『Amazon広告“打ち手”大全 最強の戦略77』(全10回)

Amazon DSPは配信先とターゲティングが鍵!

どの広告もどこに掲載して誰に広告を届けたいのかがポイントです。Amazon DSPでできるターゲティングと広告配信先を紹介します(第5回)。

2019年4月19日発売の書籍『Amazon広告“打ち手”大全 最強の戦略77』の一部をWeb担で特別公開。

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「外」はターゲティングと
配信先で決まる

Amazon DSPは誰に、どこに掲載するのかがポイント

Amazonの購買データを利用しながら、外部サイトにも自社商品の広告を掲載できるAmazon DSPは、やや高度な概念の理解が必要になります。ポイントになるのはターゲティングと配信先です。

さらに幅広く集客したい広告主のためのプラットフォーム

Amazon広告のもう1つのソリューション、Amazon DSPでは、ターゲティングにおけるオーディエンス〈※1〉=「誰に」広告を出すかと、配信先=Webサイトや広告プラットフォームなど「どこに」広告を出すかがポイントになります。

※1 オーディエンス
広告の配信対象となるユーザーのまとまりのこと。

「DSP」(Demand-Side Platform)はネット広告業界でよく使われる用語で、広告の需要側である広告主のためのプラットフォームを意味します。対になる用語に「SSP」(Supply-Side Platform)があり、こちらは広告の供給側となるメディアのためのプラットフォームです。双方が連携することで、広告主にとっては費用対効果の向上、メディアにとっては広告収益の向上が可能になります。

本書執筆時点では、Amazon DSPの利用にはAmazon広告を取り扱う代理店、またはAmazonへの依頼が必要です。事業会社である広告主が自社のみで運用することはできません。課金方式としてはインプレッション〈※2〉課金となります。ここではAmazon DSPの全体像に触れ、具体的な施策の詳細はChapter 3で解説します。

※2 インプレッション
広告が表示された回数のこと。「インプ」「IMP」と略す。

Amazonの購買データなどをターゲティングに活用

以下の図は、Amazon DSPのターゲティングと広告配信先について大まかにまとめたものです〔図表7-1〕。

ターゲティングにおける最大のメリットは、Amazonが保有する購買データに基づくオーディエンスを活用できる点です。ユーザーの閲覧・購買履歴はもちろん、それらから想定される30種類以上のライフスタイルセグメントなどをターゲティングに活用できます。

加えて、自社(広告主)が保有するデータも使えます。自社サイトに「Pixel」〈※3〉と呼ばれるコードを設置することで、自社サイトを訪問したことがあるユーザーのリストからオーディエンスを作成できます。また、既存顧客やメルマガ会員などのメールアドレスのリストを広告のターゲティングに生かすことも可能です。

※3 Pixel(ピクセル)
本来は「画素」の意味。デジタルマーケティングにおいては、Webサイトを訪問したユーザーの情報を識別するためのコードを指す。

さらに、外部DMP〈※4〉が保有するオーディエンスデータの一部も、Amazon DSPのターゲティングに設定できるようになっています。

※4 DMP
「Data Management Platform」の略。Webサイトの利用状況やユーザーの属性など、Webにおけるさまざまなデータを蓄積・管理するためのプラットフォームを指す。

Amazon DSPのターゲティングと広告配信先 〔図表7-1〕

既存顧客の類似ユーザーやリターゲティングも使える

Amazon DSPにおける代表的なターゲティングの設定を以下に紹介します。広告の目的に応じて、これらを使い分けたり、組み合わせたりしながら広告を配信していきます。

ライフスタイルターゲティング

Amazonにおける商品の閲覧・購買履歴に基づいて、ユーザーを「デジタルライフ関心層」「釣り好き」「ペットオーナー」「子育てパパママ」といったライフスタイルセグメントに分類し、ターゲティングします。特定のジャンルに興味・関心がある人に幅広くリーチすることが可能です。

ホットカスタマーターゲティング

Amazonにおける直近の閲覧履歴に基づき、特定の商品カテゴリーに対する購買意向が高いユーザー層にアプローチします。データはリアルタイムで更新されるため、今まさに、購入の一歩手前にいると思われるユーザーを対象にできるのが特徴です。

オーディエンスターゲティング

Amazon DSPのPixelによって識別された自社サイトの既訪問ユーザーや、自社が保有しているメールアドレスの顧客リストなどからオーディエンスを作成することで、もともと自社を知っている人にターゲティングできます。このオーディエンスから後述する類似ユーザーを作成するなど、本来ターゲティングしたい人の基になるオーディエンスとしても利用します。

類似ユーザー

英語では「LOOK A LIKE」と表現し、基になるオーディエンスと共通する属性や興味・関心を持つユーザーをターゲットにします。例えば、自社の顧客リストから作成したオーディエンスから類似ユーザーを作成し、既存顧客と共通する特徴を持つ新規ユーザーを広告の配信対象にできます。

リターゲティング

ネット広告における定番の手法として知られるリターゲティング〈※5〉を、Amazon DSPでも実施できます。Pixelが設置された自社サイトの既訪問ユーザー、またはAmazonの商品詳細ページを過去に閲覧したことがあるユーザーをターゲットにします。

※5 リターゲティング
自社サイトや商品に一度接触した人に、広告によって再度アプローチすること。リマーケティングとも呼ぶが、本書ではリターゲティングで統一する。

アドバタイザーオーディエンス

Amazonが持つ匿名化された会員リストと、広告主(アドバタイザー)が保有する顧客リストを照合することで作成したオーディエンスに広告を配信します。Google広告の「カスタマーマッチ」〈※6〉に近いもので、自社の顧客かつAmazonの会員IDを持つ人にリーチできます。

※6 カスタマーマッチ
Google広告では、自社が保有する顧客リストとGoogleアカウントを照合することで、そのユーザーがGoogle検索やYouTubeを利用したときに広告を表示できる。

なお、広告主が直接ログインすることは想定されていませんが、Amazon DSPにも管理画面が存在します(本書執筆時点では英語表記)。新しいPixelやオーディエンスの作成などは、この管理画面を通じて行うことになります〔図表7-2〕。

新しいPixcelの作成画面 〔図表7-2〕

大手メディアサイトやGoogleが持つ広告枠に配信

広告配信先について、Amazon DSPではAmazon内と外部サイトの両方に広告を掲載できます。このうち、Amazon内は純広告の余剰在庫〈※7〉に対しての配信となるため、実質的には外部サイトへの配信のほうがメインになります。

※7 純広告の余剰在庫
Amazonの広告枠を直接買い付けて出稿するのが純広告。その枠が余った場合にAmazon DSPの広告が配信されるが、純広告が完売になりやすい10~12月、3月には配信量が減る傾向がある。

外部サイトはさらに「Amazon Publisher Services」(APS)と、外部提携Ad Exchange〈※8〉/SSPに細分化できます。APSはAmazonが直接取引をしているWebサイト群で、朝日新聞デジタルやオールアバウト、東洋経済オンラインといった大手メディアが該当します。

※8 Ad Exchange
複数の広告プラットフォームとメディアの間で、広告枠の売買を可能にする仕組み。大まかにはSSPと同じ働きをする。

外部提携Ad Exchange/SSPには、Google Ad Exchangeが含まれています。つまり、Googleディスプレイネットワーク(GDN)と同様の広告枠に対して、Amazonの購買データに基づくターゲティングによる広告配信が可能です。代表的なAPSのWebサイトと、外部提携Ad Exchange/SSPの一覧は下図の通りです〔図表7-3〕。

特別な事情がない限り、最初の段階で外部サイトの配信先を絞ることはせず、まんべんなく広告を掲載するのがいいでしょう。WebサイトやAd Exchange/SSPごとの成果が見えてきた時点で、強弱をつける運用が現実的です。

主なAPSのWebサイトと外部提携Ad Exchange/SSP 〔図表7-3〕

モバイルアプリへの配信や動画広告にも対応

Amazon DSPでは、広告配信先ごとに配信面(広告枠の種類)を選ぶことも可能です。管理画面では「Line item type」と表記され、以下の表にまとめた3種類があります〔図表7-4〕。

もっともよく使うのは、Amazon内外を問わずデスクトップとモバイルの両方にイメージ広告を配信できる「Standard display」です。アプリに配信したい場合は「AAP-Mobile APP」を、動画広告を配信したい場合は「Video」を選択します。Standard display以外は外部サイトのみの対応なので、頭に留めておきましょう。(寳)

Line item typeの対応デバイスと配信面 〔図表7-4〕
まとめ

ネット広告の運用経験がない人にとって、Amazon DSPを一度で理解するのは難しいものです。まずは経験者や代理店の協力を得て取り組んでください。

2019年4月19日発売の書籍『Amazon広告“打ち手"大全 最強の戦略77』をWeb担で一部公開中

『Amazon広告“打ち手”大全 最強の戦略77』
  • 鳴海 拓也+寳 洋平 著
  • 発行:インプレス
  • ISBN:978-4295005629
  • 価格:2,500円+税

ネット広告は「3強」の時代へ。
ECの本丸を攻略するための“打ち手"を先駆者が提案

Google広告(旧AdWords)、Facebook広告に続く運用型ネット広告として、「Amazon広告」(Amazon Advertising)が急成長しています。

その最大の強みは、Amazonが持つ圧倒的な規模の「購買データ」を利用できること。商品を買いたいユーザーが数多くアクセスし、実際に購入していくAmazonという場が広告プラットフォームとして魅力的であることは、もはや疑いようがありません。

また、Amazon広告では購買データに基づいたターゲティングにより、外部のメディアサイトやSNSに掲載した広告から、自社商品のAmazon詳細ページなどに集客することも可能です。顧客となりうるユーザーを幅広いサイトから的確に見つけて売り場に呼び込む、強力な販促手段として期待が高まっています。

本書では、コンサルタントとしてAmazon広告にいち早く取り組んできた著者が、Amazon広告の自社運用、および代理店に運用を依頼する際の具体的な“打ち手"を提案。前提として知っておくべき知識や心構えから、Amazon内の検索・ディスプレイ広告、Amazon外でのターゲティングやリマーケティング、広告の評価と拡大に向けた施策まで、成果につながるノウハウを体系的に解説していきます。

用語集
Amazon広告“打ち手”大全 / DMP / DSP / Google広告 / インプレッション / リターゲティング / 世界最大のECサイトで広告運用に挑む / 最強の戦略77 / 訪問
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