質の高いコンテンツが作れない? コンテンツの質を決めるのはセンスではなく「インプットの質と量」です
良いコンテンツを作るにはどうすればいいですか?
コンテンツマーケティングを実践しているいろいろな方から、この質問をされます。
結論を言うと、まずはインプット(情報収集)の質と量を見直してください。良いコンテンツは、インプットした情報から示唆・洞察を引き出すプロセスから生まれるものなのです。
- インプットする(情報収集)
- 集めた情報から示唆・洞察を引き出す
- アウトプットする(コンテンツ作成)
③の質を上げたいのであれば、その前のプロセスである①と②を見直す必要があるのです。今回は、この①と②について筆者が行っている方法を解説します。
インプットには一次情報と二次情報がある
弊社の新人にもよく言っていますが、インプットの質・量が不足していると質のいいアウトプットは完成しません。
ここで注意してほしいのは、とにかく情報を大量に集めようとする行為です。目的はあくまでアウトプットの質を上げることであり、情報収集はその手段にすぎません。完璧主義の人ほど、この罠に陥りやすいので注意してください。
インプットには一次情報と二次情報の2種類があります。1つずつ説明します。
- 顧客へのインタビューやアンケート
- その分野の第一人者(=専門家)へのインタビュー
- 自らそのサービスを利用してみる
- 現場を観察する
- Web: Googleキーワードプランナー、ライバルサイト、教えて!goo、発言小町、Yahoo!知恵袋、2ちゃんねる、各種ニュースサイト(Googleニュースはメールにアラートが届くのでおすすめ)
- 紙: 書籍(特に業界誌)、決算書、白書などの国の統計資料
一次情報は、自らの足で獲得した「現場の情報」のことだと考えてください(「最近話題のあのラーメン屋はおいしかった」)。それに対して二次情報は、非現場、つまり「第三者からの情報」です(「最近話題のあのラーメン屋はおいしいと○○に書いてあった」)。
一般的に、情報の価値は「一次情報>二次情報」です。
しかし、二次情報の価値が低いわけではありません。第三者からの膨大な情報を収集・整理して見つけやすくしてくれているグーグルに価値を感じない人はいないでしょう。キュレーションメディアも、賛否両論はありますが、二次情報に付加価値をもたせているものもあります。
一次情報の価値は高い ~ ある医療脱毛クリニックの例
前述のとおり、一次情報の価値は非常に高くインパクトがあります。ある医療脱毛クリニックのコンサルティングをしたとき、筆者は現場に1日はりついて受付の人の電話のやりとりを聞きながら、気になることをひたすらメモしていました。すると、こんなやりとりがありました。
お客:「そちらは看護師さんは何人くらいいらっしゃるんですか?」
受付:「12名です。ですので、予約も取りやすいです。」
お客:「ありがとうございます。検討してまたお電話しますね。」
脱毛クリニックはどこも予約が取りにくく、このお客さんは看護師の人数を確認することで予約の取りやすさの「裏」を取りたかったのです。在籍看護師が12名というのは、ライバルと比較しても約2倍。つまり、このクリニックはお客の受け入れ体制が整っており、予約から施術の流れも非常にスムーズなのです。それにもかかわらず、サイト上には1名の看護師の顔写真が載っているだけという状態でした。
そこで、筆者は全看護師の顔写真と今までのキャリア・扱った症例数、施術に関する姿勢や考え方を記載したプロフィールをサイトに掲載し、体制が整っていることをアピールしました。すると、このページからの申し込みフォームへの移動率は上昇し、来院予約も増えました。
現場で顧客の声に耳を傾けることで、見落としていたライバルとの差別優位性に気付くことができた、一次情報の力を感じる出来事です。
また、この件で「脱毛」という分野に対する私自身の理解がより深まりました。学習プロセスを大きく前進させてくれるのは、一次情報のもう1つの価値だといえます。
「当たり前すぎて」本人たちが気付いていない価値 ~ ある質屋の例
もう1つ、ある質屋の一次情報の事例を紹介します。
「ブランド品などを担保にお金を融資する」というのが質屋のビジネスモデルです。よくブランド買い取り店と混合されますが、質屋が金融業なのに対し、買い取りは古物商です。筆者は、このときも店頭に1日はりついてやりとりを観察していました。
今回のクライアントは、商品の査定から融資までにかかる時間がすごく短く、10分もかからないこともざらでした。現場の人たちにとってはごく当たり前のことらしいのですが、筆者にとっては驚きでした。
そこでランディングページに「融資まで最短10分」というキャッチコピーを目立つように追記し、「なぜこんなに早く融資できるのか。それは査定力(審美眼)のトレーニングに力を入れているから」という文脈で説明したところ、融資に関する問い合わせ件数がアップしました。
本人たちにとっては「当たり前」のことでも、第三者の目で見るとそれが強力な武器になることがあるのです。
もう1つ、基本的なことですが店舗ビジネスの「あるある」話をしましょう。
この質屋には、「今、牛丼の吉野家の前にいるんですが、ここからどう行けばいいんですか?」という電話がよくかかってきていました。地図アプリだけではわかりづらい場所なのです。
そこで、最寄り駅から店までの道順を画像付きで細かく説明するようにし、特に吉野家周辺は念入りに説明するようにしたところ、道順の問い合わせの電話が減り、スタッフの手間を省けました。これも、現場のやりとりを見なければ気付かなかったことかもしれません。
最強の二次情報のありかは国立国会図書館
一次情報に対して、「二次情報は誰でもリーチできるから価値がない」と思いがちですが、決してそんなことはありません。誰でもできることでも、誰よりも高いレベルで行えば差別化につながります。
深く調べるためにおすすめなのは、千代田区永田町にある国立国会図書館です。国内のあらゆる書籍や論文があり、すべてが利用可能です。非常に高額な書籍や書店では販売していないレアな本、そして業界誌などが充実しており、筆者もよく利用します。
検索して目的の本を探すだけでなく、注目したいのは本の巻末にある「参考文献」です。参考文献には関連する書籍が一覧で掲載されているので、さらに気になる書籍を調べれば効率的に知識を深めていくことができます。
「読んで、そこから資料を探してまた読む」というシンプルなことを繰り返すのに、国立国会図書館はぴったりです。強いて言うなら、必要なのは「根気」でしょうか。
グーグルの検索結果とQ&Aサイト(Yahoo!知恵袋)は宝の山
今は、二次情報というとWebを検索して探すことも多いでしょう。多くの方は、「グーグルで検索をしてざっとライバルサイトを読んでいく」ということをしているはずです。実は、この「ざっ」というところに問題があります。
筆者が知る限り、「ライバルがどんな情報を発信しているのか?」ということが目の前にあるにもかかわらず、ライバルサイトを真剣に読んでいない人が多すぎます。リアルでは手間暇かけて競合の情報を収集するにもかかわらず、Webになった途端手を抜いてしまうのです。「検索すれば誰でも手に入る」ということが気の緩みを生んでいるのかもしれません。
参入しようとしているキーワードの上位20サイトを「熟読」する
筆者が実践しているのは、参入している、もしくは参入しようとしているキーワードの上位20サイトを熟読することです。上位サイトを読み込む目的は、次のとおりです。
- そのジャンルにおける基礎知識を得る(書籍を読んで理解を深めるのと同義)
- どのような検索意図(=解決したい問題、欲求)かを理解する
- どのように情報を提示すればわかりやすいかのヒントを得る
1サイトずつ丁寧に読み、気が付いたことをエクセルなどにメモします(言うまでもありませんが、無断拝借、盗用、複製は言語道断です)。
メモは、非常にささいなことで構いません。たとえば、次のような具合です。「コンテンツ」は、そのサイトのオリジナルポイントを中心に記載します。
サイトA: http://example.com
- スマホだと比較表が縦長になってしまい、よくわからない
- 行間や字間が詰まっていて読む気がうせる
- 画像が素材集のものではなく、独自に用意しているものなので目を引く
- 論理展開はしっかりしているが、一般論に終始している
- しっかりと商品を使用してレビューをしている
- もっともらしいが、科学的根拠が弱く信じられない
サイトB: http://example.co.jp
- スマホで非常に読みやすい
- PCスマホともに、オリジナルの写真やイラストが豊富でわかりやすい
- 8,000文字以上の長文だが、記事頭にサマリーがあり親切。さらに目次が用意されているので、読みたい箇所にすぐ移動できて便利
- ○○について持論を展開している。これは取材するか専門家でなければ書けない。オリジナル性が極めて高い
- ページ構成は○○のポイントが3割、○○の流れが2割、体験談が5割
このように熟読してメモをすると、1つのサイトあたり最低5分はかかります。これを20サイトやると、5分×20サイト=100分は必要です。
Yahoo!知恵袋のQ&Aを100件しっかりと読み込む
そして、次にYahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトを100件読み込みます。1件のQ&Aを読むのに約3分とすると、100件読むには300分かかります。これも、気付いたことはどんどんメモをとっていきましょう。
なぜこのステップが必要なのでしょうか? それは、検索結果の上位20サイトは「情報を発信する側(何かしらのサービスを提供する側)」の視点で語られているのに対し、Q&Aサイトは、「情報を受ける側(サービスを享受する側)」の視点で語られているからです。
つまり、ポジションが異なる人たちの情報をバランスよくインプットすることが大切なのです。上位20サイトに100分、Q&Aサイトに300分。単純計算で計400分を費やせば、ユーザーが何を考え、何に悩んでいるのかということはだいぶわかってきます。
ある段階でユーザーの理解度が飛躍的に伸びる
仮に狙っているキーワードが100種類あるならば、こうしたプロセスを100回繰り返すことになります。というと気が遠くなる人もいるかもしれませんが、安心してください。
実際に行うとわかりますが、調査を続けていくと、「ある段階」でユーザーの理解度が一気に伸びます。そうすると、上位20サイトやQ&Aを読むスピードも飛躍的に高まり、先ほど計算した時間よりも大幅に短縮できます。
インプットの量はどれくらい行えばいいのか?
私の経験上、書籍ならば3~5冊も読めば「その分野」に関する知識は十分です。それ以上読んでも費やした時間の割にリターンはあまり期待できません。検索結果のライバルページ数ならば2,000ページ、ヤフー知恵袋ならば6,000件です。これはあくまで目安としていただき「これ以上やっても意味はない」という自分自身のラインを設定してください。
集めた情報から示唆・洞察を引き出す
集めた一次情報や二次情報はどんな風に結びつき、アウトプットにつながるのか? つまり、インプットした情報からどうやって示唆・洞察を引き出すのでしょうか?
筆者の場合、インプットの質と量が一定ラインを超えると、アウトプットの輪郭が自然と浮かび上がってきます。これが示唆・洞察を引き出した状態です。
前述の脱毛クリニックの場合は「看護師の在籍人数を確認する電話」という一次情報から、「看護師はライバルの2倍在籍している。施術をする体制がしっかり整っていることをアピールすれば予約の申し込みは増えるはず」という示唆・洞察を引き出しました。
この示唆・洞察を引き出す際に強く意識しているのは、コンテンツを読んでくれた人に「どんな行動を起こしてほしいのか」ということです。今回はクリニックへの来院予約という行動です。
別の事例を交えてさらに詳しく説明します。
女性用の白髪染めオウンドメディアの事例
某トイレタリー(パーソナルケア)メーカーから女性用の白髪染め・ヘアカラートリートメントに関するオウンドメディアの企画依頼をいただいたときのことです。
筆者は、最初「近所のドラッグストアでも手軽に購入できるコモディティ商品がネットで売れるのか? アマゾンならまだしも、SEOやPPCでの集客は効果的なのか? 美容室や理容室で染めるのではないのか?」という疑問がありました。
しかし、クライアントは「ネットで売れる」と断言します。
現場での発見(一次情報)
ライバルサイトをチェックしてもしっくりこず、ユーザー心理の理解も進まないので、ドラッグストアへと足を運びました。自分の目で現場を観察してみることにしたのです。
ドラッグストアの白髪染め売場で発見したことは次のとおりです。
圧倒されるほどの商品数。どれを選べばいいのか? とユーザーも悩むはず
店員への「売れ筋やおすすめはどれですか?」という質問に対する回答はあやふやで的を射ていない(これだけあれば仕方ない)。しかし、売れ筋のカラーはどのメーカーもダークブラウンだそう
価格はバラバラ。安いものは500円、高いものは3,000円
成分表をみても良い成分なのか、良くない成分なのかまったくわからない
40~50代の方は、藤原紀香がTVCMをしている商品(シエロ)を手に取る人が目立った。やはり認知度は強い
パッケージの商品説明を読むと、手間がかからないことをアピールしているものが多い。「ワンプッシュ」「泡で簡単」「毎日のトリートメントできれいに染まります」など
購入者は40代女性が中心かと思いきや、30歳前後の女性もいた
現場に行くことで、この白髪染めという商品が少しずつ「自分事化」されていきます。そして、ユーザーの気持ちの理解が深まります。
今回の現場観察(一次情報)から、「商品の選択基準は『価格』『手間』『効果(よく染まり、頭皮にも優しい)』の3つくらいに集約されるのではないか」という示唆を得ることができました。
Yahoo!知恵袋の熟読(二次情報)
Yahoo!知恵袋を読み込んでいくと、このような質問と回答がありました。重要だと感じた箇所に赤いアンダーラインを引いてあります。
筆者は、インプットで得た一次情報と二次情報から次のような示唆・洞察を引き出しました。
女性向けの白髪染め・ヘアカラートリートメントは商品数が多く、何を基準に選べばいいのか悩む人も多いはず。選択基準は、実は以下の5つが重要である。
- 頭皮に優しい
- しっかりと染まる
- どの程度の手間がかかるのか
- 価格
- いっしょに使うシャンプー
この5つについて詳しく解説し、比較表を作成して格付けを行う。
そして評価が良い商品を購入してもらう。
コンテンツを制作する際は、美容師さんや理容師さんに監修してもらう。
また、商品を購入し、白髪染めを必要としているユーザーに実際に使ってもらう。
だいぶ簡略化して説明しましたが、インプットしたものがアウトプットになっていく流れは、だいたいこんな形です。
コツコツ・イズ・キング
良質なコンテンツを制作するためには、難しいプロセスを踏む必要はありません。その代わり、楽な近道もありません。面倒なことをコツコツと継続していくことこそが大切です。
「コンテンツの質を上げるには」と悩んでいる時間があったら、その時間を使ってまずはインプットの質と量を上げることできっと見えてくるものがあるはずです。「コツコツ・イズ・キング」です。
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