大人気連載「算数基礎講座」の著者が選ぶ! 数字が楽しくなる5冊
業界の最前線で活躍する方にオススメ書籍を教えてもらう本連載。今回は、Web担当者Forum(以下、Web担)の連載「算数が苦手なマーケター向け『算数基礎講座』」が大人気となっているモリマミコさんに、数字が楽しくなる書籍について教えてもらった。

数字が苦手な人が多い! だから、大人向け数学教室を開校
モリさんは新卒でITベンチャーに入社後、独立。代表を務めるマミオン有限会社は現在23年目で、大人向け数学教室やパソコン教室を手掛けている。
震災をきっかけにパソコン教室の顧客が減少したことから、大人向けの数学教室を始めました。パソコン教室でExcelを教えていたときに、計算式を立てるのに苦労していたり、計算結果の数字の意味がわからなかったりというお客さまが一定数いることに気づいていたからです(モリさん)
連載中の「算数基礎講座」も、数字が苦手な人から大きな支持を得ている。企画段階では需要があるのか半信半疑だったそうだが、第1回目の公開後、すぐに多くのアクセス数を獲得した。
なお、Web担での連載は実は2回目で、以前はシニアビジネスの連載「見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!」を担当していた。こちらも反響の大きい連載だった。この第1回目は、「ユーザーはあなたとは違う――パスワードの設定は難しいんだゾウ」。ぜひ読んでみてほしい。
問題の本質を特定するために読みたい1冊
1冊目
『ライト,ついてますか: 問題発見の人間学』
(ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ:著 木村泉:訳 共立出版:刊 1987/10/25:初版発行)
モリさん曰く「数学はツール」。問題について考えるときに使う道具の1つとして、数学がある。また、計算の方法がわかっていても、その意味を理解できなければ問題は解決できない。さまざまな問題について何が問題なのか、誰の問題なのかを定義してから、数学を使うことが重要だという。本書は数学とは直接関係ないが、問題の整理に役立つ1冊となっている。
問題が定義できれば、解決策がみえてきます。本書は、問題があったときに、さまざまな小話を通して、誰の問題なのか、どうすればみんながハッピーになれるのかを本質的に考えていける内容になっています。
頭がゴチャゴチャしたときに本書を読んでみると、思考が整理され、問題をシンプルに捉えることができるようになりますよ(モリさん)
本書の冒頭では、動かないエレベーターの例が紹介されている。会社のエレベーターが長時間動かない場合、エレベーターを使わずに階段を使う、従業員をイライラさせないようにエレベーターホールに鏡をとりつける、大家さんに相談するなど、さまざまな解決策がでてくる。
しかし解決策を考える前に、これは誰の問題なのか、たとえば従業員の問題なのか、会社の役員あるいはビルのオーナーの問題なのか、を考えることで解決するべき問題が変わる。さらに、何が問題なのか、問題はエレベーターが動かないことなのか、代替手段がないことなのかなどを整理していくことが重要になる。
問題解決の本はいろいろありますが、難しい本が多いので、この本のようにやさしいストーリーで展開されると、わかりやすいと思います(モリさん)
ストーリーをおいながら“数字に強くなれる”小説
2冊目
『ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か』
(エリヤフ ゴールドラット:著 三本木亮:訳 ダイヤモンド社:刊 2001/5/18:初版発行)
2冊目も数学とは直接的な関連はうすいが、読むと数字が好きになる1冊だ。初版は2001年。長く読みつがれている小説で、純利益、投資収益率、キャッシュフローなど、さまざまな数字が登場する。
赤字の工場を3ヶ月以内に立て直すというゴールに対して、効率性、生産性などの指標がたくさん提示されます。そして、それらの指標を活用できるように、システムをシンプルに変えていきます。
「大きな山は小さく崩す」というように、“生産性”のように大きな問題でも、設備の稼働時間の割合や不良品を除いた有効製品の割合のように、シンプルに本当に必要な指標(モノサシ)で物事を評価していくことで、問題をひもといていくことができます(モリさん)
そして、モリさんは続編となる『ザ・ゴール2 思考プロセス』(ダイヤモンド社:刊)が、さらにオススメだと話す。
『ザ・ゴール2 思考プロセス』では、3ヶ月以内にV字回復しないといけなくなりますが、今回も、大きな山を小さく崩します。誰の問題か、何が問題かという思考の整理も含まれていて、小説形式とはいえ、実際に仕事に役立つ内容になっています(モリさん)
算数力を身に付けるための1冊
3冊目
『コレ解ける? 数字がこわくなくなる おとな算数ゆるトレ』
(モリマミコ:著 インプレス:刊 2025/6/19:初版発行)
たとえば値引き率を大きく見せるために、一時的に高く売るなど、数字は人をだますことにも使えてしまう。そんなトリックがひそむ数字に、苦手意識をもっている人は多いだろう。そんな人に読んでほしいのが、このモリさんの著作だ。
本書はWeb担の連載「算数基礎講座」をベースに書き下ろされているが、特に、ビジネスマンがつまずきがちな「割合」の説明に、多くのページをさいたという。
数字が苦手という方はたくさんいます。数字は1つの言語のようなもので、数学の基本がわかればいろいろなことが楽になると思います。
「数学が苦手なんです」という言葉を聞くと、そんなエクスキューズをする必要はないのに、とさみしく感じてしまいます。この本の内容を理解すれば、それを言わなくてもよくなると思いますし、数学がちょっと楽しくなるに違いありません(モリさん)
なお本書は、計算の基礎として四則演算から始まり、分数、因数分解など、算数のおさらいができる箇所が100ページほどある。ビジネスや日常生活で直面する具体的な例題が、読み物形式で書かれているので、軽い気持ちで読み進めてほしい。

統計学の入門のバイブル、通称「ハンバーガー本」と計算ドリル
4冊目
『統計学がわかる ファーストブック』
(向後千春、冨永敦子:著 技術評論社:刊 2007/9/7:初版発行)
これまで紹介してきた書籍で数字の基礎をおさえたら、次は統計に入りたい。しかし、統計学の本は難易度が高い。そこで初心者にオススメなのが、4冊目の本だ。実は、連載「算数基礎講座」の企画会議でも、モリさんが参考書籍として取り上げたという。
本書は、ハンバーガー屋さんの店長とアルバイトの大学生、そしてその先輩との会話で進みます。店長さんがボケ役で、周りの2人といっしょに、課題を統計で考えていきます。
ポテトの長さのばらつきから始まって、その後、分散、標準偏差などの統計学の基礎が解説されていきます。おもしろくて読みやすいですよ(モリさん)
5冊目
『脳を鍛える「計算」60日(川島隆太教授の毎日楽しむ大人のドリル)』
(川島隆太:著 くもん出版:刊 2019/1/30:初版発行)
モリさんが「数学の問題を解くのが好き」なのは、正解があるからだと話す。自分の導き出した答が間違っていれば正答とは異なるので、自分の間違いに気づける。一方、正答を導ければ、当然うれしい。悩み事があって考え込んでモヤモヤしているときも、数学の問題を解いていくと気持ちが楽になるというモリさんは、計算ドリルは数学を好きになる第一歩に最適だと話す。
本書の1日分の計算ドリルは、早ければ1分、長くても2分くらいで終わります。毎日続けていると計算が早くなって、頭の回転も早くなるような気がして気持ちがスッキリしてきます。
簡単な計算を淡々とやることが前頭葉を活性化させます。現在1〜11までシリーズで出ていて、少しずつ難しくなっていくので、順番にやるのがオススメです(モリさん)
いろんな情報源にあえて触れる
最後に、モリさんがふだん触れているメディア、情報源についてお聞きした。大型動物が好きで、特にアジアゾウが好きだというモリさん。常日頃、Xで大型動物の写真や映像を見て癒やされているそうだ。
また、Kindle Unlimitedに登録していて、雑誌などを読んでいるという。
自分でファッション誌を買うことはないのですが、Unlimitedでたまに読んでいます。Unlimitedには高校の参考書もあって、先日は倫理の参考書を改めて読んでみました。同じ情報源ばかりだと視野が狭くなるので、ふだん読まないような本を読むようにしています(モリさん)
「今回私が紹介した書籍は、古い本ばかりで...」と、モリさんは恐縮されていたが、数学の基礎は変わらない。長く読みつがれている楽しい本が多く、気軽に読めそうなので、数字を好きになりたい人こそ、手にとってみてほしい。
森万見子(モリマミコ)
マミオン有限会社 代表
大学在学中にECサイトを立ち上げた縁で大学卒業後EC系レコメンデーションエンジンの会社に就職。ひょんなことから2003年よりパソコン教室の運営を開始。
Excelの指導を通じて、数式を作るのが苦手な方が多いことに気づき、2011年より大人向けの算数・数学教室大人塾を開校。
Eラーニングも提供し、現在では、6000人以上の方にカリキュラムを提供している。
アジアゾウが大好きで、「ぞうか傾向」という言葉は「象化傾向」だと思っている。
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