「高度なデータ分析ツール」と聞くと、専門知識やSQLが必要で難解なイメージを持つかもしれない――世界4,500社が導入するデジタル分析プラットフォーム「Amplitude(アンプリチュード)」が、2026年2月に「AIアナリティクスプラットフォーム」へと進化した。
目玉となるのは、自然言語(チャット)で話しかけるだけで、AIが自社データを分析し、グラフの作成から改善施策の実行までをサポートしてくれる新機能だ。これまでデータ分析チームに依頼して何日も待っていた作業が、マーケターやプロダクトマネージャー自身の手で、しかも「会話」ベースで一瞬にして完結する。
3月17日、都内で行われた「Amplitude」の最新機能に関する勉強会でのデモを紹介する。
世界4,500社以上が導入する「Amplitude」とは
そもそもAmplitudeとは、Webサービスやスマートフォンアプリなどのデジタルプロダクトにおいて、ユーザーの行動を深く分析し、より良い顧客体験の提供を支援するツールである。NTTドコモなどの国内企業から、米DoorDashのようなデジタルネイティブ企業まで、グローバルで4,500社以上の導入実績を持つ。
従来のアクセス解析ツールが「どのページが見られたか」を中心とするのに対し、Amplitudeは「ユーザーID」を中心に一連の行動を追えるのが特徴だ。ユーザーがどのような体験を経た結果、継続利用や優良顧客(ロイヤルカスタマー)化に至ったのかという分岐点(マジックナンバー)をひも解ける。
まるで優秀なデータアナリスト。会話調でサクサク進む「グローバルエージェント」
今回のアップデートには次の3つがあるが、最も目を引くのが、自然言語で対話できる「グローバルエージェント」機能だ。
勉強会のデモでは、Amplitudeのチャット画面に「ロイヤルティプログラムの調子はどう?」と日本語で質問する様子が実演された。するとAIは即座に意図を汲み取り、加入状況のコンバージョン率や推移をチャートでビジュアライズして返答する。
驚くべきは、単にデータを見せるだけでなく「プラットフォーム別に見てみたらどうですか?」と、次の分析の切り口までAIが提案してくる点だ。それに従って指示を出すと、自ら設定メニューを探すことなく、AIがWeb、iOS、Androidごとの違いをグラフ化してくれる。
さらに「モバイルの離脱が多いから、改善のためにA/Bテストをしたい」とチャットで指示すれば、AIがツールの画面を切り替えることなく、A/Bテストのパターン作成から実行までをシームレスに設定する。課題の発見、データの可視化、改善施策(A/Bテスト)の実行というPDCAサイクルが、AIとのチャットだけで完結してしまうのだ。
24時間監視して自己改善する「専門エージェント」
特定の目的に特化して自律的に動く「専門エージェント」も強力だ。
- ダッシュボードエージェント: 指定した重要指標(KPI)をAIが24時間監視し続ける。異常値や急激な変化(どのユーザー層が要因かなど)を発見すると、Slackやメールで自動的に詳細なレポートを通知する。
- ウェブサイトコンバージョンエージェント: たとえば「料金ページの問い合わせボタンのクリック率を上げたい」と指示すると、AIがページ構造や過去の行動データを分析し、「ヘッダーの配置をこう変えてみては?」と具体的な改善案を複数提示する。さらに、そのA/Bテストの実行と結果検証までを自動で回し続けてくれる。
上記のエージェント以外にも汎用的な専門エージェントが複数ある。さらに、ユーザー独自に専門エージェントを作成することも可能だ。また、分析改善の精度向上には、読み込ませるデータ量と質が欠かせない。データ観点でアドバイスをくれる専門エージェントも開発中だという。
いつものAIツールに自社データをつなぐ「MCP連携」
外部のLLM(大規模言語モデル)との連携機能「MCP(Model Context Protocol)」も提供される。これによりたとえば、普段使っているAI「Claude」のチャット画面から、直接Amplitude内の自社データにアクセスできるようになる。Claude上でデータ分析を行い、その結果を根拠にしてJiraで開発タスクを作成したり、Figmaでデザインの改善案を作ったりと、外部ツールをまたいだ業務の自動化が可能になる。
追加コストなしで、安全に高度な分析を
これらの強力なAI機能は、追加の有償オプションではなく、Amplitudeのプラットフォームに標準機能として内包されているため、すぐに活用を始められる。また、入力した自社の顧客データが外部のAIモデルの学習に利用されることはない(ゼロデータリテンション)ため、企業でもセキュリティを担保しながら安心して利用できる。
分析ツールは、本来やるべき分析・改善の前に、ユーザー自身がツールの操作を覚えるといったハードルを超える必要があった。今回のアップデートで、Amplitudeは単なる「分析ツール」から、自律的にデータを読み解きビジネスを前進させる「優秀なチームメンバー」へと進化したと言えるかもしれない。
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