攻めるために守る! 知っておきたい「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」

企業が「誹謗中傷」を受けたらどうなる? 受けたらどうする?【新連載】

この連載では、「SNSリスクマネジメント」をテーマに、誹謗中傷・フェイクニュース・ 風評被害・炎上など、SNSに潜むリスクやトラブルについて、基礎知識から予防&対応策までをわかりやすく解説します。
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ありとあらゆる人がSNSで交流し情報交換をする現在。企業もSNSを活用する「SNSマーケティング」を推し進めていますが、一方で、「誹謗中傷」「フェイクニュース」「風評被害」「炎上」といった、SNS上のトラブルに巻き込まれる場合があります。こうしたトラブルがきっかけで、せっかくの成果がすべて水泡に帰すこともありえます。

本連載は、企業のSNS担当者なら絶対押さえておきたい「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」をテーマに、SNSに潜むリスクやトラブルについて、基礎知識から予防&対応策までをわかりやすく解説します。

個人も企業もSNSを活用する時代、「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」が重要に

今や日本人の69%が利用するまで普及し、一般の人でも情報を発信できる「ソーシャルメディア」。ソーシャルメディアの利用者の73.1%は、「コミュニケーション」「情報の収集」「暇つぶし」といった使い方にメリットを感じているようです。

参考
情報通信白書 2020年度版・2018年度版など
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html

ソーシャルメディアを利用して良かったこと(日本、複数回答)
出典:2018年度情報通信白書

ソーシャルメディアのなかでも、特に利用者同士のコミュニケーションに重点を置いているのが「SNS」ですが、個人だけでなく企業にも、SNSはさまざまなメリットをもたらします。「ファン・フォロワーと直接つながり、情報を伝えられる場」「ファン・フォロワーのリアルな声を収集できる場」「ファン・フォロワーと双方向コミュニケーションをとれる場」と捉え、SNSマーケティング施策を実行している/始めようとしている企業が年々増えています。

さて、「企業のSNSマーケティング」と聞いて、皆さんはどんな施策を思い浮かべますか?

多くの方が、「公式SNSアカウント運用」「SNS上でのキャンペーン」「SNS広告」「ソーシャルリスニング」「アクティブサポート」「インフルエンサーマーケティング」など、「攻め」の施策をイメージされるのではないでしょうか。

もちろんそれらも正解ですが、忘れてはならないのが、SNSマーケティングには「守り」の施策も必要だということです。

SNSにひそむ代表的なリスクやトラブル9種類

社会問題化している誹謗中傷、アカウントを乗っ取られた友人から届くスパムメール、怪しげなフェイクニュース、毎日のようにネットを騒がせる「炎上」などなど……。SNSは、とても便利なサービスである一方、さまざまなリスクや、それに起因するトラブルが潜んでいます。以下、代表的なリスクやトラブルを挙げておきます。

【SNSにひそむリスクやトラブル】
  1. コミュニケーションのすれ違い
  2. 個人情報流出
  3. ネットストーカー
  4. アカウントのっとり
  5. なりすまし
  6. 情報漏えい
  7. 誹謗中傷(ネットリンチ)
  8. フェイクニュース(デマ)/ 風評被害
  9. 炎上

ここまで読んで、「こんなにいろんなリスクがあるのか! 怖いから、わが社ではSNSを利用するのは止めておこう」と考える慎重派の方もいるかもしれません。

しかし、残念ながら「SNSを利用しないこと」「SNSアカウントを作らないこと」では、こうした問題を予防できません。むしろSNSを利用していないことで、炎上などのトラブルの発見・初期対応が遅れてしまうリスクすらあります。

大切なのは、「SNSを利用しないこと」ではなく、「リスクを認識し、トラブルの予防策、発生時の対応体制、フローを整えた上で、SNSを正しく活用すること」です。当連載ではこれを「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」として、わかりやすく解説していきます。

企業が「誹謗中傷」を受けると、イメージダウンに加え売上低下・業績低迷もあり得る

さて、上述したリスクやトラブルは、すべて個人・企業ともに注意すべきものですが、当連載では「企業が特に注意すべきトラブル」として

  1. 誹謗中傷(ネットリンチ)
  2. フェイクニュース(デマ)/ 風評被害
  3. 炎上

を扱います。初回に取り上げるのは、いま特に注目を集めている「誹謗中傷」です。

SNSでの誹謗中傷をめぐる事件は、過去にも複数起きていますが、2020年5月には、テレビ出演者がSNS上での誹謗中傷を受けて命を絶ったとされる、悲しい事件が起きました。これをきっかけに、改めて「誹謗中傷」が大きく社会問題化し、さまざまな議論を巻き起こしています。

実は「誹謗中傷」の明確な定義は現存せず、意見としての「批判」との線引きも難しいとされているのですが、今回の記事では「事実ではない/根拠のない悪評」や「事実に対する過剰なクレーム(不利益を被るほどのクレーム)」などを、「(企業に対する)誹謗中傷」と定義したいと思います。

企業に対する誹謗中傷の具体例をいくつか挙げておきましょう。

  • 「〇〇はブラック企業だ」
  • 「△△(飲食店)は料理がまずいし、店員の態度も最悪だった」
  • 「株式会社□□の役員は脱税している」
  • 「☆☆のカップラーメンを買ったら、虫が入っていた!」

企業がこうした誹謗中傷を受けた場合、企業やブランドのイメージダウンはまぬがれず、さらに以下のような不利益が発生する可能性があります。

  • ・売上低下
  • ・株価下落
  • ・取引先減少
  • ・就職希望者減少・内定辞退者増加
  • ・従業員のモチベーション低下

レベル別で見る「誹謗中傷」の予防と対策

誹謗中傷には、誤解・憶測・悪意などによる「事実ではない/根拠のない悪評」と不祥事や商品の欠陥など「事実に対する過剰なクレーム(不利益を被るほどのクレーム)」とがありますが、いずれも予防するのは難しいでしょう。そのぶん、早期発見・早期対応が大切です。

以下に「誹謗中傷」の対応策をレベル別に解説します。

レベル1:放置(無視)

企業活動に不利益が出ないレベルの誹謗中傷であれば、放置(無視)することが最善策といわれています。

短時間に数多くの誹謗中傷コメントが殺到すると、大勢の人々から攻撃されているように感じてしまうものですが、まずは落ち着きましょう。実際には「誹謗中傷を行ったユーザー(炎上に加担する人=炎上が発生したときに1度以上書き込んだことがある人)」は、全体の1.5%程度しかいないという調査結果があります。すなわち、ごくわずかなユーザーが複数のアカウントを使ったりして繰り返し誹謗中傷を行っている可能性が高いのです。

炎上への関わり方(%・サンプルサイズ19,992)
出典:総務省 情報通信政策レビュー 第11号2015年11月

レベル2:削除要求

実害が出るほど誹謗中傷がエスカレートした場合には、誹謗中傷の削除を要求しましょう。

まず、「投稿を報告」「ツイートを報告」など、SNSで提供されている報告フォームから削除依頼を行う方法があります。この方法で削除してもらえなかった場合や、報告フォームが存在しない場合には、権利を侵害された本人または代理人が、「実印押印・印鑑証明添付の書面」あるいは「電子署名付きのEメール」で、本人の真正性を担保しつつ、プロバイダや掲示板管理者などに削除を要求できます。

レベル3:発信者情報開示請求

損害賠償請求など法的措置をとりたい場合には、誹謗中傷の発信者を特定する必要があります。そのような場合は、プロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報の開示請求を行うことができますが、以下の2段階の手続きが必要です。

  1. 「サイト管理者」に対して、IPアドレスの情報開示請求を行う
  2. 「プロバイダ」に対して、IPアドレスから発信者を割り出すため情報開示請求を行う

この際に、開示請求できる発信者情報としては、以下の内容があります。このうち「電話番号」はこれまで含まれていませんでしたが、前述したテレビ出演者の事件をきっかけに議論が進み、省令改正がなされました。

  • ・発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名または名称
  • ・発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
  • ・発信者の電話番号
  • ・発信者の電子メールアドレス
  • ・侵害情報に係るIPアドレス
  • ・侵害情報が送信された年月日および時刻

レベル4:法的措置(損害賠償請求など)

プロバイダが削除請求に応じてくれない場合、仮処分申立てや、誹謗中傷発信者への損害賠償請求など、法的措置が必要なこともあります。こういうケースでは、SNS・インターネットのトラブルや犯罪に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

法的措置を視野に入れた誹謗中傷対策では「証拠保全」が重要なアクションとなります。たとえば以下に挙げる情報は、速やかに保存しておきましょう。

  • ・誹謗中傷の投稿(コメント)画面キャプチャ、URL
  • ・誹謗中傷の発信者のプロフィール画面キャプチャ、URL
  • ・誹謗中傷が書き込まれた日時

「誹謗中傷」について、日頃からチェックしてほしい情報源

SNS上での誹謗中傷が社会問題化していることもあり、SNS関係団体や政府が、対策に乗り出しています。

FacebookやTwitter、LINEなどSNSプラットフォーマーらで構成される「ソーシャルメディア利用環境整備機構」(SMAJ)では、誹謗中傷の加害者を抑制し、被害者を救済する取組みの強化を表明しています。

参考
一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)
https://smaj.or.jp/
「ソーシャルメディア上の名誉毀損や侮辱等を意図したコンテンツの投稿行為等に対する緊急声明」|SMAJ
https://smaj.or.jp/news/pressrelease_20200526.pdf

総務省は「プロバイダ責任制限法」の有識者会議を設置し、被害者が裁判を起こさなくても投稿者の情報開示を受けられる仕組みなどを検討中です。今後のニュースにも注目しましょう。

参考
SNS中傷対策 匿名投稿者の電話番号開示へ プロバイダー責任制限法改正も 総務省 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200604/k00/00m/010/364000c

「誹謗中傷」対策について相談できる機関もいくつか存在しますので、必要な際には利用するのもよいでしょう。以下に例を挙げておきます。

参考
インターネット違法・有害情報相談センター
https://www.ihaho.jp/
誹謗中傷ホットライン(一般社団法人セーファーインターネット協会)
https://www.saferinternet.or.jp/bullying/

最後に:被害者だけでなく加害者にもならないことを意識すべし

今回は、SNSにひそむトラブルの1つ「誹謗中傷」について、企業への影響や対応策を解説しました。ここまではあくまで“被害者になるリスク”を述べてきたわけですが、私たちが“加害者になるリスク”もゼロではありません。以下に留意し自分自身が、絶対に加害者の側にならないことにも気を付けましょう。

加害者にならないために注意すること
  • 実世界と同様、SNSでの発言にも責任を持つ(面と向かって言えないことは投稿しない)。
  • 匿名でのSNS投稿でも、個人を特定されて法的措置をとられることを理解する。
  • 自分自身および周囲のSNSモラルとリテラシー向上に努める。
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