”景品表示法”違反事例をわかりやすく解説! 広告やキャンペーンは要注意
Web担当者であれば「景品表示法」は、一度は耳にしたことがあるだろう。しかし、規制対象となる広告や、気をつけるべき点について把握できているだろうか? 景品表示法に違反した場合、大きく報道されレピュテーションリスクを抱えることになる、と注意喚起するのは法律事務所ZeLo・外国法共同事業(以下、法律事務所ZeLo)の弁護士・伊藤敬之氏だ。
消費者庁表示対策課への出向経験がある伊藤弁護士が「Web担当者Forum ミーティング2022 秋」に登壇。最低限おさえておきたい景品表示法の基礎や、気をつけるべき点などを実際の事例を用いて解説した。
景品表示法は消費者がより良い商品・サービスを選ぶ環境を守るための規制
伊藤弁護士は法律事務所ZeLoにて、主にジェネラル・コーポレート全般や不当表示などの分野を扱っている。2020年春からの2年間は消費者庁表示対策課に出向し、景品・表示調査官として不当表示の調査を行っていた。
景品表示法とはどのような法律なのだろうか。正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」であり、略称として「景品表示法」や「景表法」と呼ばれる(以下、「景品表示法」とする)。景品表示法は、商品やサービスを実際より良く見せる表示を規制したり、過大な景品を制限したりすることによって、消費者がより良い商品・サービスを選ぶ環境を守るための規制だ。規制内容は大きく、「表示規制」と「景品規制」に分かれるが、本セッションでは表示規制について解説をしていく。
景品表示法ではどのような広告表示が規制されるのか
景品表示法が禁止する広告表示は、以下の3つに分類される。
- 優良誤認表示:商品・サービスの「内容」についての不当表示
- 有利誤認表示:商品・サービスの「価格など取引条件」についての不当表示
- 指定告示:その他、誤認されるおそれがあると認められ、内閣総理大臣が指定する表示
いずれも「表示」が規制対象となっている。表示は、顧客を誘引するための手段として用いられる広告・表示を幅広く指す。具体的には、消費者の目に触れる「商品パッケージ」「チラシ」「Web広告」「テレビCM」などに加え、「セールストーク」のような口頭での説明も規制対象となる。
景品表示法で処罰を受けるのは、供給主体性と表示主体性を満たす事業者
伊藤弁護士は続いて、景品表示法で処罰をうける対象や景品表示法の規制対象について説明。商品やサービスの広告を作成する場合、誰が景品表示法上の規制対象となるのかという点が重要だ。景品表示法の規制対象となるのは、以下2点を満たす事業者だという。
- 供給主体性:問題となる商品・サービスを供給しているか
- 表示主体性:表示内容の決定に関わったか
それぞれ、詳しく具体例とともにみていこう。
1. 供給主体性
供給主体性とは、問題となる商品やサービスを供給(販売や製造)していることを意味し、メーカーや小売業者などがこれに該当する。伊藤弁護士は具体例として2つのケースを示した。
上記のスライドの左図は、メーカーが消費者に商品を販売しているが、広告を作成しているのは広告代理店というケースだ。この場合、広告を作成したのは広告代理店だが、広告代理店は景品表示法による規制対象にはならない。なぜなら、広告代理店は商品の販売や製造をしておらず、供給主体ではないからだ。右図は、メーカーが、新聞社や出版社に自社商品の広告掲載を依頼しているケースだ。この場合も同様で、新聞社や出版社は商品の販売や製造をしておらず、供給主体ではないため、景品表示法は適用されない。
両方のケースで、景品表示法の適用を受けるのは広告主である「メーカー」だ。メーカーは自社の商品の販売や製造をしており、供給主体性があるためだ。
伊藤弁護士は2つ目の具体例として、フランチャイズ本部と加盟するコンビニ店舗の場合を示した。
消費者に商品を販売するのは各コンビニ店舗だ。たとえば、おにぎりのような、全店舗共通で新商品が発売される場合、フランチャイズ本部が広告を作成し、テレビCMやウェブ広告を行うのが一般的だろう。それを示したのが上の図だ。
この場合、フランチャイズ本部は直接の売主ではないが、フランチャイズ本部に供給主体性があるとみなされる。フランチャイズ本部は各コンビニ店舗から売上に応じたロイヤリティを受領するなどしており、フランチャイズ本部が各コンビニ店舗を通じて商品を供給しているとみることができるため、供給主体性があると判断されるのだ。
2. 表示主体性
続いて、伊藤弁護士は「表示主体性」について解説をした。表示主体性は、表示内容の決定に関与した事業者に認められる。表示の決定に一切関与していない場合、景品表示法では処罰されない。どのような場合に表示主体性があると認められるかを示したのが、以下の3つだ。
- 自らまたは他の者と共同して表示内容を決定した場合
- 他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者
- 他の事業者にその決定を委ねた事業者
伊藤弁護士はそれぞれ、具体例を交えて、詳しく説明していった。
自らまたは他の者と共同して表示内容を決定した場合
自分で広告表示を作成した、あるいは広告代理店に依頼して広告表示を作成した場合、当然ながら表示主体性が認められる。
他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者
たとえば、あるセレクトショップがセーターを仕入れ、仕入先から「カシミヤ100%です」と説明を受けた。それを信じて広告表示に「注目の品 カシミヤ100%」と表示したが、実際にはカシミヤ100%ではなかったケースだ。
セレクトショップは「騙された」と感じるかもしれない。しかし、このケースでも、セレクトショップが表示内容の決定に関与したとして表示主体性が認められ、景品表示法の規制対象となる。仕入れ先の説明を鵜呑みにするのではなく、根拠を確認するなど慎重な対応が必要になる。
他の事業者に表示内容の決定を委ねた事業者
表示内容の決定に関与したら適用対象になるのであれば、ほかの事業者に丸投げして処罰のリスクを回避しようと思うかもしれない。しかし、「他の者に表示内容の決定を委ねた」事業者にも表示主体性が認められ、景品表示法の適用対象となる。自社の商品に関する広告は、自社で不当表示がないか管理する必要がある。
消費者庁も問題視するアフィリエイト広告。悪質なアフィリエイト広告で広告主が処罰対象となるケースも
景品表示法の適用対象をめぐり、近年問題となってきているのがアフィリエイト広告だという。アフィリエイト広告とは、広告主である販売者の商品を、アフィリエイターがブログやSNSなどを通して紹介し、販売する広告モデルを指す。アフィリエイターは商品の販売額や件数に応じて成果報酬を受け取る。
なぜ、近年アフィリエイト広告が問題となっているかというと、アフィリエイターが過激な広告を掲載し、景品表示法に違反するケースが多くなっているからだ。販売者側においても、多数のアフィリエイターに依頼を行っていることで、アフィリエイト広告を管理し切れていない実態があり、景品表示法の違反が増えている。
では、アフィリエイト広告では、誰が景品表示法の規制対象となるのか。アフィリエイターは広告を作成しているだけなので、供給主体性は認められず、景品表示法の適用はない。一方、販売者(広告主)は、商品を販売しているため供給主体性が認められ、表示主体性も、アフィリエイト広告の内容をきちんと確認していなかったとしても、「アフィリエイターと共同して表示を決定した」または「他の事業者にその決定を委ねた」として認められる。よって、販売者(広告主)に景品表示法が適用される。つまり、悪質なアフィリエイト広告で、広告主が処罰対象となるのだ。
実際にアフィリエイトサイトにおける広告で、広告主が措置命令を受けた事例も出てきている。伊藤弁護士によると「消費者庁もアフィリエイト広告をかなり問題視している」といい、今後は規制の強まりが予想される。アフィリエイト広告を利用する際は、不当表示にならないよう、十分な注意が必要だ。
どのような表示が禁止されている? 事例で学ぶ、優良誤認表示
セッションは「景品表示法はどのような表示を禁止しているか」という点に移っていく。不当表示には3つの分類があるが、その1つ目が優良誤認表示だ。優良誤認表示とは、「商品やサービスの品質、規格その他の内容についての不当表示」のことだ。優良誤認表示をより細かく分類すると、以下2つがあり、伊藤弁護士は具体例とともに紹介した。
実際のものよりも著しく優良であると示す表示
例)セーターのカシミヤ混用率が実際は80%程度だが、「カシミヤ100%」と表示した。
事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示
例)「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた。事実であれば問題ないが、事実と異なれば不当表示となる。
優良誤認表示であるとして措置命令がなされた事例
最近、優良誤認表示として措置命令がなされた事例をみてみよう。令和4年9月に措置命令が行われた、「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」の事例では、商品パッケージに「厳選マスクメロン」「100% MELON TASTE」などと、あたかも原材料の大部分はメロン果汁であるかのように表示していた。実際は、メロン果汁は2%に過ぎず、優良誤認表示であると判断された。
不実証広告規制により措置命令がなされた事例
優良誤認表示に関連して、不実証広告規制についても知っておきたい。不実証広告規制とは、端的に言うと「商品の性能、効果を記載する際は、その根拠資料を持たなければならない」という規制だ。
具体例をみていこう。今年、不実証広告規制により不当表示と認定された、空間除菌をうたう「クレベリン」の事例だ。パッケージに「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」と表示されており、消費者は「この商品を部屋に置けば空間に浮かんでいるウイルスや菌を除菌して、部屋の空気がきれいになる」と認識するだろう。問題はこの商品にそういった性能があるのかだ。そこで登場するのが、不実証広告規制だ。
不実証広告規制では、消費者庁は、商品・サービスの効果、性能に関する表示について優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされている。事業者が資料を提出しない、または資料が提出されても、表示の裏付け資料と認められない場合は不当表示となる。不実証広告規制が使われる場合、書類の提出期限は15日後と非常にタイトなので、事前に資料を準備しておかないと対応は難しい。
「クレベリン」の事例では、消費者庁が事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求め、資料は提出されたが、根拠としては不十分であったとして優良誤認表示であるとみなされた。
最近では不実証広告規制で根拠資料の提出を求められるケースが非常に増えています。商品・サービスの性能・効果を記載する場合には、裏付けとなる資料・合理的な根拠があるかなど、事前の確認・準備が重要です(伊藤弁護士)
有利誤認表示のNG例。二重価格表示や期間限定表示をする際の注意点をケーススタディで解説
景品表示法が禁止する表示内容の2つ目は、有利誤認表示だ。有利誤認表示とは「商品・サービスの価格、取引条件、内容量などの面で、実際よりも有利であると偽る表示」のこと。具体的には下記3つのケースがあげられる。
- 実際の販売価格よりも安い価格を表示する場合
- 販売価格が、過去の販売価格や競争事業者の販売価格等として安いとの印象を与える表示を行っているが、例えば、次のような理由のために実際は安くない場合
- ア)比較に用いた販売価格が実際と異なっているとき。
- イ)商品又は役務の比較内容や適用条件が異なるものの販売価格を比較に用いているとき。
- その他、販売価格が安いとの印象を与える表示を行っているが、実際は安くない場合
具体例を見ていこう。
1. 実際の販売価格よりも安い価格を表示する場合
例)実際には別途システム利用料が必要にも関わらず、あたかも無料でマッチングサービスを利用できるかのように表示した。
2-イ 商品又は役務の比較内容や適用条件が異なるものの販売価格を比較に用いているとき
例)自社に不利となる他社の割引サービスがあり、それを除外して料金比較を行い、その上であたかも「自社のほうが安い」かのように表示した。比較方法が不適切なケースだ。
有利誤認表示で問題となりやすい二重価格表示
その他、有利誤認表示で問題となりやすいのが二重価格表示だ。二重価格表示とは、事業者が自己の販売価格よりも高い他の価格(比較対照価格)を併記して表示することだ。二重価格表示を行う場合の注意点は、自社の販売価格はもちろん、比較対照として記載する価格も適切かつ正確に記載する必要がある点だ。例えば、次のようなケースは、比較対照価格が不適切であり、有利誤認表示にあたる。
例)「メーカー希望小売価格8万円が今なら5万円」と表示しているが、実際にはメーカー希望小売価格が存在しない場合。
メーカー希望小売価格の二重表示はよく行われているものだ。正しいメーカー希望小売価格を記載していれば、問題はない。しかし、特に食品や文房具などのロングセラー商品の場合、小売事業者の知らないうちにメーカー希望小売価格が変更もしくは廃止されていることがある。伊藤弁護士によると、メーカー希望小売価格の廃止を知らないまま小売事業者が二重価格表示を続けた結果、消費者庁から措置命令を受けたケースもあるという。もうひとつ例を見てみよう。
例)「当店通常価格1万円の品が3000円」と表示しているが、当該「通常価格」での販売期間が直前の3週間のみであった場合。
こちらも有利誤認表示にあたる。「通常価格」と表示するためには、ガイドラインなどで細かい要件が定められている。このケースではその要件を満たしていないため、有利誤認表示にあたる。ガイドラインの詳細は省くが、簡単に言うと、直近の8週間(約2ヶ月間)のうち半分以上の期間に実際に販売した価格でないと「通常価格」と表示してはいけない。通常価格と表示するには4週間以上の販売期間が必要だが、3週間の販売期間しかないため、違反となってしまう。
キャンペーン実施時に注意したい期間限定表示
二重価格表示の一種として、期間限定表示がある。期間限定表示でWeb担当者に注意してほしいのは、「キャンペーンの延長」に関する点だ。以下のケーススタディを見てみよう。
Q. キャンペーン期間中に購入すれば、1万円の商品を8000円で購入できるキャンペーンを実施する場合、そのようなキャンペーン表示の延長を行うことができますか?
A. キャンペーンの期間の延長は有利誤認表示になる可能性が高い。キャンペーン期間が明示されている場合、消費者は、その期間に限って当該商品を安く購入できると信じて購入することになり、キャンペーン期間後も安く購入できる状態が続けば、消費者の信頼を害することになるため。
Q. キャンペーン終了後に、少しだけ間を空けて同じキャンペーンを実施していいですか?
A. 「相当の期間」を空ければ再度キャンペーンを実施しても問題ない。しかし、その間隔が短いと実質的には継続している状態となり消費者の信頼を害すため、有利誤認表示と認定される可能性が高い。「相当の期間」は具体的にはどの程度であるかは難しい問題だが、目安としてはキャンペーン期間と同じくらい間隔を空けた方がよい。例えば、1ヶ月間のキャンペーンであれば、1ヶ月程度間隔を空けた方がよい。
期間限定表示について措置命令がなされた事例も見ておこう。下のスライドにある事例では、「今だけ」を強調して返金保証キャンペーンを実施していたが、実際には約5年間、キャンペーンを事実上継続していた。そのため、有利誤認表示であると判断された。「期間限定表示の措置命令は近年増えているので特に注意が必要です」と、伊藤弁護士。
おとり広告で大きなニュースに。景品表示法に違反するとレピュテーションリスクを抱えることも
冒頭でも触れたが、景品表示法で規定する不当な表示は3つに分類され、有利誤認表示、優良誤認表示のほかに、「指定告示」がある。指定告示は一般消費者を誤認させる表示のことだが、6つの告示が定められており、そのひとつが「おとり広告に関する表示」だ。おとり広告とは、実際には販売できない/販売する意思がないにもかかわらず、購入できるかのように示し、消費者を呼び寄せる広告のことだ。
最近、大きなニュースになった事案として、スシローのおとり広告があげられる。この件では、「新物!濃厚うに包み100円(税込110円)」、「9月8日(水)~9月20日(月・祝)まで!売切御免!」などと表示をしていたが、実際には在庫不足で、開店と同時に店へ行っても当該商品が食べられない店舗が多数あったため、おとり広告であると判断された。
新聞やテレビで大きく報道されていたため、目にされた方も多いと思います。景品表示法に違反した場合、このように報道され、レピュテーションリスク(企業に対するネガティブな評価・評判が広まり、経営に影響を及ぼすリスクのこと)を抱える場合もあります(伊藤弁護士)
景品表示法に違反するとどうなる? 場合によっては極めて大きなリスクに
ここまで景品表示法で禁止される表示をみてきたが、景品表示法に違反するとどのように調査が入り、処罰されるのか、簡単に見てみよう。
上のフロー図は景品表示法に違反した場合の流れだ。まずは消費者庁が、都道府県や公正取引委員会と連携して調査を行う。調査は、ある日突然会社に連絡が来て開始されるという。調査では質問への回答や資料の提出を求められる。フロー図の矢印を右に進んでいくと、「調査」後に分岐があり、「弁明の機会の付与」と「指導」に分かれる。「指導」となれば、行政指導として表示を改善して注意するようにという指導書が渡され、そこで調査は終了となり、報道されることもない。
「弁明の機会の付与」に進むと、その先の措置命令、課徴金納付命令に進むリスクが高くなる。措置命令がなされると、不当表示に関する新聞社告の掲載を命じられるほか、消費者庁が記者会見を開き、事実が公表される。場合によっては、メディアで大きく報道されることもあるので、会社への影響は大きくなる。
では、具体的に何件くらい調査が行われているのか。調査件数は年間約500~600件で、措置命令の件数は年間約30~50件だ。調査を受けたうち、約1割が措置命令を受けていることになる。また、どのような不当表示が多いかというと、措置命令のうち大半が優良誤認表示に関するものだ。その中でもおよそ7~8割が不実証広告規制を用いた命令となっているので、商品の効果・性能に関する表示は特に注意が必要だ。
伊藤弁護士は最後に、「景品表示法に違反した場合、措置命令が実施され、それが社会一般に公表されるなど、リスクが極めて大きい」と改めて注意喚起し、セッションを終えた。
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