これからの動画マーケティングに不可欠な「ショート動画」攻略の3つのポイント
インターネットで動画を見ることが一般的になり、コロナ禍による自粛生活はそれに拍車をかけている。「ネット動画が生活に浸透した今、戦略的な動画マーケティングによって事業成長を加速させることも可能」と語るサムライトの菅野審也氏と湯浅眞氏が「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」に登壇。メジャーな動画プラットフォームであるYouTube、Instagram、TikTokにおけるショート動画活用のポイントを紹介した。
マーケティングにおける「動画のメリット」とは?
動画市場は刻々と変化しているので、まずは現状を正しく把握することが攻略の第一歩となる。動画には、以下のようなメリットがあるといわれる。
- 情報伝達力が高い
- 企業が望む態度変容を起こしやすい
- 視聴者が理解しやすい/情報を受け入れやすい
動画は、テキストや画像に比べて情報伝達力が高く、態度変容につながりやすい。さらには、動画を見ることが浸透しているため、動画視聴に対して好意的で、情報も受け入れられやすい。これに加えて、通信環境やデバイスが発達したこと、動画制作ツールの普及などもあいまって、「マーケティングファネル全体で動画を活用できる状態になっている」と菅野氏は語る。
また、動画視聴時間の動向は、以下のような状況となっている。
- 2019年から2020年にかけて、YouTubeの1日当たり視聴時間は1.7倍(出典:Glossom)、TikTokは1.27倍増加(出典:MEDIA GUIDE 2020 Q4)
- YouTubeでの企業動画の再生回数は2018年から2020年にかけて1.77倍増加(出典:エビリー)
動画視聴時間は増加の一途を辿っており、ユーザー投稿の動画だけでなく企業動画の視聴も年々増加していることがわかる。つまり、単に動画を投稿するだけでは、ユーザーに発見され、視聴してもらうことすら難しい状況ということだ。
以上のことから、菅野氏は動画活用のポイントとして以下の2点を挙げる。
①目的の明確化
「なんとなく」動画を使うのではなく、「何の目的で活用するのか」「何を達成したいのか」を明確にする。
②適切な戦略設計
目的を達成するために「最適な配信場所」を選び、その場所に応じて「最適化したコンテンツ」を配信する。その見極めが重要。
主要な動画プラットフォームの特徴と攻略法
目的を達成するために最適なプラットフォームを選ぶには、それぞれの特徴を正しく理解する必要がある。セッションではメジャーな3つのプラットフォーム、YouTube、Instagram、TikTokの特徴と活用ポイントを解説した。
主要な動画プラットフォーム①
YouTubeの特徴と攻略法
現在、国内MAUは6500万、ユーザー層は全年代の男女で偏りがない。検索に強く、エンタメ・娯楽だけでなく情報収集や学習などユーザーの目的が多様化しているのが特徴で、昨今は特にYouTubeショート機能を強化中。
活用のポイントとしては、「ユーザーのニーズを把握し、そのニーズを満たす動画を企画する」こと、「自社だからこそ持つ情報資産をコンテンツに反映させる」ことが基本。加えて、YouTubeは出演者が視聴行動に影響を与えることが多いというサムライトの調査データもあるため、社員やインフルエンサーなど「顔」となる人を立てるのが有効だと、菅野氏は言う。
【特徴】
1. YouTube自体が検索エンジンであり、Google検索にも強い
2. エンタメだけでなくノウハウ・教養系などコンテンツの多様化
3. YouTubeショートを強化中
【活用のポイント】
1. ターゲットユーザーの「知りたい」に応える
2. 自社の強みを活かした情報を提供する
3. チャンネルの「顔」を立てる
主要な動画プラットフォーム②
Instagramの特徴と攻略法
国内MAUは3300万で、メインユーザー層は20~40代女性。近年は10~20代も増加傾向にある。
独自アルゴリズムでユーザーの関心が高い投稿を精度高く表示し、ブランドへの認知・興味の機会を創出する。また、ショッピング関連機能の強化により、購買までフルファネルで活用可能。写真のプラットフォームというイメージが強いかもしれないが、ストーリーズやリールなど、動画関連の機能拡充が進んでいる。
活用のポイントとしては、「“映え”の時代は終わり、現在では情報の有益性が求められている」と湯浅氏はとらえる。また、動画機能を積極的に活用してノウハウを蓄積することがお勧めだ。さまざまな新機能が頻繁に拡充されているので、それらを活用することで、マーケティング成果の最大化も図れる。
【特徴】
1. ミッションは「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」
2. 認知から購買までシームレス
3. 画像から動画中心へ
【活用のポイント】
1. 情報の有益性を担保する
2. 「動画」の活用に注力する
3. 新機能含め、Instagramの各種機能を有効活用する
主要な動画プラットフォーム③
TikTokの特徴と攻略法
国内MAUは950万。メインユーザー層はZ世代(2021年時点では16~24歳)の男女。ショート動画ブームの火付け役で、Z世代を中心として流行の発信源となっている。最近では、マーケティング以外に採用シーンなどでも活用されている。
他のSNSと異なり、ユーザーは基本的にはTikTokがレコメンドするコンテンツを視聴する。このため、フォロワー数を増やすよりいかにバズらせるかがポイントとなる。「緻密な戦略を立てて一つひとつしっかり制作するというよりは、まずは数多く打席に立って、反応を見て分析し、アカウントの勝ち筋を見つけていくことが大事」と湯浅氏は解説する。ストック性が低いので、さまざまな投稿にトライしてZ世代のユーザーが何に反応するのかを検証するのがお勧めだ。
【特徴】
1. ショート動画専用プラットフォーム
2. 流行の発信源になる事例も多い
3. 企業による活用も増加中
【活用のポイント】
1. フォロワー獲得よりも、いかにバズるか
2. 狙いを定めるよりも、数多く打席に立つ
3. Z世代の反応を検証する場として活用する
ショート動画時代への対応
これからの動画活用では、ショート動画への対応が欠かせない。各プラットフォームが現在、最も注力しているのがショート動画だと、菅野氏は言う。縦型・全画面で、没入感が生まれやすいというのが大きな特徴だが、各プラットフォームが独自アルゴリズムを採用し、リーチ力や拡散性がある。ショート動画の特徴をまとめたのが以下の図だ。
3つのメジャープラットフォームにおける、ショート動画の特徴と攻略法をまとめる。
ショート動画への対応①
YouTubeショートの特徴と攻略ポイント
最長60秒、「#shorts」で自動認識され、専用のタブに表示される。国内の利用チャンネル数、動画投稿数ともに、急激に伸びており、2021年7月には、制作ツールのβ版も日本でリリースされている。ショート動画のプラットフォームとしては後発なので、今のうちに始めると先行者優位を得られ、ノウハウもいち早く蓄積できる。「制作コストが低く量産しやすいので、積極的にトライして成功パターンを見つけるのがお勧め」だと、菅野氏は言う。
また、そのリーチ力を活かし、まずはショート動画でチャンネルの存在を知ってもらい、そこから通常の長尺コンテンツへ誘導、さらにチャンネル登録につなげるという流れを作ると、チャンネルとしてのパワーが高まる。
【特徴】
1. 最長60秒。「#shorts」で自動認識
2. グローバルでは1日あたり65億回再生
3. 直近の人気カテゴリーは「ゲーム」「ブログ」「エンタメ」
【攻略のポイント】
1. 早く始めるほど先行者優位を得やすい
2. 試行錯誤を重ねて勝ちパターンを築く
3. ショートと通常動画を組み合わせてチャンネルをグロース
ショート動画への対応②
Instagramリールの特徴と攻略ポイント
リール(Reels)は、15秒から最大60秒の短尺動画を共有できる新機能。専用のタブがあるなど露出先が多いので、フィード運用だけでは届かなかったユーザーにリーチできる。ショッピング機能を利用しているアカウントは、リール内の商品にタグ付けが可能。ユーザーはリール広告に対してコメントやシェアなどのアクションができる。
攻略のポイントとしては、Instagramや自社アカウントの世界観の中でショート動画を表現することが重要。リールのアルゴリズムでは、「いいね」や「視聴完了率」が重視されている。最長30秒から60秒に拡大されたので、情報量を増やすなど、ユーザーのリアクションや滞在時間を増やす工夫をするのが攻略のポイントだと、湯浅氏は言う。
【特徴】
1. 2021年7月末に最長60秒に拡大。リール専用タブや発見タブ内に表示
2. ショッピングタグ付けも可能
3. リール広告も2021年6月から提供
【攻略のポイント】
1. Instagramやアカウントの世界観を大事にする
2. リール独自のアルゴリズムを理解し、攻略する
3. ユーザーの反応・滞在を得られるコンテンツを企画する
ショート動画への対応③
TikTokの特徴と攻略ポイント
最大30秒のショート動画専用プラットフォームとしてスタートしたが、2021年、最大3分に拡大され、コンテンツに幅ができた。また、動画を投稿すると、その動画に興味を持ちそうな一定数のユーザーに必ず表示される仕組みのため、アカウントのフォロワー規模に関わらず、良質なコンテンツであればバズるチャンスがある。UGCが生まれやすいカルチャーが根づいているのも特徴。
攻略のポイントとしては、投稿のハードルが低いという特徴を活かし、ユーザーがまねしたい、参加したいと思える企画でバズを狙うのが基本。流行りを見極め、タイムリーに企画・投稿するのがポイント。また、楽曲をきっかけにバズることもあるので、流行りの楽曲をうまく活用する他、トレンドを捉えたオリジナル楽曲の作成もポイントだと湯浅氏は言う。
【特徴】
1. 最長3分に拡大。より多様なコンテンツが生まれる可能性
2. 誰でもバイラルするチャンス
3. ユーザー参加型の企画によりUGCが生まれやすい
【攻略のポイント】
1. ユーザーを巻き込み、勝手にバイラルする状態をつくる
2. トレンドに乗ったコンテンツを投稿する
3. 楽曲をうまく活用する
まずはトライ、そして勝ちパターンを見つける
菅野氏は、これからの動画マーケティング攻略にあたり押さえるべきポイントとして、以下の3つを挙げる。
- 正しい現状把握
- 戦略的なプラットフォーム活用
- ショート動画時代への対応
本セッションで紹介してきたこれらのポイントを踏まえたうえで、ショート動画活用においては「とりあえず、まずはやってみるというのが結論。やってみないと、勝ちパターンも見えない」とまとめた。
またその際、「自社だけでは最新動向を追いきれない」「まだスキルや知識が足りない」「制作のリソースが足りない」などの課題がある場合は、ショート動画攻略のパートナーとしてサムライトにお声がけをとセッションを締めくくった。
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