KPIづくり実践術 徹底解説(1) - ゴールが明確でないサイトでも大丈夫!
―何を解析すればいいのかわからないあなたに―
Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座
【実践編】
第10回 KPIづくり実践術を徹底解説!(1)
「KPI」のことを調べていたら、ネット上の情報が間違いだらけだとわかった。これから何回かにわたって、KPIの設定と活用について実践的な情報を書いていくことにしよう。ホームページの効果の維持向上に大きく関わる指標づくりなので、良く考えてほしい。
目標が定まらないサイトは意外に多い
「目標に向けて、Webを効果的に運営すること」がWeb担当者の仕事。しかしWeb担当者と話していると、「何が目標か、明確に描けない」という声を多く耳にする。なぜ自社のWebの目標が描けないのか? それは次の2つの理由による。
- わかりやすいゴールがなく、情報を発信し続けるのがホームページの仕事になっている
- 部門ごとのゴールが、細かく多くありすぎて管理しきれない
だいたいはこのどちらかに分類できるのではないか?
(1)のサイトは多い。ECサイトであれば「売り上げ」といった目標がはっきりしているが、企業サイトの場合には明確なゴールがないこともあるだろう。サイトに「お問い合わせ」ボタンなどがあっても、「載せてはいるが、あまりお問い合わせは来ないし、製品は営業が出向いて売っているので……」ということになって、ECサイトであっても「売り上げ」という目標に対して、曖昧なスタンスだったりする。こういうタイプのホームページでは、コンバージョンに対する期待感が少ないことが多いようだ。
(2)のサイトの場合には、各部門にヒアリングしてゴールを整理することがスタートとなる。細かいものが多いかもしれないが、まずは全部把握しなければ始まらない。
いずれのサイトの場合でも、こうした状況で「KPI」を考えることは非常に役立つことなのだ。
「KPI」とは何か?
「KPI」は日本語に訳しにくい言葉だ。「Key Performance Indicator」の略で、Key=カギ、Indicator=指標だ。問題は「Performance」で、これが日本語にならない。もともとは経営の言葉で、「重要経営指標」などと訳されてきた。パフォーマンス=経営? 無理のある訳であるのはすぐわかる。ではどう解釈すれば良いのか? Web担当者は、「パフォーマンス」という言葉を「効率」と考えておけば良い。
まず、「物事はインプットとアウトプットでできている」と、モデル化して考えよう。Webで言えば、インプット=集客である。人がWebを見に来て行動する。そのアウトプット=期待する行動だ。この間をつないでいるのがWebであり、そのWebがうまく動けば、同じインプット量でもアウトプットの量が多くなる。この状態を「パフォーマンスが良い」と言う。間にあるWebの動作状況が良く、効率良くゴールを得られているのだ。
ところが、このごろそんなことを考えながらネット上の情報を見ていたら、「アウトプットの量をKPIとする」という記述が多く見られた。総ページ数、訪問者数、平均ページ数、コンバージョン数など……。しかし、これはあまりおすすめできない考え方だ。本来これは「KGI」(Key Goal Indicator、重要評価指標)として区分して考えたほうが良いのだ。
なぜ、実践編であるはずの本編でこんなややこしいことを考えるのかと言うと、「アウトプットを増やすのにはどうすれば良いか」ということを実践しなければWebの成功は望めないからだ。KGIというゴール数はもちろん一番気になる数字ではあるが、これをいくらにらんでいても、回数を増やす方法はまったく見つからない。増やす秘訣はKPIのなかにあり、その結果がKGIというものになるのだ。
「インジケーター」=指標?
さて、さきほどは「Indicator=指標」としたが、本当はこれも無理のある訳だ。本来インジケーターとは“示すもの”のこと、たとえば“機械の状態を示すために点灯される電球”のこと。インジケーターは、指標というよりは、行動の契機になるものなのだ。
たとえば自動車で言えば、ガソリン警告灯を思い出せばわかる。これぞインジケーターの最たるもので、たった1つの豆球のようなものだが、これが光れば「あ、もうすぐガソリンがなくなる」という非常に重要なことを伝えてくれる。インジケーターの大切なところは、ただ光って示すだけではなく、それを見た人の行動にすぐ結びつくものだということ。つまり、ガソリン警告灯が光ったのを見れば、「そろそろガソリンスタンドを探そう」「次のスタンドに入ろう」という行動に結びつく。インジケーターは人の動作に直結している。スピードメーターでも同じだ。スピードメーターの針がレッドゾーンに入れば、「スピードが出過ぎている」ことを示している。そうすると、人は「いけないいけない、飛ばし過ぎだ」とアクセルをゆるめる(人によっては張り切ってなお踏み込む場合もあるかもしれないが)。
このように、インジケーターの働きは、人の動きと密接に結びつくものだと考えれば、総ページビュー数=KPIと考えるのは損だということに気づくだろう。総ページビュー数は、Web担当者の動きと密接に結びついていない。現実に、それを増やすのに何をすれば良いかという選択肢がたくさんある。広告を増やすべきか、それともコンテンツを増やすべきか、直帰率の高いページを直すべきなのか……。これではガソリン警告灯が光っているのにウィンドウを掃除するといった方向違いの選択肢を選んでしまい、結果としてガス欠になってしまった、なんてことになりかねない。
KGIもインジケーターだが、これをインジケーターとして扱うには、KGIと密接に結びつくと定義された(調査によって確認された)、原因状況がセットになっていなければならない。たとえば、「ゴールは総ページビュー数」だとする。同時にこれまでのサイト分析から、総ページビュー数を持ち上げているのは一番の人気コンテンツ「レシピ集」だとわかっているとしよう。「レシピ集を改善すれば総ページビュー数が伸びる」という関係があるわけだ。もちろん、別の選択肢として「広告を増やせば総ページビュー数が伸びる」ということもあるだろう。しかし、コストパフォーマンスを加味すれば、優先順位はレシピ集コンテンツにある、と定義されるだろう。
こうした関係を割り切っておけば、次のサイクルが成り立つことになる。
- 「総ページビュー数=KGI」ととらえる。
- 最近、総ページビュー数が伸びない。
- これはKPIであるレシピ集に問題があるのではないかと考える。
- 「レシピ集=KPI」を点検する、という行動に結びつく。
- 確かにレシピ集が最近伸び悩んでいる。
- レシピ集をてこ入れする。
- レシピ集へのトップ他からのリンクを充実させる。
- レシピ集への外部リンクを増やす。
- レシピ集が新たな訪問者を増やし、リピーターの巡回も増えた。
- 総ページビュー数が伸びた。
回りくどい書き方になるが、こうした関係が成り立っていれば行動を特定し、目標を達成できるだろう。KGIとKPIはこうした関係でなければならないのだ。これでこそ、Webサイトはパフォーマンスが良い状態を保つことができていると言える。
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