サミット関連の他の記事は「Adobe Digital Marketing Summit 2012」タグでチェック)。
ソーシャルROIの測定にベストプラクティスはまだない
アドビのソーシャルメディア関連ツールも進化中
企業のマーケティング活動において、どのようにソーシャルメディアを活用し、その効果を測定するか。ソーシャルメディアの普及が日本よりも進んでいる米国でもいまだに大きな課題となっている。各企業のソーシャルメディアへの取り組みに関する現状はまだ未成熟な状態であり、特にソーシャルROIの測定にいたってはベストプラクティスは存在せず、各社試行錯誤の状態のようだ。
アドビ システムズは、昨年のサミットで「Adobe SocialAnalytics」という製品を発表した(日本未リリース)。ソーシャルリスニングや感情分析、ビジネス効果指標を組み合わせて分析できるツールだった。
そして今回のサミットでアドビが新たに打ち出したのが、「Adobe Social」(アドビ・ソーシャル)だ。これは、Adobe SocialAnalyticsとContext Optionalの機能を統合した、ソーシャルメディア担当者向けの新しい統合ツールだ。
ソーシャルマーケターのニーズを満たす唯一の製品がAdobe Socialなのです。
こう話すのは、同社プロダクトマーケティングチームでソーシャルメディアソリューションを担当するチャド・ウォレン氏。Adobe Socialに関して話を伺った。
「効果測定ツール」ではなく、投稿もROI分析も広告出稿もできる
ソーシャルメディア担当者向けの統合ツール「Adobe Social」
Adobe Socialは、単なるソーシャルメディア効果測定ツールではなく、ソーシャルメディアアカウントの運用や投稿・返信などのコミュニケーション、さらにソーシャルメディア上での広告出稿や効果測定など、さまざまな機能を備えた統合ツールだ。
そのため、Adobe Socialを使えば、「TwitterやFacebookなどへの投稿はこのツール」「キーワードの関連分析や感情分析はこのツール」「ソーシャルメディア経由のサイト誘導における効果測定はこのツール」のようにサービスやツールを使い分ける必要がない。
Adobe Socialが備える機能には、次のようなものがある。
- キーワードの出現数や推移、感情分析といったソーシャルリスニング&分析
- Facebookアプリの作成
- 各ソーシャルメディアへの一斉投稿や予約投稿
- 返信管理などのコミュニケーション管理
- スポンサー記事広告の出稿
- ファン数やフォロワー数、ユーザー属性などの主要指標の測定
- ビジネス成果への貢献度測定
ソーシャルメディアマーケティングに携わる担当者が行う一連の業務を1つのプラットフォーム上で行えることがわかるだろう。
特に強調したいのは、広告入札(Facebookのスポンサー記事広告)の機能を備えた初めてのソーシャルマーケティングプラットフォームという点です。
Facebookで投稿内容がニュースフィードに表示される割合は12%程度だといわれていますので、集客施策としてスポンサー記事広告はとても重要なのです。
とウォレン氏が話すように、スポンサー記事広告を統合ツールから出稿できるのはおもしろい。
また、とりわけ大きな特徴として、SiteCatalystと連携したコンバージョン解析がある。計測タグを改めてサイトに貼り付けることなく、すでにSiteCatalystで測定している「会員登録」「商品購入」「資料請求」などのコンバージョン指標(ビジネス成果指標)をAdobe Socialのレポートに簡単に組み込めるのだ。
一連の流れでみるソーシャルメディア担当者の10日間
サミットのジェネラルセッションでは、シニアプロダクトマネージャーのジェフ・ジョーダン氏が、Adobe Socialを活用する一連の流れをデモで説明していた。その例がわかりやすいので、簡単に紹介しよう。
ここでは、アウトドア製品を取り扱う架空の企業Geometrixx社におけるソーシャルメディアキャンペーンを例としており、Adobe Socialを活用したデータ分析による現状把握からソーシャル上での関連ワードを踏まえたキャンペーンの訴求内容の変更、さらにFacebookのスポンサー記事広告の出稿による集客、そして施策効果の確認までを、解説する。
まずは現状を把握するにあたり、Social Overviewレポートを開く。画面下のSocial Trendsをみると、ソーシャルメディア上でのメンション(青の線グラフ)はキャンペーンとともに増加傾向にあるものの、収益(オレンジの線グラフ)は横ばいとなっているため、何らかの対応策を取る必要があることがわかる。
次に、同じOverviewレポート上のワードクラウドでGeometrixx社に関連して語られているワードを調べてみると、「スノーボード」「雪」といった冬を示すワードが減り、「春」「暖かい」「バイク」「ジョギング」などの春に関係するものが増えてきていることに気づく。
そこで、Adobe Socialで管理しているキャンペーン用Facebookアプリの抽選対象商品を春の時期に合わせてマウンテンバイクに変更する。
さらにキャンペーンの告知用にFacebookやTwitter、Google+向けの投稿文を、続けてAdobe Socialで作成する。スケジュール配信にも対応しているので、複数のソーシャルメディアに一斉投稿も可能となっている。
ここで通常ならば、ソーシャルメディアの各投稿からページへの流入やキャンペーンへの応募数を測定するには、各投稿に含むリンクにトラッキングパラメータを追加しなければならない。うっかりとトラッキングパラメータなしで投稿してしまった経験がある人もいるだろう。
しかしAdobe Socialでは、そうした心配をする必要がない。前述のようにSiteCatalystが機能連携されているため、投稿に自動的にトラッキングパラメータが追加されるからだ。
広告経由のトラフィックを分析するためにトラッキングパラメータを体系化して利用している企業であっても、ソーシャルメディアでの投稿に関しては(広告費用がかからないこともあってか)ワークフロー上トラッキングパラメータがないまま配信される形になっており測定できないケースもある。Adobe Socialではそういったケースでも問題なしだ。
さらにキャンペーンへの集客施策として、Facebookのスポンサー記事広告の作成・出稿をAdobe Socialの画面上で行う。これは、前述のように同社が自信を持っている機能だ。
しばらくキャンペーンを実行してから、Social Overview(最初に見た画面)レポートで結果を確認すると、横ばいだった収益(オレンジの線グラフ)が増加傾向に転じていることがわかる。キャンペーン訴求内容の変更、スポンサー記事広告による集客施策によってこの結果が得られたのだろう。
このように、データによるソーシャルメディアの「収益貢献に関する現状把握」から「施策の考案」「Facebookページの変更」「各種ソーシャルメディアへの投稿」「Facebookのスポンサー記事広告出稿」、そして「ビジネス成果と結びつけた効果の測定」までの一連の業務を、Adobe Social内ですべて完結できることがわかるだろう。
デモでは紹介されていなかったが、この他にもFacebookページやTwitterなどでのユーザーからのポストに対するリプライや社内の他部署へのエスカレーションなどの機能も備えている。
6週間で100万人の「いいね!」を獲得、CPAは従来の1/4
Adobe Socialはこれからリリースされる製品ではあるが、サミット開催中に行われたセッションでは、その母体となる各製品を利用することにより見込リスト(新規ファン)や収益獲得に成功したFacebookプロモーションの事例としてExpediaの「Friendtrips」キャンペーンが紹介されていた。
プロモーションの詳細については割愛するが、参加方法はいたってシンプルで、ExpediaのFacebookページのファンになり、バーチャル飛行機に友人5名(ファンであることが前提)を同乗させ、好きな旅行先を目指すというもの。優勝チームには1億円以上相当の旅行があたるという大規模なものだったので、若干旧聞に属するがご記憶の方も多いかもしれない。
ちなみに、Friendtripsキャンペーンが開催されたのはAdobe Socialのリリース前だったため、同社ではAdobe Socialそのものを利用したのではなく、その母体である製品を組み合わせて活用している。具体的には次のようなものだ。
- プロモーション用アプリの開発や投稿管理などには、Context Optional Social Marketing Suiteを利用
- スポンサー記事広告のターゲティング出稿や自動入札管理などには、Efficient Frontierを利用
Adobe Socialを使えばこうしたことが1つのツール内でできるようになるということだ。
このプロモーションが成功した最大の要因がこうした製品だというわけではないが、新規見込リストであるファンの獲得コストを従来の1/4に抑えつつ6週間で100万のファン獲得を達成できたのは、ツールの効果が大きいだろう。またこのプロモーションは、(具体的な数値は公表されてはいないが)キャンペーン終了後も含めた同社の収益にも大きく貢献したという。
最近では外部ソーシャルメディアの活用のみならず、gigyaに代表される自社サイトのソーシャル化の動きも始まりつつある。その点に関してウォレン氏に伺ったところ、以前紹介したAdobe CQにはFacebookなどのソーシャルアカウントでの接続機能が用意されており、同社ではそのようなニーズに対応するソリューションとしてAdobe CQとAdobe Socialを統合したSocial Marketing Solutionの開発を現在進めているとのことだ。
ソーシャルもやってます!