Webサイトの「オーソリティ」のために、あらためて考える「リンク」と「関係性構築」
このコーナーでは、「Search Experience Optimization(SXO)」という考え方、そのフレームワークである3つの構成要素「U・R・A」を解説しています。
1つ目の要素「U(ユーザビリティ)」ではユーザーと検索エンジンの双方にとって優れたユーザビリティを、Webサイトの土台にすることの重要性を解説しました。
2つ目の要素「R(レリバンス)」ではユーザーの意図を捉えたコンテンツを展開することの重要性を解説しました。
今回は、SXOを構成する最後の要素「A」、すなわち「オーソリティ(Authority)」について説明します。
「オーソリティ」とは一般的には「権威性・信頼性」といった意味ですが、検索エンジンマーケティングにおいては、次のように考えるとわかりやすいでしょう。
検索エンジンマーケティングにおける「オーソリティ」とは、「ページの持つ『信頼性』」のこと。
SXOでは、Webサイトの「権威性・信頼性=オーソリティ」を高めることが重要なのです。
では、どうすればオーソリティを高められるのでしょうか。ポイントは、「Webの世界において、より多くの良質なWebサイトと関係を構築すること」です。
この記事では、そのポイントを以下の3つの流れで解説します。
- オーソリティを構成する重要要素の1つが「リンク」
- 「リンク獲得」(Link Building)から「関係性構築」(Relationship Building)へ
- 企業のビジネス活動にもSXO観点を取り込んでいく
Googleが示した「オーソリティ」への考え
Googleは4月に、フェイクニュースなどへの対応を含めた評価アルゴリズムの改善計画「プロジェクト・アウル(Project Owl)」を発表しました。
その発表文では「authoritative(オーソリティ性がある)」という表現が何度か出現していますが、その発表文を日本語に訳したGoogle公式ブログの記事「Google 検索における最新の品質向上について」では、(直接的ではないものの)「信頼性」というニュアンスで表現されています。
Googleは、Webサイトの「オーソリティ=権威性・信頼性」を重要な要素だと認識していると考えられます。
では、Googleは「オーソリティ」を測る直接的な数値指標をすでに持っているのでしょうか? どうやら、そうではないようです。Google検索に携わるシニアエンジニアのPaul Haahr氏は次のように発言しています。
我々は「これがオーソリティだ」と言うべき1つのシグナルを持っているわけではありません。オーソリティを高めるのに役立つような、非常に多くの要素があるのです。
つまり「オーソリティ」は、(PageRankのような)単体の指標(シグナル)で測られるものでなく、複数の要素をもとに総合的に評価されるものだと考えておくべきでしょう。
では、どういった要素がオーソリティに関係してくるのでしょうか。
オーソリティを構成する重要要素の1つが「リンク」
オーソリティの判断に影響するシグナルの1つとして想像されるのが、「リンク」です。
学術論文の世界では、各論文の重要度を測る指標として「被引用数」が使われます。1998年に誕生したGoogleのPageRankアルゴリズムは、これにならった「多くのWebページからリンクされてるページは、重要なWebページであると思われる」という考えに立脚しています。
SEOの世界では、昔は「リンクこそがSEOの要」という時代がありました。昔のSEOを知っている人ならば「コンテンツがどうであれ、被リンクをうまく作り出せばGoogleの評価が上がる」という時代があったことをご存じでしょう。
しかし昨今のSEOでは、「コンテンツの重要性」「ユーザーの検索意図への適合」「ユーザー行動」などが重視される傾向が強く、それにともなって、リンクについて語られることは少なくなっています。
また、不自然なリンクに対するこれまでのGoogleの対応を思い出し、SEOの文脈において「リンク」を語ることに、あまり良いイメージを持たない方も多いかもしれません。
とはいうものの、実際のところは、どうなのでしょうか。
確かに、検索エンジンにとって「リンク」は、時代の変化やアルゴリズムの進化によって以前ほど決定的な要因ではなくなっています。しかし、それでもGoogleの検索アルゴリズムにおいてリンクは今でも重要な要因の1つだと考えられています。
実際に、Googleのサーチクオリティ シニアストラテジストAndrey Lipattsev氏は、次のように発言し、SEO関係者の注目を浴びました。
Google検索のランキング要素のトップ3は「リンク」「コンテンツ」「RankBrain」だ。
別の角度からも同様のことが見えてきます。Googleは、「不自然なリンクを得ているWebサイトに対して警告を送る」「ペンギンアルゴリズムをコアアルゴリズムに組み込む」など、スパム行為への対応を強化し続けています。また、公式ブログにて「大規模な記事キャンペーンのリンクに関する注意点」も公開しています。これもリンクを重視しているからだと考えられるでしょう。
Googleは、まだ「情報の正確さ」を直接的には判断できません。ですので、情報の「信頼性」を判断する手段の1つとしてリンクを使っているだろうと考えることは、大きくは間違っていないでしょう。
「リンク獲得」から「関係性構築」へ
では、「自社のページにリンクを多く張ってもらい、「リンクグラフ」(リンクによってつながるWebサイトの相関関係)をしっかりと構築していけば、Googleから“信頼性のあるページ”だという評価を得られる」のでしょうか。
この方向性自体は間違っていないと思われますが、注意すべき重要な点があります。それは、「リンク獲得」(Link Building)ということの捉え方です。
前述のように、現在のGoogleは大幅に進化しており、作為的なリンクを判別する能力が非常に高くなっています。そのため、「被リンクを増やす」ための不自然な努力は、ほぼ意味がなくなっています。
では、どのようにしてリンクを増やせばいいのでしょうか。そこで大切なのが、「信頼性を高めるためにリンクを増やすのではなく、信頼性のあるコンテンツがユーザーから評価されることを通じて、自然にリンクが増えるようにする」という考え方です。
優れたコンテンツを作ることは大前提ですが、そのうえで、“そのトピックに関連する、さまざまな人たちとの良質な関係性を構築する”という「Relationship Building」(関係性構築)の考えにシフトしていくべきなのです。
「良質な関係性」を構築していけば、その結果として「自然なリンク」が生まれ、その積み重ねにより権威性・信頼性=オーソリティが実現されるのです。
Googleが排除したいのは「人工的」なリンクであって、そもそも「リンク」自体は悪いものではありません。そして、私たちは「リンクを張る」というユーザー行動自体に、あらためて目を向けるべきなのです。
良いコンテンツを作れば評価されるのでは?
「今のSEOで大切なのは良質なコンテンツだと言われている」「良いコンテンツを作るほうが大切ではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、良質なコンテンツを作ることは、SEOの本質であり大前提です。
しかし、「良質なコンテンツを作ればリンクが集まるとは限らない」のも事実なのです。
良質なコンテンツを作るには、時間と費用が必要です。ならば、そのパフォーマンスを最大化するには、そのコンテンツにふさわしいリンクが集まるようにして、自社のWebサイトのリンクグラフを構築するための行動も、並行して視野に入れるべきなのです。
実際に、「SMX」や「Pubcon」といった海外のサーチ系カンファレンスでは、今なお「リンク獲得(Link Building)」を解説するセッションは人気です。また「Page One Power」のように、リンク獲得に特化したコンサルティング企業も米国には存在します。
そうしたセッションで語られているのは、昔のような「いかにGoogleをだますリンクを増やすか」ではなく、「いかにコンテンツを知ってもらい、(何もしなければ発生しなかったかもしれない)自然なリンクが増えるようにするか」なのです。
企業のビジネス活動にもSXO観点を取り込んでいく
では、自然なリンクが増えるようにするには、どうすればいいのでしょうか。それが、先に述べた「関係性の構築」です。
「関係性の構築」とは、具体的には、
- 自分のことを知ってもらう
- 会社や製品のことを知ってもらう
- コンテンツの存在に気づいてもらう
- 良いコンテンツに対して自然にリンクを張ってもらう
ためにコミュニケーションを進めるということです。そのための行動は、オンラインで行うものだとは限らず、オフラインでの活動も含まれます(そのための働きかけは「アウトリーチ」と呼ばれることもあります)。
また、そのベースとなる活動として、業界団体やコミュニティでの活動を通じてつながりを強くすることなども含まれます(その動きのほとんどは、コンテンツとは直接関係がないものでしょう)。
こうした活動は、一朝一夕にできるものではありません。実際の友人や取引先との関係をイメージしてわかるように、まだ出会わぬ人たちと新たな関係を築き上げるのは、時間も労力も要することです。
相互に信頼関係が生まれ、関係性が構築され、リンクとなって現れるまで、長い時間がかかるものなのです。
しかしあらためて周りを見回すと「すでに関係ができている人たち」「関係ができているWebサイト」があることにも気づくでしょう。たとえば、次のような人たちです。
- すでにリンクを張ってくれているユーザー
- ビジネスパートナー(販売代理店・スポンサーイベント企業など)
- リリースを掲載してくれる外部メディアやそのジャーナリスト
すでにリンクを張ってくれているユーザー(Webサイト)については、Googleサーチコンソールなどから抽出することも可能でしょう。こうしたユーザーは、何らかのリンクを張ってくれていることからも、あなたのコンテンツに対して好意的だと思われます。新たなコンテンツを公開したらこまめに通知するなどすれば、関係構築の一助となるかもしれません。
自社にとってのビジネスパートナーや外部メディア、ジャーナリストなどは、社内の広報担当者経由で、リアルな関係を作ることも可能でしょう。
ただし、こうした関係構築は、SXOのためだけに行うものではありません。また、担当者にWebサイトに関する知識がまったくなければ、実際の関係構築ができたとしても、Webの世界におけるリンクグラフ上での関係性には反映されません。
実際の関係性と同様に、リンクグラフ上での外部サイトとの関係構築を目指して、SEO・SXO担当者だけでなく、あらゆる部門担当者の理解を得て、企業のビジネス活動にSXO視点も取り込んでいくことが、あなたのサイトの「オーソリティ」を高めるために、ますます重要になってくるでしょう。
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