コンテンツマーケティングの基本、ブレないWeb連載企画の作り方
企業ホームページにはコンテンツが不足していて、SEOで狙ったように人を集めることもできず、リピーターもついてこず、さらにはせっかくサイトを訪れた人にも満足してもらうことが難しくなっています。
そうしたなかで、今回はリピーターの積み上げに大いに貢献する「連載型コンテンツを企画する5つのポイント」を紹介します。
連載型コンテンツのメリットとは?
「連載」というのは、元は新聞や雑誌に見られる方法で、発行が頻繁なために、1つのテーマを何回にも分けて記事掲載する方法です。Webは「発行が頻繁」という媒体ではないので、「連載」はおかしいのですが、1つのテーマを何回かに区切って掲載することを連載型コンテンツと呼んでいます。
雑誌では、連載コラムがたくさん掲載されていて、どんな執筆陣をそろえるかで媒体特性を打ち出しています。週刊誌などでは「あの人が連載しているから毎週買っている」という人も少なくありません。
Webの場合でも似たことが起こります。たとえ無名社員の執筆であっても、一度読んだ人がおもしろいと思えばリピーターとなり、次第に積み上がっていくので最も底堅い集客コンテンツといえるでしょう。
連載コンテンツのメリットは、たとえば、BtoBサイトで自社の詳細な技術解説を連載していけば、気が付くとある分野の技術情報をかなり深く扱ったサイトになっていて、検索でも強い記事をもったサイトになっているということです。また、連載にすることで更新頻度が高まり、検索エンジンからの評価もさらに増します。
連載型コンテンツは1回目と2回目が連続した内容を持っているので、次回への関心につながりやすいという回遊性も魅力の1つです。さらに3回目も読みたいとなればリピーター化していくのですから、これは非常に有効な企画です。
月1回連載していた記事の更新頻度を月2回に増やせれば、リピーターも月2回訪れてくれるかもしれません。こうしたことができれば、月間訪問者数をかなり積み上げることができます。
また、運営側としても毎回イチから企画を考えなくてもいいので、工数削減ができるメリットもあります。
連載型コンテンツを企画する5つのポイント
Webで連載コンテンツを企画するとき、重要なことは次の5点です。
ポイント① ターゲットは誰か
「ターゲットは誰か」を考えない記事企画はありません。どんな人に来てほしいかを絞り込みます。「30代女性」といったマスマーケティング的な考え方ではなく、自社の製品の良さを感じてくれる人はどんな人かを思い出していきます。
たとえば、大きなサイズの婦人靴を売りたいサイトなら、来てほしい人は「足のサイズが大きい女性」です。また、ホテル向けにベッドリネンを作っている会社なら、自店の品質向上を考えているホテルマンということになるでしょう。
ポイント② テーマは何か
たとえば、「足のサイズが大きい女性」は何を探しているでしょう? 「サイズが大きくてもかわいい靴」なのか、「丈夫で甲高で履き心地の良い靴」なのか、もしかすると、「靴も含めた全体のコーディネート」を探しているかもしれません。
「大きなサイズだけどかわいく見える靴と履きこなし方」や「靴サイズの大きい女性のための全体コーディネート」といったように、ターゲットに応じて、テーマを分けて連載企画を立てたほうがリピーターを獲得しやすい企画ができるでしょう。
ポイント③ 1回の分量
一般的に連載は、1回ごとの掲載量を同じぐらいにするものですが、Webですから、新聞のように「15文字×100行」といった厳密に毎回同じ分量にする必要はありません。1~2スクロールぐらい、といった目安で良いでしょう。ある回が多少長くなってもそれは成り行きでOKと考えてください。
1回が短く、すぐ読み終わって、次のページに移動しやすいぐらいの量にしたほうが、作りやすいですし、訪問者も読みやすいでしょう。また、連載ネタも長持ちします。
ただし、1回、1回の記事で扱う内容が完結するようにしましょう。
ポイント④ 全体の連載回数
全体の連載回数、つまり全体のページ数は重要です。具体的な検討方法をエクセルを使って説明していきます。
テーマが決まったらエクセルを開いて上図のように順々に記入していきます。
B1のセルには、テーマを「履きこなしテクニック解説」といったように記入します。
ここで入力する「テーマ」は内部向けの企画説明の言葉でかまいません。B2のセルには、メインキーワードを「大きいサイズ、靴」と記入します。
B3のセルには、連載のネタとなるようなサブキーワードを「パンプス、スニーカー、快適、おしゃれ」と記入します。
B4のセルには、コンテンツのコーナー名となる1行見出しを「女性のための大きいサイズの靴、パンプス・スニーカーの履きこなしとつま先・かかと・土踏まず調整法」といった形で入れていきます。
検索キーワードを重視して、見出しらしくまとめましょう。多少長く堅苦しくなってもかまいません。重要なサブキーワードをうまく含むようにしていきます。B5のセルには、読む人の興味関心を引く2行目の見出しを「10の実例に学ぶ ひと工夫でこんなにかわいくなった!」といった形で記入します。
訪れた人が読みたくなりそうな見出しをひねってください。B6以降のセルには、連載の番号を書いて、1回目の見出し、2回目の見出しを書き入れていきます。
これらの見出しにはメインキーワードと組み合わせて検索される言葉やサブキーワードを順番に含むようにするといいでしょう。
これが埋まったら連載の企画はおおむね完成です。記事の見出しは下図をご覧ください※。
1行目の見出しは検索キーワード重視、2行目の見出しは読者の興味関心を重視した2段構えです。これに連載のタイトルがつきますから、3段構えということになります。
なお、1行目の見出しにキーワードを含んでいますから、これを使ってHTMLのtitleタグも作ります。
女性のための大きいサイズの靴、パンプス・スニーカーの履きこなしとつま先・かかと・土踏まず調整法
ではあまりにも長いのでちょっと調整し会社名も織り込んで、
女性のための大きいサイズの靴講座|靴のことなら○○(会社名)
とまとめましょう。これなら30文字で検索結果などの表示にもちょうど良いでしょう。
連載の見出しを考えるときは、1回目と2回目があまりにもかけ離れたテーマにならないようにしましょう。1回目を読んだ人が2回目に興味を持てるか、という視点で見出しを吟味してください。
会社によっては難しい企画趣旨などをまとめて提案しなければならないかもしれません。それは予算取りのために大切な企画書作りかもしれません。
しかし、編集の現場では見出しが勝負です。見出しが企画の良さを反映していなければ誰も読むはずはありませんし、2行目の見出しだけで企画のおもしろさが伝わらないのでは、長い企画書でアピールしても掲載後に良い結果が出ることはないのです。
※各社で使っているCMSによって、必ずしもここで紹介したような記事の作り方が実現できるとは限りません。場合によっては、CMSの仕様を拡張する必要があるかもしれませんが、連載コンテンツを企画するときはこのような考え方で作るといいでしょう。
ポイント⑤ 連載の可変性について
月1回の連載なら、4月から始めて、7回目の連載は下期の10月になっているわけです。連載開始時には見えていなかった事情も出てくるのが当然です。たとえば、
- 3回目に大きな反響があったから、そのテーマをもっと掘り下げよう
- 会社として、スニーカーよりもパンプスに力を入れていきたいから、パンプスの回をもっと増やしてほしいなど
こうした状況の変化をうまく取り込んでいけるのも連載の醍醐味です。
1年間12回の連載としてスタートして、後半の6回は当初予定とは違うものになった、ということはまったく問題ありません。アクセス解析をしながら、人気のテーマを見つけ、それを掘り下げていくようにしましょう。
連載のつながり ストックを作って進める
連載の流れと、各回の内容の関係は、下図の配置図を見てください。
1回目の連載内容には、2回目の出だしが含まれているのです。これは連載ならではの「次回予告」です。たとえば、1回目の記事末に「さあ、次回はこの写真の履きこなしスタイルを紹介します。どこがポイントかわかりますか? 乞うご期待!」といった形で記載し、次回への興味を持たせていきます。
これを実現するためには、連載は次の回もできている状態で進めなければならないということです。可能な限り3回分のストックを作ってから掲載開始するといいでしょう。これなら繁忙期があっても余裕を持って進められますし、次回への興味をあおる、ということもしやすくなります。
ただし、連載企画の注意点としては、連載の効果が実感できる前に、連載にかかるコストを計算し、予算を取る必要があるということです。
連載企画の効果を実感できるようになるまでには一定の時間がかかります。3~4か月ほど、連載を積み重ねてようやく「リピーターがついてきたなあ」「検索集客力が上がってきたなあ」といった結果が出てきます。
連載企画を自社のビジネスに貢献する良い連載にするには、ただ更新するだけでなく、しっかり分析をして、コンテンツへの反応を把握しながら進めていってください(詳しい分析方法は、次回解説します)。
実践しやすい連載企画例
ここで実践しやすい連載企画の例を3つ紹介します。
①インタビュー
BtoBサイトなどで人気があるのが開発者インタビューです。ビデオをまわして1回インタビューすれば、人の話し言葉というのは非常に多くの語数を含んでいますから、少し縮めながら編集しても3、4ページ分の内容が生み出されます。
多くのキーワードが各ページに登場しますから、検索にも強く、リピーター獲得にも貢献します。
「ビデオをまわして」と書いたのは、言葉を漏らさず収録するためで、このビデオは原稿を起こすための素材です。また、最近よく見かけるのが、撮影したビデオだけをコンテンツとしてサイトで掲載する形です。ビデオだけを掲載するのはとてももったいないのです。
検索エンジンのボットは、ビデオ内で語られている会話やキーワードを認識できません。そのため、せっかく技術に関するキーワードがたくさんするビデオであっても、テキストで書かれた読み物コンテンツとして掲載しなければ、検索エンジンから評価されません。
検索エンジン経由での訪問者獲得が難しく、結局は狙った効果が得られないコンテンツとなってしまう可能性が高いです。
もし「ビデオで撮ったのだから、顧客にもぜひ見てもらいたい」というのであれば、インタビューの様子をテキストで書き起こした後に、そのビデオ内容をうまく分割編集して、記事に添えて掲載するのがお勧めです。また、分割したビデオはYouTubeに掲載し、自社サイト以外でも、出会いのチャンスを作って連載のページに誘導するといいでしょう。
②お客様の事例
事例も連載にしやすいテーマです。顧客と良い関係を築いている製品なら、順番にお客様をまわって聞き取りしていきましょう。多くの製品で「実際に使われている現場を見たい」というニーズがありますし、事例を掲載することで資料請求の数が増えるといったこともあります。
ただ、注意すべきは事例を作ると目次からのリンク文言やページタイトル、見出し、パンくずナビゲーションまで、すべてそのお客様の名前で作ってしまうことです。これではSEOの効果が低くなってしまいます。
お客様の事例は、似たようなニーズをもつユーザーやお客様がどんな風に製品を使っているのか詳しい情報を知りたいユーザーに対して効果を発揮するコンテンツです。
そのため、「○○様の事例」といったようにお客様の名前でコンテンツを作るのではなく、次のように「製品内容、特長、業種、ニーズなどのテーマに分けて」連載していくといいでしょう。
- この製品をこういう位置づけで導入された○○会社様
- 同じ製品を別の狙いで導入され、こんな成果をあげた○○会社様
- 社内コミュニケーションがアップし、売り上げ向上にもつながった○○会社様
このように記事のテーマを反映したコンテンツタイトルを付けることで、検索にも強くなりますし、サイトに訪れたユーザーが関心を持って読み進んでもらえるようになります。
③10か条
「○○についての鉄則 10か条」というのはある分野についての網羅性を示す言葉です。読者からすれば1記事を読んだだけでは、知見が抜け落ちることがわかるので、他の回も読みたくなるのです。網羅的ということを示すのに「○○のすべて」「A-Z」「ABC」などいろいろな言い方がありますが、数字のほうが始まりと終わりがはっきりして具体的に感じてもらうことができます。
最初の企画段階で「10か条」と打ち出して、10ページ分の企画をまとめて開始しても、途中で「あ、あの大切なことが抜けていた」と気づいて11か条、12か条と増やしたくなることもあるでしょう。増えることは、気にしなくてかまいません。
CDを買ったときに、最後にボーナストラックがついているようなものです。9回目か10回目の記事の次回予告で、「ここまで読み進めてきたあなたへの特別プレゼントとして、追加鉄則を2つさらにお教えしましょう」と打ち出してください。
連載コンテンツは時間と共に伸びていくタイプのコンテンツです。検索集客力が高まり、リピーターも増えていくことが理想です。
そこで、次回はGoogleアナリティクスを使った、連載企画の効果分析方法を解説します。サイトへの貢献度の高いページや連載コンテンツを発見して、サイトの大ゴール「メルマガ登録」「お問い合わせ」「購入」への誘導を増やしましょう。
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