攻めるために守る! 知っておきたい「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」

「防げる炎上」はある! 炎上を未然に防ぎたいときの行動指針&チェックリスト(前編)

前後編に分けて「炎上の予防策」を紹介。前編の今回は、便利で具体的なチェックリストを使って、投稿内容を事前確認するなど、重要な行動指針3つを解説します。

SNSマーケティングで効果を上げている企業でも、ちょっとしたトラブルがきっかけで、成果を台なしにすることがあります。本連載は、企業のSNS担当者なら絶対押さえておきたい「守りのSNSマーケティング」=「SNSリスクマネジメント」をテーマに、炎上・誹謗中傷などSNSに潜むリスクやトラブルについて、基礎知識から予防&対応策までをわかりやすく解説します。

前回は、SNSに潜む「炎上」のリスクについて、個人や企業への影響、最新事例、発生~拡大のプロセスを解説しました。今回と次回は、2回に分けて、「炎上の予防策」を解説します。今回は、企業のSNS担当者が行うべき「炎上の予防策」を紹介します。

「防げる炎上」と「防げない炎上」、その2つを区別するには

前回記事では「炎上を100%防ぐのは難しい」と説明しましたが、実は炎上には「防げる炎上」と「防げない炎上」とがあります。たとえば企業が炎上するパターンは、「企業や企業公式アカウントによるもの」と「従業員によるもの」で大きく2つに分かれており、炎上の原因が「SNS内の出来事か」「SNS外の出来事か」「まったく関係なく巻き込まれたか」のいずれかの組み合わせで、以下の5つに分類できます。

企業が気を付けるべき炎上の5パターン

この5パターンのなかもさらに細かく分かれますが、赤枠の炎上は、予防がきわめて難しいと考えられます。「商品/サービスの欠陥」などは、どうしても防げない事故や災害による場合もありますし、自社・自社従業員が無関係の「巻き込まれ炎上」に至っては、もっとも予防が難しいケースといえるでしょう。

しかし、裏を返せば、それ以外の要因で発生する炎上は予防が可能ということです。企業のSNS担当者が行える「炎上の予防策」について具体的に見ていきましょう。

企業の公式アカウントなら「防げる炎上」は、徹底的に防ごう!

これらのうち、「企業の公式アカウントによる不謹慎な投稿/誤投稿」が原因の炎上は、もっとも防ぐべきであると同時に、もっとも予防しやすいものだと言えます。以下に挙げる対策をとり、徹底的に防ぎましょう。

(1)チームでのSNS運用体制・運用マニュアルを構築する
(2)SNS投稿案の段階で、徹底的な校正・校閲を行う
(3)操作ミス(誤投稿)も、徹底的に防ぐ

(1)チームでのSNS運用体制・運用マニュアルを構築する

SNS担当者が1人でSNS投稿案を作り、そのまま投稿するようなフローは、「投稿ミス」や「炎上」発生リスクが高いので避けましょう。
「誤脱字や固有名詞のチェック」「内容の事実確認(ファクトチェック)」「炎上しやすいテーマや表現を含んでいないかのチェック」などは、投稿案作成者と別のメンバー(Wチェッカー)による「Wチェック体制」を導入するのがお勧めです。そのためにも、2名以上のチームによるSNS運用体制を社内で構築しましょう。

さらに付け加えるならば、投稿案作成者とWチェッカーの「年代」「性別」「属性」が異なっているほうが多面的なチェックが可能で、炎上予防に効果的です。

数年前なら問題視されることもほぼなかったであろうテーマの投稿が、「世論や人々の価値観の変化」や「直前に発生したネガティブなニュース」などの影響を受けて炎上してしまうケースがあります。

企業のSNS担当者としては、最近の炎上事例はもちろんのこと、国内外のニュースやトレンドに対して常に敏感でいましょう。多様な価値観が存在していること、人々の価値観も時流にあわせて変化していることを知り、キャッチアップし続けることが大切です。

(2)SNS投稿案の段階で、徹底的な校正・校閲を行う

「SNS投稿前チェックリスト」を用意し、投稿案作成者とWチェッカーそれぞれが徹底的な校正・校閲を行いましょう。投稿案の文章(テキスト)や画像だけでなく、画像や動画に含まれる文章・キャプション・ロゴについても、同様の校正・校閲が必要です。

以下に、簡略版ですが「SNS投稿前チェックリスト」を載せておきますので、活用してみてください。これをベースに、自社の「SNS投稿前チェックリスト」を充実させるといいでしょう。

SNS投稿前チェックリスト<表現編>
  • 誤字・脱字・衍字(えんじ、不要な文字)がないか
  • 外国語のスペルに誤りはないか
    文書作成ツールの「スペルチェッカー」を使ったり、単語レベルでGoogle検索したりしてチェックしましょう。
  • 機種(環境)依存文字が含まれていないか

    参考
    総務省|東海総合通信局|その3 半角カタカナや機種依存文字を使用しない
    https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/siensaku/accessibility/L3_text1.html

  • 固有名詞は正しいか
    手入力せず、信頼できるWebサイトからコピー&ペーストで入力しましょう。
  • URLは正しいか
    テストサイトや社内限定公開サイトではないか確認しましょう。
    クリックするとNot Foundにならないか確認しましょう。
  • メンション(宛先)が正しく機能するか
  • 芸能人・著名人をメンションする場合、そのアカウントが確かに本人のものか確認したか
  • ハッシュタグは正しく機能するか
  • ハッシュタグをタップしたときに、公序良俗に反する投稿が多数表示されたりしないか

SNS投稿前チェックリスト<内容編>
  • 内容は正しいか
  • 日付や曜日など具体情報に間違いはないか
  • 言葉の意味などを誤解して使っていないか
  • デマやフェイクニュースを事実として扱っていないか
    事実確認には、信頼できる文書やWebサイトの情報を利用しましょう。
  • 法令順守しているか(著作権、肖像権、商標権、景表法など)
  • 誤読される可能性が低い文章になっているか
    例:「週末」という単語だと、人によっては「土日」「金曜」「日曜」のように解釈が異なります。厳密な表現を使いましょう。
    例:「私はAさんとBさんのところに行った」という文は、「私はAさんといっしょに、Bさんのところに行った」「私は1人で、AさんとBさんがいるところに行った」など、複数の解釈が可能です。厳密な表現を使いましょう。
  • 「炎上危険日」の投稿ではないか
    過去に大きな災害等が発生しており、多くの人々が悲しい記憶を呼び起こされる「炎上危険日」と定義されている日があります(1月17日、3月11日、8月6日、8月9日、8月15日など)。不謹慎・無神経と思われるような投稿でないか、投稿しようとした当日や直前に、日本全国をゆるがすような悲しいニュースが発生していないかを確認しましょう。
  • 炎上しやすいトピックを含んでいないか
    SNSエキスパート協会では、“特に炎上しやすい話題”として「炎上さしすせそ」を提唱しています。こうしたテーマは極力避けるのがお勧めです。どうしてもこれらのテーマで投稿する場合には、表現などに十分注意し、投稿後にも「炎上が発生していないか」を通常以上に注視するようにしましょう。

【炎上さしすせそ:特に注意しておきたい5つの題材】
・さ:災害、差別
・し:思想、宗教
・す:スパム、スポーツ、スキャンダル
・せ:政治、セクシャル(性的な言及。あるいはLGBT、ジェンダーなどへの言及など)
・そ:操作ミス(誤投稿、アカウント切替ミスなど)

参考
「Twitterの光と闇」をまとめてみた|We Love Social
https://www.comnico.jp/we-love-social/twitter-case-1

(3)操作ミス(誤投稿)も、徹底的に防ぐ

上述した「炎上さしすせそ」のうち、「そ:操作ミス(誤投稿)」は厳密にいうと投稿テーマでもトピックでもありませんが、比較的よく見られる炎上要因のため、注意喚起としてあえて含めています。

操作ミス(誤投稿・誤爆)による炎上はたいてい、「企業のSNS担当者が、自分のプライベートなSNSアカウントに投稿するつもりの内容を、誤って自社の公式SNSアカウントで投稿してしまう」というミスから発生しています。有名な企業公式アカウントでも起きているミスのため、「自分だけは大丈夫」と思わないことが大切です。

予防策として、以下2つをお勧めしておきます。

デバイスを分ける

プライベートなSNSアカウントへの投稿は「自前のスマホから」、企業の公式SNSアカウントへの投稿は「会社のパソコンから」行うことを徹底しましょう。さらに、公式SNSアカウントへの投稿時はSNSへの「ログイン/ログアウト」を毎回行うことが望ましいでしょう。

SNS管理ツール(SNS投稿支援ツール)を使う

企業の公式アカウントへの投稿は常にSNS管理ツール経由で実施するよう徹底することで、アカウントの取り違えによる誤投稿(誤爆)を防ぐことができます。さらに、Wチェックやトリプルチェックを通らないと投稿できない「承認フロー」を設定できる機能が備わっているツールを選べば、炎上リスクは一層小さくなるでしょう。

今回は、企業のSNS担当者が行うべき「炎上」予防策について解説しました。次回は後編として、おもに「従業員がきっかけの炎上」に対する予防策を解説します。

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