ハロウィンナイトから学ぶ企画屋の発想法
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の425
今年はさらに盛り上がる
1か月後には「ハロウィン」が訪れますが、20世紀末、秋の販促企画にハロウィンが便利なことを発見し、ハロウィンの普及に加担した1人です。ます。カボチャのお化け「ジャック・オー・ランタン」をぶら下げるだけで、どの業種でもそこはかとないイベント感を演出でき、認知度の低さを逆手にとればなんでもできます。
まだ20代のころ、「ハロウィンだからテレビゲーム!」なる無理筋な企画をいくつも立てたものです。また「節操」を持つ人の多かった時代、無節操さは差別化の武器でした。
今年は、例年以上に盛り上がることでしょう。ハロウィンとは、「大人の事情で生み出された国民的イベント」だからです。そしてここまで認知された以上、もはや止めることなどあり得ません。その伏線はAKB48の新曲にあります。そこで今回は、「販売促進(販促)」を考える企画屋の発想法を、ハロウィンを例に紹介します。
断定に弱い消費者
かつて、お盆休みが終わってから、年末商戦やクリスマスまでの間、大規模な販促イベントはありませんでした。そこで大小問わず、広告代理店が目をつけたのが「ハロウィン」です。
日本人は宗教に寛容な上に、お祝いごとは無条件に受け入れる傾向があります。だから「良い夫婦の日」や「ポッキーの日」を受け入れてしまうのです。これらは「記念日商法」と呼ばれるものですが、さらに消費者行動の実体から再定義すると、
断言すると信じる消費者がいる
ということ。経験則ながら的を射ていると自負しています。そして論拠も乏しく「○○だから××だ」といったキャッチコピーが量産されます。
時々聞こえなくなる耳
20世紀末のころ、「ハロウィン」とは何かという説明は、「米国では一般的」だと押し切ります。仮装にしても、ハリウッドセレブがファンサービスで凝った格好をするぐらいで、基本的には子供の祭りだということにあえて触れることはありません。「ネットで検索」で収集できる情報が少なかった20世紀の話とはいえ、
都合の悪いことには触れない
とは、販促を仕掛ける側の基本。そしてなにより優先するのが「日程」です。
古代ケルト人にとっての「元旦」であるハロウィンは、10月31日の夕方から明け方まで祝うものとされます。昨年、各種ニュースが取りあげたように、渋谷にコスプレマニアや仮装を楽しむ歩行者が集まったのもこの日です。しかし、風習にならって31日に開催するのは適切ではありません。
給料日からのカウントダウン
昨年も紹介した六本木の「ROPPONGI HALLOWEEN」パレードも、日本におけるハロウィンパレードの元祖ともいえる神奈川県川崎市の「カワサキハロウィン」のどちらも、今年の開催は10月25日の日曜日、それも日中に開催されます。日本に置き換えれば12月26日の夕日を「元旦」と言い張りイベントを開催するようなもの。すべては販促側の事情です。
「25日」は給料日というコンセンサスがあり、「給料日後」の最初の週末を見逃す企画屋はいません。
給料日による消費拡大は、最初の週末まで
という理由でイベント開催日は決定されるのです。バレンタインデーや母の日のように、すでに定着し、あきらかに給料日から遠いイベントでなければ、祭りの由来よりも「給料日」が決め手となります。なお、こうした販促イベントは、給料日が週末にかかる場合、前倒しになるのが一般的です。
AKB48という伏線
そして今年の「ハロウィン」の盛り上がりへの伏線が「AKB48」の新曲です。ディスコ調の新譜「ハロウィン・ナイト」には、ジョン・トラボルタ主演で一世を風靡したディスコが舞台の映画、「サタデー・ナイト・フィーバー」を想起させる振り付けがあります。今年の正調ハロウィン(10月31日)は「サタデーナイト」。
彼女らが各種イベント、発表会に「サプライズゲスト」で登場すれば、ワイドショーどころか、最近ではニュース番組までこれを報じます。そして、「ハロウィンが盛り上がっている」と視聴者を錯覚させる背景には、大人の事情がちらつきます。
ここ数年、タレントの「ハロウィン便乗」は定番です。Twitterやインスタグラムで拡散された情報を垂れ流すだけなら、テレビ局でも新聞社でも取材の手間暇が不要、それぞれのギブ&テイクでハロウィンは強制的に盛り上がるという算段です。さらに今年は、期間限定商品との「コラボ」はもちろん、トラボルタの緊急来日があるかもしれません。根拠はありませんが(笑)。
思考実験ハロウィンナイト
こうした動きを予見した企画屋は考えます。
どう便乗するか
もっとも重要なのが「ターゲット」。昨年までのハロウィンは「コスプレ」が中心でしたが、これでは事実上、渋谷などの繁華街を賑わすだけに過ぎません。
今年から大手広告代理店は「実需」を獲りに行くと睨んでいます。ハロウィンを認知させる種まきから、利益を得る収穫への転換です。しかし、「トリックオアトリート(お菓子をくれないと、イタズラしちゃうぞ)」と、近所に触れ回る子供のお祭りをターゲットにしては消費が限られます。子供はお金を持っておらず、消費に対する決定権を持たないからです。
そこで狙うのは「GG(グランド・ジェネレーション)世代」です。「くまもん」の仕掛け人、小山薫堂氏が提唱するシニアに代わる世代の名称で、アクティブなシニア層を指します。
この言葉が定着しているかを脇に置けば、「団塊世代」の消費ボリュームは大きく、またかつての年寄りと比べものにならないほどアクティブです。だから、「親子三世代コスプレ」「三世代ハロウィンパーティー(ディナー)」のように、孫を巻き込んだ、孫のためにお金を使うことを仕掛けます。
なにより、GG世代に焦点を当てれば、どんな業種でも便乗可能という点に企画屋の目が光ります。同じ企画で使い回しができるからです。かくして大人の事情でハロウィンは盛り上がること間違いなし。今年あたりから「ジャック・オー・ランタン」や「魔女」のコスプレをしたピザ屋が走り出すと睨んでいます。もちろん、Webでも便乗できます。
今回のポイント
イベント開催日を決定するのは給料日
大手の動きを予測し便乗
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