インタビュー

広告主は海賊版サイトの問題をどう受け止めたか【JAAインタビュー】

「海賊版サイト対応に関する3団体共同声明」について、日本アドバタイザーズ協会に聞いた。

2018年6月8日、「海賊版サイトへの対応策強化について」と題する声明が、日本における主要な広告関連の業界団体である日本アドバタイザーズ協会(JAA)、日本広告業協会(JAAA)、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の3団体から共同で発信された。

3団体の連名で発信された共同声明

この声明は、各種コンテンツの著作権を侵害しているとして今年4月に社会問題化した「海賊版サイト」について、広告業界としての姿勢を明らかにする目的で発せられたもの。

海賊版サイトに関しては、確信犯的な著作権侵害の実態が明らかになるとともに、その収入源ともなっているインターネット広告を配信する事業者や支援する広告会社(広告代理店)、そして広告を出稿する広告主にも社会的責任を問う声が聞かれた。

広告業界、特に広告を出稿する広告主の立場から、海賊版サイトの問題をどうとらえ、今後どのような対応を行うのか。大手広告主企業を中心に288社が加盟する日本アドバタイザーズ協会(JAA)の鈴木信二専務理事に、今回の3団体共同声明について話を聞いた。

*本インタビューは2018年7月4日に行われた
*以下、インタビュー内は敬称略

広告主への注意喚起は2017年の春から行っていた

――海賊版サイトについて6月に3団体共同声明を出されましたが、そこに至る経緯を教えていただけますか?

鈴木信二専務理事(以下「鈴木」): 2017年3月にコンテンツ海外流通促進機構(CODA)から「著作権を侵害する海賊版サイトについてリストを提供するので、加盟する広告主企業へ共有し、注意を喚起していただきたい」という協力依頼を受け、JAAとして初めてこの問題を認識しました。JAAではこのリストを、翌4月に会員社へ提供しています。

日本アドバタイザーズ協会 鈴木信二専務理事

――なるほど、1年以上前からCODAとやりとりがあり、広告主への注意喚起を行っていた、と。

鈴木: はい。ただしこの当時、リストを受け取った会員社の反応は薄かったと記憶しており、広告主側でどのような対応が行われたのかは正確には把握していません。

3団体のトップによる「インターネット広告情報連絡会」

鈴木: またJAAではこれに先立つ2016年の11月に、インターネットへの取り組みをより強力に推進すべく「デジタルメディア委員会」を立ち上げていました。当時の主要なトピックはビューアビリティ(広告の視認性)アドフラウド(詐欺的な広告)などでした。

その後、2017年の夏にはブランドセーフティ(ブランドの安全性。ブランドに対するリスクをいかに回避するか)が海外に続いて日本でも課題としてとらえられるようになり、代理店側の取り組みも動き始めました。

そのような状況下で、私(鈴木)がJIAAの勝野正博専務理事、JAAAの村井知哉専務理事に声をかけ、2017年9月に「インターネット広告情報連絡会」をスタートさせました。当初はこの3人だけで月に一度集まり、インターネット広告にまつわるさまざまな課題について議論していました。

――3団体のトップのみというのは実にすごいメンバー構成ですね。

鈴木: 何回か集まるうちに「デジタル広告の信頼性を確保するためのなんらかのシステム(組織、ルール)を作ろう」という目標が立てられ、各団体の事務局長やJAAデジタルメディア委員会の小出誠委員長(資生堂ジャパン)なども会合に加わり、勉強会を実施するなど本格的に動き出しました。

このように業界団体間の密な関係がすでに基盤として存在している中で、今回の海賊版サイトの問題が注目を集めるようになりました。6月に3団体共同で声明を出したのは、広告が悪者であるという誤解が一部に広まり始めた流れに対し、広告業界としてもきちんと取り組む姿勢があるという強いメッセージを打ち出すことが重要だと判断したからです。

会員社の受け止め方と取り組み状況は

――実際のところ、JAAに加盟している大手広告主企業は今回の件をどのように感じていたのでしょうか?

鈴木: 海賊版サイトの存在は、コンテンツホルダーにとっては自分の保有する著作権が侵害されているということであり、死活問題であると理解しています。

広告主は、著作権という観点で直接の当事者ではありません。ただし現在のインターネット広告の仕組み上、意図せずそれらのサイトに私たちの広告が掲載される可能性があるということを考えると、海賊版サイトの存在はブランドリスクのひとつとして位置づけられます。

従来のマス広告においては、広告が掲載される媒体の選定・管理は広告会社(広告代理店)の業務範囲でした。インターネット広告についても一部の広告主にそのような認識が残っていることは事実です。

しかしながら世界の潮流に目を向けると、世界広告主連盟(WFA)は2017年に「これらの問題を解決するために、広告主自身が業界をリードすべきだ」との見解を明らかにしています。私も同じ意見です。

――現在の会員社の取り組み状況はいかがでしょうか?

鈴木: あくまで感覚値ではありますが、まずは問題意識を持っている、知っているという状態の企業が6~7割程度。このうち半分程度が「やらなきゃ」と考えているものと思います。残りの3~4割については従来からの広告観、メディア観のまま「それは広告主の問題ではない」と考えている可能性があります。

現時点で出稿先を精査したりツールを導入するといったかたちで実際に取り組んでいるところは、外資系や日用品メーカーを中心に全体の2割弱といったところでしょうか。

これは企業の中の誰に聞くかにもよるところがあり、実際にデジタルを担当している方に聞くと、取り組みへの意欲などはもう少し高く出るものと思います。

――マーケティングや広告に関する日本と欧米のビジネス構造の違いや、マーケティングにおけるデジタルの現在位置にもよるかもしれませんね。今後は変わっていくのではないかと思われますがいかがでしょうか?

鈴木: 同意です。

情報共有から、アクションを決めて実行するフェーズに

――あらためて、広告主および広告業界にとって大きなリスクともなり得る今回の海賊版サイト問題、どのように今後の対応を進めていきますか?

鈴木: まずは先ほどお話しした、3団体によるインターネット広告情報連絡会をベースに、CODAなどとの連携もはかりながら、情報共有の場からアクションを決めて実行する場に進化させていきたいというのが基本的な考えです。

海賊版サイトへの対応については知的財産戦略本部の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(タスクフォース)でひきつづき議論が行われていますが、6月26日に行われた第2回タスクフォースには3団体がゲストスピーカーとして出席し、広告業界としての取り組みについて説明してきました。

第2回タスクフォースへ提出した「広告業界の海賊版サイトへの対応について」より

タスクフォースでの説明に使用された資料はこちら(PDF、12ページ、1.4 MB)

また、7月6日にはCODAから海賊版サイトに関する最新のリストが共有される予定です。

河田顕治(聞き手)

――CODAから提供を受ける海賊版サイトのリストとはどのようなものでしょうか?

鈴木: 定義や基準などの詳細は作成者であるCODAから説明を受けるのが適切だと思いますが、警告を聞き入れないなど悪質性の高いものに絞ってリスト化されているとのことで、サイト数でいえばひと桁の後半からせいぜい10サイトといったところです。

黒と言い切れないまでも、限りなく黒に近いダークグレーのものがリストアップされていますので、広告主に対しては、「世の中からどう見られるかを考えた時に、このサイトへの広告掲載はすべきではありません」と伝えることができますし、そうしてゆく考えです。

JAA独自の取り組みとしても、7月9日にデジタルメディア委員会がセミナーを開催し、本件に関する経緯の説明と今後の対応について、小出委員長から会員社に向けて報告します。アドベリフィケーションツールを提供するベンダー3社をパネリストに迎えてのディスカッションも行い、広告主企業が取り組みを進めるにあたって参考となる情報を提供します。

5月にWFAから発表されたグローバルメディア憲章にもあったように、広告主のブランドを脅かすこうしたリスクに対しては、毅然とした対応が必要であると考えています。JIAAやJAAA、その他の関係各所とも連携の上で、対応を進めていきます。

――ありがとうございました。

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