Webもチラシもぱぱっとお願い! 経営者の無知と本音とリスク
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の409
チラシとホームページのどちらも
ホームページやチラシを作れる人がほしい
ある建築関連会社の社長から相談を受けます。中小企業では珍しくないリクエスト。どちらもパソコンで作るイメージから、同じようなものだと考える非IT系の経営者は少数派ではありません。相談者の社長は学生時代からの友人で、どちらも作ることができる私を見て「簡単」だと考えていたようですが、失礼な話です。
そこで説教がてら「ホームページを作るために最低限必要な知識」をレクチャーします。なぜなら、無知」にはリスクがともなうからです。経営側の無知とは、応募者の技量をチェックできないことを意味し、その場を取り繕うのがうまいだけの人物の採用へとつながります。私は、ホームページを作ったことも、管理したこともない人物をWeb担当者として採用してしまった事例どころか、経営者の無知を悪用し「横領」と疑われる事件を起こした人物も知っています。
今回は、Web担の雇用を検討している経営者必読。友人にレクチャーした「ホームページを作るために最低限必要な知識」のダイジェスト版。なお本稿をお読みのWeb担当者で、仮に欠けている知識があれば、早急に手当てしてください。
基本の文書構造と装飾
まず、基本中の基本は、構文ルールである「HTML」。さらに装飾を指示する「CSS」。HTMLの親戚に「XHTML」もあります。すべて暗記していなくても、床材と壁材の違い、もとい、リストとテーブル、太字と標準の指示の区別は、一目見ただけ理解できなければなりません。
現代的サイトでは不可欠の「JavaScript」。「プログラミング言語」の1つで、Web担のトップページでも採用している「アコーディオン型」のメニューや、カルーセル(回転木馬)、スライドショーなど、動きのあるページ演出に用いられます。特にiOS端末が「Flash」の採用を見送ってから存在感が高まりました。「Google Analytics」も「JavaScript」で起動しています。
知っておきたいネットの裏側
プログラミング言語には、ブログ管理ツールの「WordPress」を動かしている「PHP」や、黎明期を支えた「Perl」などもあります。「ブラウザ」がプログラムを実行するJavaScriptに対して、PHPなどは「サーバー」が処理を行います。プログラムの開発まではできなくても、言語の存在と、特性は理解しておかなければなりません。
高機能で保守性の高いレンタルサーバー(レンサバ)が普及しているので、「サーバー管理」の深い知識は、さほど重要ではなくなりましたが、「.htaccess」などにより、アクセスを制限できる方法があることは知っておくべきでしょう。ただし、知識のないWeb担当者が実際にいじるのは危険です。
サーバーと言えばドメインネームシステム(DNS)やWeb(www)の仕組みは、実務において滅多に出番はありませんが、レンサバを引っ越す際などに不可欠な知識となります。
また、プライバシー保護を当然とする昨今、「http」と「https」の違いは「費用面」からの理解が求められます。Webの世界の安心安全は、シビアにお金と連動するのですが、セキュリティや保守対応は必須です。
データベースで合理化
「WordPress」や「Movable Type」において、「エントリー(投稿・記事)」は「データベース(DB)」に保存されます。必要に応じ、データは引き出され、加工して表示されます。一般的な「買い物カゴ(カートシステム)」も同じ仕組みです。さらに、売上確定時に在庫情報が変更されるといった、1つの取引に連動して情報が書き換えられるDBを「リレーショナルDB(RDB)」と呼びます。
一般的なDBの場合、登録してある情報(データ)を書き出し(出力、エクスポート)することができ、他のDBで読み込み(入力、インポート)できます。ブログ管理ツールを「Movable Type」から「WordPress」へと、比較的容易に移行できる理由です。
「テキストデータ」としてエクスポートとインポートができれば、表計算ソフト「エクセル」によって、データの加工も可能となります。通販サイトにおける価格の一斉改定や、手作業で調整を加えたデータを、新しいDBに読み込ませることで作業の合理化が実現します。
これらの作業は「テキストデータ」がベースとなるので、「.xls」「.doc」や、その流れを組む拡張子のファイルとの区別が求められます。また、さらっと流しましたが、エクセルの基本的な操作はWeb担当者の基本スペックに加えていいでしょう。
鬼の所業の先に
さらに、画像編集の「イラストレーター」や「フォトショップ」、アクセス解析の「ログ解析」や「A/Bテスト」など、それぞれに「専門家」がいる分野の知識を、網羅的に備えていなければならないのがWeb担当者です。
また、いまや不可欠とした「JavaScript」が、かつてはセキュリティの面から「排斥」されようとしていた時代もあり、トレンドの変化は右往左往のレベルながら、絶えず発生しています。常に最新情報にキャッチアップしなければならない、多忙なWeb担当者に「チラシ」まで作らせるとは鬼の所業だと、レクチャーの結びに友人を責め立てました。
経営者の本音
しかし、友人の方が経営者として一枚上手。「CADもできるとなお可」とハードルを上げ、さらには「要普通免許」とシレッと条件を追加します。
彼に限らず、中小企業の経営者が、採用条件を欲張る理由は慢性的な人材不足です。「人手」はあっても、技能を持った「人材」が不足しているのです。だから「新人」に複数の職能を期待し、募集要項に「希望」が並びます。それは絶対条件ではなく、少しでも多く該当すれば「ラッキー」というのが本音です。中小企業では、オールラウンダーが求められる傾向が強いのです。
Webもチラシも問わず制作し、名刺もポスターも看板も手がけ、連載原稿も書く私が「中小企業専門」を掲げている理由も、ここにあるかもしれません。1つの作業ばかりでは飽きるんですよね。
今回のポイント
人材募集は「欲」の展示会
無知にはリスクがともなう
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