米国SEO専門家240人調査: SEOの月額予算は? 優先するのはテクニカル? コンテンツ? 効いた施策は?
SEOの専門家240人に調査!
企業SEOの「支出と優先順位」「SEO戦略と課題」
エンタープライズレベル企業は、SEOに対し小規模企業よりも多く支出しているが、企業によって予算の差は大きい。
エンタープライズレベル企業の45%が、SEOのために月2万ドル(およそ200万円)以上を投資している。一方で、11%の企業は月1,000ドル(およそ20万円)未満しか割り当てていない。
SEO支出の優先順位が高いのは「テクニカルSEO」「コンテンツ制作」「トラフィック分析」。次いで4番目に「リンクビルディング」がランク付けされている。
「リンクビルディング」は、価値があると考えているものの「実行するのがもっとも難しいSEO戦略」として強く認識されている。
これは、米国内のSEOスペシャリスト240人を対象に行った「エンタープライズSEO調査」の結果からポイントを抽出したものです。
SEOの分野は驚異的なペースで進化し、日々競争が激化しています。そうした業界の状況と、企業が下すべき判断に関して、
エンタープライズレベルのSEOチームにおいて、どの戦略がうまくいき、どれがうまくいかなかったか? モバイルファーストへ向けた取り組みに対し、企業はどのように準備を進めているのか?
といった疑問に答え、さらに多くの知見を得るために広範に行った調査です。
本調査は、エンタープライズSEOプラットフォームを提供する米seoClarityがNorth Star Inbound、BuzzStreamと連携し、「The 2017 State of Enterprise SEO Report」として行ったものです。本記事の内容は、seoClarityと提携しているクロスフィニティが、調査結果を翻訳し解説を加筆して作成しました。
今回調査した項目は、大きく次のとおりです。
- SEOに関する支出と優先順位
- SEO戦略と課題
- SEOに取り組む組織に関する考察
- SEO施策の優先順位
調査結果を、次の企業規模別にも集計しています。
- エンタープライズ(従業員500人以上の企業)
- 中規模(従業員101人~500人の企業)
- 小規模(従業員1人~100人の企業)
本記事ではまず、このうち「SEOに関する支出および優先順位」「SEO戦略と課題」についての調査結果をお届けします。
SEOに関する支出と優先順位
SEOにどれくらいの費用を支出するか?
この質問に対する“正しい解答”はありません。本調査の回答者の半数以上が「月5,000ドル(およそ50万円)以上を支出している」と回答しましたが、いずれの規模の企業でも、予算水準に大きな差が見られました。
企業はSEOに対しいくら支出しているのか?
→ 企業規模にかかわらず大きな差
まず全体では、以下のような回答が寄せられました。
続いて、この調査結果を「エンタープライズ」「中規模」「小規模」といった企業規模で分けてみました。
企業規模が大きくなればなるほどSEOに対する支出が多くなる傾向にありますが、エンタープライズレベル企業のなかでも支出額に大きな差異が見られました。
- エンタープライズSEOの11%は、月額1,000ドル(およそ10万円)未満の予算
- エンタープライズSEOの20%は、月額5,000~10,000ドル(およそ50万円~100万円)の予算
- エンタープライズSEOの45%は、月額20,000ドル(およそ200万円)以上の予算
SEO担当者がもっとも優先順位が高いと考える領域はどれか?
→ 「テクニカルSEO(テクニカルな最適化)」が最優先
SEOは多くの領域にまたがります。今回の調査では、4つの主要戦略の領域を設定し、企業が焦点を当てている領域の動向を掴むことにしました。
私たちは「4つのSEO主要戦略のうち、どの領域にリソースを投入しているか」を質問しました(それぞれの回答に1~4の重み付け)。
選択肢として用意した4つの領域は、具体的には次のようなものを示しますが、SEOチームは「テクニカルSEO(テクニカルな最適化)」を優先的に考える傾向がありました。
テクニカルSEO(テクニカルな最適化)
DNS設定、サイト構造、インデックス化のされやすさ、ページ処理速度、キャッシュの活用、サイトセキュリティ、モバイル機能、バックエンドの最適化など
コンテンツ制作
独自性があり、ナビゲーションも優れ、キーワードも意識されていて、定期的に更新されているコンテンツ
トラフィック分析
検索経由でのトラフィック、競合他社と比較したサイトパフォーマンス分析、検索インテント、キーワードごとの訪問者、サイト滞在時間、直帰率などの調査
リンクビルディング(関係性構築)
外部サイトからのバックリンク、ソーシャルメディアによる流入、インフルエンサーやオーソリティの高いサイトからのブランド言及など、“質の高いリンク”の獲得
この調査結果は、「エンタープライズ」「中規模」「小規模」といった企業規模で分けてみても、優先度付けの順番はまったく変わりませんでした。
ただし、それぞれに付けた優先順位の分布を見てみると、SEOスペシャリストの間でも意見が分かれていることがわかります。
たとえば、「コンテンツ制作」に関しては「最も重要」と答えた人はさほど多くないのですが、「最も重要性が低い」と答えた人の比率は全体で最も低かったのです(8.1%)。つまり、「最重要視するわけではないが、決して軽視できない」ものだということです。
また少数ですが、「リンクビルディング」を最も重要性が高いとしている人も10.6%いました。
SEO戦略と課題
2017年現在、もっとも緊急度の高い課題は何か?
→ 「コンテンツ制作」だが企業規模で差
SEO担当者が直面している“もっとも緊急度の高い課題”について質問したところ、全体では「コンテンツ制作」がトップでした(約40%)。
しかし、これを企業規模で分けてみると、違いがみえてきます。
「リンクビルディング」など“外部に対する働きかけ”については、中小規模の企業では緊急度を比較的高く考えているのに比べ、エンタープライズレベル企業ではあまり心配していない様子が見られます。
エンタープライズレベルのSEO担当者は、それよりも「モバイル対応(モバイル・レスポンシブ)」「UX(ユーザー体験)」をより喫緊の課題だと捉えています。
過去12か月間でもっとも成果のあった戦略は?
→ 「テクニカルな内部最適化」が定番
“過去12か月間でもっとも成果のあったSEO”について聞くと、回答者全員が「テクニカルな内部最適化」だと認めました。
しかし2位以下の項目は、企業規模によって大きく異なっていました。エンタープライズのSEO担当者は「ユーザーエクスペリエンス」や「エバーグリーンコンテンツ(定番コンテンツ)」に注力することがもっとも効果的と考えています。一方、小規模企業は「ブログ」や「リンクビルディング」によってより大きなブーストを得ています。
SEO担当者がもっとも難しいと考えている領域は?
→ 「リンクビルディング」が圧倒的
“どの戦略がもっとも実行が難しいのか”を尋ねたところ、企業規模に関係なく、すべてのグループにおいて、「リンクビルディング」が大差で選ばれています。本調査に回答したSEO担当者は、「リンクビルディング」について、みな同様の課題感を持っていると言えるでしょう。
企業規模で大きな違いが出たのは「テクニカルな内部最適化」です。何万ものWebサイトのページをモニタリングする必要があるエンタープライズ企業では、この項目が2番目に難易度の高い戦略として選ばれましたが、中規模や小規模の企業にとってこれは大きな問題ではないようで、それぞれ4位と6位にランク入りしています。
まとめ テクニカルSEOかコンテンツ制作か、そしてリンクビルディングは?
「SEOに投資する予算」は、企業の規模や状況により異なっていました。これは、米国企業だけでなく、日本も同じ状況でしょう。
「SEO戦略と課題」においては、「コンテンツ制作」を当然のこととして実施しながらも、「テクニカルSEO(テクニカルな内部最適化)」についても熱心に取り組み成果を上げている様子が伺えます。ユーザーの意図を捉えたコンテンツを作りながら、検索エンジンにもフレンドリーなコンテンツを用意することは、パフォーマンスを最大化するために両軸で平行して考えるべきでしょう。
何万ページも管理するような大規模サイトのWebマスターであれば、実行が難しいとは言え、引き続き取り組むべき価値のある施策です。
そして「リンクビルディング」については、各社にてSEO戦略に組み込みながら、試行錯誤している様子が伺えます。
(念のために補足しますが、ここでいう「リンクビルディング」は、結果としては「外部リンクを増やす」ための施策ではありますが、そのプロセスは「各種業界やステークホルダーとの関係構築を行うこと」を重視しています)
実行が難しい「リンクビルディング」は、各企業の現状や今後の方針をもとに扱いをそれぞれ定める必要のある課題です。少なくとも現状では、どんな企業でも共通する「こうするべきだ」という結論が出せないものです。
実際にクロスフィニティでも、多くの企業様のSEOコンサルティングを行うなか、リンクビルディング戦略立案のお手伝いを実施させていただいておりますが、ベストプラクティスが見つかりにくい領域と感じています。
次回は「SEOに取り組む組織に関する考察」「SEO施策の優先順位」について解説いたします。
調査概要
- 調査目的:企業のSEO戦略における全体動向把握
- 調査方法:インターネットアンケート形式
- 調査対象:企業のSEO担当者
- 有効回答数:計240人(エンタープライズ規模企業:100人、中規模企業:52人、小規模企業:88人)
- 調査時期:2017年4月3日~5月12日
- 調査主体:seoClarity、North Star Inbound、BuzzStreamの3社
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