Web担当者たるもの、かくあるべし 「Web担道」秘伝の書

「ハブ・スポークモデル」の肝と「どうやって実現するのか」

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「ハブ・スポークモデル」の肝と「どうやって実現するのか」

事例を通して、勘の良い方は気付いたかもしれないが、「ハブ・スポークモデル」の肝は、各部門のシステムをつなぐミドルウェアを構築することである。今までの図版で紹介した中央の青い丸の部分ことだ。

ミドルウェアというと、情報システム部やSI企業が扱うような超巨大なシステムのことを想像するかもしれない。しかし、考え方はWeb事業の“立ち上げ期”と基本は同じで、「小さく作って大きく育てる」である。そのポイントは、以下の5つだ。

  1. 部門間の業務や情報の流れを意識して検討する
  2. 一度にいろいろな機能を盛り込まない
  3. 本当に使える部分から少しずつ作る
  4. 一部だけ作ったらまず使ってみる
  5. 今までの業務を大きく変えすぎない

ここでもPDCAサイクルを回すというより、CACA……(チェック→アクション)を繰り返し、コツコツとヒットを打っていくのだ。

“成長期”のWeb事業をさらにドライブするために、前回は試算表を活用するお金をテーマにし、今回はWeb資産価値の向上をテーマに取り組むべき指針を紹介した。

ここまで読んでいただいたWeb担当者の多くが「難しくてよくわからない」「なんとなくわかったような気もするが、実際にどうすればいいか見当が付かない」と感じているのではないだろうか。

正直に言えば、これらを理解し、自社に当てはめながら実行していく取り組みを、Web担当者だけで進めるのは無理がある。デザインやページ制作だけを業務とするWebサイト制作会社に相談しても厳しいだろう。

そこで、次回は、人材の活用、特に外部パートナーの活用について解説する予定だ。

コラム
クラウド化の落とし穴

ハブ・スポークモデルの話題を進めるうえで何度か出てきた「クラウド」について、少し解説しておこう。

「クラウドコンピューティング」。Web担当者であれば、一度は聞いたことがあるだろう。言葉の厳格な意味はここでは割愛するが、ようは、つながっているサーバー群などを意識することなく、ネットワークを介してサービスを利用できる、ということだ。

次の表は、クラウドサービスと一般的なシステムを簡単に比較したものだ。

クラウドコンピューティング一般的なシステム
データセンターデータセンターを別途用意する必要がない。データセンターを用意する必要がある。
システム要員維持管理のためのシステム要員が最少で済む。導入、設定、運用するシステム要員が多数必要。
最新バージョンへの移行新しいバージョンへのアップブレードは自動的に行われる。新しいバージョンへのアップグレードが必要で、それによる影響の懸念あり。
導入の作業コスト・必要時間導入が容易で、短期間でできる。導入・設定は難しく、システム要員が必要で時間がかかる。
初期費用初期費用が安価。初期費用が高価。

“立ち上げ期”から育ててきた会員向けWebサイト、通販サイト、販促支援Webサイトなどは、すぐにでもクラウド化できるだろう。メールやファイルサーバー、グループウェアも比較的移行させやすい。さらに顧客管理(CRM)システムや営業支援(SFA)システム、総合業務管理(ERP)システム、会計システムなどもクラウド化を進めることができる。最終的には、社内にあるすべてのシステムをクラウド化することが可能だ。

クラウド化を進めることによって得られるメリットには、大きく分けて次の2つがある。

  • 上図にあるような社内システムの合理化が進むこと
  • データを共有しやすくなることによって生産性の向上や効率化が進むこと

(1) 現実のシステムにおける問題点

しかし、現実には社内のさまざまなシステムは、管理する部署によって異なるカスタマイズして作ったケースが多い。実業務に沿ってシステムを設計したシステムであるため、システム導入当初は、生産性も上がり、効率化も進み、そのメリットを享受できただろう。

しかし、カスタマイズされたシステムは、時代の変化や業務の進め方の進化に柔軟に対応しづらいものだ。実業務のプロセスは、ビジネス環境や顧客の状況の変化に応じて変わっていくべきものだ。しかし、システムのカスタム導入に莫大な予算をかけたこともあり、「実業務をシステムに合わせる」という本末転倒な状況になっているケースが多い。

また、各部署内や部署間で改善を積み重ねてきた業務フローがガチガチに固まっており、そのうえ複雑化しているため、どこか1つに改善を加えようとすると、部署単体もしくは複数の部署にまたがって仕様変更や業務フローの変更をしなければならず、結局、現状維持となってしまうことも多い。

Web担当者がクラウド化を進めようにも、その話題を出したとたんに社内の他部署から「今あるシステムは?」「過去のデータは?」「セキュリティは?」「業務フローは?」と突っ込まれれば、士気は下がってしまうだろう。

少々矛盾に聞こえるかもしれないが、最初から「すべて」をクラウドにすることは不可能なのだ

(2) 欧米との違い

では、少々目先を変えて、クラウド化が進んでいると言われる、欧米の状況はどうなのか見てみよう。

欧米では作ったすぐ後から次のシステムのことを考えている。もっと言えば、作ったシステムを100%信用してない。誤解を恐れずに言えば、日本ではシステムを「運用」することが目的化するケースが多いが、欧米では「効率化」することが目的でそのためにシステムを使っているので、常に改善できるポイントを探し、次のシステムを検討しているのだ。

また、欧米ではシステムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせるという考え方が浸透している。業務は日々進化するが、その進化を集積し、ナレッジとして体系化し、さらに平準化したものをシステムにする。成功した企業のノウハウと失敗した企業の原因を分析し、うまくいくシステムをクラウドサービスとして提供しているのだ。ということは、自社独自の業務フローを編み出すよりも、クラウドで提供されている「うまくいくはずのシステム」を利用するほうが、はるかに短時間で効率的な業務フローを構築できるのだ。

クラウド化の落とし穴は、「クラウド化」することが目的になってしてしまい、優先順位を考えずにシステムを変更してしまうことだ。前述のクラウド化のメリットが明らかに享受できるところから、戦略的に変更させていくことが肝要である。

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