欧州でも猛烈に進化しているモバイル検索――革命は進みつつある/SES London初日レポート
僕はSEOmozの非公式特派員として、SESロンドンの初日に出席してきた。Randに頼まれたのは、「彼はこう言った、彼女はこう言った」みたいにライブ形式でブログを書くのではなく、概略と分析のコメントがほしい、ということだ。最善は尽くすけど、ランチで聞いた話をするだけになってしまうかもしれない。もしそうなったら、Randの人選が悪かったと思ってよ。
その日は出だしからおもしろかった。受付で僕の登録情報が見つからないんだ。これは、僕の名前がシアラン・ノリアで登録システムに入っていたのが原因だった(本当はシアラン・ノリス)。まるでコロンビアの麻薬王の名前っぽいよね。でもともかく入場できた。この名前でやっていくよ。
セッション1:アルゴリズム検索表示フォーラム
その日の最初のセッションは、アルゴリズム検索表示フォーラムだ。ここでは参加者が専門家のパネリストに質問を浴びせることができる。パネルには、デイブ・ネイラー氏がいた。いつもどおり北部出身のプロフェッショナルな振る舞いで、彼の明らかな知性と専門知識はほんの少し大言壮語の煙幕に隠れてしまう。さらにラルフ・テトマイヤー氏(別名ファントマスター)もいた。長らく行方不明だった爆弾犯の兄弟のような出で立ちだったが、カミソリの刃のように切れ味鋭い知性の持ち主だ。
こういうセッションでは、参加者から同じような質問が繰り返し挙がるものだが、それは興味深いと同時に退屈でもある。
- 多国籍企業のクライアントはローカルのトップレベルドメイン(TLD)を使うべきか? →イエス
- リンクは信頼できるソースから得たものでなければならないのか →イエス、ただし場合による。
- デイブ・ネイラーは、彼が思うとおりの検索順位を取れるのか? →そんな気はする。
- グーグルはリンク購入を暴くための研究や諜報活動を行っているか? →そう思うでしょ?
これはどういうことかと言えば、SESやSMXなどの展示会はビジネスモデルが健全らしいということの他に、こうしたウェブ上にいくらでも転がっている情報でも、本物の人間が裏付けしない限り、だれも完全に信じたりしないということだ。そうは言っても、収穫が1つあった。Majestic12.co.ukが提供するリンク探索ツールだ。入場者がチケット代を払って得られたものが、それだけでないことを願おう。
必ず出てくる話題で、実際に出てきた話が、リンクとそれを買うべきか否かということ。おもしろい議論になるし、当然ながら白熱した意見が出る(中でもデイブ・ネイラーが示した、有料リンクに対する警告とタバコ箱に書かれた肺がんへの警告との比較は特に印象的だ)。しかしこの議論に真の解答はないし、実際にここで得ることはできない。リンク購入に対するグーグルのポリシーは気に入らないかもしれないが、将来これを変えられるとも思えない。パネリストのスティーブ・ジョンストン氏の言うように、それがグーグルのポリシーなのだから、その中で自分のやりたいことをやるだけだ。
セッション2:モバイル機器を使ったローカル検索
ここ数年の検索関連イベントで、「正直なところ次に来るのはコレ」的な話題が垂直検索だったとしたら、2008年を通じてその位置にあるのはモバイルになると思う(もしそうでないなら、たぶん参加するイベントを間違ってるんじゃないかな)。
パネルの司会者は、こんな話でセッションを始めた。すなわち、製品とシステム(たぶんiPhoneとAndroidのことだろう)の発展によって、モバイル検索、特にモバイル機器を使ったローカル検索が、近い将来にほぼ間違いなく急成長するという話だ。
初めの方のプレゼンが、ほとんどサプライヤの宣伝で、本当ならば魅力的なはずの話題が売り口上に隠れてしまいそうだったからがっかりした。モバイル検索の原動力となる可能性を持った技術は、間違いなく魅力的だが、個人的にはそういった技術が持つ実際の意味と、消費者の行動や傾向にどう影響を与える可能性があるのか、という点に興味を引かれる。しかし、ほぼ一定間隔で「ソリューション」という言葉が聞こえて来るんだよ。
嬉しいことに、その後の議論はずっとおもしろかった。出てきた話題は、人々がモバイル機器で行う検索の種類だ。とてつもなく意外な内容ではないが、何かを探しているまさにその時点で、必要な事柄を検索する傾向があるということ(タクシーやレストランなど)。リンク先のデータは2006年12月のものだけど、このデータが示すのは、こうした分野でビジネスをしているなら、モバイル検索について今から考えなきゃいけない、という事実だ。
講演者の1人、EDAのアレクサンドル・ガシャール氏は、モバイル検索の盛り上がりに横やりを入れようと試みた。それも当然の話で、彼の会社のビジネスモデル(つまり電話番号案内)は、モバイル検索が本格化すれば不要になる恐れがあるからね。電話番号案内の終焉とモバイル検索の爆発的普及の話は、真偽の確認が必要だと彼は主張する。彼曰く、ユーザーはモバイル検索の即時性にあまり興味がないとか(僕はそう思わない)、モバイルのユーザーインターフェイスはまだまだだとか(確かにそうだが、変化も著しい)、電話番号案内サービスの方が検索を使うより楽なんだそうだ。
こうした主張の中にも、一部納得できるものはあるけど、オランダで(イギリスでも)車を運転しながら携帯電話を操作することが違法だという事実を、モバイル検索が流行らない理由にしているのを聞くと、電話番号案内も現実と照らし合わせないといけないんじゃないかと思ってしまう。確かに、運転しながら携帯電話を操作するのは違法だけど、電話番号を押すのも同じじゃないの? 想像するに、「ああ、でも音声ダイヤルが使えるよ」なんて答えが返ってくるんだろう。でも以前僕らが言ったように、音声認識システムはモバイル検索を一段上に押し上げる可能性がある。
それに、携帯電話事業者はインターネットを利用できる携帯電話の販売を優遇しないだろうから、モバイル検索はダメだという主張を聞くと、講演者にはイギリス人はいないんだな、と思い当たる。僕の携帯電話(Nokia N73)は、事業者が無料でくれたもので、データ通信もそんなに高くない料金で定額利用できる。それに、間違いなく僕みたいなサービスを受けているのは少数派だというわけではない。この点については、e-consultancyでも書いたから、ここでは繰り返さない。一夜にして実現する訳じゃないけど、革命は進みつつあるとだけ言えば十分だ。
シアランは、ロンドンのオンラインマーケティング代理店Altogether Digitalで、SEOおよびソーシャルメディアのディレクターを務める人物だ。彼は実のあるカンファレンスが大好きだし、どんなカンファレンスでも呼べば喜んで講演してくれるだろう。
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