運用型広告をまわして効果を上げる3つのセオリー、モニタリング+分析+改善施策
広告のプランニングを練りに練ったのに、想定していたほど効果が上がらない。
KPI/KGIもしっかり設定したのに、何が悪かったの……。
運用型広告で成果を上げていくには、「どのような軸で広告運用をしていくか」という事前のプランニングが重要ですが、どんなに準備をしても、想定通りの成果がでるとは限りません。
そこで重要になるのが、運用結果を分析したうえで改善施策を立案してくことです。ですが、いきなりすべての数字を分析しようとすると、手が回らずに何もできないといった結果になりかねません。
今回は、運用型広告のPDCAをまわすときに欠かせない基本要素、「モニタリング」「分析」「改善施策の立案と検証」にポイントを絞って解説します。
1. モニタリング
広告の配信状況を確認し、KPIの達成度合いをチェックする
広告を運用するには掲載状況の確認が必要です。あらかじめ目的に沿って必要なレポートを準備しておくことで、効率的な運用が可能になります。次のように、広告の目的に応じた複数のレポートを用意しておきましょう。
レポートの種類 | 見るべきポイント |
---|---|
日次レポート | 前日対比/同曜日対比で各指標に異常値がないか確認し、入札調整の判断に活用 |
週次レポート | 当月のKPIが達成できるか確認し、前週対比での分析から改善施策を立案 |
月次レポート | 前月/前年同月対比の分析から、次月以降の改善施策を立案 |
広告のKPIはさまざまですが、ここではわかりやすく、ある新商品の販促キャンペーンを例に考えましょう。KPIはキャンペーン申し込みの「CV」と、獲得1件あたりの広告費である「CPA」に定めて説明していきます。
2. 分析
分析は改善施策立案のために実施する
モニタリングは、実施している広告の成果を把握して、次のアクションにつなげるために行います。分析結果から改善が必要だとわかれば、次は何が改善要因なのか分析しなくてはなりません。
たとえば、化粧品販売のECサイトを運営しているとします。次のようなリスティング広告(検索連動型広告)の日次レポートがあったとき、どこに注目すればいいでしょうか。
KPIの達成には、KPIそのものの変化を見るだけでなく、起因している指標の状態をモニタリングすることが大切です。各指標の状態を見ることで改善が必要なポイントを把握しましょう。
この日次レポートでは、KPIである「CV」と「CPA」に注目して改善要因を分析します。
- CVに影響する指標:Impression、CTR、CVR
- CPAに影響する指標:CPC、CVR
全体像を細分化して改善ポイントを探る
分析の基本は、全体像から順番に要素を細分化して改善ポイントを探していくことです。
たとえば、ある商品の広告で2種類のキャンペーンを実施したとします。分析の基本は、全体数値の分析から始まり、広告グループやキーワードまで細分して分析することです。
例として、化粧品の販売を目的とした広告運用のレポートサンプルを例に考えていきましょう。目的は、KPIを達成するための改善施策を実行するためです。
新規に化粧品の検索連動型広告のキャンペーンを2週間ほど実施したとします。
掲載期間中に広告に変更を加えたかどうかなど、前提条件によってレポートの見方は変わってきますが、ここで一例として、同じ広告を2週間掲載したとしましょう。
まず、全体の数値を確認します。ここでは、商品の利益率からして目標CPAは達成できているのですが、2週目に入ってCVRが低下し、CVが約200件減少していることがわかります。全体数値だけを見ると、CVRに影響するリンク先の改善などが施策として有効に思えます。
しかし、これだけではリンク先の改善施策が有効だとは言い切れません。CVRが下がった理由がわからないからです。そこで、明確な理由を探り、改善施策を実行する対象を定めるために、前述のとおり全体像から順に要素を細分化していきます。
まず、どの「広告キャンペーン」で数字変動が見られたかを特定し、その広告キャンペーンの中のどの「広告グループ」で数字が変動しているかデータを確認したところ、数字変動があった広告グループ内の「キーワード」で大きな数字変動が確認できました。
今回は上記レポートのように、CVRの高いキーワードAでClick数が減少し、CVが約200件減少していました。つまり、「全体数値のCVR低下には、CVRの高いキーワードAが影響している」ことがわかりました(キーワードAのClickシェアが低下し、全体のCVR低下につながった)。
全体数値のCVRを掲載1週目と同じ水準に戻すためには、全体に対してのリンク先の変更よりもキーワードAのClick数を増加させ、CVを増加させることの優先度が高くなります。
そしてClick数を増やすためには、ImpressionとCTRを改善するための対策を行う必要があります。Impressionがなぜ減少したのかを明確にし、適切な施策を講じる必要はありますが、要因分析に時間がかかる場合は、「CVRの高いAキーワードの入札を強化してImpressionを増加させる」「広告クリエイティブを変更してCTRを上昇させる」などの施策が有効となります。
このように、全体からブレイクダウンしていくことで、改善すべきポイントとその優先順位が明確になります。改善すべきポイントが特定できないと、的外れな施策になってしまう可能性があるためしっかり把握しましょう。
なぜそうなったのか? 要因を明らかにする
レポートを分析して改善ポイントを絞り込んだら、次は、そのような結果になった要因を分析します。
分析は、あらかじめ仮説を持って進めることが重要です。すべての事実がデータにもとづいて確認できるわけではないですが、仮説があればデータを洗い出す工数が減り、分析スピードも上がります。
分析では、外部要因も考慮する必要があります。「オークションにおける競合の変化」や「トレンド」などの要素がこれに該当します。
たとえば、ImpressionやCTRに変化がなくCPCが上昇していた場合、入札金額が高い競合が増えた可能性も考えられます。また、検索連動型広告ではImpressionと検索数が比例するため、メディア掲載、天候・気温などによる増減も考えられます。
3. 改善施策の立案と検証
課題を解決する施策を立案する
分析結果から課題と要因がわかったら、それらを改善する施策を立案していきます。次の図はあくまで一例ですが、各指標に対して汎用的な広告改善施策を整理したものです。
指標ごとの改善施策は、例に出したもの以外にも多く存在します。また、各媒体の仕様や機能によって打てる施策が変わります。状況に応じて適切な施策を立案できるよう心がけることが重要です。
施策のインパクトから優先度を意識する
改善ポイントには切りがなく、たくさんの施策を打つことが可能ですが、限りある時間のなかで大小問わず、すべての施策を実行することは現実的ではありません。そのため、優先順位をつけて影響の大きな要素から改善していきます。
たとえば、CVRが同水準の広告グループAとBがあるとします。
― | クリック数 | CVR | CV |
---|---|---|---|
広告グループA | 10,000 | 10% | 1,000 |
広告グループB | 1,000 | 10% | 100 |
これは単純な例ですが、CVRを改善したときの効果に10倍の差が生まれる広告グループAを優先的に改善していくほうが効果的です。
現実的には、広告予算なども含めて検討していきますが、運用型広告のPDCAを回すには優先順位付けが重要です。
施策を検証する
仮説を立てて分析し、ボトルネックを明らかにして改善施策を実施したとしても、施策のすべてが成功するとは限りません。どれだけ準備を尽くしたとしても結果は確実ではないため、立案した施策の結果を検証していくことが重要です。
いくつかある分析手法のなかでも、比較的実行しやすいA/Bテストを例に施策検証のポイントを説明します。
検証条件を設計する
A/Bテストは、比較的検証がしやすいテスト手法の1つです。たとえば、広告クリエイティブをAとBの2パターン用意し、配信量が均一になるように配信します。その配信結果から、どちらの広告クリエイティブが課題を解決するために、より良い結果を得られるかを検証していきます。
A/Bテストの結果で明確に差がでたら、次は指標の変化に影響した要素を見極めていきます。そこからさらに改善するためのヒントを見つけ、次の検証に反映していくことが継続的な改善につながります。
検証には一定量のボリュームが必要なため、どれくらいの配信量や期間で判断するのかきちんと設計することが重要です。
バイアスを取り除き正確に検証する
A/Bテストで正確な検証結果を得るためには、可能な限りバイアスを取り除くことを意識しましょう。
検証を行ううえで、その施策以外で結果に影響を与える要素として何があるのかも意識する必要があります。すべての影響要素をコントロールすることは不可能ですが、与える影響が大きくコントロールが可能なものには注意を払いましょう。
たとえば、CTRの改善を目的に広告クリエイティブの検証を行う際、ターゲット・配信先まで大きく変えてしまうと、広告クリエイティブと配信先のどちらが影響した結果なのかがわからなくなってしまいます。
実行計画を立てる
対策は、あらかじめロードマップを設計してから実行することが望ましいです。「いつまでに」「どういう状態になっているべきか」と、目標達成から逆算して整理し、期日を決めて設計します。
また、「作業期間」「各媒体の仕様による反映期間」「有効な検証結果が得られる期間」など、さまざまな前提条件を事前に考慮しなければ、物理的に不可能な計画になる可能性もあります。以下が改善施策の設計で押さえるべきポイントです。
- 準備:広告入稿までの作業時間
- 反映:施策反映までの時間、広告審査期間を考慮
- 検証:信憑性が高い検証結果がでるように予め期間を設定
- 評価:施策結果をもとに指標が改善したかを評価
- 改善立案:検証結果をもとに今後の方針を立案
以上が、運用型広告で成果を上げるための基本である、「モニタリング」「分析」「改善施策の立案と検証」です。
運用型広告は掲載して終わりではありません。「結果はどうだったのか」「どうすればよくなるのか」を考え、改善し続けていけることが運用型広告の最大の強みです。
掲載後の運用フローを設計していなかったため、十分な運用ができず、満足いく結果が出なかったから掲載を止めたという話を耳にすることがあります。目標をどのようにして達成するのか、事前の準備を欠かさないようにすることで、少しずつ効果は良くなってきます。
これは社内で運用する場合でも、広告代理店に発注する場合でも変わりません。運用の仕事を理解したうえで、成果の改善につなげていきましょう。
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