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動画は魔法の杖ではない! 動画マーケティングを始める前に読んでおきたい3冊

動画マーケティングを始める前に読んでおくべき本3冊を紹介する。動画プロデューサーとして多くの企業のマーケティングを支援してきた菅野審也さんに選んでいただいた。
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YouTube、Instagram、TikTokなどで動画を視聴する人が急増している。特に、Z世代(15~24歳)では、「日頃利用しているソーシャルメディア」は、LINEやTwitterといったコミュニケーションSNSを抑え、「YouTube」が82.8%で1位になるという調査結果もある*。

こうした中、動画マーケティングに取り組む企業も増えているが、ソーシャルメディアでの動画活用に対して十分な知識やノウハウをもっている企業はまだ少なく、担当にはなったものの、どうして良いのかわからないという方もいるだろう。そこで、今回はサムライト YouTube lab.リーダーの菅野審也さんに、初心者におススメの動画マーケティングの参考書籍を教えてもらった。

*「もう止まらないZ世代のショート動画人気。週5日以上視聴は3割超、TikTokだと7割近くに【サムライト調べ】」(https://webtan.impress.co.jp/n/2021/11/02/41850

サムライト株式会社 YouTube lab.リーダーの菅野審也さん。奄美大島支社に所属し、動画プロデューサーとしての経験と自由な発想で、多くの企業の動画マーケティングをサポートしている

マーケティングの基本をおさえてから動画活用に取り組もう

取材が始まると、「本題の前に、まずお伝えしたいことがある」と菅野さんは話し始めた。それは「動画は魔法の杖ではない」ということだった。動画はテキストや画像に比べて、視覚や聴覚に訴えられる分、情報量が豊富だ。ただし、動画を使えば今まで伝えられなかったことが伝えられる、できなかったことができる、何かが変わる、と期待しすぎるのは禁物。動画はテキストのように飛ばし読みができないため、視聴時間をとられてしまい、内容によってはそぐわないこともある。「動画はあくまで表現手法の1つに過ぎない。そうした大前提を踏まえて、動画マーケティングで成果をあげるためのおススメ書籍を紹介したい」と菅野さんは念を押した。

そんな菅野さんが紹介する1冊目は次の本だ。

  • 1冊目:『エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書』(ジョー・ピュリッジ:著 PHP研究所:刊)
1冊目にご紹介いただいたのは『エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書』(ジョー・ピュリッジ:著 PHP研究所:刊)

コンテンツマーケティングの名著なので、手にとったことがある方も多いかもしれない。なぜ、動画マーケティングのテーマで菅野さんは、この本を紹介するのだろうか。

動画は、数あるマーケティング施策のうちの1つにすぎず、なぜ動画を活用するのかという、戦略部分が重要です。なかでもソーシャルメディアにおける動画活用においてはコンテンツマーケティングの考え方が求められます。この本には、コンテンツマーケティングの定義、たどり着いた歴史、何をやるべきかがまとまっています。テキスト中心のため、読みやすくはないかもしれませんが、私が普段、動画の活用戦略を考える上で気をつけている基本的な事柄が整理されています(菅野さん)

誰に向けて、何のためにどう活用するのかという戦略が必要!

最近では、スマホ1つでも制作できる縦型・短尺動画に代表されるように、お金や時間をかけなくても手軽に動画を制作できるという一面がある。しかし、動画を誰に向けて、何のためにどう活用するのかという戦略がなければ、作って公開したところでマーケティング成果を得られずに終わってしまう。

加えて、戦略がないままに動画を制作すると、制作過程での意思決定に一貫性がなくなり、ぶれてしまうと菅野さんは警告する。動画制作では、構成、音、デザインなど、さまざまな場面で取捨選択・意思決定を行うが、戦略がなく、担当者やチームの「好き嫌い」で判断してしまうと、ターゲットに届かない動画になりがちだ。

企業が売り込みたいことを一方的に伝えるのではなく、オーディエンスに意味のある情報を届けて、心を動かすのがコンテンツマーケティングです。企業目線、担当者目線でおもしろい動画を作っても、視聴者の心が動かなければ意味がありません(菅野さん)

心を動かすためには、まずは誰に届けたいのかをしっかり定める必要がある。そしてそのターゲットが求めている情報と、企業が提供できる情報とが重なる部分を見極め、そのテーマに特化したチャンネル運用やコンテンツ企画を目指すことがポイントだという。無数のコンテンツがあふれる現在のYouTubeでは、1つのチャンネルで幅広いテーマを扱うよりもテーマを絞り込んだ方がYouTube SEOの面でも有利に働くと考えられているそうだ。

特定のテーマに絞ったコンテンツを配信し続ければ、そのテーマに対して関心をもつ視聴者層との熱量の高いコミュニケーションが生まれやすくなります。そのコミュニケーションが外に広がれば、ターゲットとは違う層に届くことも期待できます。まずは、企業の情報資産や専門領域における豊富な知識を活かして、そのブランドだからこそ作れる価値のあるコンテンツを目指してください(菅野さん)

ブランド資産になる動画を作ろう

価値ある動画コンテンツは、お金がかかったとしても長期間視聴者に閲覧される。中長期的な施策として動画マーケティングに取り組み、コンスタントに動画を制作すれば企業の資産として蓄積されていくわけだ。つまり、一過性の広告とは異なり、長い目で費用対効果を見て戦略を考えることが大切になる。「この視点は、担当者だけでなく決裁者も、共通認識としてもってもらいたい」と強調した。

スマホ時代のマーケティングを理解しておこう

続いての1冊は、これまたマーケティングの金字塔ともいえる、コトラーのマーケティング論を記した本だ。「初心者には敷居が高いかもしれませんが、先ほどの本の次にさらに理解を深めたい方に読んでほしい」と、あえて紹介してくれた。

  • 2冊目:『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』(フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン:著 朝日新聞出版:刊)
2冊目にご紹介いただいたのは『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』(フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン:著 朝日新聞出版:刊)

SNSを始めとしたデジタルを介したコミュニケーションが生活の中に浸透するに連れ、マーケティングの考え方も変化してきた。『コトラーのマーケティング』の1.0、2.0では、製品を中心としたマーケティングの考えが主流だったが、3.0では人間を中心としたマーケティングについて言及され、4.0では、3.0をふまえたビジネス戦術が書かれている。

確かに現在では、インターネットの普及により消費者の考えが変わり、製品を選ぶ理由として“企業の社会的責任”なども問われるようになってきた。菅野さんは、「マーケティングの考えは、時代に合わせてアップデートしなければいけない」と語る。

以前は企業が発信したものを消費者が見るという、いわば“縦”の関係でしたが、YouTube、Instagram、TikTokでは、一般のユーザーやインフルエンサーたちが“横”の関係でつながり、お互いが発信しているコンテンツを好んで視聴しています。たとえばTikTokでは、誰かが発信したものを真似して別の人が動画をアップする文化がありますよね。そのため、企業アカウントやチャンネルも人格をもち、信頼できる友達同士のように “横”の関係を作りながら、ユーザーたちを自社のマーケティングチームの一員として巻き込んでいくような意識が大事になります(菅野さん)

動画が完成するまでの業務を理解して、効果的な発注をしよう

マーケティング戦略について十分な理解が深まった上で、読んでほしいのが次の3冊目だ。

  • 3冊目:『発注担当者のための映像制作入門: 映像コンテンツ制作のワークフローから見積の読み方まで』(小島晃:著 満月ブックスKindle)
3冊目にご紹介いただいたのは『発注担当者のための映像制作入門: 映像コンテンツ制作のワークフローから見積の読み方まで』(小島晃:著 満月ブックスKindle)

これは、担当者が自ら手を動かして動画を制作するためのノウハウではなく、パートナー企業やクリエイターに動画制作を発注するときに押さえておきたい知識をまとめている1冊だ。自社内のマーケティングリソースが潤沢な場合は動画を内製するという選択肢もあるが、大半の企業はリソースに限りがあり、動画マーケティングはパートナーと一緒に取り組んだ方が成功に近づく。そのため担当者は動画制作そのものの知識よりも発注のための知識を持っていた方がよいということだ。

初めて動画制作を発注する人は、動画を制作して公開するまでにどんな作業があって、どれくらい時間やコストがかかるのか、全体像がわからない方も多いと思います。見積もりの項目が適切なのか、価格が高いのか安いのかが判断できなければ、よいパートナーを選ぶこともできません。この本は、「動画制作のフロー」と「見積もりの見方」の2つに大きく分かれていて、動画制作の基本的なことが押さえられます(菅野さん)

菅野さんが動画マーケティングに関わり始めたのは2015年。動画未経験の状態でのスタートだったという。2015年は、それまで何千万円という費用がかかっていた動画制作が、クライアントとクリエイターが直接やりとりしながら制作するスタイルが増えて費用もおさえられてきた時期。YouTube、TikTokなど新しいチャンネルが増えていく中で、その都度、必要な知識を身に着けながら取り組んできたという。

まずは、本書を通して基本的な動画の制作フローを押さえることで、ショート動画など時代に合わせた動画の形にも対応していけるようになります。ショート動画ではどの作業をカットできるのか、外注せずに自社で行える部分がどこかもわかってきます(菅野さん)

自分が見つけた最新情報・事例はチームに共有する習慣を

変化の激しい動画のトレンドやプラットフォームの最新情報は、どうやって収集していけばよいのだろうか。もちろん、制作を依頼した外注先のプロに、積極的に聞くなどして教えてもらうとよいが、さらにもっと広く深く知りたい場合にはプラットフォーマーの公式ブログが参考になるという。

YouTube、TikTok、Instagramなどのプラットフォーマーが発信する公式ブログが一番参考になります。プラットフォームによっては、CEOが年始に注力ポイントを発表したり、ユーザー調査や利用動向を発表したりすることもあります。あとは、プレスリリースを取り扱っているメディアで、ユーザー調査や事例が発表されていることもあるのでチェックしています(菅野さん)

そして、得た情報や気になる動画を担当部署の皆で共有することの大切さを語った。

自社の担当部門やチームで、気になった動画を共有するような仕組みを作ってほしいです。なぜなら、各種ソーシャルメディアでは、ユーザー属性やそれまでの視聴傾向などに応じてユーザーごとに表示されるコンテンツが最適化されているので、ある人が見つけた企業の動画活用例を、他の人は見ていない可能性があります。気になる動画や見ておくべき動画があれば積極的に共有することが有効です(菅野さん)

◇◇◇

菅野さんに紹介いただいた3冊のうち、2冊はマーケティング戦略をおさえるための本だった。菅野さんは、企業の動画マーケティングを支援する際には「マーケティング戦略」について必ず説明し、しっかり理解し納得してもらってから進めているという。先述したように、動画は数あるマーケティング施策のうちの1つだからだ。サムライトのようなパートナーに戦略設計から相談するにしても、あらかじめ今回紹介したような本を読み、マーケティング戦略を理解しておくとよいだろう。

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