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敏腕デジマコンサル垣内勇威さんに聞く! デジタルマーケター初心者が読むべき本とは?

WACULの垣内勇威さんに、デジタルマーケティング初心者が身につけておくべきスキルや心得、読んでおくとよい本を紹介していただいた。

多くのEC担当者やデジタルマーケターに衝撃を与えた『デジタルマーケティングの定石』の著者としても知られるWACUL取締役CIOの垣内勇威さん。新規事業やDXのコンサルティング、大企業と連携したPoCなど、多彩なプロジェクトに関わるなど八面六臂の活躍ぶりで、いわばデジタルマーケターが目指すべきキャリアの1つともいえるだろう。

そんな垣内さんに、デジタルマーケティング初心者が身につけておくべきスキルや心得、読んでおくとよい本を紹介していただいた。ぜひ参考にしてほしい。

WACUL取締役CIO(Chief Incubation Officer)、WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長 垣内勇威さん

撮影:永友ヒロミ

デジタルだけに閉じこもらず、マーケティング全般について学ぶ

多くの企業のデジタルマーケティングに、コンサルティングという形で企画・改善提案を行ってきた垣内さん。WACULにおいてマーケティングのPDCAをサポートするツール「AIアナリスト」を立ち上げるなど、デジタルテクノロジーを駆使したマーケターという印象が強いが、冒頭から「デジタルにこだわるな」と話す。

デジタルマーケティングは、関連するデジタルツールも多く、ついその”使い手”としてキャリアを出発させがち。確かにネットを検索すれば山ほど情報は出てくるし、初心者でも一定成果が見えるので「できた気」になります。しかし、デジタルだけに閉じてしまうと視野が狭くなり、関係部署や顧客との調整や交渉などがおろそかになって、”ツールにだけ詳しい人”になってしまうリスクがあります。まずはマーケティング領域全体を捉え、その上でデジタルの使いどころを見極めて使う。順序を逆に考えた方がいいですね(垣内さん)

そうした考え方が自然とできるようになるには、「マーケティング全般について広く知識を得ること」、すなわちデジタル以外も含めてビジネスのありようを理解しておくことが重要になる。

データ整理やリスティング広告の運用など各論だけを話しても、経営層は聞く耳をもたないでしょう。ビジネス全体が見えて、マーケティングの課題がわかったうえで、そこにどんな分析が必要か、そのためにどんなツールが有効かという各論が紐付いてくる。仕事についたばかりの頃は、実務的な学びを優先させてしまいがちですが、並行してマーケティング全般を本質的に学ぶことが大切です。基礎や概要がしっかり理解できれば、現在使っているツールや仕事の見え方も変わってくるはずです(垣内さん)

とはいえ、社会人になると、マーケティングを体系的に学ぶ機会を得ることはなかなか難しい。そこで古典的ながら、「本で学ぶこと」もおすすめしたいという。

垣内氏がいろいろと読んだ中でも、最もわかりやすかったと評するのが『マーケティング・ビックピクチャー』という本だ。マーケティングの基礎的なフレームワークがシンプルかつ体系的に学べるというが、残念ながら現在は絶版であり、中古本も高額になっている。入手が難しいようであれば、図書館などで借りて一読してほしい。または、名著と呼ばれるコトラー本など、マーケティングを体系的に紹介している本を、1冊は最後まで読み通しておくとよい。

  • 『マーケティング ビッグ・ピクチャー』(クリスティ L. ノードハイム:著 飯田崇志 他:翻訳 ファーストプレス:刊 2006/5/19)

  • 『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』 (フィリップ・コトラー 他:著 朝日新聞出版:刊 2017/8/21)

  • 『コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践』(フィリップ・コトラー 他:著 KADOKAWA:刊 2021/9/29)

まずはマーケティングを体系的に学べる本を、と紹介してくださった垣内勇威さん(撮影以外のインタビュー中はマスクをしています)

マーケティングは”伝える”仕事。だからこそ文章力を磨きたい

デジタルマーケターといえば、パソコンでなにやら分析している姿をイメージしがちだが、実際にはレポートや企画書、改善提案書など、「書く仕事」が多い。当然ながら、マーケティングに関わるコンテンツやSEO、メールでも、日本語を正しく使えることが重要になる。

そこで、正しい文章の書き方を論理的に教えてくれる本として、垣内さんがおすすめするのが、本多勝一氏の『日本語の作文技術』だ。多くの人がなんとなく使っている助詞や修飾語、句読点などの正しい使い方が、それぞれの意味や根拠とともに論理的に紹介されている。

初心者は短文の繰り返しで文章を書いていけばいいと思うのですが、長い文章をわかりやすく端正に書こうとすると、ロジカルに考える必要が生じてきます(垣内さん)

  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一:著 朝日新聞出版:刊 2015/12/7)

『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一:著 朝日新聞出版:刊)

ユーザーを知ろうとする気持ちと行動が大切

デジタルマーケターが捉えようとする相手は、ネットワークの向こう側にいる。直接その姿を見ることはできないし、サービスがどう使われるかもユーザーの都合次第だ。そうした状況下で、Webサービスはセルフサービスとして提供され、ユーザーがその使い勝手を黙って評価することになる。そうした「捉えがたいユーザー」をどうすれば捉えられるのか。そのための示唆を与えてくれる本が、次の2冊の本だ。

  • 『ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践』 (株式会社ビービット 武井由紀子、遠藤直紀:著 SBクリエイティブ:刊 2006/9/27)

  • 『About Face 3 インタラクションデザインの極意』 (Alan Cooper、Robert Reimann、David Cronin 他:著 長尾高弘:訳 アスキー・メディアワークス:刊 2008/7/22)

左から、『ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践』 (株式会社ビービット 武井由紀子、遠藤直紀:著 SBクリエイティブ:刊)、『About Face 3 インタラクションデザインの極意』 (Alan Cooper、Robert Reimann、David Cronin 他:著 長尾高弘:訳 アスキー・メディアワークス:刊)

1冊目は、垣内さんの前職のマーケティング会社、ビービットの遠藤直紀氏らが著者である『ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践』。ユーザーが捉えられないなら調査をすべきだが、本書は調査手法や「思い込みで作られたサービス」が使われない理由も具体的に解説している。

自分たちのユーザーってこんな感じだよね、という思い込みや誤解が、多くのWebサービスの失敗につながっているように思います。「自分たちはユーザーをわかっていないのではないか」という謙虚さのもと、知ろうという努力が大切。そのマインドとともに、アンケートなどの定性的な手法や考え方も紹介しています(垣内さん)

そして2冊目の『About Face 3 インタラクションデザインの極意』は、まさに「インタラクションデザイン=ユーザーとのコミュニケーションのデザイン」の本質および細部までを紹介した本だ。

相当マニアックな内容ですが、これをすべて網羅して理解できていれば、Webサイトのみならず、車や家電など、おそらくどんなものでも良いものをつくることができると思います。ポイントは”ユーザーの期待感”です。たとえば、クリックして直後に出てくるものがユーザーの期待と異なることは、離脱の大きな原因になります。高額ではありますが、Webサイトを作る人のバイブルといっても過言ではないと思います(垣内さん)

本質的な課題を捉え、デジタルの特質を理解する

こうしてお話を伺ってくると、デジタルマーケティングは、あくまでビジネスの課題に対する解決法であることがわかる。目的や目標を設定して施策を遂行することが求められ、その評価のために定量・定性的にKGIやKPIを設けることが必要だ。

そこで忘れてはならないのが、「イシュー」という考え方だ。イシューとは、課題、問題、論争点などとも訳されており、ニーズやプロブレムなどより、より本質的な課題を指す。そのイシューにアプローチするための方法の1つがデジタルマーケティングだが、決して万能ではない。さらに「デジタルの特性」を理解していなければ、「絵に描いた餅」になってしまうという。

デジタルの特性は、ユーザーが勝手に使う「セルフサービス」であるということ。そして、瞬発力はなくても「ストックにはなり得る」ということです。そのうえで、現実的なKPIが何なのかを考えることが大切です。たとえば、サイトに面白い動画をおけば見てくれる、売上が上がるというのは完全な妄想ですよね(笑)。そこで、デジタルの特性と人間の認知に与える影響などを体系的にまとめた本があれば…と思いますが、残念ながら、今のところは見つけられずにいます(垣内さん)

しかし、垣内さんの著書『デジタルマーケティングの定石』には、そうした「デジタルの特性」を把握していないがために生じてしまう勘違いや誤解を是正していく箇所が幾度も出てくる。たとえば、前述したような「ユーザーを理解している」という“誤解”も、データの一部を見て「わかった気」になることから生じている。

私が水を買ったというデータがあっても、その前に走っていたというデータ、汗かきであるというデータなどがなければ、購買理由はわからないんです。Googleのようなビッグ・データをもっている会社でも、顧客が過ごす時間のほんの一部を切り取っただけに過ぎません。データの量も種類も不足している。目的もなく取得したデータが活用できるかといえば、ほとんど役に立たないんです(垣内さん)

その他さまざまなデジタルマーケティングの誤解や思い込みを、小気味良い語り口でバッサバッサと切っていく。垣内さん自身はおすすめ本としてあげていなかったが、お話を伺って、ぜひとも筆者が紹介したくなった本として紹介しておきたい。

  • 『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(垣内勇威:著 日本実業出版社:刊 2020/9/10

本来の目的に照らして自分の目で判断し、選択することが大切

今回紹介した本は、垣内さんの個人的な蔵書ゆえに、今でも手に入るものもあれば、絶版や高額で手に入れにくいものもある。しかし垣内さんは「これらを無理して入手する必要はない」という。そして、「デジタルマーケターとしてあるべき姿を理解することで、自然と学ぶべきもの、手に取るべき本がわかってくる」と語る。今後、キャリアを積んでいくなかで読むべき本も、自ずとわかってくるはずだ。

マーケティング全体を捉えて、日本語でコンテンツが書けて、ユーザーがわからない前提で、理解しようと行動を起こすことがデジタルマーケターに最も求められるものです。そのための、知識や知見、経験が不足していれば、それらを補完する本を意識して選び、読むといいでしょう(垣内さん)

実際、垣内さん自身も、毎日のようにさまざまな情報に接し、不要分は捨てるということを繰り返しているという。ぜひ垣内さんのアドバイスを参考に、自身のデジタルマーケターとしての課題を見出し、本を選ぶところからはじめてみてはいかがだろうか。

気になる言葉やツール、テクノロジーなどがあったら、まずはググって調べて、本質的かどうかで取捨選択する。一朝一夕ではその感覚が得られないかもしれません。しかし、本来の目的に照らし合わせて自分の目で判断し、選択することが大切です。するとだんだん打率があがってきます(垣内さん)

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