爆発的にシェアされた「氷結」のさかなクンCMの裏側。その狙い・施策・効果とは?
今回は「さかなクン動画」でも話題になった「氷結®」の製品リニューアル施策の裏側をお伝えしたいと思います。
動画そのものが大きな注目を集めましたが、その裏では、ターゲットを「スマホ世代」に絞り込んだうえで、Twitter、YouTube、Webメディア、テレビなどのマスメディア、Webメディア、SNSが連携して相乗効果が出るように、綿密なプロモーション設計をしています。
まずは、こちらをご覧ください。話題になった「さかなクン動画」です。すでにご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。
これは、缶入り低アルコール飲料「氷結®」の期間限定スペシャルWebムービーとして公開したもので、本記事公開時点で、約250万回以上閲覧されています。TVやWebニュースでも大きく取り上げられ、これまでと違う「カッコいいさかなクン」という“あたらしい”姿に大きな反響がありました。
「氷結®」製品リニューアルキャンペーンの目的とは?
「氷結®」ブランドは、今年15周年を迎えます。「氷結®」は、2001年に発売されたウォッカベースの缶入りチューハイです。収穫した果実を搾汁して凍結する「氷結®ストレート果汁」は、発売当初からのアピールポイントで、さらに氷を連想させるダイヤカット缶も特徴的です。
「氷結®」は、2001年に従来の缶チューハイを変える革新的な「新チューハイ」として生まれ、売上面では、缶チューハイを代表するブランドとしてお客様に認知され、キリンにとって大変重要なブランドです。
しかし、近年のRTD市場は各社から多種多様な商品が発売され、市場における存在感の向上が急務となりました。
そこで今回、15周年というタイミングで、プロダクトとしては、フルリニューアルや通年商品の拡充をすることとなりました。同時に、プロモーションでは「あたらしくいこう」をメインメッセージにし、若者にとって「楽しい時のそばにいる最も身近なチューハイ」を目指す施策へ大きく方向転換を行いました。
- メインメッセージ: 「あたらしくいこう」
- メインターゲット: 20代前半の若者
- 商品の目指す位置づけ: 楽しい時のそばにいる最も身近なチューハイ
「さかなクン動画」プロモーションの目的は?
20代前半の若者は、「テレビ視聴時間よりもスマホ接触時間の方が長い」ということは、ここ数年、さまざまな調査データからも明らかな傾向と言えます。
ある調査によると、20代男性の1日あたりの平均テレビ視聴時間は98.4分であるのに対し、ケータイ・スマホ接触時間は128.8分でした。
一方、20代女性の1日あたりの平均テレビ視聴時間は126.6分であるのに対し、ケータイ・スマホ接触時間は187.5分でした。
20代では、男女ともにケータイ・スマホ接触時間の方が、テレビ視聴時間を大幅に上回っています。
- [参照]メディア総接触時間の性年代別比較
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/07/HDYmpnews201507071.pdf
また、20代前半の若者はTVなどの広告を見せるだけでは影響を受けにくいという傾向もあります。
ニールセンの調査では34歳以下のメディア別信頼度で「インターネット上に投稿された消費者の意見」がTV広告を上回っています。話題になっていないコンテンツはそもそも信用してもらいにくい、ということも20代前半向けのプロモーションでは重要なポイントになります。
- [参照]広告信頼度 グローバル調査(Nielsen Global Trust in Advertising Report)抜粋コラム
http://www.netratings.co.jp/email_magazine/2015/10/20151029.html
そこで今回の製品リニューアル時のプロモーションでのデジタルの役割を、次のように整理しました。
Twitter上の評判形成というのを、もう少し具体的に説明すると、まずは、Twitter上でコンテンツとともに、「氷結®」や「あたらしくいこう」といったキーワードをできるだけたくさんのユーザーに投稿してもらうことが目標になります。もちろん、ただたくさん投稿されるというだけでなく、内容が好意的なツイートの割合を増やすことも重要です。
これらの評判形成を通して、ツイートした人はもちろん、動画は見ていないけれどツイートは見たという人にも「氷結®って周りで話題になっているな」「氷結®があたらしいことをはじめているんだ」という印象を持ってもらう、というのがデジタルプロモーションの目的でした。
製品リニューアルプロモーションの具体的な施策とは?
1.テレビCM発表会の様子をSNS発信(2016年2月15日)
テレビCM、およびリアルイベントとの連動という面ではまず、「氷結®」の新CMに出演していただくタレントさんに、CM発表会の様子をリアルタイムでSNS発信していただきました。
綾小路さんのリーゼントをパッカーンさせていただきました。
— 松坂桃李 (@MToriofficial) 2016年2月15日
新しくなった“氷結®”
果汁がアップして、飲みやすくなっているので、皆さん、是非。
新CMは2月16日~見られます!#氷結®#綾小路翔 pic.twitter.com/6lyjYAbHS7
結果
このツイートは、約4000リツイートされました。
2.新商品プレゼントキャンペーンをTwitter上で実施(2016年2月16日~)
同じタイミングで、「氷結®」があたらしくなったことの認知拡大、商品まわりの情報露出を図るため新商品「氷結®もも」のプレゼントキャンペーン(https://cp.kirin.jp/join/2517)をTwitter上で実施しました。
2016年2月16日(火)14:00~2月29日(月)24:00まで
キャンペーン専用Webページから申し込み
- ツイートする際に「キリンビール」公式Twitterアカウント(@Kirin_Brewery)をフォローしていること。
- 1人につき1回限り(同一アカウントまたは同一メールアドレスで複数の方のご応募はできない)
- 応募は、パソコン・スマートフォンのみ受け付け
結果
この「氷結®もも」新発売記念キャンペーンは、応募件数が2.5万件以上となりTwitter上の評判形成に貢献しました。
応募するにあたって「キリンビールの公式Twitterアカウントをフォローしていること」という条件をつけることで公式アカウントのフォロワー数の増加も見込めます。
3.さかなクンの期間限定ムービーを公開(2016年2月19日~×月×日)
続いて実施したさかなクンの期間限定ムービーについては、情報の拡散をTwitterだけに頼るのではなく、事前の話題化として、東京スカパラダイスオーケストラへのさかなクン加入についてWebメディアにてPR記事を仕込んだりといった情報拡散設計をしています。
- 「スカパラ、謎のサックスプレイヤー「GYO」とコラボ」(2016年2月8日)
http://natalie.mu/music/news/175393
- 「ギョギョッ!スカパラの“ギョラボ”相手「GYO」の正体はさかなクン」(2016年2月20日)
http://natalie.mu/music/news/176891
このキャンペーンでどれぐらい評判形成できたのか?
今回のプロモーションでは、SNS上の評判形成とTVなどのPRがとてもうまく連動しました。
「さかなクン」のWeb専用のスペシャル動画は、まずキリンビールの—公式Twitterアカウントや、プレスリリースを取り上げたニュース媒体のTwitterアカウントから発信しました。そこから広く拡散し、話題になったことで、YouTubeの閲覧数が数日間で100万回を超えました。
そのあたりからTV番組での取材依頼が増加し、「SNSで話題になっている!」という文脈でかなり取り上げていただくことができました。その後Twitter上でTV番組を見たユーザーが話題にし、いくつか報道が重なったタイミングで約半日間「さかなクン」というワードがトレンド※に上がるまでになりました。このようにWeb→TV→Webと連動する流れが作れると比較的長くコンテンツへの興味を継続することができ、公開から約2か月経った今でもさかなクンのスペシャル動画はYouTubeで1日当たり約数千回閲覧されています。
当然ながら、TVでの取材回数やYouTubeの閲覧回数以外にも、今回の施策によって、どれぐらい評判形成の成果が上がっているのかは、いくつかのKPIを設定して調査・観測しています。
Twitterを使った施策でのKPIとしては、ツイート件数をはかるためソーシャルリスニングを行っています。
今回の分析では、トライバルメディアハウス社が提供している「ブームリサーチ」(http://boomresearch.tribalmedia.co.jp/)を使用しました。
SNSの投稿やソーシャルリスニングについてはキリンビールのSNS担当兼同じ氷結®ブランド担当の髙柳さんが分析しています。
なかなかここまでの盛り上がりを作ることは難しいかもしれませんが、Web上での評判形成の状況を、迅速にPRに反映することが重要だと今回の案件を通じて学ぶことができました。
ただし有料のツールを使わなくても…
だれでも簡単に調べられる方法「Yahoo! JAPAN」の「リアルタイム検索」があります!
Yahoo! JAPANのトップページの検索ボックスに「氷結 さかなクン」と入力し、「リアルタイム」をクリックすると、Twitterのツイートの検索結果が表示されます。
この検索結果画面の右サイドバーには、「ツイート数の推移」と「感情の割合」がグラフで表示されています。過去30日間までさかのぼって、調べることができます。
ツイート件数が少ない場合は、このYahoo! JAPANの検索機能でも十分調査が可能です。ただ、ツイート件数が数千件、数万件を超える場合や、過去30日以上までさかのぼって調査したい場合には、専用のツールを使ったり、専門の調査会社に依頼して調査をする必要があります。
これまでは、テレビCM放映、CM発表会、デジタル上でのサンプリングキャンペーンを、それぞれ単独で実施し、施策がバラバラになりがちでしたが、今回の施策のように、ひとつの「あたらしくいこう」というコンセプトを軸に、マス広告・デジタルプロモーションが連携し、相乗効果を図れる設計でプロモーションを組み立てることができた事例になりました。
デジタルマーケティング部で加藤さんと仕事をしている上代です。氷結®の成功は、マスxデジタルxリアルの接点とクリエイティヴが、時系列で上手に連携できたことが要因でした。…と言うと簡単ですが、そこに至る過程で、企画段階から「絶対に成功させるのだ」という強い意志をもち、時に巻き戻すことも厭わずに進められたことが、重要な経験でした。
ソーシャルもやってます!