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[必見インタビュー]NYTimesのマーシャル・シモンズ氏が語る大規模メディアサイトの戦略とSEO

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2007年9月19日(米国時間)、ニューヨークタイムズ紙は1300万本の記事アーカイブを開放し、記事有料閲覧プログラムを取り止めた。この方針転換はブログ界で盛んに取り上げられたほか、出版業界大手にも影響を与え、コンテンツ戦略を見直す動きが出てきている(WSJのマードック氏の発言のように)。

NYTimesの決定が誰か1人の人間によるものだということはありえないが、同社で有料コンテンツの戦略が疑問視されるようになった背景に、マーシャル・シモンズ(Marshall Simmonds)氏の存在があったことは間違いない。シモンズ氏は、ニューヨークタイムズとAbout.comのチーフ検索ストラテジストで、デファイン・サーチ・ストラテジーズ(DSS)の創立者の1人でもある。

そこでシモンズ氏にインタビューを行い、今回の方針転換でシモンズ氏が果たした役割、自身の会社、そして大手メディアサイトがとるべき今後の戦略について話を聞いた。

マーシャル・シモンズ氏(右)とSEOmozのSi Fishkin(左)、中国・厦門にて。
マーシャル・シモンズ氏(右)とSEOmozのSi Fishkin(左)、中国・厦門にて。

10年にわたる検索業界の経験をもつシモンズ氏

SEOmoz よく知らない人のために、まず検索マーケティングの世界に入った経緯をお聞かせ願えますか? 検索とSEOにどのように出会い、どのようにしてAbout.comやニューヨークタイムズ紙と関わるようになったのでしょうか?

シモンズ氏 検索業界に入ったのは、オレゴン州ベンドのマーケティング会社に入社した1997年です。私はそこでSEOを専門とする検索部門を独自に始めました。同じころ、I-Search Digestのモデレーターと管理をやっていました。精力的で活発なコミュニティで、About.comに入るきっかけを得たのはI-Searchを通じてです。有名クライアント数社との仕事を経験し、1999年にAbout.comに入りました。SEOに特化した初めての社内部門だったはずです。

私の仕事は650人近いガイドとスタッフの教育と、検索戦略でした(いまも同じですね)。2001年にはAbout.comがPrimedia(ニッチ系出版社の大手)に買収され、それにともない250ものサイトが私の担当に加わりました。企業レベルの検索マーケティングは集中管理のアプローチでは限界があると悟ったのはこのときです。私は、検索の情報をプロジェクトマネージャや話を聞こうという人に可能な限り渡していくことにしました。こうして伝道者ネットワークが広がり、私は高いレベルの戦略に集中できるようになり、同時に各サイトでも知識が強化されました。

SEOmoz NYTimesとAbout.comとは別に、CEOを務めるデファイン・サーチ・ストラテジーズ社についても話してもらえますか? どんなところがクライアントなのか、主なサービスは何かなど教えてください。デファイン・サーチ・ストラテジーズには他にどんな人が関わっていますか?

シモンズ氏 デファイン・サーチ・ストラテジーズはニューヨークタイムズの一部門です。ここでは、検索エンジン最適化やオーディエンスの獲得と対応を、外注せずに社内で進めようという企業に対し高水準のコンサルティングを提供しています。たとえば、SEO、ソーシャルメディア、インタラクティブマーケティング、検索チームの立ち上げなどの成功事例を社全体に教育したり、SEOの日常業務を任せる社内の専門チームを指導したりしています。

デファイン・サーチ・ストラテジーズは出版業界に精通していることもあり、その方面のクライアントを多数獲得してきました。出版業界と多くの接点があるおかげで、オンラインのトラフィックを効果的に増やせるだけでなく、クライアントのビジネスモデルの範囲内で機能する戦略をすばやく判断できるのです。編集工程を検索マーケティングの基礎と融合させることで、途切れない本当に持続可能な方法を生み出せます。

読者と検索エンジンの両方に合わせて書く

SEOmoz 多くの大手メディアの検索戦略構築を推進してこられたわけですが、もちろん抵抗がないということはないと思います。大手メディア会社のウェブ資産を扱う上で、いつも妨げになるものについて教えていただけますか? 克服するのが大変な先入観や慣習などお聞かせください。

シモンズ氏 突き詰めると、読者と検索エンジンの両方に合わせて書くのだということをきちんと伝えるのが、最大の難関です。

出版で難しいのは、編集者、マーケティング担当者、営業スタッフ、それに上級管理職の人たちに、雑誌や新聞を売店で売るためのプロセスと同じものが、検索エンジンにも有効なのだとわかってもらうことです。つまり、説得力と関連性を備えたメッセージを書くことが、オンラインで成功するには重要だということです。通りを歩いているときに目をとらえる言葉とオンラインで使うべき言葉は同じものではありませんが、メッセージを創造する技量や才能は同じことです。

読者に理解され高い水準で関心を持ってもらううえで、検索によって出版社は、読者をいっそうよく知ることを求められるようになりました。NYTimesの検索チームはまさにこの点に取り組まなければいけません。150年以上続く強固なジャーナリズムと編集のプロセスを扱うのです。出版社は創造的なプロセスをオンラインに合わせるのだということで落ち着いてきています。この船の航路変更は簡単ではありませんが、先週(記事有料閲覧プログラムの)TimesSelectを終了したように、ニューヨークタイムズ紙は世界中の読者に貢献するための、大きな一歩を踏み出しました。難しい決断を下したことを私は大いに称賛します。出版社としての長期的な戦略が強化されるばかりでなく、読者開拓と収益増加のチャンスが大きく拡がるでしょう。

SEOmoz お仕事では、検索エンジンと支援する会社との橋渡し役になることも多いかと思います。そうした立場で難しい点を教えてください。クライアントの目指すものが検索エンジンのそれと違うということはよくあるのでしょうか?

シモンズ氏 現在、クライアントと検索エンジンの目指すものは、以前よりは合ってきているようです。コンテンツ面では、クライアントにとって良いものはたいてい、検索エンジンでも良いものとされます。注意が必要になっているのは、こちらができることと検索エンジンが必要とすることを合わせる段階です。事業目標、難解なコンテンツ管理システム、入り組んだURL構造、検索トラフィックが犠牲となるマーケティング活動、そしてあらゆる種類の実行上のアクシデントは、双方にどんなに善意があっても、いつもどうにかなるというわけではありません。一般的に、サイトのコンテンツ制作に参加する人が増えると、検索エンジンでつまずきやすくなります。

検索エンジンのメカニズムは以前よりもみえるようになりました。ご存じのように、検索エンジンをすべてを見通すというわけにはいかず、バックリンク関係など、いまでも情報が少ない部分もあります。それでも、グーグルが掲示板を介して匿名でしかウェブマスターとやり取りしていなかったころからすると大違いです。もちろん、新しい大手検索エンジンの百度は謎に包まれていますが。

検索エンジンからたどりついて5ページ目までは自由に閲覧可能

SEOmoz 「X回目のページビューまで無料」のモデルを最初に提唱されましたね。検索エンジンからサイトを訪れてから数ページビューまでは、コンテンツを見るのにオーバーレイ広告も登録メッセージも表示されない(それ以降はは表示される)というものです。このアイデアの由来とその後の展開について教えてもらえますか? NYTimesのようなサイト(最大5ページビュー? まで無料)は、Forbesのように検索エンジン由来のビジターにまずインターステイシャル広告(ページ遷移時に表示する挿入広告ページ)を見せるサイトと比べてどうなのでしょう?

シモンズ氏 単純化すると、ユーザーを重視するということなのです。ユーザーが大切なら、登録という壁やインターステイシャル広告で検索エンジンから来た人を悩ませません。これは私がNYTimesに入社したときに最初に掲げた基本方針の1つでした。検索結果のリンクをクリックしたときからページ閲覧を終えるまで、ビジターに有意義な経験を提供するのに必要なことです。私たちは登録の壁を6回目のクリックまで後退させました。最終的にはこの壁を完全に取り除きたいと思っています。

過去記事を開放すると、
どんな長期的な価値が得られるのか

SEOmoz すでに話に出ましたが、NYTimesは有料コンテンツのTimesSelectプログラムを取り止めました。これは検索トラフィックにプラスに作用するとお考えですか? これは喜ばしいことなのでしょうか?

それから、(Hitwiseの)ビル・タンサー氏の見方についてどう思われますか? 特に彼のこの発言については?

NY Times Selectの開放が、NYTimesのオンライン読者の拡大につながるのかはどちらとも言えない。ただ、このことで人気コラムニストのコラムが再び裕福な若い読者の眼に触れるようになり、広告売上増が見込めるとは言えるのではないか

シモンズ氏 これ(TimesSelectプログラムの取りやめ)は、NYTimesがこれまでにオンラインで行った変更の中でも、最大規模で最も有意義なものです。読者への献身の表れであって、この決断は確実にほかの出版社に戦略の見直しを迫ります。世界有数の豊かなアーカイブへとつながる膨大な数の扉が世界に開かれたことは、間違いなく、関係する全員にとってプラス以外のなにものでもないのです。1851年のカマルゴの戦いも、トーマス・フリードマン氏の最近のコラムも、知りたければ全世界に開放されています。検索で目立つようになるかというと、間違いなくそうなります。

多くの人が指摘しているとおり、TimesSelectがリンク構築の点で生産的でなかったのは間違いありません。ただ、公正を期するために言うと、内容についてやり取りがなされてリンクを獲得することで、結局どんな長期的な価値が得られるのか、それを説明するのは簡単なことではないのではないでしょうか。TimesSelectが開始されたとき、NYTimes.comでのSEOの取り組みは始まったばかりでした。今となっては、丸2年分のデータが集まっており、これを使って、私たちのSEO戦略の利点を理由付きで説明できます。

SEOmoz TimesSelectの取りやめについて、これがプラスの効果を生むと予測する際にどんな尺度を用いましたか?

シモンズ氏 検索からやってきたトラフィック量、何をおいてもまずこれです。これを起点にさらに解析を進め、ビジターのコンバージョンと振る舞いを追跡し、プロジェクトの成長を推定するとよいでしょう。ページビューは最も信頼できる物差しとはなりません。検索由来のトラフィックは滞在時間が短い傾向があります。検索から来た人は、ホームページやカテゴリのページから来た人ほどは、サイトをたくさん見て回らないのが普通なのです。

SEOmoz コンテンツのアーカイブ公開の決断を検討している組織に、どのようなアドバイスをしますか?

シモンズ氏 コンテンツを壁で囲うというのは、検索による長期的な価値を犠牲にしているということです。突き詰めると、次のように問うべきです。2年/5年間のトラフィックと売上において何を目指すのか? ネットワークの可能性を最大限に引き出せるように強固な基礎を構築し推進力を蓄えるとしたら、いま何ができるのか?

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