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効果的なリンクビルディングを成功させる10のプロセスと便利なツールたち【前編:手法と事例】

リンクビルディングは、今なお極めて効果的なデジタルマーケティング戦術の1つだ。「リンクしてもらえるコンテンツ」「エゴベイト」「関係性の構築」「リンク切れ起点のリンク獲得」を組み合わせた新しいアプローチと、10のプロセスそれぞれで使える便利なツールを紹介する
筆者の見解はすべて筆者自身のものであり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

リンクビルディングは、今なお極めて効果的なデジタルマーケティング戦術の1つだ。検索順位が上がるだけではない(確かにオーガニックな検索順位決定要因ではあるが)。リンクはそれだけでなく、

  • 他サイトからのクリックスルーを促し
  • リードを生み出す

ことによって、検索トラフィックや広告トラフィックへの依存度を下げてくれる。

とは言うものの、昨今のグーグルは、自前でリンクを増やすような戦術のほとんどに難色を示している。間違った手法を使うと検索でビジビリティが落ちることになるおそれがあるいま、どのようにリンクを構築すればいいのだろうか。

はっきりしていることがある:

  • リンクビルディングはスケーラブルではない
  • リンクビルディングは簡単でもなければすぐにできるものでもない

リンクビルディングの新しいアプローチとは、次のようなマーケティングのあらゆるアセットとプロセスを統合したものだ:

  • コンテンツマーケティング
  • 関係性の構築
  • インフルエンサーへの働きかけ

この記事では、効果的なリンクビルディングキャンペーンの方法そのものについて要点を説明する。

リンクビルディングキャンペーンで目指すもの

リンクビルディングを目的としたキャンペーンでは、次のものを手に入れなければならない

  • リンクをもたらすアセット
  • 検索上位を獲得できるアセット
    (ライターやブロガーの大半は参照すべきソースをグーグルで検索して探すので、検索順位が高いコンテンツはオーガニックなリンクが集まる)

ここにはちょっとした循環論法がある。リンクを獲得するには検索上位を獲得するコンテンツが欲しいところなのだが、リンクなしに検索順位は上げづらいのだ。

リンクを集めることが必要
リンクビルディングのアセットの循環論法
グーグル検索で上位獲得が必要

リンク獲得のキャンペーンを本気で成功させたいなら、

  • リンクしてもらえるコンテンツアセット
  • 関連キーワードにおけるグーグル検索の上位

の両方を狙う必要がある。

スパムでなくスケーラブルでもないリンクビルディングの手法とは

  • リンクしてもらえるコンテンツ ―― 被リンクを集めるコンテンツの調査と制作。これがないとリンクは集まらない

  • エゴベイト ―― インフルエンサーをコンテンツで取り上げることで、公開したコンテンツに被リンクしてもらうと同時に、その名前を活用してさらにリンクを集める

  • 関係性の構築 ―― ソーシャルメディアでパブリッシャーやジャーナリストとつながり、ブランドに馴染みを持ってもらい、それによってレスポンスを良くする

  • リンク切れ起点のリンク獲得 ―― アクセスできないページにリンクしているウェブサイトのオーナーに連絡し、代わりに自分のサイトの「生きた」ページにリンクしてくれるよう依頼する

リンクと検索上位の両方を手に入れたければ、こうしたリンク獲得手法すべてを1つのキャンペーンに盛り込む必要がある。

関係性の構築
リンクしてもらえるコンテンツ
堅実なリンク獲得キャンペーン
エゴベイト
リンク切れ起点のリンク獲得

具体的な手順とツールの説明に入る前に、実際にあった例でこれまでの話を説明する。

リンクビルディングキャンペーンの実例

LED照明の製造販売を手がけるEコマースクライアントがいた。われわれは「光」を中心的な主題に据えて調査を進めた。そして次のような切り口を考えついた。

  • 光療法
  • 光と(子供たちの)創造性
  • 光と生産性

コンテンツ調査を進めるなかで、いくつもの有力パブリッシャーが複数の記事で紹介しているインタビューを見つけた。ニューヨークにある照明研究センターの教授が、アルツハイマー病患者に対する青色光の効果を語ったもので、インタビューは2015年に行われた。

このインタビュー記事はとうの昔に削除されていたのだが、そのページを参照していた多くの記事でリンクはまだ残っていた。

これを念頭に、われわれは次の手順で進めた。

  1. このテーマに関する最新情報について話を聞くためこの教授と連絡をとった。教授はアルツハイマー病の患者のための新しい室内インテリアデザインを紹介してくれた。偶然にも、クライアントがEコマースで力を入れている「インテリア照明」と完璧に一致した。

  2. キーワードなどを追加で調査し、「アセットをどんなキーワードで検索上位にランクインさせればもっと多くのブロガーやジャーナリストに見つけてもらえるのか」を明らかにした。

  3. 同時に、実際のコンテンツに取りかかるより先に、削除されているインタビューについて記事を書いたことのあるジャーナリストやブロガーを割り出した。

    また、(アルツハイマー病などわれわれの切り口に沿って)こういったテーマを扱っている有力インフルエンサーを見つけた。

    リンクに関する働きかけをする前にわれわれのチームと顔なじみになってもらうために、ツイッターのリストを作り、やり取りを開始した。

こうして、実際のコンテンツアセットに取りかかり始める段階では、次のようなことが判明していた:

  • リンクしてもらえるアセットのテーマ
  • コンテンツ作りに参加してもらえる専門家
  • コンテンツを公開したらすぐに働きかけが可能なブロガーやジャーナリスト
リンク獲得のための働きかけを念頭に置いたコンテンツ調査
リンクしてもらえるコンテンツの調査
リンク切れの調査
専門家との協力
ジャーナリストとの協力
コンテンツ作成時
コンテンツ公開後
リンクを念頭にコンテンツを制作:
・リンクを集める切り口は?
・リンクにつながる参照先/引用元は?
・参照先がなくなっていて、自分のところにリンク先を変更してもらえるリンクはないか?
・グーグルで検索上位に入る(そして継続的なクリックスルーにつながる)可能性がしっかりあるか?

実際に働きかけを開始するまでに、2つの強力なアドバンテージができていた。

  • 働きかけのメールで教授の名前を利用できた

    これは「エゴベイト」の戦術だ。リンクを張ってもらうように働きかけるメールのなかで著名な教授の名前を挙げることで、リンクを張ってもらう可能性を高められる。

  • Twitterでやり取りした(あるいはすでにリンクしてくれている)ほかのインフルエンサーを紹介できた

    加えて、新たに構築したソーシャルメディアの人脈を駆使して働きかけ先をさらに調査および発見できた。

著名人(著名サイト/著名メディア)の名前を使ったエゴベイト
ステイシーさん
アルツハイマー病患者の生活や療養所にCCCを活かす方法に関するこのリソースの制作に関しては、BBB研究センター主任のAAA教授と協力しています。
より注目を集めるに値するものだと考えており、拡散の協力をお願いするためご連絡いたしました。
リソースページやブログで以下のリンクをご紹介いただけないでしょうか。
DDD
ご質問があればお問い合わせください。
EEE
リサーチおよびコンテンツ担当責任者
・Mashableに掲載されたインフォグラフィックなのであなたもぜひ。
・ウィル・レイノルズ氏にリンクしていただきました。あなたのこの投稿でも紹介なさってはいかがでしょうか?
・ランド・フィッシュキン氏がツイートしたわたしの投稿をご覧になりましたか? 同じテーマに関して投稿する場合の情報源にいかがでしょうか。

すでに紹介したものを含め、リンクビルディングで行ったことを整理すると次のとおりだ。大切なのは、「いずれかの戦術がステップ1というわけではない」ことだ。すべての戦術が同時に立ち上がり、相互に情報を共有し、導き合ってお互いの力となる。

どれかの戦術から始まるというわけではない。すべての戦術が同時に立ち上がり、相互に情報を共有し、導き合ってお互いの力となる
制作と公開の前
切り口:ヘルスケア(アルツハイマー病)の調査
アルツハイマー病について記事を書いているブロガーやジャーナリストとの関係構築を開始
LED照明
専門家(すでに連絡をとっている人)のインタビュー記事が削除されているのを見つける
インタビューが削除されたせいでリンク切れになっているページをすべて見つける
公開後
現在連絡を取り合っている相手にメールし、さらに働きかけが可能な相手を見つける
削除されたURLにリンクしている全員にメールする
インフルエンサーにメールする

各プロセスで使えるツール

こうしたリンクビルディングの戦術は、前述のようにすべて相互につながっている。そのため「ステップ」が存在しないことを理解したうえで、ここからは一体化した効果的なリンクビルディングキャンペーンを開始する際に使えるツールを紹介していく。

  1. リンクしてもらえるコンテンツアセットの制作
  2. ブレインストーミングのツール「TextOptimizer」
  3. 働きかける対象を決める
  4. Twitterのプロフィールを検索して働きかけの対象をさらに見つける(後編で解説)
  5. リンク切れ始点のリンク獲得(後編で解説)
  6. ソーシャルメデイアでの働きかけ(後編で解説)
  7. メールによる働きかけ(後編で解説)
  8. キャンペーンのパフォーマンスをモニターする(後編で解説)
  9. リファラーに基づいてコンテンツアセットをパーソナライズする(後編で解説)
  10. 被リンクをモニターする(後編で解説)

1. リンクしてもらえるコンテンツアセットの制作

コンテンツ制作を伴うキャンペーンの大半がそうであるように、この場合も最初はやはりブレインストーミングから始まる。

ただし、このブレインストーミングでは決まっていることがある ―― 「リンクしてもらえる」という切り口からスタートするのだ。つまり、「リンクしてくれる」予定のリードを念頭に置いておかなければならない。

一般にリンクしてもらいやすい切り口を次に挙げる。

リンクしてもらいやすい切り口
  • 「~の安全性」
  • 「~の歴史」(特に教育者に働きかける予定の場合)
  • 最近の研究(特にジャーナリストに働きかける予定の場合)
  • 業界調査(と統計)。ニッチ分野を扱うブロガーに効果的
教育的コンテンツをブレインストーミング
・「~の安全性」
・「~の歴史」
・「~の構造」
・持続可能性
・男女の平等……など
画像はdigitaleagles.com.auをもとに作成、詳細もリンク先を参照

人によってはやることがもっとある。たとえば、ローカルな事業を抱えている(マーケティングしている)なら、ここに挙げた切り口をローカライズする必要がある。

リンクしてもらえるアセットの形式も考えければならない。選択肢はたくさんある。

リンクしてもらいやすいアセット
  • スライドショーとプレゼンテーション
  • 電子書籍
  • ホワイトペーパー
  • 各種調査
  • 質問と回答/質問企画(Ask Me Anything)
  • ウェブセミナー
  • インフォグラフィック
  • チートシート(虎の巻)
  • 動画の文字起こし
  • ポッドキャスト
  • インタビュー
  • ツール
  • 掘り下げ記事
  • Excel書類
  • Word書類

……または、1つのキャンペーンに複数の形式を使う場合もある(再パッケージング)

ただし、コンテンツは1つの形式にこだわる必要はない。コンテンツの転用を活用して複数の形式を試すこともできる(おそらく、そうするべきだ)。

2. ブレインストーミングのツール「TextOptimizer」

Text Optimizer」は、より多くの切り口を見つけて調査対象を絞り込むのに便利なすばらしいツールだ。意味解析を駆使してグーグル検索結果のスニペットから関連する物事やコンセプトを抜き出してくれるので、カバーするべき具体的な切り口を見つけるのに役立つ。

※Web担編注 TextOptimzerはUIに日本語表示(ベータ版)があるがほとんど日本語化されておらず、日本語のページを対象とした分析も現時点では適切にはできないようだ。

テーマの具体的なアイデアができたら、1つひとつTextOptimizerに入れて関連する切り口や注目すべき問いを見つけていく。

コンテンツの切り口をさらに見つける(また、コンテンツをまとめる用意が整った際に最適化する)ための「関連する物事やコンセプト」
リンクしてもらえるアセットを構築するための基盤になる「関連する問い」

コンテンツ調査のツールについては、ニッチな質問の調査と最適化に関する記事でさらに紹介している。

3. 働きかける対象を決める

これは、複数の段階からなる連続的なプロセスであり、そこに終わりはない。始めやすくて比較的すぐにできるのは、Serpstat「Top Pages」ツールを使ってみることだろうか。核となる言葉に関連するさまざまなクエリでグーグルの検索結果にどんなウェブページが表示されるのかを知ることができる。

※Web担編注 Serpstatは、日本語でも問題なく扱えるようだ。

これらのURLをダウンロードして(コンテンツ制作の前であっても)働きかけの計画を発展させる

大切なのは、核となるクエリで検索上位を獲得しているページのリスト全体をエクスポートし、それぞれについて働きかけの戦術を判断することだ。

この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、効果的なリンクビルディングを構成する10のプロセスのうち、残る7つを紹介する。→後編を読む

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