携帯サイト向けCMS厳選8製品ガイド
このコーナーでは、ネットビジネスを強力に支援する製品について、それを支える技術や市場動向を説明し、さらに各社から提供されている製品を紹介する。競合ひしめく市場で、他社に差を付けるための武器として、ぜひ導入を検討してみてほしい。今回は、ケータイ向けの公式サイトやキャンペーンサイトを自社で構築・管理・運用するための「携帯サイト向けCMS」だ。
福永 充利(株式会社シンクウェア)
企業は当然携帯サイトの時代
ケータイCMS選定のポイントは?
ケータイの普及台数は9000万台を超え、ケータイを取り巻く市場規模も7,000億円を超える勢いだ。今やパソコンのみでインターネットを利用しているユーザーよりも、ケータイのみでインターネットを利用しているユーザーのほうが多くなった。すでに携帯サイトは、すべての業界、企業にとって無視できない存在である。特にケータイ検索サービスが本格化して勝手サイトの重要性が高まる今後は、一般の企業がケータイ向けサイト、特に勝手サイトを作る動きが本格化するといわれている。そこで、ケータイ向けに特化したCMS(コンテンツ管理システム)が注目されつつある。
CMS導入のメリットは、「サイト運用や構築における専門知識を有する人員確保が不要であること」そして「ビジネス規模に応じてCMSの機能を使い分け、過度なシステム投資を防げること」だ。
ケータイCMSの選定において最も重要な点は、「そのCMSで目的のサイトが構築できるのか」である。つまり、導入側が携帯サイトに何の目的をもたせるか、要件定義や機能分解を意識することが肝心なのだ。
また、携帯サイト独特の特徴も想定に入れておく必要がある。ケータイの端末は年に100機種ほど市場に投入され、新しいさまざまなサービスが加わる。そのため、新機種ごとに微妙に変化する機能が、サイトにどのような影響を及ぼすかを考える必要がある。さらに、キャンペーンサイトでよくトラブルになるのが、アクセス集中である。ケータイは常に持ち歩いているので、TVやイベントなどの影響でアクセスが急激に集中し、システムダウンなどを引き起こすことがある。そのサイトがどの程度のアクセス数になるのかを想定しておく必要がある。
どういった機能に特化されているか
ケータイCMSには、ケータイ向けに特化した機能が存在する。製品選定の参考になるであろう主な機能をピックアップしてみた(表1)。
ページ制作機能 | 最低3つのキャリアのページが生成できる。キャリアごとの絵文字変換が搭載され、わかりやすいインターフェイスでページ制作、画面遷移図を作成できる。 |
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画像変換機能 | ケータイのブラウザには、画像ファイルフォーマットに一部対応していないものや1枚のページに容量制限があるものがある。それらに対応させてリサイズ、トリミング、ファイルコンバートができる。 |
ケータイ端末DB | ケータイの最新機種についてのスペック情報が逐次更新・追加され、ユーザーが新しい端末でアクセスしても問題のないサイトが構築できる。 |
更新スケジュール管理 | あらかじめ設定した時刻に、サイト内のページ更新を、自動的に行うことができる。 |
権限管理 | 個人情報の取り扱いなど、職位によってはアクセスを許可しない個所が生じる。そうした場合に運営者の権限を管理できる。 |
アクセス集計&分析 | 端末固有のIDに基づき、ページビューやユニークユーザーをキャリア別に把握できる。さらには滞在時間、1人当たりのページビュー、アクセスルート、回遊率などを集計・分析できる。 |
ケータイSEO | 最近注目の機能で、PC同様にGoogleなどの検索エンジンに対応するキーワードをページ制作過程で埋め込むことができる。 |
また携帯サイトにおけるビジネスモデルは「コンテンツビジネス」「メディアビジネス」「コマースビジネス」の3種に大別できる。ビジネスモデルごとの機能を見ていこう。
コンテンツビジネス
いわゆるiモードなどの“公式サイト”を利用した、有料情報系コンテンツの提供ビジネスだ。ケータイの待受画像や着信メロディ、着うたや着信ムービー、デコメなどケータイやそのメールをカスタマイズするもの、ニュースや天気予報、株価情報、エンタメ情報などを配信するものなどがこれにあたる。
課金システム、デジタルコンテンツダウンロードなどの機能が重視される(表2)。
課金システム | ユーザーに課金するための基本システム。コンテンツビジネスにおいては、必ず必要になる機能だがキャリアごとに仕様が異なり、月額課金、都度課金(従量課金)とタイプも複数ある。CMSがどのキャリアのどのタイプの課金システムに対応しているのかを確認しよう。またCMSによっては課金システムの組み込みはカスタマイズ対応になっているものもある。公式サイトでは、必ず接続試験があり、もしそれに不合格になるとサービス開始時期を遅らせる必要が生じるので注意してほしい。 |
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デジタルコンテンツダウンロード | 公式サイトにおける特徴である数多くの種類のデジタルコンテンツのダウンロード機能。その種類は、ケータイ端末の種類と世代によって、対応・非対応があり、またファイル形式が複数存在するので、CMSの対応をしっかり確認するべきだ。 |
メディアビジネス
公式サイトに対して、いわゆる“一般サイト”や“勝手サイト”などと呼ばれているサイトを活用するビジネス。企業の広告宣伝、販売促進の一環として、携帯サイトを媒体として扱う。店舗誘導や、製品紹介、顧客囲い込みなどを目的にケータイをメディアに見立て、ポータルサイト、メルマガスタンド、掲示板、ブログ、SNS、あるいはプロモーション・キャンペーンサイトなどとして構築する。
販売促進やキャンペーンのためのCMSであり、製品は豊富に存在する。大規模キャンペーンや会員登録など複雑な仕組みが必要な場合は、カスタマイズ対応となるものが多い。またSNSやブログなどのコミュニティビジネス専用ケータイCMSはあまり存在しなかったが、最近登場しつつある。コミュニティサイトは、現在収益構造としてバナー広告を掲載するのだが、広告配信・管理するアドサーバーの組み込みに既存のCMSが対応しているかが確認事項だ。
インスタントウィン、シリアル発行・管理、クーポン発行、アクセスソリューションといった機能が重視される(表3)。
インスタントウィン | いわゆる抽選機能。クローズド型キャンペーンでは、商品の購入、サービスを受けた後のインセンティブとしてデジタルコンテンツやクーポンなどを配布する。その際に利用できるくじ引きや簡易なゲームなど、複数種類がCMSに用意されている。 |
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シリアル発行・管理 | 継続型のキャンペーンや会員のユーザー認証のために使用する機能。IDをあらかじめサーバーにすべて登録しておき、サイトアクセス時にユーザーに入力してもらうことによって商品購入の根拠とする。 |
クーポン発行 | サービスの割引券として利用できるケータイの画面を制作する機能。 |
アクセスソリューション | 紙媒体やPCなど、他メディアから携帯サイトへ誘導するため、空メールや二次元バーコードの作成ができる機能。作成できる空メールの数量制限、二次元バーコード作成時の容量制限、アクセストラッキングが取得できるかどうかなどに注意したい。 |
コマースビジネス
携帯サイトで物販(EC)を実現するビジネスモデル。ケータイ=身近なメディアという特徴を活かし、今やコンテンツビジネスの市場を抜き、注目を集めている。また、特徴として携帯サイトのみで運営し成功しているケースも多く、公式・勝手サイトの両方とも存在する。PCでコマースサイトを運営している場合、携帯サイトへの展開は無視できない状況である。ケータイコマースを実現できるCMSは、それに特化しているものが多い。販売見込み数と販売アイテムによって製品が異なるので、慎重に検討する必要がある。
ショッピングカート、決済システム、販売管理・在庫管理といった機能が重視される(表4)。
ショッピングカート | 複数の商品をまとめて購入できる機能。 |
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決済システム | 代金引換、クレジット、そしてキャリア課金システムなどの機能。PCと同様の種類が存在しているが、製品によってサポートの幅が異なる。なかには、決済代行業者との契約が可能なものもある。 |
販売管理・在庫管理 | ユーザーが購入した後のフローを確認できる機能。ユーザーが購入してから決済、商品の受領までを管理し、商品の入荷・出荷を管理する。利用する物流や商品ジャンルによっては、システムが適していないこともあるので、注意が必要。 |
今後のケータイソリューションの市場動向
今の携帯サイトはビジネスに直結しているものが多く、事業所の地図や企業案内、製品紹介といった広報的なサイトは少ない。そういった基本的なサイトをケータイ向けに作りたい場合は、ここで紹介した本格的なケータイCMSではなく、「ホームページビルダーの携帯サイト作成パック」などのホームページ作成ソフトや、基本ページは無料で作成・運営できるKaty(http://katy.jp/)などのASPを利用するのが当面は適切だろう。
本格的なケータイCMSに関していえば、CMS自体は、機能を使いこなすパッケージではなく、他社のケータイビジネスの経験が形になっているものである。作業分担やワークフローなどをCMSに沿って作業すれば、暗中模索なビジネスステージから挑戦する必要はない。だからこそ、製品の作り手の思惑と方向性を理解したうえで、利用する側にとって最適なものを探し、CMSを活用したケータイビジネスに臨んでほしい。
CMS種別 | サイト種別 | 価格帯 | カスタマイズ | |
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イニシャル | ランニング | |||
コンテンツビジネス型CMS、コマースビジネス型CMS | 公式サイト・デジタルコンテンツ販売・物品販売 | 150万円~1000万円 | 15万円~ ※サーバープランにより変動 | 製品カスタマイズは一部製品にて対応可能 ※開発費用別途 |
メディアビジネス型CMS | キャンペーンサイト・販売促進サイト | 1万円~ ※製品によっては無料期間を設けている場合もある | 10万円~ ※サーバープランにより変動 | 製品カスタマイズは一部製品にて対応可能 ※開発費用別途 |
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