インタビュー

ドイツのアドフラウド防止技術は世界一!? Adjustが発表した不正広告対策の新機能「クリック認証」とは

モバイル計測、アドフラウド防止対策のリーダーである独Adjust社が、新たなアドフラウド対策として、新機能「クリック認証」を発表した。
 

モバイル計測で日本トップシェアを誇る独Adjustは、2016年から本格的にアドフラウド対策を行っており、この分野でも業界内をリードする存在である。2019年2月13日、新たなアドフラウド対策として、「クリック認証(Click Validation)」を発表した。

今回のインタビューでは、Adjustカントリーマネージャーの佐々直紀(さっさ なおき)氏に「クリック認証」を解説していただくとともに、Adjustが中心となって発足したアドフラウド防止のための業界団体CAAF(Coalition Against Ad Fraud、アドフラウド防止連合)の設立経緯や、その意義などもお話しいただいた。

Adjustはアプリのトラッキングツール

――Adjustのサービスについて、簡単にご紹介いただけますか。

佐々: Adjustでは、モバイルの計測ツールを提供しています。Webの人には、アナリティクスツールのようなものというとイメージしやすいかもしれませんね。アプリがインストールされるまでの経路分析だけでなく、アプリ内の行動ログ抽出も行えます。モバイルアプリが主体ではありますが、通常のPC Webも同様に計測可能です。

――広告配信機能はあるんですか?

佐々: 広告は配信できません。Adjustはあくまでも計測プラットフォームなので、各アドネットワークには、トラッカーURLを一度Adjustのサーバにリダイレクトする形で、入稿URLとして使っていただくことで、測定ができる仕組みになっています。

――アトリビューション分析もおこなえるのですね。

佐々: はい。Adjustが判定しているのは、ラストクリックです。1ヵ所だけにインストールのアトリビューション――「おかげ」という意味です――をつけています。

アトリビューションの割り振り方にはいくつかのモデルがありますが、ラストクリックアトリビューションモデルでは、最後のクリックにアトリビューションを100%割り振ります。たとえば、ユーザーが広告A、B、Cをクリックしたけれども、結局、広告Cをクリックした後にインストールした場合、広告Cにインストールのアトリビューションが100%付いたとみなします。

Adjustカントリーマネージャージャパン 佐々直紀(さっさ なおき)氏

インプレッションなきクリックは不正

――さて、先日Adjustが提唱した「クリック認証(Click Validation)」とは、いったいどういうものなのでしょうか?

佐々: 「クリック認証」とは、Adjustが新たに開発したアドフラウド防止のためのフィルタで、広告チャネルがユーザーから獲得したクリックを申告する際の、新しいルールです。具体的には、ユーザーが広告をクリックしてアプリをインストールしたとき、そのクリックにはユニークIDを付与したインプレッションとセットで申告する、というものです。

クリック認証のイメージ。ユーザーA、C、Eによる広告クリックがインプレッション情報とセットで申告されたが、紐付けられたインプレッションが正しいものであったユーザーAのクリックだけがアトリビューションとして認証された。一方、ユーザーC、Eのクリックは紐付けられたインプレッション情報が正しくないものだったので、アトリビューションとして認証されたなかった。

――ただ、クリックがあったよと言うだけではもうダメで、これからはクリックにきちんと本物であるという証拠をつけて報告しましょう、ということなのですね。

佐々: そうです。「クリック認証」は、「正しいクリックには、その前に必ず、クリックに紐づく正しい広告インプレッションがある」という考えに基づいて設計されました。逆に言えば、そうでない現状が横行しているからこそ、新しい業界統一ルールとして今回提唱に至ったわけなのですが。

――広告を踏んでないのに、踏んだとウソの報告をする例が多いということでしょうか?

佐々: ウソの報告は言い過ぎですが、アドネットワークによってクリックの定義が異なっているのは事実で、クリックされていないのにクリックされたものとして扱うネットワークも存在します。たとえば、動画広告を一定秒間視聴したらクリックとみなすとか、静止バナーが一瞬でも表示されたらクリックとみなすとか。

――それで、広告をクリックしてアプリがインストールされたよと報告されたら、広告主としては納得できませんよね。

佐々: そうですよね。そのためにも、インプレッションとクリックの定義を業界内で統一する必要があります。それによって、アドフラウド対策も効果的に行うことができるわけです。

 

「クリック認証」がアドフラウドを防ぐ

――ひとくちにアドフラウドと言っても、さまざまな手口がありますが、「クリック認証」を実施することで防げるアドフラウドとは、どんなものがあるのでしょうか?

佐々: アドフラウドは、大きく2つに分類できます。

  • インプレッションやクリック自体のなりすましによる、アトリビューションの奪い取り
  • アトリビューション自体のなりすまし

――アトリビューションの奪い取りとは?

佐々: 代表的なものがクリックスパム。とにかく今は、人間が介在しない、ボット(BOT)によるクリックが横行しています。人間が広告と接触せずにアプリをインストールする行為をオーガニックと呼んでいますが、オーガニックなユーザーから、アトリビューションを奪おうと、クリックのなりすましを行います。

もう少し高度なものに、クリックインジェクションがあります。これは、アプリのダウンロードを検知すると、その瞬間にそのアプリの広告を踏んだことにする手口です。

――聞くだけでエグい感じですね。2つ目のアトリビューション自体のなりすましとは?

佐々: 代表的な手口はスプーフィング。SDKスプーフィングとか、トラフィックスプーフィングともいいます。これは我々のような計測事業者を騙す手口で、今一番グローバルで問題になっているアドフラウドです。スマホ内のSDKというプログラムとサーバ間の通信を傍受して、偽物のデータセットを作り、ありもしないインストールが発生したかのように見せかけます。こういった手の込んだ悪質なアドフラウドも、「クリック認証」を実施することで防止できるのです。

――「クリック認証」はもうすでに実装されているのでしょうか?

佐々: Adjustのアドフラウド防止ツールを採用している一部のクライアントを対象に試験的に導入するほか、CAAFメンバーの広告パートナーは、年内の実施を目指して取り組んでいます。

 

Adjustはオープンソースのコードがベース

――Adjustを利用するためには、どういう手順で導入するのでしょうか?

佐々: 5行くらいのオープンソースのコードを、アプリの指定箇所に埋めていただくだけで導入できます。GitHubに全部公開しています。アプリ開発エンジニアさんに見てもらえば、ソースが見えて安心ですし、簡単な手順で埋め込めます。

――料金の目安はどれくらいでしょうか?

佐々: 月額15,000円~、75,000円~、375,000円~、1,100,000円~、1,760,000円~と、5つのパッケージを用意しています。オーガニック以外のインストール数に対して金額が変わっていくようなイメージです。極端な話、たとえば、月間100万インストールがすべてオーガニックで来るようなアプリで、なおかつ広告も何も打っていませんとなれば、15,000円で済んでしまう、ということです。

広告を一定量実施している広告主の場合は中間のプラン以上になりますが、効果的なマーケティングに必要なあらゆる機能が備わっていますので、とてもリーズナブルですし、管理画面へのアクセスユーザー数や登録アプリ数、アプリ内イベント数などで料金が変動することがなく、とてもシンプルな料金体系です。

日本企業に危機感が薄い理由

――近年アドフラウドに関する記事やニュースは増えましたが、実際に熱心に取り組んでいるのは、ごく一部の広告主に留まっている印象もあります。多くの広告主にあまねくアドフラウドに対する危機感を持ってもらうには、どう訴えればいいと思いますか?

佐々: やはり、わかりやすいメリットを提示するのが一番だと思います。アドフラウド対策をすることで、広告費が大幅に削減可能だということを理解してもらうのが一番早い

――そう強く言い切るということは、それだけアドフラウドによる被害が蔓延しているということなんでしょうか?

佐々: そうです。Adjustの不正防止ツールを導入直後のデータを見ると、全インストールのうち、平均約20%がアドフラウドとして除外されています。どのネットワークを使っているかで違いがありますが、少なくても5~10%、多いと30%以上除外されています。

――20%といえば、広告費が1,000万円だったら、そのうち200万円は不正業者に流れていることになる。深刻な損失ですよね。

佐々: それでも、話を聞くだけだとなかなか実感が持てない企業は多く、啓蒙が必要なところだと思います。Adjustでは、「不正防止ツールの無料トライアル」を用意しているので、実際のキャンペーンで使っていただけます。アクティブにするとすぐに除外が始まりますが、2週間ほど走らせていただければ、おおむね全体の状況がわかります。たいていビックリするような結果が出て、初めて真剣に検討いただけることが多いですね。

――実際の状況を知って、ようやく、自分事になるというわけですね。

佐々: そうですね。日本の企業の危機意識が低い背景の一つとして、代理店文化があることが大きいのだと思います。代理店にすべて任せるから社内に知見がない。また、代理店から提言がない限り、進めにくいという現状もあると思います。同様のことは、アドネットワークにも言えます。アドフラウド対策のフィルタを入れた直後は、どうしてもインストールの貢献が減ったという見え方になるので。

――代理店もアドネットワークもそれぞれ売り上げ目標などがあるから、それが減るような提言はしたくないのが本音なんでしょうか。

佐々: そうかもしれません。でも、それは、本当に一時的なことです。長期的視野に立てば、今、フラウドをしっかりと排除して、正当にインストールやアトリビューションが発生するところにきちんと予算を寄せていく仕組みを確立し、全体を健全化させていくほうが、絶対的にメリットが大きいはずなんです

 

CAAFを発足させた理由

――アドフラウド対策には、広告主、広告代理店、アドネットワークの3者が共通理解をもって取り組む必要がありそうですよね。

佐々:そうなんです。そのために、CAAF(Coalition Against Ad Fraud: 不正防止連合)という国際業界団体を設立して、業界全体でアドフラウド対策を行うための活動もしています。2018年10月にはCAAFとして、アドフラウドに関する共通の定義を記載した規格文書を公表しましたが、こうした活動を踏まえて、多くの企業にアドフラウド対策への意識を高めてもらいたいと思っています。

――CAAFに加入する企業は、どういった企業が多いのでしょうか?

佐々: 現在24社が参加しており、ほとんどがアドネットワーク事業者です。海外企業が多いですが、Dynalyst、アイモバイル、nend、Zucksといった日本企業にも参加いただいています。そもそもメンバーの企業は皆、個別にアドフラウド対策をやってきたところばかりなんです。ただ、一企業だけでは限界もあるため、志を同じくする企業同士で一緒に取り組むための枠組みとして設立したというのが、背景にあります。

CAAFに加入しているアドネットワーク24社

――CAAFメンバーは、アドフラウド対策への意識が高い企業ばかりなんですね。

佐々: そうですね。とはいっても、CAAFメンバーのアドネットワークでアドフラウドが完全に排除できているということではありません。不正業者も先回りして、いろいろなテクノロジーを編み出しており、完全に排除することは難しい。CAAFとは、そういった相手に対して、一致団結して対処していくという強い意志を持った団体ということなんです。

――CAAFはアドネットワークだけでなく、代理店も加入可能なんですか?

佐々: 代理店も広告主も加入可能ですが、大きな団体にすることが目標ではありません。今は、アドフラウドにしっかり取り組み、この業界に対してどんどん提言をしていこうという強い意識を持ったメンバーをじっくり集めている段階です。

 

アドフラウド対策を行うメリットとは

――CAAFとしての活動とは別に、Adjustとして、アドフラウド対策に取り組むうえでの、今後の課題は何でしょう?

佐々: やはり、まだ業界の浸透が弱いのが最大の課題だと感じます。

――事例を出すのが一番理解が進みそうな気もしますが。

佐々: そうですね。先日、グノシー(Gunosy)さんとのケーススタディを公開させていただきましたが、もっと増やしていきたいです。実例を知っている、対処の方法も知っている、被害も知っている広告主さんと一緒に、対策の幅を広げていくことが重要なので。また、日本は代理店文化が根強いので、代理店と一緒に、啓蒙活動を行う流れを作っていかなくてはと思っています。

――事例だと具体的な被害額を出さざるを得ないところが難しいですよね。

佐々: 今、アドフラウドがあっては困ると、現在の数字だけで捉えている広告主もいるかもしれませんが、問題の根源はそこではないんです。アドフラウド防止ツールを入れる最終的なメリットとは、正しいインストールが発生しているところに正しく予算投下されることで、正しく循環し、よりROIが高まっていくというところに尽きます。

アドフラウド対策はCSR活動でもある

――アドフラウド対策とは、いちマーケターレベルではなく、経営層まできちんと理解してもらう必要があるということですね。

佐々: はい。アドフラウドを放置するというのは、ただ単に企業が広告費を掠め取られて損をするというだけではありません。

対策をしなければ、不正業者やその背後にある犯罪組織にお金が流れていく。たとえば、ウクライナなどでは、大麻やコカインといったものを扱うよりもアドフラウドのほうが稼げる、といった事態になっているという報道もあります。

――それって、ある種、企業の広告費が犯罪組織の資金源になっている状態ですね。

佐々: そうです。だから、グローバル観点では大変深刻な問題と捉えられているわけです。そういった点で、アドフラウド対策は、CSRとして捉えることも必要だと思います。

企業には社会的責任があります。自社の広告費が犯罪組織に流れているという事態は絶対的にあってはいけない。特に、大手企業はその点を認識して、全社で取り組むという姿勢が必要だと思います。

――最近は、特にブランディングに敏感な企業を中心に、アドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフティーの3点セットをしっかり取り組む企業が増えましたよね。

佐々: そう思います。ただ、Webとアプリというのは、対策のポイントがやはり違う。決定的に違うのは、アプリはインストールが起点になるということ。セキュリティ的なポイントをはじめ、Webとは違うということも含みつつ、Adjustとして貢献できる分野で、アドフラウド対策の啓蒙を進めていきたいと思います。

――ありがとうございました。

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