企業ホームページ運営の心得

イマドキのネット社会の歩き方。ドローン少年事件にみるネット文化

ネットが社会に溶け込み、今後の「ネットの歩き方」を示唆する事件が起きています
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の410

ネット社会の歩き方

Amenohi/iStock/Thinkstock

東京浅草の三社祭でドローンを飛ばすと予告した15才の少年が逮捕されました。逮捕容疑は三社祭の円滑な運営を阻害した「威力業務妨害」です。少年は「飛ばすとは言っていない」と容疑を否認していますが、彼は一部では有名だった、リアルタイムにネット動画配信をする「生主(ナマヌシ)」で、そこでは犯行予告と受けとるに十分な発言をしていました。

ネットが社会に溶け込み、馴染んだことを証明するような事件で、今後の「ネットの歩き方」への警告も含まれております。そして犯行の背景には「Web 2.0」があるのはご愛敬。

未成年による犯罪のたびに「少年法」の改正が議論に上り、ネットが舞台になると「規制」が論じられますが、多くの事件、とりわけ少年犯罪には「金」が絡んでおり、「ドローン少年」でも「金」を軸に考えれば、現行法の枠内で対応可能ですし、警察はすでに現行法での対応に軸足を移しています。

シェアする文化

少年は中学卒業後、進学も就職もしておらず、親からは小遣いを貰っていないと報じられています。彼のドローンは、およそ15万円。その他にも、警察は複数の携帯電話とパソコンを押収しています。これらの資金の一部は、動画配信サイト「アフリカTV」の「星風船」(ネット版の投げ銭)という仕組みで得ていたとみられます。ネット配信から得られる収入での生活を夢見ていたようです。

「アフリカTV」では、視聴者は1個10円相当の「星風船」を購入し、お気に入りの動画配信者にプレゼントすることができ、受けとった「星風船」は、指定のギフト券に交換できます。サービス名は割愛しますが、SNSを経由してプレゼントを贈るサービスと仕組みは同じですし、生主の支援が目的なら「クラウドファンディング」となり、「シェア」する文化といえなくもありません。実にWeb 2.0的です。

ネット時代のパトロン

無名の中学生によるコンテンツ提供とは、「オウンドメディア」でもあり、少年が過激に傾斜したのは「バズマーケティング」と称賛された「クチコミ」の手法で、「Web 2.0」の手柄というか仕業です。

「ドローン」の購入資金を提供した人物がいれば、「共犯」の罪に問われる可能性もあると、大澤孝征弁護士はテレビ番組で指摘します。殺人予告を出している人物に、刃物の購入資金を提供するようなものだという理由です。

この放送を受けてか、少年の「信者」を名乗る成人男性が、25万円をパソコン購入資金として提供したと出頭しました。少年は個人口座を公開し、寄付を募っていたのです。ここでも「金」の影がちらつきます。

古今東西、「悪さ」をするには多少以上のお金が必要で、資金源を断つことに成功すれば、少年犯罪の悪質性を薄めることは可能です。今回の事件でも、資金提供者の存在がなければ、少年はドローンどころか、ネットに接続する手段すらもてなかったのです。

今後、未成年を筆頭に、犯罪予備軍への「資金提供」への監視が強まることでしょう。また、詳細は割愛しますが、「星風船」とは「所得」にあたり、ときに「課税対象」となります。

地続きになった証

ネットと法規制のせめぎ合いは黎明期から続くものですが、ここ数年、あきらかに「潮目」が変わってきています。新たな立法や条例による規制ではなく、現行法の解釈変更での対応が目立つのです。

代表例は、昨年、LINE上でのメッセージを理由に大学生が「自殺教唆」で逮捕された事件です。複雑な背景が絡んでおり、警察による逮捕の妥当性も疑われますが、ネット上でのコミュニケーションがリアルと同等に扱われたということです。ネット上での言動に、一般社会に殉じる常識が適用されるようになったと言えます。

動画配信においても、犯罪を応援するかのような「煽り」も、リアルと同様に罪に問われる可能性が高くなったことを意味します。ソーシャルメディアや動画サイトでの無責任な「煽り」を理由に、社員が事情聴取を受けたとしたら、ブランドの信用失墜は免れません。ご注意ください。

ところで「営利目的の撮影は、自身が所有する私有地以外では許可がいる」ということをご存知でしょうか。公道なら管轄の警察署、公園は自治体への申請と許可が必要となります。

規制の可能性が強いグレーゾーン

申請を求める理由は公の空間の「占有」です。公道を占有する撮影では、歩行者の妨げや、渋滞発生などの懸念がないか確認され、公園も同じ理由で安全が確保できないようなら許可は下りません。

営利目的の「生主」である以上、少年の撮影も申請の対象となり、ドローンを飛ばすのなら、仮に許可が下りたとしても、その墜落の危険から飛行区域の安全確保が前提条件となったことでしょう。そもそも論で、少年がドローンを飛ばしてネット配信する行為は、脱法性が強かったのです。

冒頭で紹介したように、少年は犯行を否認しています。それは「ドローンを飛ばすとはいっていない」と、直接的発言の有無を争点に設定しているからです。しかし、いまは「状況証拠の積み重ね」でも起訴できる時代です。また、「コンビニ土下座事件」を挙げるまでもなく、「ネット映像」を元に容疑が特定される時代になっていることを、15才の少年は知らなかったのかもしれませんが、Web担当者にとっては「他山の石」とすべき事件です。

今回のポイント

ネットが絡んだ犯罪を、現行法の枠内で解釈しだしている

それだけネットが「当たり前(=日常生活)」になった証拠

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