小川卓氏が見せた! Googleアナリティクスのライブ解析。成果を生み出す秘訣を学べ
アクセス解析ツールは、ツールを使えるだけでなく、改善案を出すために活用しなければ意味がない。仮説を立てて、実際のデータを分析し、ユーザー目線で改善案を考え、成果を出すことが重要である。
株式会社HAPPY ANALYTICS 代表取締役の小川卓氏は、「ウェブ解析士会議2018」で、Googleアナリティクスによる実サイトのアクセス解析を目の前で行うライブ解析を行い、自身がどのようにアクセス解析してサイトを改善しているかを披露した。
実際に他の人がどのようにアクセス解析ツールを使っているかを見る機会は少ない中、Webアナリストの第一人者の解説手法を学ぶ貴重な講演となった。撮影:イイダマサユキ
解析前にユーザーとしてサイトを訪問 → 気づきをメモする
個人商店や中小企業から大企業まで幅広く使われているGoogleアナリティクスだが、アクセス解析は集計だけでなく、改善案を出すために活用することが重要だと小川氏は説く。
用語やツールの使い方はわかっても他の人がどのように活用しているかを知る機会は少ない。だからこそ、自分以外の第三者がGoogleアナリティクスを操作しながら解析しているところを見て、学んでもらいたいと言い、実際に「インテリアのネット通販サイト」を例にライブ解析を始めた。
ライブ解析開始: 解析をする前にまずサイトを利用する
最初からGoogleアナリティクスでデータを見ても、何を改善してよいかがわからないため、まずはユーザーとしてサイトを利用するところから解析はスタートする。
利用する際には、「最もアクセス比率が多いデバイスを活用することをオススメする」と小川氏は説明する。今回はモバイルの方がアクセスが多かったので、モバイルの画面を利用しての説明となった。
ライブ解析の流れ
ライブ解析では「インテリアのネット通販サイト」を例に、対象となるユーザーの行動を想定しながら解析を進めていった。その流れを見てみよう。
対象サイト:インテリアネット通販サイト
対象ユーザー:新生活のためにオーダーカーテンを求めているユーザー
当該サイトに対象ユーザーの気持ちになりきって訪問する。
当該サイトにアクセスしたら、オーダーカーテンを購入するつもりでサイト内を見て回り、自分が感じたことやクリックしたリンクなどをメモ書きで取得する。
たとえば「まずはこのボタンが気になったので押した」「これがリンクだとは気づかなかった」といった感じだ。ページの挙動を確認しながら、後でGoogleアナリティクスで分析できるようにURLなどもチェックしておく。解析のマインドを持ちながら操作し、自分が行ったクリックやスクロールなどがしっかりと取れているか、イベントが実装されているかなども確認しておく。
次は、自分の行動をもとに、仮説を立てていく。しかし、これは自分1人の行動をもとにした仮説であるため、その仮説が本当に他の人に当てはまるかをアクセス解析ツールで分析する。
たとえば、自分がスムーズに注文できなかった点をもとに、スムーズにできなかったページのクリック率や滞在時間などを調べていくといった具合だ。実際に操作して仮説を立てることで、どこを分析すべきかを素早く見つけられて、得られる気づきが改善施策につながりやすくなる。
Googleアナリティクスにログインしたら、「ユーザーサマリー」を見てデータの期間を絞り込み、全体の傾向を時系列で確認していく。
次に「行動>新規とリピーター」を確認。次のような2つのセグメントを作り、各セグメントがどのページを見ていたかなどを分析して、リピーターを増やすための改善も考えていく。
- 新規ユーザーがリピーターになったセグメント
- リピーターにならなかったセグメント
デバイスごとのコンバージョン率の差なども確認し、差がある場合は、直帰率やどこで離脱しているかを分析して、その原因も考えていく。
仮説を基に分析、次のアクションを明確にする
今回のライブ解析では、モバイルに注目し、「新規+モバイル」と「リピート+モバイル」の2つのセグメントをさらに作って分析が進められた。
モバイルでトップページにアクセスしたとき、新規とリピートで違いがあるのかを調べ、実際のトップページを見て、新規訪問者のためのコンテンツが適切に配置されているかを確認していった。
たとえば、新規訪問者が通販サイトの会社概要ページを見ているなら、「販売会社が信用できるか」「どのようなこだわりがあるのか」を確認しているという仮説を立てることができる。
ライブ解析では、初めての人向けのコンテンツのアクセス数をチェックして、コンテンツが見つけにくいなどの問題がないかを示した。また、A/Bテストはコンテンツ誘導やコピーのわかりにくさをテストするのに有効で、自信のない施策を行うときにもA/Bテストで試してほしいと解説していった。
このような仮説に基づくセグメント作りが最も重要だと話す小川氏は、分析時にユーザータイプやページ閲覧、ページ遷移などを絞り込んで50個くらいはセグメントを作っていると明かした。
モバイル対応か、施策重視か? 優先度の見極め方
サイト自体がモバイル対応していない場合、「モバイル対応をすべきか、その他の施策を実施すべきか」ということを悩まれている人も多い。どちらを優先すべきか判断するコツも披露された。
その場合は、定量的に見るために、4つのセグメントを作るという。
- 新規+モバイル
- リピート+モバイル
- 新規+デスクトップ
- リピート+デスクトップ
「モバイル」と「デスクトップ」で離脱率やページ遷移率、コンバージョン率など、どんな差があるのかをまず調べる。
次に、それらを改善すれば問い合わせやコンバージョンをどれくらい増やすことができるか、モバイル対応することでどれくらい売上を伸ばすことができるかを予測できれば、改修の提案を明確にすることが可能となる。
ウェブ解析の本質は分析ではなく成果を出すこと
今回の分析を「仮説検証型の分析アプローチ」と呼ぶ小川氏は、たとえば、自社にコンテンツ管理システムのEC-CUBEが導入されてコンサルティング会社を活用して売り上げを伸ばしたいという仮説があった場合、その仮説を基に以下のように気づいたことをメモして、分析のポイントを作っていくと説明する。
これらのメモから生まれた分析ポイントは、Excelなどで「仮説」「分析ポイント」「生かす方法」などにまとめ、整理することで作業時間を効率化できる。
また、小川氏は、アクセス解析ツールでは、全体傾向を把握して、以下のデータは最低限見ておいたほうが良いと説明を続ける。
- 年・週・月での基本指標(ユーザー・訪問・直帰率・滞在・コンバージョン率などのトレンド)
- 集客の内訳とコンバージョンに対しての影響
- 主要閲覧ページとランディングページ
- デバイス別の内訳と傾向
- 新規とリピート(訪問回数)の内訳と傾向
これらのデータを見ながら、全体傾向と仮説を組み合わせることで、分析するだけでなく、本来の目的である改善案を見つけることにつながっていると小川氏は話す。
成果を生み出すウェブ解析
最後に小川氏は、分析によってさまざまな施策を考える中で何を優先しているかについて、「アクセス数の多さやコンバージョンへの近さをシンプルに考え、良いところを伸ばすことよりも悪いところを直すという判断基準で施策を決めている」と話している。
「成果を上げるために必要なことは2つ。施策が実行され、それによってユーザーの行動や気持ちが購買に近づく事」だという。
「アクセス解析の強みはデータがあることで、前述のようにモバイル対応でどれくらいの効果が出るのかを数字を出して予測することもでき、数字を基に上司や経営層とコミュニケーションもできる。改善をすることが目的ではなく、成果を出すことがウェブ解析の本質である」と小川氏は話し、講演を締めくくった。
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