運用型広告の配信ロジックを意識していますか? 運用するなら理解しておきたい改善施策との関係性
運用型広告ってもっと効率良く、楽をしてまわせると思っていたのに……
広告を載せて終わりじゃないから、どんどん作業が増えて大変……
運用型広告の最大の特徴は、(ほぼ)リアルタイムに広告のクリエイティブや配信先を調整して効果を改善できることです。前回までに説明してきたように、CPA、CPC、CVRといった指標を計測しながら文字通り「運用」するわけですが、運用できなければ枠売りの純広告と変わりません。
運用型広告は、手放しで高い効果を得られる魔法のような広告ではありません。運用して改善できるからこそ、効果を得られるものなのです。
この運用型広告を有効活用するためには、運用サイクルや広告プラットフォームの配信ロジック、改善するための指標の関係性を理解しておくことが大切です。「運用」の中身を具体的に知ることで、自社のプロモーションのさらなるステップアップを目指しましょう。
また、広告代理店に運用委託をしている方は、広告代理店の運用担当者が何を軸に広告運用を行っているかを理解し、一緒により良い運用を検討する機会につなげましょう。
運用型広告の運用サイクルと手順
運用型広告の運用は、次のようなサイクルでまわっています。
- 掲載内容作成
入稿規定を確認の上、入稿物(テキスト、画像など)の作成と、媒体特性を踏まえた上でのアカウントの構成・作成を行います。
- 入稿・掲載
掲載内容を媒体仕様に応じた入稿ファイルに記載し管理画面にセットします。その際に設定漏れや記載漏れがないように確認しましょう。
- 予算管理(管理)
広告予算を上回らないように、アカウント予算やキャンペーン予算を設定します。利用進捗に応じた入札額の調整や日予算の変更なども実施します。
- 掲載管理(管理)
配信したいターゲットユーザーや掲載面に広告が掲載されているか、不適切なサイトに広告が配信されていないか確認します。
- スケジュール管理(管理)
掲載開始日、掲載終了日に問題がないか確認します。クリエイティブごとに掲載期間が異なる場合は、掲載停止漏れを防ぐためにもキャンペーンやグループごとに分けることが有効です。
※キャンペーン、グループ:管理画面上で掲載期間や入札、クリエイティブをグルーピングするための機能。 - 分析
計画を立てた目標に対して現状の数値を確認し、目標と実数値で乖離のある要因を見つけ出します。分析時には当月実績だけでなく、先月や昨年実績との比較、業界実績との比較なども行います。
- 改善策立案
前述の分析によって課題を明確にし、改善仮説を立てターゲットや配信先の拡大や停止、広告クリエイティブの変更、入札金額の調整などを行い、配信件数の拡大や獲得単価の改善につなげます。
以上が運用型広告の基本的な運用サイクルです。基本項目だけでも、改善が簡単ではないことがわかるでしょう。
広告で成果を上げるには、広告クリエイティブやターゲティングも重要な要素ですが、今回は運用のなかでも「分析」「改善策立案」にあたる「効果改善」部分を深掘りして説明していきます。
配信ロジックを理解する
広告の効果改善について説明する前に、「配信ロジック」について簡単に説明します。たとえば、上司から次のような質問をされたことはないでしょうか。
Web広告費を払っているが配信されているのを見たことがない
よく自社の広告がWeb上に出てくるがムダな広告費は抑えられているのか
各広告の配信ロジックを理解していないと、指標の相関性が理解できないだけでなく、広告が掲載されなかったり、広告費がかさんでしまったりする可能性もあります。それを防ぐためにも配信ロジックに関わる「オークションの仕様」を理解しましょう。
オークションの仕様
運用型広告はオークションによって配信が決定されます。オークションは広告表示1回(1インプレッション)ごとに行われ、その結果によって配信の有無や掲載順位、掲載箇所が決まります。
詳細は広告プラットフォームごとに異なりますが、第1回で説明したように入札額だけでなく「品質スコア」を加味した「広告ランク」で配信が決定するケースもあります。
「広告ランク」によるオークションでは、どのように配信が決定されているのか。最も身近な例として、検索連動型広告(リスティング広告)の「Google AdWords」でのオークション方法を説明します。
検索連動型広告は、まず広告を掲載したい検索キーワードに「入札」します。単純に一番高く入札した広告主の広告が表示されるわけではなく、Google AdWordsでは「入札単価×品質スコア=広告ランク」によって掲載順位が決定します。
※参考:クリック単価制での個別単価設定について - AdWords ヘルプ
上記の表の場合は、入札単価で2番目のB社の広告に品質スコアが掛け合わされて、検索連動型広告の掲載順位1位となります。入札単価が一番高いA社の広告が1位になるとは限らないのです。
品質スコアの定義は広告媒体や広告商品によって異なるのですが(Facebookは関連度スコア)、今回はセルフサービスで触れやすい「Google AdWords」「スポンサードサーチ」「Yahoo!YDN」「Facebook」を例として見てみましょう。
品質スコアには、クリック率以外にもランディングページの利便性や広告文と検索クエリの関連性など、広告管理画面では確認できない要素も含めてスコア化されています。またFacebookではユーザーのコメントやいいね数も品質スコアに影響することを認識しておきましょう。
実際のクリック単価も、入札金額そのままというわけではありません。Google AdWordsの場合は、クリック単価=自社より掲載順位が1つ下の広告ランク÷自社の品質スコア+1円(各国通貨の最小単位)で決定します。
前述の表であれば、B社広告のクリック単価は次のように求められます。
通貨の最小単価(日本では1円)が足される理由は、2番目のクリック単価を下回らないようにするためです。この計算式では、実際のクリック単価が入札単価を上回ることはないと言われています。
媒体によって実際のクリック単価の算出式は異なりますが、このように実際のクリック単価の算出にも、自社や他社の入札単価だけではなく、品質スコアなどが重要な要素として関わってくることを理解しておきましょう。
広告効果を左右する2大要素
ここまでの説明から、広告効果を改善するには広告ランクが重要な要素であることがわかります。ここからは話を戻して、広告効果の改善方法について具体的に説明していきます。まず、改善方法は2つあります。
- 獲得件数(CV:Conversion)を上げる
- 獲得単価(CPA:Cost Per Action)を下げる
CVを上げるには
CVは次の式に当てはめて計算します。計算式から、CVを増加させるためには「広告の表示回数」「表示された広告のクリック数」「広告から流入したユーザーの獲得率」を増やす必要があります(各指標の説明は第2回を参照)。
CPAを下げるには
CPAは次の式に当てはめて計算します。計算式から、CPAを下げるためには「広告のクリック単価を下げる」または「広告から流入したユーザーの獲得率を増やす」必要があります。
つまり、広告効果を左右するCVとCPAを改善するためには、これらを細分化した個々の要素を改善していくことが重要だということです。
指標と施策の相関性
Imp、CTR、CVR、CPCを改善していくには、具体的にどのように運用を行えばいいでしょうか。先ほどまでのよう、Google AdWordsを例に運用できる内容を整理してみましょう。
― | ターゲット 配信先 | 広告 クリエイティブ | リンク先 | 入札額 |
---|---|---|---|---|
運用項目 | キーワードの種類 | タイトル/説明文 | ランディングページ | キーワード単位/広告クリエイティブ単位 |
広告を運用するということは、上記の内容を追加・削除・変更を行うことです。これはGoogle AdWordsに限らず、他の広告フォーマットでも共通する考えです。バナー広告であれば、ターゲティングや配信するデバイスを見直したり、画像あるいは動画のクリエイティブを見直したりします。
各項目を運用するとどのようなことができるのか具体的に例をあげていきます。
- 「ターゲット・配信先」を追加
表示回数(Imp)を増加させるために、登録キーワードと類似のキーワードの追加、キーワードの掛け合わせを追加します。
- 「広告クリエイティブ」を変更
CTRを上昇させるため、広告のタイトルや説明文を変更します。
- 「リンク先」の変更
CVRを上昇させるため、商品ごとのリンク先を変更したり、新たなリンク先ページを追加したりします。
- 「入札額」を変更
CPCを抑制させるため、広告クリエイティブ、キーワード単位で効率を確認して入札条件を変更します。
これらの運用項目が各指標とどのような関係性があるかを整理してみましょう。
次の図は、前述した獲得件数(CV)と獲得単価(CPA)を軸に関連指標を整理したロジックツリーです。ここで示した指標はあくまでも一例になりますが、運用項目と各指標は複雑に関連し合っていることがわかります。
編集部注:ここで説明したツリー図は、記事中の説明「CV=Imp×CTR×CVR」「CPA=CPC÷CVR」を前提にわかりやすく簡略化したものです。現実の運用では、これ以外の要素も関連してきます。
たとえば、CVR改善にはリンク先のほか、ランディングページ先の内容変更が有効な場合などもあります。CPAが高騰しているのであれば、そもそものターゲットやキーワードを見直す必要があるかもしれませんし、競合の新規参入といった外部要因も考えられるでしょう。
また、上記のロジックツリーを表形式で整理していくと、CTRを上げるには広告クリエイティブが影響してくることなど、各指標との関連性が分かりやすくなります。
運用項目/影響する指標 | Imp | CTR | CVR | CPC |
---|---|---|---|---|
ターゲット・配信先 | ○ | - | - | - |
広告クリエイティブ | ○ | ○ | - | ○ |
リンク先 | - | - | ○ | - |
入札額 | ○ | - | - | ○ |
このように整理すると、各指標に影響する運用項目が見えてきます。広告運用者は上記の関係性を理解し、各運用項目に対して具体的にどんな施策を打つべきか日々考え、実行することで運用による効果改善を行っているのです。
今回解説したオークションの仕組み、各指標の数字の見方とその数字を変えるための施策については、慣れるまでは少し複雑に感じるかもしれません。しかし、広告改善にどのような要素が関わってくるのかということは、運用型広告で目標を達成させるためも理解しておくべき要素です。
次回は、目標設定・プランニングで設計した計画に対して、しっかり運用ができているかを確認するモニタリング方法について解説していきます。
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