[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

ガジェットYouTuber「トバログ」の成功から学ぶ、アウトプットと影響力獲得のコツ

マーケターコラム、今回は明坂真太郎氏。YouTubeチャンネル「トバログ」の鳥羽さんへのインタビューを通して、アウトプットについて考えます。
明坂真太郎氏

こんにちは、明坂です。

突然ですが、みなさんは日々どんな情報発信をされていますでしょうか。

私は昔からパソコン関連機器やカメラなど、いわゆるガジェットを買うのが好きで、買った商品をレビューする動画を制作し、YouTubeチャンネルにアップをしています。チャンネル登録者数は2,000人行かない程度ですが、それでもガジェットメーカーからレビュー依頼を伴う新商品の提供がしばしばあったり、動画につくコメントで知らなかった情報が入ってきたりなど、一定の得るものがあります。

本コラムの連載などもそうですが、継続的なアウトプットの習慣をつけることで、ネタ探しのために今までなんの気無しにスルーしていた日常の情報がインプットに変化することや、読者からフィードバックをいただくことで新たなインプットを生むなど、メリットも多いです。

しかし、「継続的にアウトプットしましょう」と言うは易く行うは難しで、闇雲にアウトプットをするだけではなかなか継続することは難しいのではないでしょうか。アウトプットをしながら影響力を付け、新たなインプットなどにサイクルさせていくためにはコツが必要だと思います。

さて今回は、学生時代に自ら情報発信を始め、その後会社員をやりながら副業としてブログやYouTubeで情報発信を行い、その後独立され、現在登録者数約20万人のYouTubeチャンネル「トバログ」を運営されている鳥羽恒彰さんに、情報発信を継続するコツや影響力を育てるために考えていることなどを聞きました。

YouTubeチャンネル「トバログ」の鳥羽さん(左)に、明坂(右)が
Zoomでお話を伺った

メディア市場の状況や、プレイヤーの立場を知るところから立ち上がったブログ

―― 鳥羽さんはブログやYouTubeで情報発信をされていますが、どういった経緯で始められたのですか?

学生時代から発信活動はわりと好きで、最初は小学生の時に4コマ漫画を書いて、クラスの中で回すみたいな感じからスタートしています。

大学に入るちょっと前、mixiが流行っていた時期があって。mixiの「日記」っていう機能に、購入したイヤホンとか、今でいうガジェットと言われる電子機器たちを買ったよ、みたいな報告だけをアップしていました。大学に入ってから、職業としてブロガーっていうのがあるぞっていうのを聞いて、その流れでブログを始めて今に至る。という感じです。

―― 元々自分の興味からの自然な活動があって、その延長に今の活動もあるんですね。

そうですね。芸能人はブログで月10万円以上稼いでいるらしいって友達から聞いて、ブログってそんなに収益に繋がるのかって思いました。ガジェットを紹介して広告収入が得られて、それでまたガジェットが買えるから、もう永久機関じゃんみたいな。ブロガーを始めたのはそんなきっかけでした。

その後に、エンガジェットっていうメディアがあって、そこにインターンシップをさせてもらったりするところに繋がっていくんですけど。

―― 学生時代からブロガーを始めて、就職はされたんですか?

エンガジェットの編集長に、仲の良かったPR会社を紹介してもらって、そこに就職しました。PR会社ではプレスリリースを書いたり、PR関係の仕事をしたりしていましたね。

―― 働きながらブロガーは副業として続けていた?

当時、ブロガーってバズワードというか、人気の職業になりつつあったので、そこで独立していきたいなっていうのはずっと考えていたので、続けていました。プレスリリースとかを書くPR会社って、メディアと比べると対極の存在だと思うんですけど、両方知っていた方が最終的に強いんじゃないか、みたいなところもあって。

―― PR会社だと、多くの人に発信をして、どうレスポンスを得ていくか設計する仕事だと思うので、発信する能力がつきますもんね。

そうですね。どういう感じでプレスリリースを出すと、メディアや企業の“中の人”が受け取りやすいか、記事にしやすいかとか、なんとなくわかったりもするんで。ブロガーというメディア側の人間としても、PR会社に入った効果はありました。

受け手の拡大と市場の行く末を考えて展開したYouTube

―― ブログから発展して、YouTubeに発信を広げていこうと考えられたきっかけは?

ブロガー時代、海外旅行によく行っていて、行く先々で「仕事はなんだ?」みたいに聞かれた時に、「ブロガーだ」って答えたりすると、「日本語で書かれても全くわかんないから、YouTubeやれよ」みたいに言われました。確かにブログって、見る人がその言語の国に限定されるけど、動画だったら言語の壁が越えやすいんだな、みたいに感じて、じゃあYouTubeもやってみようって思ったのが1つですね。

―― ガジェットレビューなんかは海外からもよく見られますもんね。

そうですね。もう1つは、その頃、周りのブロガーがアドセンス(広告掲載による収益モデル)からアフィリエイト(紹介した商品購入による手数料モデル)へと向かっていくような、直接お金を稼ぐ方にシフトしていった時期で、なんとなくその風潮に合わなかった人たちが、YouTubeに移行するみたいな感じになって。その人たちが、エンタメじゃない方向でYouTubeをやっているのをみて、「これもありだな、自分でもできそう」って思った。それもきっかけの1つですね。

周りのブロガーがアフィリエイトに向かうなか、
鳥羽さんはYouTubeチャンネル「トバログ」の運用を開始した

―― 確かにアフィリエイト重視になると、面白い記事を書いて閲覧者を増やすっていうところから、方向性が変わりそうですね。

そうですね。刈り取り型みたいな感じで、なんか焼き畑っぽい。このまま行くと、もうこの土壌は消えるよなっていう雰囲気もあったんで、そこから手を引くっていう感じもありましたね。

―― 動画制作は元々スキルがあったんですか?

いえ、ほぼゼロからですね。ブログでは、割と写真も綺麗にして、頑張って世界観を作ったりしていたんで、そこに追いつく必要があってYouTubeを始めた当初は試行錯誤しました。たとえば色の作り方でも、この色にするなら新しいカメラを買わないといけないとか。音が大事らしいからそういう機材を選んだり、勉強したりはここから始めた感じです。

YouTubeを始めた当初は、ブログでの世界観を壊さないよう苦労したという鳥羽さん

―― どうやって学習をしたんですか?

当時も今みたいに、YouTubeをやっている人のなかにもカメラ系の人や、海外でも動画を作っている人がいたんで、“YouTubeの始め方”的な動画はたくさんありましたね。あとは、kimimaroさんっていう人がいるんですけど、noteでYouTube動画をマーケティング戦略的に逆算して作っていく手法をアップしていて。かなりやり方がブログと近かったんで、その記事を参考にしつつ、マーケティング的、戦略的に伸ばしていったっていう感じです。

拡大の戦略はユニークな世界観と、スタートの行動力

―― トバログは現在登録者数20万人弱だと思うのですが、その規模にするために、どういうことを考えられたんですか?

今はたぶん、当初の戦略そのままでは難しいんですけど、当時はガジェットYouTuberの数もそんなに多くなかったんで、動画をアップすればある程度見られるっていうのはありました。

そのなかでも、シンプル・ミニマルみたいな、いわゆる雑誌のコンテンツ風なYouTube動画ってあんまりなかったんですよね。Vlogみたいなものでおしゃれに見せるっていうコンテンツはあるけど、ガジェットでおしゃれに見せるっていうのは、そこまで主流じゃなかったんです。それでまず、雑誌とかブログのテキスト風のおしゃれな世界観を動画にもっていきたいっていうのがあって。

―― 今はおしゃれなガジェットYouTubeが多いですよね。

そうですね。当時はあまりなかったけれど、ガジェットでおしゃれにしてみようということで、サムネとかも日本語をあんまり入れずに、英語でバン!って入れて。コテコテしないスタイルでっていう世界観を、その時はすごく意識していましたね。もう1つが、今もやっているんですけど、カバンの中身とかルームツアーみたいに、コラム的な企画。

時事ネタじゃない、ストックされて心に残るようなコンテンツを定期的に出すっていうのは心がけています。“ガジェットでおしゃれにする”っていうことと、“ストックされて心に残るコンテンツ”、その両軸で考えていったっていう感じですね。

あとは、最初の方って投稿頻度が大事だと思うんで、1日1本は必ずあげるようにして、とりあえず100本ぐらい作ってからその先を考えることにした。これもブログ的な考え方なんですけど、 数を作って伸びた芽を育てていくのを意識していましたね。その3つぐらいですかね、考えていたのは。

鳥羽さんのお話に真剣に耳を傾ける明坂

―― 投稿頻度が大事とはよく言われていますが、とはいえクオリティも担保しないといけないと思います。どうやってアウトプットをしていたのですか?

最初の方は、ブログで伸びたネタをそのままYouTubeにもってくる感じだったんですけど、今ではその手法は使えないので、日々足を使って探していますね。

ネット上で人気になっているものって、すでに誰かしらが作ったコンテンツを元にしているじゃないですか。「iPadがいいぞ」みたいな動画って無限にあるし、「充電器だったらAnkerがいい、CIOがいい」とかもたくさんありますけど、その分野にまだない情報を拾いたいってなると、町を歩く必要がある。

たとえば、東急ハンズとかヨドバシカメラの1階に並んでいるディスプレイをみて、「今まで携帯コーナーだったのにゲーミングPCコーナーになっているぞ」とか、そういう地味だけれど足を使って、面白いなって思ったものをネタとしてもってくるみたいなのは意識しています。

雑誌もすごく参考にしていますね。「Casa BRUTUS」とか、ちょっとミニマルでどことなく世界観がある「WIRED」みたいなのとか。

YouTubeはフェスみたいなもの

―― アイデアをアウトプットしては改善して、みたいなことが積もり積もって20万人に伸びていったみたいな感じですか?

YouTubeで伸ばすっていうのは、ニッチでもロングテールをとっていくSEOやブログの考え方とは逆な気がしていて、いかに有名なコンテンツ群のなかに自分を置くかが大事だと思います。チャンネル登録者が少なくても、Apple製品のことだけやっていると、ふいに伸びることがあるし。家具やインテリアの話でも、「無印良品」とか「イケア」のワードを入れると一気に伸びたりします。

「多くの視聴者の興味関心の1つとして自分のコンテンツを置くことが大事だ」って気づいたんで、10万人までは割と意識してそうしたコンテンツを出していましたね。iPhone関連やルームツアー、カバンの中身、DIY、無印とか、そういうビッグワードを重点的に出していくみたいな。

―― YouTubeはいきなりビッグキーワードを狙っても、ある程度流入を得る機会があるという意識だと思うのですが、そのなかでの工夫はあったんですか?

SEOのロングテール戦略って、たとえばラーメン店なら、ちょっとニッチな駅に個人経営の奇抜なラーメン屋を構えて、人気が出たら渋谷のような大都市の方にどんどん店舗を出して拡げていく、みたいなイメージだと思うんですけど。YouTubeって、 東京ドームシティ(イベントホール)でのラーメンフェスがあったら、そのなかに自分のラーメン屋を出店しようっていう考え方に近くて。

そのラーメンフェスに出店する時には、ラーメンっていうカテゴリーは決まっているんだけど、「普通のラーメンだと差別化しづらいから、白いラーメンを作ってみようかな」みたいな、フェスにいるラーメン好きな人たちの興味をひいて自分の店に来てもらう、そんな工夫が必要なんじゃないかな。

YouTubeではどのような工夫をすべきかをわかりやすく語ってくれた鳥羽さん(左)
と興味津々な明坂(右)

―― わかりやすいですね、その例え。

トバログのイメージだと、ガジェットジャンルではあるんだけど「背景は白」とか、シンプル・ミニマルな雰囲気に統一することで、ガジェットのなかでもちょっとクリーンなイメージのものが好きな人に、より来てもらいやすい印象付けをする、そんな工夫をしているんです。

アルゴリズムに左右されないよう強固なブランドを築く

―― 今後も、個人を含めてさまざまなメディアが生まれ、成長していくと思いますが、生き残るため、発展していくための戦略はどう考えていますか?

自分自身がブランドになってくみたいな、その媒体自体がブランド化されてくみたいなところが1番重要かなと思っています。いっときすごい視聴回数が伸びたりPVが上がったりしても、覚えてもらえないとそれまでじゃないですか。アルゴリズムが変わった瞬間倒れちゃう。

10年間くらいそういう人たちをみてきて、生き残っている人ってやっぱり自分自身がブランド化されているというか、独自の方向性のコンテンツを出しています。だから、世界観をいかに守って、何で突出していくかを、今一番考えていますね。

たとえば、賞味期限が長い、突出したコンテンツを作るために、カバンの中身やルームツアーの取材をするなかで、その人がこの仕事に就いたきっかけは何か、どういうことがあって会社員を辞めてこうなったのか、みたいなことをあえて聞くようにしています。

そういったコンテンツを、自分自身も会社員で辛い時とか、フリーになったタイミングでみて、今でも覚えていたりするんで。たくさんの人に、そういうタイミングで視聴してもらえるのがトバログのコンテンツだったらいいな、と思います。

―― 「自分はこうだ」とか、「こんなふうに他の人に覚えてもらいたい」っていう、確固たるものをまず自分のなかでもっておく、みたいなことでしょうか?

そうですね。発信し始めはたぶん難しいんですけど、しばらく経てば、「何が自分にフィットして、視聴者も面白いと思ってもらえるか」がみつかると思います。ぼくは、トバログという媒体はどういう人格をもっていて、どういう方向性で、どんなジャンルを作っていくのかを全部書き出してあるガイドラインみたいなのを作ってあります。

それを作ることで、迷った時に「これはトバログっぽくないな」とか考えながらコンテンツを作っていけるので、結果的にブランドとして認知されていくのかなって思います。

トバログの世界観をいかに守って、何で突出していくかを追求している鳥羽さん
◇◇◇

発信のその先を見据える

鳥羽さんに経験の中で感じたリアルな感情や戦略を語っていただきましたが、私自身、定期的にコラムをアウトプットするようになってからというもの、さらなるインプットだけでなく、新たな出会いや機会につながることも多くありました。

YouTubeやGoogleのアルゴリズムは日々変化していきますし、それ以上にトレンドの流れは速いですが、今はこのネタが伸びるそうだ、今はショート動画がいいらしい、といった表層的なこともさることながら、継続的にPDCAすることの重要さ、そして継続した発信を経てブランドを築いてくという考え方こそが重要であると改めて感じました。

今回は比較的個人の発信という視点から深掘りしましたが、企業やサービスからの発信においても本質は同じだと思います。継続的な発信には相応にカロリーもかかるのですが、改めて前向きに取り組むのがいいなと感じたインタビューでした。

本テーマやそれ以外についてもくわしく聞きたいこと、などあればぜひお気軽に私のTwitterアカウントへリプライをいただければ幸いです。また、余談ですが私もほそぼそと日々ガジェットレビュー動画をアップしていますので、ガジェットに興味がある方は良ければごらんください(ていねいな暮らしガジェット)。

鳥羽恒彰(Tsuneaki Toba)

モノが好きなYouTuber / ブロガー。千葉商科大学を卒業後、PR会社に入社し、IT関連企業を中心にPR業務に従事。M&A仲介会社のマーケティング部署の立ち上げを経験した後、2018年よりブログ『トバログ』で独立。現在は約20万人のYouTuberとして活動中。自称ミニマリストの対岸にいる人

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