企業ホームページ運営の心得

話がつまらない人の理由。Webにも通じる対話の奥義

ポイントを押えれば、ワンランク上の文章術や会話を身につけることができます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の415

同じ話をしているのに

Carlos Santa maria/Hemera/Thinkstock

Web担当者にとって「話が面白い」というのは利点です。打ち合わせをリードし、同業者を魅了し、交友関係を広げてくれることはいわずもがな。そして「話が面白い人」は、Web用の「文章」も書ける傾向にあります。どちらにも通じるコツがあるからです。

一方、「話しのつまらない人」は、その反対のデメリットを抱えています。両者の違いは、話題の多さ、豊富なトリビアではなく「話の組み立て方」にあります。つまり、同じ内容を話していても、「話が面白い人」と「話がつまらない人」に分かれるのです。同じ昨夜のテレビ番組の話なのに、笑いを取る同僚と、そうでない上司がいる理由です。

今回はWeb担当者に役立つ、「話がつまらない人」にならないためのコツについて。ブログにも役立ちます。さらに「奥義」を知れば、口下手でも簡単に好印象を与えられるようになります。

話がつまらない人の話

まず、前提として次のシチュエーションがあるとします。

東京スカイツリーライン(東武伊勢崎線)の「竹ノ塚駅」の南端に接する踏切は「開かずの踏切」で、自転車ごと乗れるエレベーター付きの歩道橋があります。

改札は駅ビルの3階部分にあり、乗降客は主に階段とエスカレーターを利用することから、少し前までエレベーターは東口側の外れたところに一機あるだけでした。これを歩道橋用と間違えて自転車ごと乗り込み、西口には階段しかないと改札前で気がつき、途方にくれる人がいました。

これを「話がつまらない人」が説明すると次のようになります。

駅のエレベーターを歩道橋用と間違えて自転車ごと乗り込み、西口側に向かう改札の前でエレベーターがないことに気がついて、途方に暮れている人がいる。

ポイントはどこか

結論に至るまで何を伝えたいかがわかりません。話がつまらない人は「結論から話さない」のです。順を追って話すことは、すなわち誠意ではありません。話者は、駅の改札前に自転車というシチュエーションに面白味を見つけ、それを「結論」としたのですが、ならばこちらが正解です。

駅ビル3Fにある改札前で、自転車とともに途方にくれている人がいた。エレベーターは東口にしかない。どうやら隣接する歩道橋のエレベーターと間違えたようだ。

俗に英語は先に、日本語は最後に結論を述べるといいますが、「結ぶ論」と書くように、文章(論)においてのルールであって、話し言葉においてはこの限りではありません。

読者の理解に合わせて読みすすめる文章と違い、「会話」は、こちらが話す内容を相手が瞬間的に理解しなければ成立しません。そこでまず「結論」を述べます。

結論は期待を裏切らない

「話がつまらない人」の例は、前段の説明があってようやく理解できますが、後者はそれだけで完結しています。「結論」を先に提示することで、「途方にくれている理由の説明」に限定できるからです。限定することによって説明を最小限に絞り込み、エピソードの少なさは相手の理解を助けると同時に、スピード感のある話に仕上げるのです。

また、「結論ありき」で話すことで、読者の期待を裏切らずに済みます。エレベーターを間違えたところから始まる話では、その後に無限の展開が予想できます。

西口にはエレベーターがないと聞いたとき、むりやり階段を降りようとして、こけて滑り落ち、そこにいたブルドッグにお尻を噛まれて、階段を駆け上がって無駄骨になったという、コントのような展開を想像した人にとっては「途方にくれた」というオチはパンチ不足。結論である「途方にくれている」から切り出すことで、仮に想定の範囲内であっても、ガッカリ感を与えることはありません。

Webにも通じる話

コンテンツやブログも会話と同じく、「結論」から書かなければなりません。結論を提示することは「論旨を絞り込む」ことへとつながり、手短でありながら必要十分な情報提供は、読書におけるリズム感を生み出します。そして、結論ありきで読み進めるのですから「期待外れ」と落胆させる確率も大きく下がります。

なによりWebは、会話より残酷です。書き出しに求める「結論」を見つけられなかった訪問者は、ブラウザの「戻る」をクリックして去って行くのですから。

「結論=オチ」から話すように心がけるだけで、「話がつまらない人」を卒業することができます。ただし、一定の練習が必要。話し始める前に、頭の中で内容を整理しなければならないからです。一呼吸おいて伝えたい内容を思いだし、それから話し始めるようにするだけで、短期間でワンランク上の「話」ができるようになります(効果効能には個人差があります)。

さらに、会話における「奥義」を紹介しておきます。こちらは「即効性あり」です。

本能を満たす

それは「聞き上手」になることです。

一般的に人は、自分の話を聞いてほしいという本能レベルの承認欲求をもっています。「聞き上手」とは、これを満たしてあげる人のことです。

欲求を満たしてくれた人に好印象を持つのは、空腹時にアメ玉をくれる人を想像すればわかること。方法は簡単です。相手が話し始めれば「相づち」を繰り返すだけ。コツは「反復」と「同意」。登場したキーワードをオウムのように繰り返し、「なるほど」などと賛意を示すだけで「ぷち聞き上手」に変身できます。滑舌が悪くても、口下手でも問題ありません。

「そんな簡単なことで?」と思うでしょうか。しかし、人は意外なほどに単純にできているのです。

あるとき放送されていた、保険取次業「保険の窓口」のCMでは、ひとしきり話し終えた女性が「聞き上手ですね」と、社員役の男性を褒めるシーンがありました。社員は「はい」と満面の笑みを浮かべて返事しますが、これは最悪。「はい」と認めることは「ペラペラよくしゃべったな」というニュアンスが含まれていると受け取られかねないからです。正解はこう。

お話が面白くって

「聞き上手」は対面における「奥義」です。「文章」では使えないのが残念ですが。

今回のポイント

結論から話すことで情報を絞り込める

「話」と「Web作文」は同じ

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