Web担 オススメの課題図書

「広告」の基礎を抑え、戦略的に効果をあげるための7冊!

オススメの課題図書。今回は、ネット広告の基本と戦略的な活用法がわかる書籍を、アタラ社の星野さんに教えてもらった。

業界の最前線で活躍する人にオススメの書籍を聞く本連載。今回は、アタラのシニアコンサルタントである星野理人さんに、広告運用や周辺領域の業務を理解するのに役立つ書籍を紹介してもらった。

アタラ株式会社 シニアコンサルタント 星野理人さん

インターンでWebマーケティングに出会い、その道に進む

星野さんは、大学時代にインターンとして、塾講師の求人サイトのメルマガ、Twitter(現X)広告、オウンドメディア運用、サイト改善など、幅広くWebマーケティングに取り組んだ。数値で成果が見えるWebマーケティングに面白さを感じ、新卒で電通デジタルに入社。

4年間広告運用を中心に担当し、スクリプトによる広告運用の自動化やダッシュボードを使ったデータ分析に関心をもつようになり、これらを得意とするアタラに2023年4月に転職する。2025年よりマーケティングコンサルティング部の部長を務め、若手社員の教育にも力を入れている。2024年にはウェブ解析士マスターに認定された。

今回、書籍を選定するにあたっては、一人でWebマーケティングを担当している人、運用広告を担当する人を念頭に置いたという。「広告運用だけではなく、周辺の領域もわかるように、読めば一石二鳥、三鳥になるような本を選びました」と話す。

広告全般をきちんと理解するための1冊

オンライン広告はすぐに成果が表れるだけに、目の前の数値を上げることに注力しがちだ。しかし、数値だけ見ているとふとしたときに、自分の仕事の意義がわからなくなり、モチベーションが下がってしまうことがある。そこで、過去の歴史を踏まえて、広告という仕事そのものを理解しておく必要がある。

1冊目
『この1冊ですべてわかる 新版 広告の基本』(波田浩之:著 日本実業出版社:刊)

最初に紹介してくれたのは、書名通り「広告の基本」がわかる本だ。

オンライン広告は、広告のなかの1つなので、まずは広告のことを理解し、代理店や媒体の種類など広告業界全体の仕組みについて理解すると良いと思います。最近は、OOH(屋外広告)もデジタル化してDOOHになったり、従来の紙媒体もWeb化されて、セグメントした会員に配信できたりと、オンラインとオフラインの境がなくなってきているという変化もあります(星野さん)

本書は2007年に出版された後2018年に改定され、AIの活用などについても取り上げられている。主に代理店の人向けに書かれているが、事業主にも大いに参考になる内容となっている。

インターネット広告を理解するための2冊

2冊目
『必携 インターネット広告 プロが押さえておきたい新常識』(一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA):著 インプレス:刊)

本書には、「インターネット広告とは」から始まり、その歴史やマーケティング戦略においての位置づけ、マーケティングプランニングのフローなどが解説されている。

広告の配信ターゲットの設定、競合の広告の調査の必要性など、打ち手依存にならずに、幅広い視点で書かれています。消費者の理解など、マーケティングの基本も書いてあります。
クライアントの運用コンサルティングをしていると、ある程度最適化すると頭打ちになることがありますが、そうしたときに次に何をやるべきかについて、広い視点で考えることができるようになります(星野さん)

なお、この書籍の著者は日本インタラクティブ広告協会(JIAA)であり、業界視点での広告の品質管理についても取り上げられている。ユーザー体験として品質が良くない広告は、広告全般の評価を下げてしまう。さらに、広告主が詐欺に加担していると捉えられかねないので注意が必要だ。

最近は広告収入目的で作成されたMFA(Made for Advertising)というサイトがあります。広告の出稿者は、そこに広告が配信されていないか、注意する必要があります。アドフラウド(広告詐欺)と呼ばれるような広告費を搾取するような行為があるので、ブロックするツールなどを活用して、排除することも重要です(星野さん)

個人情報の扱いが厳しくなるなか、自社のプロモーションでも、ユーザーに個人情報の利用目的を正しく伝えていく重要性が解説されている点も見逃せない。

丁寧にオススメのポイントを紹介してくださる星野さん

3冊目
『運用型広告 プロの思考回路 AdWords/Yahoo!/Facebook広告の効果を最大化するベストプラクティス(WEB PROFESSIONAL)』(佐藤康夫 他:著 角川アスキー総合研究所:刊)

出版されたのは2016年だが、今読んでも学びが多いと星野さんはいう。「運用型広告」とタイトルにあるが、周辺領域まで含めてカバーしている。執筆当時、執筆者の多くがアタラに所属していたが、それを差し引いても良い本だと星野さんは評価する。

たとえば、CPA(Cost per Acquisition / Cost Per Action)の算出方法についても疑問を投げかけています。運用型広告では、1つのリード獲得単価を見てPDCAを回すことが多いですが、ビジネスに直結しなければ、獲得しても意味がないですし、訪問した人も満足していないかもしれません。獲得したリードがビジネスに直結したかどうか、LTV(Life Time Value)ベースでROAS(Return On Advertising Spend)を見るという視点を加えることで、広告運用を最適化できることがあります(星野さん)

そのほかにも、データフィードを使った広告配信なども紹介されている。大量の商品を扱うECサイト、不動産サイト、求人サイトなどでは、1件1件を登録しきれないので、データフィードで自動更新できるようにすると省力化できる。

ここまで紹介した3冊は、重複する内容もありますが、重複箇所はそれだけ重要だということです。たとえば、カスタマージャーニーマップについてはどの本にも取り上げられています。そんな重要なカスタマージャーニーマップであっても、作成してあるにもかかわらず社内共有されていなかったり、そもそも作られていなかったりということがあります。カスタマージャーニーマップをふまえて広告運用の周辺にも目を配ることで、より良いマーケティング施策を考えることができます(星野さん)

「ビジネスに直結した広告でなければ意味がない」と強調されていた星野さん

初めてGoogle広告を出稿するなら、絶対に読んでおきたい1冊

4冊目
『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本 人気講師が教える運用型広告の基礎と実践』(杓谷匠、田中広樹、宮里茉莉奈:著 インプレス:刊)

基本を抑えたらいよいよ実践だ。Google広告は、インターネット広告のなかで最初に取り組む場合が多いが、本書には、まずは知っておきたい基本が書かれているのでオススメだ。Google広告のオークションの仕組み、競り勝つために必要な広告品質や予算などについて、基礎的なところから解説されている。

また、検索広告以外のディスプレイ広告、YouTube広告、アプリインストール促進の広告、P-MAX(AIによる自動化機能)など、Googleならではの広告について、網羅的に解説されている。

まずはコンバージョンの設定をして計測できるようすることから始まり、キーワード、除外キーワードの設定、レスポンシブ広告、レポートの見方など、この一冊を読んでおけば、自信をもってGoogle広告に携われると思います(星野さん)

成果を高めるクリエイティブを作成するために役立つ2冊

広告はクリエイティブも重要だ。成果を高めるために読んでおきたい2冊を紹介してくれた。

5冊目
『ザ・コピーライティング――心の琴線にふれる言葉の法則』(ジョン・ケープルズ:著 神田昌典:監訳 ダイヤモンド社:刊)

星野さんは、インターン時代から本書を読んでいるという。管理画面でいざ広告を設定するときには、誰にどんなメッセージを届けるのかが決まっていなければならない。本書は、どんな言葉で伝えればいいのか、アイデアの引き出しを広げる観点で参考になる。

いろいろな視点で書かれているので、最初からではなく、気になるところから読んでもいいと思います。たとえば、「広告は見出しが命」「頭の体操10問──成功した見出しはどっち?」といった項目などは、思わず読んでみたくなりますよね。翻訳なので、日本語にはそぐわない表現もなかにはありますが、ベネフィットを事実と数字で伝えるなど、考え方は日本にも通じる内容です(星野さん)

6冊目
『ネット広告クリエイティブ“打ち手"大全 広告運用者が知るべきバナー&LP制作 最強の戦略 77』(辻井良太、宝田大樹:著 インプレス:刊)

こちらは、キャッチコピーとバナー構成の組み合わせについての打ち手を紹介する1冊で、さまざまな型と組み合わせが紹介されている。

電通デジタルで先輩から、『守破離を大事にしなさい』と教えられました。最初は、「良い」とされている型通りにやってみて、その後に型から離れて自己流を試していく。最初は良し悪しがわからないので、型を勉強するのが大事です(星野さん)

星野さんは、良いと思った広告クリエイティブやLP(Landing Page)はスクリーンショットをとり、URLを保存して、良いと思った理由をメモしているそう。これは、競合分析にもなっているという。

私が行っているデジタルマーケティングの講座では、宿題として、クリックした広告を保存して、もってきてもらうようにしています。人によって表示される広告が違いますし、惹かれる観点も異なるので、大人数でやってみると新しい視点がみつかるんです(星野さん)

「新しい仮説は機械学習には作れない」「ペルソナの理解こそクリエイティブの要諦」「LTV重視なら奥の体験を想像させよ」など、本書に書かれた“打ち手のタイトル”も魅力的だ。施策を実行するうえで意識しておきたいポイントがストレートに伝わる。

デジタルマーケティング講座では、講師もされている星野さん。宿題を出して、参加者が楽しく議論しあえる場も設けているそう

デジタルマーケティングについての理解も深めよう

7冊目
『1冊目に読みたい デジタルマーケティングの教科書(なるほど図解)』(神崎健太、佐々木塁、橋本俊哉、高橋栞:著 SBクリエイティブ:刊)

7冊目は、広告だけでなくメルマガやLINEなども含めた、デジタルマーケティング全般について学べる本だ。デジタルマーケティング施策の勘所がまとまって紹介されている。発売が2024年11月と新しく、最新の情報が体系化されているところもポイントの1つだ。

この本はフルカラーで、図解が豊富。とてもわかりやすいので、楽しく読めると思います。7冊目として紹介しましたが、1冊目に読んでもいいかもしれません。広告だけでなく、マーケティング全般を担当する人もいるでしょうし、ほかの領域の担当者とタッグを組むこともあるので、周辺の業務について理解を深めておくことはとても重要です(星野さん)

本書には、Cookie規制、ユーザーの同意管理プラットフォームなど、デジタルマーケティングを実施するうえで、知らないではすまされない事柄についても紹介されている。「それぞれの技術的な詳細までは理解しなくても、概要だけでも知っておいてほしい」と星野さん。

情報をアップデートするために

星野さんが情報をアップデートするために利用しているのは、Webマーケティングについてのメディア「運営堂」のメルマガ「毎日堂」だ。平日毎日、Webマーケティングのニュースが配信される。

業界のアップデートが早いので、自分で調べるだけでなく、このメルマガで網羅的に情報を収集しています(星野さん)

土日は、書店併設のブックカフェで過ごすことが多いという星野さん。7冊目の書籍は、ブックカフェで読んでみて購入を決めたそう。

書店内の特集のコーナーなどは、デジタル分野かどうかにかかわらず、ビジネスのホットトピックがわかって知識の幅を広げられます(星野さん)

日々の情報アップデートは海外のサイトがオススメ。Google、Meta、TikTokなどは、海外のほうが、情報が早いからだ。SEMに関しては、以下のサイトをチェックしているという。

また、年間では、毎年5月に開催される「Google Marketing Live」を楽しみにし、アタラのオウンドメディア「Unyoo.jp」で、毎年速報レポートを公開している。こちらのレポートも、ぜひチェックしてほしい。

今回、星野さんが紹介してくださった全7冊
◇◇◇

1冊、1冊を丁寧に紹介してくれた星野さん。説明がわかりやすくて、どの本も読んでみたくなった。

星野理人

アタラ株式会社

シニアコンサルタント

大学在学中、長期インターン生として教育系ベンチャー企業でメールマガジンの編集やTwitter広告の運用、コンテンツ作成を経験。
大学卒業後、デジタルマーケティング支援会社にてダイレクトレスポンス領域の広告運用・分析や社内向けダッシュボードの開発を担う。
徹底したPDCA管理による成果改善に加え、Looker Studioでのダッシュボード構築や広告スクリプト・Google Apps Scriptを用いたオペレーション改善も得意とする。
2023年4月からアタラに参画し、運用型広告を主軸に、広告運用やインハウス支援を行う。徹底したPDCA管理による成果改善に加え、Looker StudioやTableauを用いたダッシュボード構築、広告スクリプトやGoogle Apps Scriptを用いたツール開発・自動化などのオペレーション改善を得意とする。ウェブ解析士マスター。

用語集
AdWords / CPA / Cookie / EC / Facebook / Google広告 / JIAA / LINE / LP / LTV / PDCA / ROAS / SEM / X / アドフラウド / インタラクティブ広告 / オウンドメディア / カスタマージャーニー / クリエイティブ / コンバージョン / ダッシュボード / ディスプレイ広告 / フィード / ペルソナ / レスポンシブ / 訪問
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