Web広告とは情報を一方的に押しつけるためのツールではない! お客さまのニーズに応える情報最適化を意識すべし!
Webにおける広告を、「企業の都合に合わせて情報を一方的に送りつけるツール」としか理解していないWeb担当者や業者に喝!
「お客さまごとのニーズに応える」という発想がなければ、Web広告の真価を引き出すことはできない。
WebサイトでもWeb広告でも、「お客さまへの情報最適化」が肝であることを忘れてはならない。
きたる10月18日(木)に、筆者の生田氏が登壇する『生田昌弘の「Web担当者に喝!」』ライブセミナーの情報を記事末に記載しています。「お客さまのために」をモットーに、Webサイトの役割とWeb担当者の心得を説く本連載を楽しまれている方には、役立つセミナーになるはずです。 (編集部)
お客さまにとっての「コンテンツ」とは何か
Webにおける「コンテンツ」とは、Webサイトに掲載されているすべての情報(文章、図版、写真)のことだ。
その中でも特に、お客さまに何かを理解してもらうために制作されたものは「ソリューションコンテンツ」と呼ばれることもある。つまり、「問題解決のためのコンテンツ」だ。
本来、Webサイトに掲載されているコンテンツとは、お客さまにとって何らかの有益な情報を含んでいるはずだ。価格情報しかり、スペック情報しかり。
しかし、お客さまからすると、見たくもない時に表示されるコンテンツは、企業側の都合で表示される余計なもので、有益なコンテンツとは認識しない。
いかにすばらしい内容であっても、お客さまが必要ない時に表示されるなら、それは企業が一方的に押しつけた情報、つまり(悪い意味での)「広告」と受け取られてしまう。
逆に、お客さまが必要としている時に表示されるコンテンツは、それが価格情報であれ新製品の告知であれ有益なコンテンツになる。
Webサイトでは、同じ情報であっても、受け手であるお客さまのニーズ次第で、「有益なコンテンツ」にも「邪魔な広告」にもなりえる。わがままに思えるかもしれないが、そういうものなのだ。
この理解は、Webサイトのコンテンツだけではなく、本来の広告を扱う際にも重要だ。
Webでは広告でも「情報最適化」を意識すべし
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といった従来からある媒体の広告は、その特性上、一様な情報を一方的にしか提供できない。「読者一人ひとりに合わせて最適な広告を個別に提供する」といったことはできないのだ。
しかし、Webは違う。
Webサイトではもちろん、Web広告においても、お客さまごとに、お客さまが望む情報を届けること、つまり「お客さまへの情報最適化」が実現できるはずだ。そして、この情報最適化は「お客さまのニーズ最適化」への第一歩となる。
ところが、それをまだ理解できていないWeb担当者は少なくない。
とにかく集客につながる広告をお願いしますよ。Web担当者A
うちのWebサイトにランディングしてもらいさえすれば、それで十分です。Web担当者B
社名入りのテキストでリスティング広告を出せば、お客さまにわかりやすいし、クリックされますよね?Web担当者C
ここでの問題は、Webにおける広告で何をなしえなければならないかを理解していないという点だ。
ユーザーをただ集めさえすればいいというものではない。
社名で検索するユーザーを広告で集めるべきなのか。
わざわざお金を使って広告を打っても、すでに自社のファンになっているユーザーやまったくターゲットではないユーザーを連れてきてしまっては、本当の意味で広告効果を発揮できたとはいえない。
本来なら、広告施策をサポートする協力企業が、クライアント企業にそれをしっかり説明して、理解してもらわなければならないはずだが……。
やっぱりリターゲティング広告が一番効果ありますよ!広告代理店A
Webサイトにランディングするまでが仕事ですから!メディアレップB
バナーは、とにかく目立ってナンボです!制作会社C
今の売り上げを担保するためだけに広告を運用していれば、当然右肩下がりの成果しか生まれてこない。
ただし、成果の取り方次第で、これを右肩上がりにも見せかけることができるので、注意が必要だ。
Web広告でもWebサイトでも、もっとも重要なことは「お客さまのニーズに最適化した情報を、求められるタイミングと順番で提供すること」なのだ。
なぜ今、Web屋が「広告」の話をするのか?
弊社では、たくさんのクライアント企業の仕事をさせてもらっている。
当然、企業のWebサイトを相当な回数閲覧することになる。そうすると、よくその企業の広告に追い回されること(リターゲティング)があり、そのたびに思うのだ。
なぜ、Webサイトに訪問しただけの人に対してここまでするのか?
なぜ、Webサイトを改善して、クロージングさせてしまわないのか?
なぜ、すでに購入したものと同じ商品を再びレコメンドするのか?
なぜ、価格や商品しかレコメンドしないのか?
このコラムでは、これまで何度も「お客さまのニーズ最適化が必要だ」とお伝えしてきた。その甲斐あってか、Webサイトを制作されている方や運営されている方には、それなりにご理解いただいてきたと思う。
しかし、Web広告やマーケティングを担当している制作会社や代理店、そして企業担当者には、まったく届いていないように感じる。
お客さまのニーズ最適化は、Webサイトだけに限った話ではない。
特にWeb広告は、他の広告媒体では難しいOne to Oneを実現できるのに、なぜそれをリターゲティング広告にしか利用しないのか!?
One to Oneができない理由は「コンテンツが無い」から
WebサイトにおけるOne to Oneが難しい理由と、広告やマーケティングオートメーション(MA)ツール導入におけるOne to Oneが難しい理由は一致している。
それは、コンテンツそのものが無いからだ。
多くの企業では、そもそもコンテンツに適した情報が無い。なぜなら、Webサイトのためにそのような情報を作ろうとしていないからだ。
多くの企業では、カタログやチラシ等に載せた情報を、そのままWebに流用しているのが現状だろう。これでは、最適化されていない万人向けの標準的なコンテンツしか作れない。
今、Webマーケティング、広告、そしてもちろんWebサイトに必要なコンテンツとは、標準的な情報だけではなく、お客さまのニーズに沿って分解・整理・最適化された情報なのだ。
世はまさにビッグデータの時代である。
エンジニアリングも進化し、さまざまなデータが利用できるようになりつつある。
極端なことを言えば、会員でもないお客さまを「Aさん」と特定することさえできる。それなのに、コンテンツは1種類だけとは!
システム的には、1000人のお客さまのニーズに対応して1000通りのコンテンツを出し分けられるにもかかわらず、コンテンツは1種類しか用意されていない。それが各社の実情なのだ。
マーケティングでもお客さまへの情報最適化が鍵に
時代はスマートフォンファーストへと突き進んでいく。
スマートフォンファーストになれば、お客さまはすぐに自分の求める答えを要求する。
逆に言えば、お客さまのニーズを把握して、それに答えていけば、有効な成果が手に入る道筋が明確になったということだ。
スマートフォンにおけるレイアウトやインターフェイスの幅は、それほど広くはない(エモーショナルなサイトやブランドサイトは除く)。
だからこそ、これまで以上にコンテンツそのものが問題になるのだ。しかもそのコンテンツは、お客さまのニーズに最適化して提供できる可能性がある。
熟練の営業マンが、お客さまのニーズを先読みするほどのレベルではないかもしれない。しかし、そこそこの営業マンくらいの対応であれば十分可能になるのだ。
ただし、「適したコンテンツさえあれば」という条件付きだ。
近年、マーケティングオートメーションというキーワードもよく聞かれるようになった。
Webサイトがマーケティングとして本当に機能し始める大きな流れが始まっているのかもしれない。
お客さまのニーズに対応した情報を、お客さまの動線に合わせて最適化できるWebサイトがあれば、それこそが本当のマーケティングオートメーションだといえるはずだ。
広告もお客さまごとに出し分ける時代へ
「一度見ただけで、その商品の広告バナーに追われる」「自分がいる場所がわかっているような広告が怖い」など、Web広告における問題点は明白になっている。
それらの問題が生じる原因は、今までの広告と同じ考え方や作り方で制作したものを、DMP(データマネジメントプラットフォーム)等のツールを利用してお客さまに最適化して(いるつもりで)配信するからだ。
すべてがサービスやツールありきで始まるので、こんなことが起こるのだ。
本来なら広告も、お客さまの状況に合わせて最適化された情報として提供されなければならない。
そうなれば、お客さまは、わざわざ企業のWebサイトを訪れなくても、本当に必要としている情報を「邪魔な広告」ではなく「有益なコンテンツ」として受け取ることができる。
企業にとっても、お客さまの顕在化した問題だけでなく、潜在的な問題に対しても、解決の手伝いができるかもしれない。さらに、新規のお客さまに、自社のサービスやブランドプロミスを訴求できるかもしれない。それは、従来の広告でやろうとして一番苦労しているブランディングの手助けにもなるはずだ。
旅行系サイトで、自社のWebサイトに訪れたことがないまったくの新規で、今まさに旅行に行こうと考えているお客さまをセグメントできるとしたら。しかも、台湾の観光サイトをよく見ていることがわかるとしたら。
このお客さまに、台湾の安いプランのWeb広告を見せることができれば、高い効果を得られるだろう。なぜなら、そのWeb広告はお客さまにとってニーズに最適化された情報(コンテンツ)になるからだ。
さらに、お客さまの趣味趣向が理解できれば、より最適な情報が提供できるはずだ。
もしここで、自社のサービスやブランドプロミスを訴求できれば、お客さまの記憶に強く残るかもしれない。
その広告はクリックしないかもしれないが、旅行を探し始めたタイミングで、検索してくれるかもしれない。もし検索してくれたとしたら、まさにWeb上でのブランディングが達成された証明になるはずだ。
だから、Webでは広告においても目的を明確にして、「既存のお客さまからの成果獲得」「新規のお客さまからの成果獲得」「新規顧客へのブランドの訴求」等々、情報を出し分ける必要がある。
もちろん、ここでのコンテンツ制作のクリエイティブは、難易度がさらに上がることになる。
Webサイト制作とは「コンテンツ」を作ること
Webサイト制作の本質とは、コンテンツを制作することである。
それが当然のこととして理解される時代がやってくる。
実はこれ、Web制作以外の業界では至極当たり前のことでもあるが……。
私は20年来、「Webサイトはお客さまの問題解決ツールであり、お客さまは目的をもってWebサイトに訪れるのだ」とクライアントに話してきた。言い換えると、お客さまの問題を解決するコンテンツが無いのなら、Webサイトとして機能できないということだ。
そして、Webのコンテンツは「誰に」が重要になる。
Web以外のメディアでは、意図した対象に限らず不特定多数が自由に閲覧できる場合が多い。
「それはWebも同じではないか?」と思う人がいるかもしれない。しかしWebサイトの場合は、「ふらふら見ていたら、あなたのサイトに行きつきました」なんてことは、ほぼない。目的をもって、しかも明確なキーワードをもってWebサイトに訪れてくるのだ。
だからここでいう「誰に」を考える際には、性別や年齢といったものはあまり重要ではない。どんな問題を抱えているかが、もっとも重要になるのだ。それはたとえば、「軽いパソコンが欲しい」や「出張で博多に行きたい」といったものだ。
「どのようなコンテンツを、どうやって作ればいいかわからない」
そんな声をよく耳にする。
コンテンツは、御社が解決(ソリューション)できる問題を抱えている人にその人が見たい順番で提供するのが一番だ。
そう考えると、どんなコンテンツが必要かは自ずと明確になってくるはずだ。
これは、広告でも、マーケティングでもまったく同じことだ。
機能するWebサイトを設計するには、これまでこの連載で何度も紹介してきた「ユーザー体験シナリオ」を有効に活用してほしい(特に以下の記事が参考になる)。
- まっとうなWebサイトにはSEOなど不要! 検索エンジンよりもユーザーを思うべし(※ユーザー体験シナリオの概要を紹介)
- コンテンツマーケティングはWebサイト制作の本質。小手先のSEOのように丸投げで済むと思うな!(※ユーザー体験シナリオを詳細に解説)
本日のまとめ
Web広告においても重要なのはお客さまのニーズに応えること。
そのためには、お客さまへの情報最適化が必須。
「お客さまに最適化された情報こそがキング(王様)」
これこそ、Web・広告・マーケティングすべての担当者が心に刻むべきキーワードだ。
すべては、お客さまの問題解決のために!
ソーシャルもやってます!