【レポート】Web担当者Forumミーティング 2023 秋

大手法律事務所が新規事業のSEO施策でCV2.5倍! ユーザー心理を読み解くキーワード×コンテンツ戦略

新規事業立ち上げにあたり、SEOで集客を試みる場合のコンテンツ戦略の最適解とは? 大手法律事務所ベリーベストが語る。
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検索エンジンからの流入増、つまりSEOは、Webサイトへの集客手法のなかでも最重要施策の1つといってよい。SEOは業種を問わずにニーズをもつユーザーにリーチできるのが大きな強みとなる。

弁護士約350名が所属する大手のベリーベスト法律事務所では、新規サービスの展開にあたって、SEOツール「ミエルカSEO」をフル活用したコンテンツ戦略により、狙いたい新規分野でのコンバージョンを2.5倍まで伸長させた。

Web担当者Forum ミーティング 2023 秋」では、べリーベストの藤村真貴奈氏と、「ミエルカSEO」を展開するFaber Companyの月岡氏が対談し、ベリーベストのSEO施策におけるコンテンツ×キーワード戦略について語った。

(左)ベリーベスト法律事務所 WEBクリエイティブ部 藤村 真貴奈氏、(右)株式会社Faber Company 執行役員/エグゼクティブマーケティングディレクター 月岡克博氏
(左)ベリーベスト法律事務所 WEBクリエイティブ部 藤村 真貴奈氏、(右)株式会社Faber Company 執行役員/エグゼクティブマーケティングディレクター 月岡克博氏

SEOのためのコンテンツ作りは一石二鳥の役割を果たす

SEOツール「ミエルカSEO」を展開するFaber Companyの月岡克博氏は、セッションの冒頭で、「SEOの重要性は改めて高まっている」と語った。

一般的に、自社サイトへ流入する見込み客を増やすための施策は3つある。

  1. 広告
  2. SNS
  3. 検索エンジンからの流入(SEO)

1つ目の「広告」は、コストをかければ流入は増えるが、サードパーティCookie規制や個人情報保護強化の流れを受け、多くの企業でCPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)が上昇傾向にあるという。

2つ目の「SNS」は、一般消費者をファン化させるという意味で、B2C企業には重要な施策だが、B2B企業としては相性が悪い場合が多い。

そして3つ目が、検索エンジンからの流入を増やすための「SEO」施策だ。SEOには、施策開始から成果を確認できるまでの期間が長くなりがちという側面はあるものの、論理的に施策を実行可能だという強みがある。

そのSEO施策において鍵となるのが、ユーザーを惹きつけられるだけのコンテンツだ。ニーズを捉えたコンテンツは検索流入を増やす以外にも多くの使い道がある。メルマガなどユーザーに対してプッシュ型で情報展開する際に、クーポンやセール情報だけでなく、ノウハウコンテンツを送るほうが配信停止されにくい。さらには人気コンテンツをPDFにまとめてホワイトペーパーとすれば、リード獲得にもつなげることが可能だ。

ユーザーが、求めるコンテンツをWebで読みたいか、PDFで読みたいかはケースバイケースです。作成したコンテンツは、チャネル(配信経路)を変えるだけで意味づけが変わるため、一石二鳥、三鳥と効果を高めることが可能です(月岡氏)

良質なコンテンツを一度作れば、多面的な活用ができる

新規参入にあたって、どうコンテンツを展開するべきか

藤村氏が所属するベリーベスト法律事務所(以下、ベリーベスト)は、弁護士約350名、パラリーガル(法律事務の専門職)約650名を擁し、国内拠点数は73カ所(※)。個人を主な顧客とする法律事務所としては国内最大手だ。

(※)弁護士数・パラリーガル数は2023年8月現在、オフィス拠点数は2023年11月現在(国内における数)

そんなベリーベストでは、広告を活用しつつも、コンテンツを活用したSEOも重視する戦略を取っている。現在は、顧客向けに自社で約90のWebサイトを運用しており、編集・運用は原則として内製だ。WEBクリエイティブ部には約50名のスタッフが在籍し、外部ライターなどとも協力体制を築いている。

そんなベリーベストが、新たに立上げるサービスでどのようにコンテンツを考え、SEO施策を実施していったのか。本セッションでは、「新規分野への参入にあたって、どのようにコンテンツを準備するべきか」をメインに据え、議論が展開された。

ニーズが高まっている分野で検索上位を狙う

まず講演の聴衆に対して「離婚問題」と「学校問題」のどちらが弁護士に相談するニーズがあるのか質問がされた。

「離婚問題」はすでに弁護士を必要とするイメージが一般に定着しており、実際に検索エンジンで「離婚問題」などと検索すると、弁護士事務所の公式サイトが多く検索上位に表示される。

一方で、「学校問題」と検索しても、出てくるのは調査レポートや文部科学省のサイトなどで、弁護士事務所は検索上位に出てこない。これまで学校問題は、親と教師などで解決するものというイメージが強く、学校で発生した問題を弁護士に相談するという発想がそもそも弱かったと思われる。

とはいえ、現場では相談も寄せられていた。そこでベリーベストは、学校問題について弁護士へ相談できる新サービスを立上げ、それに合わせてWebサイトも作成することにした。学校問題に悩む学生本人や保護者が何を求めているのか、ユーザー動向を調査したうえで、コンテンツづくりを始めた。

コンテンツ戦略を定めるための3ステップ

ここからは、藤村氏が実際に行った施策が3ステップに渡って解説された。

ステップ① 徹底的な情報収集

学校問題に関して、相談を受けたことのある弁護士がいるため、現場の生の声や悩み、ニーズを内部で把握可能だった。そこで、藤村氏はまず所属弁護士へのヒアリングを実施したほか、競合となる事務所の動向、学校に関する報道・世論についても調査した。

ここで集まった情報を分析するために活用したのが、Faber Companyの「ミエルカSEO」である。文字通りSEOに特化したツールで、自社サイトや競合サイトの検索流入キーワードの傾向などを分析できる。これにより、狙うべきキーワード、作成すべきコンテンツの指針などを発見可能だ。

ミエルカSEOには「学校問題」という検索キーワードに対して、どんなテーマ・用語が関連しているかを分析し、チャート化する機能が用意されている。円の一つ一つが検索キーワードになっており、円の配置が近い項目ほど、検索ニーズが近いことを意味する。

たとえば「学校問題 解決」と「学校問題 相談」は近くに配置されているので、検索ニーズが近いのでは、と考えられる。

検索キーワードにどんなテーマ・用語が関連しているかを分析する「検索ニーズ分析」

「学校問題」というキーワードでSEOを進めるにあたっては、若干ニュアンスの異なる「学校トラブル」というキーワードを主軸にすべきか迷い、比較・検討しました。

しかし、「ミエルカSEO」のキーワード配置を精査した結果、「学校トラブル」よりも「学校問題」を主軸にコンテンツ設計すべき、との結論に至りました。「学校トラブル」だと、「PTA問題」「保護者間の付き合い方」といった話題とも関連性が強くなってしまい、弁護士利用を促したい内容とはズレる可能性があったからです。

こうした判断ができるのが「ミエルカSEO」の強みの1つだと思います(藤村氏)

また、「ミエルカSEO」には、URLを指定するだけでサイトの検索流入とキーワード動向を分析できる機能がある。この機能によって、競合サイトではどのようなキーワードで検索流入を獲得しているのか、どういったニーズがあるのかを調べられるというわけだ。

サイトへの検索流入キーワードなどを調べることができる「競合サイト分析」

ステップ② ニーズの絞り込み、深掘り

徹底的に情報収集を行い、SEO的に狙うべき候補キーワードのメドが立ったら、次は絞り込みを行っていく。ここで役立つのが「ミエルカSEO」の「重要トピック分析」機能だ。

ステップ①で洗い出した「学校事故」という検索ワードを指定すると、現在そのキーワードで検索上位サイトや、Q&Aサイトを調査し、どういったトピックが扱われているか、ユーザーがどんなことを知りたがっているかを分析できる。これにより、そのキーワードを検索する人がどんなニーズを抱えているかを把握できる。

検索上位サイトやQ&Aサイトでどんなトピックが扱われているかを分析する「重要トピック分析」

検索窓にキーワードを入れた時に自動で表示される「サジェストキーワード」をリストアップする機能も活用した。「学校事故」というキーワードに対するサジェスト候補では、「学校事故対応の指針」が最も検索数が多い。藤村氏は、実際に悩むユーザーが使う言葉としては若干の違和感を覚えたという。

そこで次に、「学校事故」ではなく、間にスペースを挿入した「学校 事故」に対するサジェスト候補を調べなおしてみると、「事例」「給食」「プール」「損害賠償」「弁護士」などの具体的な単語が一気に増えた。

つまり、「学校事故」で検索するユーザーと、スペース入りの「学校 事故」で検索するユーザーでは、キーワードに対する潜在ニーズが微妙に違う。前者が「学校事故に対する最新動向を知りたい」のに対し、後者は「実際に学校で事故が起こった時にどうすればいいか調べたい」といった具合だ。

こうした作業を繰り返し、SEOを行う検索キーワードを絞り込んでいく。

ステップ③ コンテンツ戦略の決定

最後は、これまでの調査を経て洗い出された、ユーザーニーズを捉えているであろう検索キーワードを、どのコンテンツに当てはめて制作していくかというコンテンツ戦略の決定ステップだ。

藤村氏は、コンテンツ戦略におけるキーワード選定は「主要キーワード」「サービス特有のキーワード」「時事・ニュース性の高いキーワード」という3種類に分類し、それぞれのキーワードをサイト内のどのコンテンツに置くべきかを検討しているという。

3種類のキーワードをサイト内のどこのコンテンツに配置すべきかの分類法

主要キーワード

「主要キーワード」はサービスのトップページに、「サービス特有のキーワード」は用語解説やQ&Aページに、「時事・ニュース性の高いキーワード」はコラムのコーナーや動画コンテンツとして置く、と整理しています(藤村氏)

主要キーワードは、検索ボリュームが多いかどうかではなく、提供したいサービスの根幹を表す用語やユーザーの切実なニーズに関連したものを割り当てることが多い。他に、そのキーワードで検索されるとコンバージョン率が高いとわかっていれば、それも主要キーワードとして扱うとよい。

「主要キーワード」はトップページにしっかり配置する

サービス特有のキーワード

サービス特有のキーワードとは、学校問題での例が難しいので、たとえば「離婚」が主要キーワードのサイトの場合、「離婚調停」「離婚協議書」などのキーワードを指す。

サービスへのコンバージョンには結びつきづらいが、主要テーマを補足するのに重要なトピックになるものが多い。そのため、「離婚調停」「離婚協議書」などについて詳しく解説する用語解説やQ&Aページを用意すればいいということになる。

「サービス特有のキーワード」向けには、“~とは”系の用語解説や、“よくあるご質問”などのQ&Aサイトを用意する

時事・ニュース性の高いキーワード

時事・ニュース性の高いキーワードとは、離婚では「不倫」「慰謝料」、学校問題では「熱中症」「体罰」など、メディアやニュースなどで話題になりやすいキーワードのことだ。芸能人やタレントの不倫や離婚、あるいは教育施設での事故などのニュースは、自身にそうした問題が起きていない人でも検索されることが多い。そのため、これらのキーワードからユーザーが流入してもコンバージョンには繋がりにくい。

しかし、単にそれらを無視するのは得策ではない。世間一般からのニーズが高まっているので弁護士の意見を述べるようなコラムや動画などのコンテンツに誘導して、認知度を高めることや、中長期的な企業ブランディングへとつなげることを意識する。

時事性の高いキーワードは、長期的な視点で重要

「学校問題 弁護士」で検索1位、CVはスタート時の2.5倍に

ベリーベストでは、上記のコンテンツ戦略に沿って、学校問題に関するページを2023年4月に立ち上げた。そこから4カ月が経過した8月末の時点で、「学校問題 弁護士」の検索結果で1位、「いじめ 弁護士」で3位など検索上位を獲得できている。

学校問題に関するページ立ち上げから4か月でSEO上位を獲得

また、コンバージョンについても、ページ開設時点での事務所への問い合わせ件数を基準とした場合、直近では2.5倍に増加したという。コンテンツの強化もさることながら、ページ内の各所に問い合わせ先電話番号を表示したり、問合せフォームへのリンクを張るなど、コンバージョンを高めるための工夫も行っているという。

学校問題に関する問い合わせ件数は4か月で2.5倍に

藤村氏は最後に「ミエルカSEO」の利用を振り返り、「SEO施策が俯瞰的に行えるようになった。深掘りの深さという意味でも、大きな成果があった」と高く評価した。

さらにベリーベストでは内製できる体制づくりがポイントの一つであったが、マーケティングチームのリソースが潤沢な企業は少ないだろう。Faber Companyでは、企業とマーケターをつなぐ業務委託マッチングサービス「ミエルカコネクト」も展開中。SEOやマーケティング施策を推進したくても、人材が見つからないニーズに対応できるという。「今後も、Webサイト担当者やマーケターの活動をサポートすべく、さまざまなサービスを提供していきたい」と月岡氏は述べ、講演を終えた。

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B2B / B2C / CPA / CV / Cookie / SEO / SNS / クリエイティブ / コンバージョン / コンバージョン率 / セッション / ブランディング / リンク / リーチ / 検索エンジン / 顧客獲得単価
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