コンテンツマーケティングでCVR125%「優れたユーザー体験」を組み込んだSEO施策とは
SEO施策として、検索キーワードを意識したコンテンツを活用したオウンドメディアの立ち上げは一般的になってきた。一方で、コンバージョンを増やすためのサイト改善もSEO施策を考える上で欠かせない。
「デジタルマーケターズサミット 2019 in 大阪」のセッションでは、Faber Companyの井上憲作氏が、コンバージョン数125%を実現したブランディアの事例を基に、情報の適材適所への分散、スマホ時代のキーワード設計、ファセットナビゲーションについて解説した。
今では通用しないSEO手法
本題に入る前に、SEOについて軽くおさらいしておく。井上氏によれば、2011年頃までのSEOでは下記のような手法や考え方があった。
- キーワード出現率・近接率:ページ内に該当キーワードをたくさん入れる
- 自作自演リンク:業者からリンクを買って被リンクを増やす
- 過剰なアンカーテキストマッチ:リンクする文字に過剰にキーワードを盛り込む
しかし、検索エンジンの進化に伴い、これらの手法や考え方は今ではまったく通用しなくなった。井上氏は、「今、これらのキーワードを口にするSEO支援会社は“ヤバイ”会社。スパム行為に近いので、順位が上がらないだけでなくペナルティを受ける可能性もある」と注意喚起した。
検索エンジンはどのように進化したか
2011年以降のGoogleの進化として有名なアルゴリズムアップデートには以下がある。
ページ評価関連
- パンダアップデート:より高品質なコンテンツを評価する
- ペンギンアップデート:主に自作自演リンクなどのスパム行為をしているページの評価を下げる
ユーザー体験関連
- モバイルフレンドリー:スマホでの利活用がしにくいサイトの評価が下がる
- スピードアップデート:ページの表示速度が遅すぎると評価が下がる
これらのアップデートはもちろんだが、Googleは当初から「検索ユーザーの利便性を第一に考えている」ということを忘れてはならない。SEOとは、「素晴らしいユーザー体験を提供すること」が基本になる(井上氏)
CVRを高めることが結果的にSEO施策になる
Web施策を考える際に、「SEOを意識するのか」「CVR向上を目指すのか」で優先順位を迷うことがあるかもしれない。井上氏は、「間違いなくCVRを上げる施策を中心に考えた方がいい。それは結果的に検索エンジンのランキングにも反映される」と言う。
井上氏によれば、“素晴らしいユーザー体験”とは以下のような体験であり、ここを目指すのがSEO施策ということだ。
- 欲しい情報が手に入る
- 専門的で信頼できる
- 使いやすい・見やすい
検索者の多いメジャーキーワードを狙いたい
セッションでは、ブランド品の買取と販売を行う「ブランディア」の事例を取り上げた。
ブランディアの特徴は、Webで申し込んだ後、商品を送るだけという「簡単宅配買取」である。対応ブランドは7,000ほどで、他では買い取ってもらえないようなものも買取しているという。
ブランディアが上位表示したいキーワードは、たとえば、以下のようなものだ。
- ヴィトン 買取
- エルメス 買取
しかし、上位表示のため施策を打とうにも、もともとブランディアのページは、システムによる自動生成で作成されていた。改修するにはエンジニアのリソースを割いてもらう必要があり、費用対効果の説明を求められる。しかし、SEO施策の特性上「これを改修したらいくら儲かるのか」という質問には中々回答しづらい。
そこでブランディアでは、まずSEOチーム自身で管理できる新たなページを作成し、そのページでの施策を考えた。ところが、新しいページを作成しても、検索結果には相変わらずシステム生成した従来のページが表示されてしまったという。
ユーザーの検索意図を調査
これを改善するためには、新しく作成したページが、前述の“素晴らしいユーザー体験”を提供できているかどうかを見直す必要がある。そこで、上記の3項目の中で「① 欲しい情報が手に入る」が満たされていない、つまり“情報不足”なのではないかと予想。それを確認するために、ブランディアではサジェストキーワードなどを分析して、ユーザーの検索意図を調査した。
サジェストキーワードとは、狙いたいキーワードと一緒に検索されやすいキーワードのことだ。検索窓に、キーワードに続いてスペースを入れると出てくる。
Faber Companyが提供しているSEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」では、サジェストキーワードをネットワーク化して表示できる。
キーワードの関係性を図にすると、キーワードをある程度グループ分けできることが見えてくる。下記キーワード「ヴィトン 買取」の例では、「エリア」や「価格」の他、バッグや時計といった商品の「種類」などにグルーピングできることがわかった。
また、ミエルカでは各サジェストキーワードで自社サイトやライバルサイトが検索何位に表示されているかを分析できる。ヒットさせたいページ以外の意図しないページがヒットしているといったズレも、この表で調査できる。
さらに、ミエルカには検索意図ごとにサジェストキーワードをグルーピングする機能もある。以下の図は、キーワード「ヴィトン 買取」のサジェストキーワードをユーザーの検索意図でグルーピングしたものだ。キーワードの円が近いもの同士は、ユーザーの知りたいことが似ている、と読み解くことができる。
検索意図に合わせてページやトピックを追加する
以上の調査が済んだら、手作業とディスカッションによって、不足しているキーワードを洗い出す作業に移る。ブランディアの場合は、下記のようなキーワードが洗い出せた。
- モノグラム
- アクセ
- メンズ
- エピ
その後、どのページにどのキーワードを意識した施策を展開するか検討するわけだが、この時にポイントとなるのが、「検索意図に合わせて最適なページにトピックを追加する」ことだ。井上氏によれば、「ただし、ページ内に闇雲にキーワードを入れても上位表示しない」という。検索意図を分析し、最適なページ構成を検討する必要がある。
本事例では、「ヴィトン」のページの配下に代表的コレクションの「モノグラム」「エピ」など、検索者の多かったキーワードのページを新たに作った。その結果、自社サイトが検索順位10位以内に入るサジェストキーワード数は、26から102まで増加した。
この「検索結果の10位以内に入るサジェストキーワードの数」は、SEO施策のKPIとして使える指標の1つだと井上氏は言う。
施策後、「ヴィトン 買取」というキーワードにおける検索順位は約3か月で2位まで上昇し、新ページがヒットするようになった。「SEOは時間がかかるイメージがあり、それは間違ってはないが、やり方次第では数か月で成果を出せるものもある」と井上氏は言う。
また、ブランディアのように本来ヒットして欲しいページ以外のページが検索結果に表示されてしまう場合は、今回と同様のアプローチで改善できる可能性がある。
上位表示でアクセスが増えそうなキーワードを優先する
検索順位が2位に上昇したということは、施策は大成功だったと言えるはずだ。ところがここで新たな問題に気づいた。順位は上がったのに、アクセス数やコンバージョン数がまったく増えなかったのだという。
以下の表はミエルカで調査した検索順位とCTR(クリック率)の関係だ。
この表の通りであれば、2位ならCTRはPCで10%以上、スマホで20%以上になるはずである。ところが実際には3%以下で、1%台という時も多かったという。
なぜ、通常のCTRよりもかなり低くなってしまっているのか。その理由は、実際に検索してみるとある程度想像できる。以下の図は、スマホで「ヴィトン 買取」を検索したある日の結果だ。
検索結果画面には、まず広告が最大で4枠入る。さらにローカル検索(ローカルパック)が入り、その後にやっと自然検索の1位がくるのだ。これではかなりのスクロールが必要で、検索2位であってもクリックされそうにないことがわかる。
そこで井上氏は、「上位表示させたいキーワードを決めるときは、必ず検索結果を見るべき。上位表示させても、広告枠が多いなどの外的要因で、アクセスが増えないキーワードは存在する。そういったキーワードを最優先で施策するのではなく、結果が出やすい他のキーワードを選んだほうがいい」とアドバイスする。
そこで、他にも人気があるブランド「ミュウミュウ(Miu Miu)」をターゲットとして施策を実施。「miumiu 買取」というキーワードで検索した結果が以下の図だ。こちらは、広告は1枠で地図も表示されない。検索順位を上げることができれば、クリックされる可能性も高そうだ。狙うなら、このようなキーワードが狙い目ということだ。
検索意図に合わせてシステムが生成するページを改修
「miumiu 買取」で検索意図を分析すると、「ヴィトン 買取」と同様の傾向があった。おそらく、どのようなブランドでもユーザーが知りたいのは下記のような共通の内容だと考えられる。
- 買い取り金額はいくらか
- (バッグだけでなく)財布も買い取ってもらえるのか
- マテラッセ(ブランド個別のシリーズ名)はいくらか
そこで井上氏は次に、システム生成ページの改修へと施策を広げることをアドバイス。最初から費用対効果の説明は難しくても、小さく成果を出したことによって、「順位は上がったので、次はコンバージョンを増やしたい。エンジニアのリソースをください」という交渉が可能になったということだ。
システム改修では、従来あった「買取価格相場」の下に、いくつかコンテンツを追加した。たとえば「高価買取のコツ」では、革製品が多いブランドなら革の手入れの方法、機械的な部品の多いブランドは機械の手入れの方法など、ブランドごとにコンテンツを変えている。
ブランディアは、取り扱っている7,000ブランドに対してこのような取り組みを横展開していったことにより、アクセスは150%、コンバージョンは125%に伸びたという。
商品一覧に検索意図を反映させる
検索意図のグルーピングによって洗い出したキーワードを横展開する際に効果的な手法のひとつが「ファセットナビゲーション」である。これは、前述の素晴らしいユーザー体験のうち「③ 使いやすい・見やすい」を実現する手法と言える。
ファセットナビゲーションとは、サイト内検索が可能なサイトにおいて、ユーザーに検索条件を入力させるのではなく、より多く検索される検索条件をサイト側であらかじめ用意し、それを選ぶことで絞り込めるようなナビゲーションのことだ。
例えば、「中古ノートパソコン」というキーワードのサジェストキーワードをグルーピングしたのが以下の図だ。
この結果からは、ファセットナビゲーションであらかじめ用意する検索条件として、以下のようなものが有効だと推測できる。
- OSの有無
- CPUの種類
- メモリ容量
- Officeの有無
- Windowsの種類
- SSD搭載かどうか
検索条件が思い浮かばないものでも切り口が見えてくる
先ほどの例は、「パソコンだからそんなものだろう」と思うかもしれないが、切り口がまったく思い浮かばないようなものでも、ミエルカで検索意図を調査すれば、どのようなナビゲーションが必要か見えてくるという。
たとえば、以下の図は、伊豆半島にある「雲見」という地名の検索意図を調査したものだ。
これを見ると、「雲見」について調べている人が知りたがっているのは「温泉」「民宿」「ダイビング」、そのほかに「オートキャンプ」「釣り」などがあることがわかる。ここから、ナビゲーション構成を考えることができるというわけだ。
ファセットナビゲーションでやるべきこと
井上氏は、ファセットナビゲーションのページを作ったらやるべきこととして以下の2点を挙げた。
- 必ず内部リンクを設置する
- 「sitemap.xml」を使ってGoogleに送信
「sitemap.xml」は、サイト内のURLを記述するxml形式のファイルで、検索エンジンがサイト内のURLを集める手掛かりとなるものだ。サイトをGoogleにインデックスさせるためには送信しておく必要がある。
井上氏は、「記事コンテンツは検索ユーザーの気持ちを考えながら作ると思うが、商品一覧こそ検索意図を反映させる必要がある」と強調する。そのためには、まずユーザーがどのような切り口で商品を探しているのか見つけ、それを基に商品ページを改善する。それによって、アクセスやコンバージョンが増えると期待できる。
最後に井上氏は、セッションの内容を以下のようにまとめた。
① 適材適所へ分散
1ページでキーワードをすべて網羅するのではなく、ユーザーの検索意図に応じたページを作り、サイト全体でテーマを網羅する。
② スマホ時代のキーワード設計
順位が上がってもアクセスやコンバージョンが増えないキーワードもある。実際にスマートフォンなどで検索結果を確認して、キーワードに優先順位をつける。
③ ファセットナビゲーション
記事コンテンツは潜在層向け。今すぐ欲しいユーザー向けには、検索意図を反映した商品(カテゴリ)ページを作る。
- コンテンツ&SEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」
- Faber Company(ファベルカンパニー)
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