ウェブ解析士会議

BtoBマーケティングで絶対に知っておきたい7つの要諦――ベイジ枌谷氏が解説

企業相手に仕事をするなら絶対に知っておきたいBtoBマーケティングの7つのポイントをベイジ枌谷氏が解説。「ウェブ解析士会議2019」レポート

「BtoBマーケティングは単に顧客を獲得するだけでなく、会社自体を作る非常に大事な取り組み。自分たちが望む仕事が取れるようになり、働く環境も良くなっていく」と6月15日に開催された「ウェブ解析士会議 2019」(主催:ウェブ解析士協会)に登壇したベイジの枌谷氏は言う。

ベイジは、BtoBに強いウェブ制作会社として順調に業績を伸ばしている。枌谷氏が実践しているBtoBマーケティングの7つのポイントを紹介した。撮影:イイダマサユキ

株式会社ベイジ 代表取締役 枌谷 力 (そぎたに つとむ)氏

企業相手の仕事なら、企業ならではの作法に従う

ウェブ制作会社をやっていて、よくある悩みといえば以下のようなものだろう。

こんなことありませんか?

業界特性だからと諦めてしまうことなかれ。これは「ひとえにマーケティング不足」だと枌谷氏は言う。

企業相手の仕事なら、企業ならではの作法に従うべきというのが、BtoBマーケティングの根底にある考え方。それによって、上に挙げたような問題は起こりにくくなり、場合によっては解消するという。

BtoBマーケティング自体は非常に濃密なテーマだが、25分の限られたセッションということで、すぐに理解できるであろう以下の7点に話をしぼって、枌谷氏はポイントを紹介した。

  1. BtoBとBtoCの違いを知ろう
  2. 購買プロセスを把握しよう
  3. BANT条件を決めよう
  4. 言葉を磨こう
  5. 課題買い掛けのストーリーを作ろう
  6. 自社サイトをうまく活かそう
  7. 情報発信を積極的に行おう

1. BtoBとBtoCの違いを知ろう

「BtoBといっても相手は人だから、人の気持ちを動かすという意味では同じだろう、というのは乱暴な意見」だと枌谷氏は言う。先に挙げた7つのポイントの中で一番重要なのが「BtoBとBtoCの違いを理解すること」である。この違いがわかっていれば、「自分の頭で考えてアイデアを出すことができるようになる」という。以下の図は、枌谷氏が提案書でも使っているという「BtoCとBtoBの比較表」である。

BtoCとBtoBの比較

BtoBとBtoCでは、購買プロセスが大きく異なる。このためアプローチ方法が変わると言う。その違いをまとめているのが上図である。特に注目すべき点をいくつかピックアップして紹介する。

上司を説得できる「研ぎ澄まされた言葉」が必要[④関与者]

まず、BtoBでは関与する人数が異なる。BtoCだと、購入を一人で決めるタイプの商材が多い。一方、BtoBの場合は、一人で決めることは少なく、多数の人が協議して決めることが大半である。ということは、たとえば、担当者が決裁者にその良さを伝え、説得できるような、汎用性の高い魅力的な「言葉」が必要なのである。

「課題解決のストーリー」が必要[⑤決定方法と理由/⑥購買目的]

BtoBとBtoCでは、購買を決定する方法と理由や目的も異なる。BtoCは好みや直感で購入するものが多い。購入目的も、何かに困って買うこともあるが単に「所有する、体験する」ということが目的であることも多い。

一方でBtoBは、好みや直感で買うことはゼロに近く、ほぼ間違いなく経済合理性で購入を決める。そして目的もまた、ほぼ間違いなく課題解決だ。

たとえば、BtoCでは、iPhoneの新型モデルが出た時、旧モデルで困っているから買い替えるというのは稀で、多くは「特に困ってはいないが、単に新しいのがほしい」という理由で買うのではないだろうか。

BtoBではこのようなことは起こり得ない。たとえば、ツールベンダーが主催するイベントが楽しかったからという理由で数十万、時には数百万円を超えるツールを導入することはありえない。そのことが後押しする可能性はあるが、決定要因になることはない。

BtoBでは、事業上の課題があり、それを解決するために役立ちそうという理由で購入を検討する。だからこそ、「BtoBにおいては課題解決のストーリーが必要だ」と枌谷氏は言う。

情緒的な信頼感も必要[⑩購買単価~⑭購入イメージ]

一方で、ロジカルなだけではないのがBtoBだ。BtoBの商材は非常に高価なことが多く、クチコミも少ない。たとえば、購入が正解だったかは、導入して数か月、あるいは1年以上経過しないとわからない、ということも珍しくない。

つまり、「BtoBは、非常に経済的リスクが高い」と枌谷氏は言う。そして、最終的には「信頼感」が意思決定の決め手となる。ここには、情緒的な判断も多分に含まれる。これこそ、「BtoBにおいてブランディングが重要である理由」だと枌谷氏は指摘する。

ポイントまとめ
  • 上司を説得できる「研ぎ澄まされた言葉」が必要
  • 「課題解決のストーリー」が必要
  • 情緒的な信頼感を醸成するブランドが重要

2. 購買プロセスを把握しよう

BtoBの購買プロセスは、BtoCに比べればシンプルで把握しやすい。たとえば、BtoCの場合、ペットボトルのお茶を「初めて買ったのはいつか」「何回買ったか」「何がきっかけで買ったか」と聞かれて、答えられるユーザー(消費者)はあまりいないだろう。

しかしBtoBの場合は、情報もチャネルも少なく、検討プロセスにも一定のフォーマットがある。このため、マーケティングプロセスやセールスプロセスを、以下の図のようにまとめることができる。

マーケティングプロセス
セールスプロセス

シンプルで把握しやすいということは、「どの段階でどのような情報を取得し、顧客になりそうな相手を見極めて、成功確率の高い引き合いにだけ会いに行く」といったことが比較的容易にできるということだ。

これをしっかりやっておけば、冒頭で挙げた悩みのうち、「呼ばれて会ったらコンペだった」「何度もプレゼンさせられる」といったことは起こり得ない。会う前に聞けば済む話であるからだ。また、会う前に予算感を聞いておけば、わざわざ会いに行き、見積もりを出してから「見積もりが高すぎる」と言われ、それまでの商談に使った時間が無駄になる、ということもなくなるだろう。

ポイントまとめ
  • 購入プロセスを把握し、タイミングに合わせた情報提供と情報収集
  • 受注確度の高い相手を見極めてアプローチする

3. BANT条件を決めよう

BANT条件というものをご存じだろうか。

BANT条件とは、以下の図に示した「予算(Budget)」「決裁権(Authority)」「必要性(Need)」「導入時期(Timeframe)」の頭文字を取ったもので、BtoBの営業で必ず聞かなければいけない情報と言われるもの。

BANT条件

BANTは米国では一般的な用語で、たとえば、マーケティングチームからセールスチームにリードを渡す時、BANT条件がそろってなければ営業はアプローチしない、といったように使われたりするものだ。ただしここで言いたいのは、「BANTの4条件が大事という話ではなく、自分たちのビジネスにとって重要な、BANT条件に変わるものをきちんと作ること」だと枌谷氏は強調する。たとえば、ベイジでは、以下のような受注条件を作っている。

ベイジではこういう仕事は受けない

これらの情報をマーケティングプロセス、もしくはセールスプロセスの中でできるだけ把握し、そのうえで仕事を受けるかどうか決める。そうしないと、「無駄な営業をしてしまったり、合わない仕事を受注してしまったりと、自分たちを苦しめるから」だと枌谷氏は言う。顧客獲得もさることながら、働く環境を整えるためにも、BANT条件のような受注条件を定義しておくことは非常に大事だという。

ポイントまとめ
  • どういう仕事なら取る、どういう仕事は取らない、という条件を明確に決めておく

4. 言葉を磨こう

BtoBとBtoCの違いのところで出てきた「言葉とストーリー」について、具体的なコツがいくつかある。枌谷氏によれば、「BtoBでは抽象的でわかりにくいコピーが非常に多い。成果が出ないのはコピーのせいということも多い」という。たとえば、以下の図では、上が抽象的なコピー(悪い例)、下が具体的なコピー(良い例)だ。

図:Web解析コンサルティングWebサイトの課題の「見える化」を行い、コスト削減のための最適な施策と実行計画の策定を行うコンサルティングサ^ビスです。顕在化された目先の問題やコスト削減にとらわれず、中長期的な観点から最適かつ実効性のあるプランを提示。またすでに実施している施策の有効性検証や精度向上にもご活用いただけます。
抽象的なコピー(悪い例)
図:1,500さいとのアクセス解析から導き出された当社独自のフレームワークを用い、Webサイトの課題の「見える化」を行います。10年以上の実績を誇る解析スペシャリストで構成されたコンサルティングチームが関係者に対する10時間に及ぶヒアリングを行い、1,000項目に及ぶWebサイト改善項目を用いたギャップ分析を実施します。だからこそ短期的な改善やコスト削減ではなく中長期的に成長できる具体的なプランを提示できるのです。
具体的なコピー(良い例)
ポイントまとめ
  • なるべく具体的な情報を盛り込むことでわかりやすいコピーに仕上がる

5. 課題解決のストーリーを作ろう

課題解決のストーリーを作る上では、ダイレクトマーケティングでよく使われる以下のようなフレームが参考になる。

課題解決までのストーリー

たとえば、ベイジであれば、以下のように自分たちのストーリーを整理できる。

例:ベイジの課題解決までのストーリー

問題提起:「BtoBを理解して提案してくれるWeb制作会社を求めていませんか?」「toBもtoCも関係ない提案しかしてくれない制作会社ばかりで困っていませんか?」
結果:BtoBに精通した私たちが、御社の悩みを解決します。
実証:なぜそう言えるかというと、「BtoBサイトの成功パターンを集約したメソッドを持っている」「戦略フェーズを重視し、ビジネスの理解に努めるワークフローになっている」「BtoBの実績が多く、豊富な知見を貯め込んでいる」からです。
信頼:そんな私たちのいうことがなぜ信頼できるかというと、大手企業も取引をしており、また数多くのメディア機構やイベント登壇をしてて、業界からも厚く信頼されているからです。
安心:そんなうまい話があるのか、実は仕事を始めるとだらしないのでは、と不安に思われるかもしれませんが、たとえば、140のワークフローを整備しており、属人的にならないサービス提供を行っています。またチェックシートをきちんと用意し、エラー発生を低く抑える取り組みをしていますのでご安心いただけます。

このように、「問題提起→結果→実証→信頼→安心のストーリーを作り上げてから、webサイトのコンテンツやセールスツールのコピーなどを作っていくと、一貫性のあるストーリーがマーケティングやセールスに備わっていく」と枌谷氏は言う。

ポイントまとめ
  • ストーリーに合わせて自分たちの売りを整理する

6. 自社サイトをうまく活かそう

BtoBは市場に流通している情報が少ないため、どこかのタイミングで企業サイトに訪問するケースは非常に多い。「だから自社のウェブサイトは力を入れて作るべき」だと枌谷氏は言う。ベイジでは、以下の12点を注意すべきポイントとしている。

BtoB向けWebサイトで注意すべき12のポイント

具体例として、CTA(Call to Action)では、以下のようにチェック項目を作り、これに合うようなウェブサイトを作っているという。

CRAのチェック項目
ポイントまとめ
  • BtoBならではのウェブサイト構築手法があるので、それに則って作る

7. 情報発信を積極的に行おう

ファネルの考え方を理解すると、情報発信が重要だということがわかる。以下の図は、上から下へ、見込み顧客化して購入に至るまでの流れを示している。

BtoBのマーケティングファネル

縦は購買のステップ、横は人の量を表している。上に行くほどターゲットの数が多く、下に行くほど受注に近付くが、人数はどんどん絞り込まれる。冒頭に示した課題のうち、「代理店の仕事しか来ない」「仕事にならない引き合いばかり」「仕事がほしい時に来ない」「人の紹介でしか仕事が来ない」などは、ファネルが以下の図のように短く痩せ細っているからだと、枌谷氏は言う。

細すぎるファネル

これを解決するための一つの手段が、情報発信である。たとえば、一番上の「課題形成」の段階の人に対して情報発信を上手にやっていくと、ファネルの一番上が広がっていく。上が広がると、それに従って下も広くなる。そうすると、最終的に受注に至る数や、顧客の選択肢が増えていく。このように「ファネルを太らせていく」のは、マーケティングの力で、できることの一つである。

上記でいう課題形成の段階とは、たとえば、ウェブ制作会社なら「ウェブサイトがほしい」と思っていない段階である。この段階で認知され、良いイメージを持たれると、「もしウェブサイトを作る時はベイジに声をかけよう」と思ってもらえるようになる。

つまりファネルの上部に対する情報発信によって、購買プロセスをショートカットさせることも可能になる。枌谷氏はこれを「コンバージョンの予約」と表現する。このような情報発信をせずに、情報収集が始まった段階から戦おうとするから、「SEOや広告に依存しないといけなくなる」と枌谷氏は言う。

ポイントまとめ
  • 課題形成のタイミングで情報発信し、ファネルを太らせる

ちなみにベイジの場合は、情報発信は顧客獲得だけでなく採用でも成果を上げている。「転職サイトやエージェントを使わず、サイトからのエントリーが月平均で5~6人の応募がある」とのことで、「ファネルの上部に働きかける情報発信は、顧客だけでなく、社員も作る」と枌谷氏は言う。

最後に枌谷氏は、「BtoBマーケティングを知るのも大事だが、一番大事なのは自分たちのビジネスを観察し、その特徴をしっかりと掴み、それに合わせて行動していくこと。業界特性だから仕方ない、自分たちの仕事はこういうものだ、と決めつけず冷静に見れば意外と改善すべき点が見えてくる。そうすれば、仕事がもっと楽しめるようになるのでは」とまとめた。

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