SEOの専門性がなければ生き残れない ―― 2022年のテクニカルSEO戦略トップ4(後編)
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。 →まず前編を読んでおく
この記事では、未来を見据えたSEOの戦略について学んでいる。2022年以降、特にポイントとなるのが、次の4つだ:
- マルチメディアファースト(前編)
- ページ表示速度だけでなくセキュリティも
- SEO専門性
- ボーダーレスで国際的なSEO
前編では、グーグルのアルゴリズムの進化やGoogleレンズといった新機能により、画像や動画、音声などのマルチメディアの最適化が、今後のSEO戦略において重要となることを説明した。
後編となる今回は、残り3つの戦略について詳しく見ていこう。特に重要となるのが「SEO専門性」だ。2022年以降は、ユーザーの目的・意図を考慮したSEO施策ができるチームを編成できるかどうかがカギとなる。
2022年のテクニカルSEO戦略②
ページ表示速度だけでなくセキュリティも
- セキュリティ
- ページ表示速度
どちらも確立された検索順位決定要因だ。2021年にコア ウェブ バイタル(Core Web Vitals、CWV)が強力に推し進められたことで、多くの人はこの2つの要素が密接に関連し合っていることを理解するようになった。
個々のアカウントレベルでは、サーバーセキュリティが最適化されたことで、私自身も複数のクライアントのページパフォーマンスが向上するのを目にした。より大きな視点で見ると、ホスティングプラットフォームのWixはCWVのパフォーマンスが前年比で3倍になり、HTTP/2によるSSL通信処理の高速化が重要な役割を果たした。
グーグルは今後1年にわたり、各製品や検索サービスのセキュリティを優先させると思われる。Chromeはセキュリティとプライバシーツールの強化を約束しており、
- iframe
- クロスサイトナビゲーション
におけるセキュリティ機能などのアップデートにより、ユーザーがリンク間を移動したり特定の機能を使用したりする場合のチェックを増やす計画だ。
そのため最高水準のセキュリティを確保しているサイトは、今後1年の間に、次のことで競争上の優位に立てる可能性がある:
- 速度
- ページ体験
- コンバージョン
さらに、2022年2月にはデスクトップでのページ体験を検索順位決定要因に組み込むアップデートが実施されたため、はるかに多くの領域でその影響が見られるかもしれない。
こうした傾向に加えて、Facebookやグーグルなどの大手IT企業が高速なHTTP/3を熱心に導入していることからも、過去を引きずっているIT企業はユーザーやボットの期待に遅れずについていくのに苦戦すると予想される。
最新のHTTPプロトコルであるHTTP/3は、2021年にウェブ全体で利用が5倍に増加し、現在ではドメイン名の約25%で使われている。このプロトコルはCloudflareなど多くの大手クラウドプロバイダーで導入されているが、まだ標準とまではなっていない。
その利点を最大限活用したい人は、メインサーバーやCDNを更新したり有効にしたりする必要があるかもしれない。また、今後1年の間にCDNやサーバーの新たなパートナーを検討している場合は、これが決め手になるはずだ。
2022年のテクニカルSEO戦略③
SEO専門性 ―― グーグルのチャネル多様性に対応
グーグルは、ユーザーが検索結果から専門チャネルやアプリへスムーズに移動できるようにし続けている。その過程で、より動的でニッチなSERPを生み出すことにより、SEOの専門性を高めようとしている。
ユーザー体験の観点から見ると、これによりモバイルに対応したリッチなSERPが生み出され、ユーザーはGoogleマップなどの高機能アプリやGoogle Travelなどの専門チャネルに直接誘導される。
さらにグーグルは、ユーザーが必要としている情報にアクセスし、それらの情報をできるだけコンテキストに合わせた方法で組み合わせる。グーグルは、自社サービスからならば登録データをもとにより多くの情報を把握できる。そのためグーグルにとって、「これまで以上にきめ細かな検索結果を提供する」という目的を果たすには、既存のチャネルを強化してデータを連携させることが不可欠になる。
この傾向は以前からあったもので、それはショッピングやホテルなど取引型の業種が対象だった。しかしグーグルはマルチモダリティ(多様式)に取り組んでいる。そのため、トランザクショナルクエリ以外のクエリにおいても、この傾向がより一般的になる可能性が高い。つまり、SERPでのビジビリティを最大化するために、SEOの取り組みとして最も関連性の高いチャネルごとにプロファイルとパフォーマンスを最適化しなければならないということだ。
各チャネルは目まぐるしく変化するため、最低限の影響を生み出すうえで、SEOジェネラリズム(万人向けのSEO)は影響を及ぼすだけのクリティカルマス※を生み出せる可能性がますます低くなりつつある。代わりに、SEOスペシャリズム(ユーザーの目的、意図を考慮したSEO)を備えたチームを編成することで、最大の効果が得られる可能性が高い。それが「SEO専門性」だ。
たとえばローカル在庫広告を見ると、複数のチャネルの最適化が、複雑で価値の高い検索機能に集約されていることがわかる。このGoogleショッピングの機能は2021年に導入されたもので、無料または有料で利用でき、ユーザーは近くの店舗に在庫がある商品を検索できる。
このサービスにおいてグーグルは、次のデータやコンテンツを利用して、ユーザーの必要なときに情報を表示する:
- ウェブサイト
- Googleビジネスプロフィール
- Googleマップ
- Google Merchant Center
ローカル在庫広告を継続的に最適化するには、これらの各チャネルに関する専門知識とSEOのスキルセットを組み合わせる必要がある。
つまり、マルチモーダル検索の進化に伴い、最高のパフォーマンスを実現するには、多才なSEOチームを編成することが不可欠となる。検索におけるビジネス目標の実現に向けて、次のように動いてほしい:
- 社内でチャネルのスペシャリストを育成
- エージェンシーやフリーランスのサポートを通じて外部の商品エキスパートを関与させる
2022年のテクニカルSEO戦略④ ボーダーレスで国際的なSEO
今後1年の間に、国際的(多地域に向けた)SEOの大きな原動力になる要因は、次の3つだ:
- ボーダーレスなEコマースの興隆
- AIを利用した翻訳ツールの成熟
- MUMのリリース
ボーダーレスなEコマースについて詳しく見ていこう。
ボーダーレスなEコマース
実店舗のビジネスは依然として、次の2つに大きな影響を及ぼす:
- ローカルSEO
- ローカルパックSERP
しかしデジタルの加速により、私たちのデジタル体験は大きく変化した。 ビジネスの物理的な場所、通貨、タイムゾーンの関連性が変化し、ブランドがグローバル展開するための障壁が大幅に下がっている。消費者は、ますます国外の小売業者から購入することを受け入れる(そして多くの場合、期待する)ようになっている。ある調査では、次のような結果が出た:
国外の売り手から購入してもかまわないと考える消費者は、2016年には全体の約40%と限定的だったが、2021年には55%に増加した。
Shopifyは2021年9月、越境Eコマースに必要なツールを一元管理できる新ソリューションShopify Marketsを発表した。同社がこのグローバルな小売トレンドと売り手にとっての可能性について自信に満ちているということは、この分野で今後数か月にわたって競争が過熱する可能性が高いということだ。
SEO担当者としての私たちは、無料のGoogle Merchant Centerリスティングなど、低コストで摩擦の少ない市場参入チャネルと併せて、試行を重ねた国際的なSEO戦術を検討しよう。
今回は、次のケースにおいてのポイントを紹介する:
- 大手マーケットプレイス
- アジア新興市場
ケース1 大手マーケットプレイス
国際的に事業を拡大するため、大手マーケットプレイスでの販売を検討することが多いだろう。たとえば、次のようなサービスだ:
- Amazon
- Wish
- AliExpress
- eBay
こうした大手マーケットプレイスを利用する場合には、次の2つを最適化し、新規顧客との信頼関係を構築しよう:
- ランディングページ
- オンサイトEコマースのE-A-T(専門性・権威性・信頼性)
ケース2 アジア新興市場
アジアなど新興市場の販売を考えている場合は、消費者のためにモバイルファーストを心がけてほしい。
先進国でスマートフォンユーザーが多いことはもちろん、新興国では良好ではない通信速度でのスマートフォンが主なインターネットアクセスである場合もまだまだあり、そうした地域の人口は非常に多いことも忘れてはいけない。
まとめ
MUMの成熟に伴い、これまで以上にさまざまなタイプのコンテンツがウェブの至る所から現れてくるはずだ。 しかし誰にとっても、次の2つが勝負を決める:
- 速度
- セキュリティの向上
SERP機能がもっと重層的になれば、SEOの重要性を証明できる。また、ボーダーレスな顧客基盤を構築すれば、変化の多い市場でブランドの耐性を高めるのに役立つ。私たちが目にすることになりそうな変化のいくつかは大きなものだが、SEOをプラスの方向へ導いてくれるはずだ。
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