クレーマー 3タイプの見極め方。対応の基本は簡潔であること
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の426
恐喝事件にまでエスカレート
日本全国津々浦々、実に7千回に上る虚偽のクレームで商品や現金をだまし取った女が逮捕されました。実際には、購入どころか来店もしていないケーキ店やパン屋に「髪の毛が入っていた」などと難癖をつける電話をかけ、お詫びのケーキや現金をせしめていたというのです。
あるテレビ番組は、インターネット上で「クレーマー」として知られた存在だったと報じ、クレーマーの無理難題に対して「ネットで悪口を書かれると致命傷になる」と、なぜかネットへの警戒感に結びつけます。
客商売をしている限り、クレーマーを避けることはできません。そして、ネットでの対応を誤れば、致命傷になるリスクが存在するのも事実です。しかし、テレビが警戒するのは別の理由。これについては次回に触れる予定ですが、正しく対応すれば、クレーマーは今やそれほど怖いものではありません。ましてや、Twitterなどで拡散される「悪口」は、適切に手を打てば、炎上することなく鎮火できる時代になりつつあります。
クレームの3タイプ
クレームには大きく3つのタイプがあります。文句を言いたいだけの「真性クレーマー」、相手にしてほしい「かまってちゃん型」、そして店を応援する気持から苦言を呈する「サポーター型」です。一番対応が簡単なのが、意外なようですが「真性クレーマー」です。
はっきり言えば、「真性クレーマー」は犯罪の領域にいるからです。執拗に返事を求める行為は、それに対応するために正常な業務を妨害した「威力業務妨害罪」にあたり、店の信用を失墜させるような情報の拡散には「名誉毀損罪」の可能性が高く、それは事実の有無を問いません。
公益性が認められない名誉を毀損する情報拡散は、事実であっても「公序良俗」の点から法に触れます。だからといって、すぐ裁判に持ち込むという姿勢は賛同できませんが、真性クレーマーが相手なら、法律という後ろ盾があるということです。
実は難しいサポーター型の対応
「かまってちゃん」は、悪態をついていても相手にしてほしいだけの存在です。真摯に接することで、コロッと態度が変わることが多く、さほど気にすることはありません。執拗に対応を求めるなら「真性」です。
一番に慎重な対応が求められるのが「サポーター型」です。フレンドリーに応援してくれるお客ばかりなら苦労もしませんが、上から目線のサポーターや、辛口の批評を事情通と錯覚しているファンがいるのは、野球やサッカーに限ったことではなく、言葉だけを見れば、みんな悪口。だから「クレーマー」としているのですが、適切な対応が必要です。
Twitterなどで店への悪口を見つけたら問いかけます。飲食店に対し「クソ不味い」とあれば、「何をお召し上がりになったでしょうか?」と問いかけ、「高いよ」ならば「どの商品をご希望でしたか?」と、簡潔な文章で質問をします。基本的にはブログのコメント欄も同じ対応ですが、ユーザーの書き込みをそのまま評価するのは避けてください。
日本語能力の問題
ユーザーの日本語能力は千差万別です。文章力以前に、語彙が極端に少ないこともあります。「クソ不味い」という評価1つとっても、味の濃淡や薫りの有無、ラーメンならばスープの温度や麺のゆで加減など、たった1つのわずかなミスを持って「クソ不味い」と、全体を評価しているクレーマーは実に多いのです。
つまり、書き込まれたクレームにそのままリアクションしてしまうと、対応を間違えるリスクがあるということです。そこで「いつ、どこで、何を」と問いかけることで、クレームの特定を目指します。
問いかけても何も答えないなら、「かまってちゃん」かもしれません。そっとしておいていいでしょう。あるいは「これからもお気軽にご意見をお寄せください」と、リプライ(返信)してからフォローする方法もあります。フォローに対して「ストーカーだ(実際にありました)」と「キモイ(これも事実)」と反応があれば「真性」の可能性大です。「ご不快に思われたならスイマセン」と、一言述べてリムーブ(フォロー解除)してください。
キャッチボールの奥義
問いかけにまともなリアクションがあれば、「かまってちゃん」か「サポーター」の2択です。前者は「からみ」たいだけですが、後者からは商売のヒントや改善点を得られるかもしれず、時間を割くに十分な価値があることでしょう。そのとき、Twitterの対話でポイントになるのが「答えすぎない」ことです。
これは、「問われたことには可能な限り答えても、問われていないことまで答えない」ということで、誠実で親切な人がやりがちなミスです。
不味い
というクレームに対して、
●●産鶏ガラと、××産黒豚をじっくり煮込み、お客さまに提供するまで厳重に温度管理をしていたつもりですが、どの点がお気に召さなかったでしょうか?
といった問いかけは、丁寧な態度が相手を苛つかせる「慇懃無礼」に陥りやすいからです。
極論すると、Twitter上のクレーマーとのやり取りは
客 不味い
店 どこが?
客 スープ
店 しょっぱい?
客 そう
店 気をつけるから、また来てね
ぐらい、簡潔でよいのです。
クレーマーとバカッター
論拠不明にTwitterで悪態をつくという行為は、一種の「バカッター」。良識を下敷きとした、常識を持つ大人の態度ではないからです。つまり、バカッターを公の空間に晒して平気か、晒していることに気がついていないクレーマーに、下手(したて)に出れば、居丈高にでられる確率が高いでしょう。簡潔な応答は「毅然」の近似値です。
クレーマーを必要以上に怖れることなく、また、お客とのやり取りを簡潔で済ませてよいとするのは時代の変化です。善良な市民は悪意の拡散を喜びません。だから、簡潔で端的に、そして誠実に接する限り、それを見た他のユーザーの信頼を損なうことはありません。むしろ、悪態をつくクレーマーとの堂々としたやり取りに好感を覚えることでしょう。それは「フローからストック」への変化によるもので、詳しくは次回掘り下げます。
今回のポイント
悪態をつく側の目的を見極めて対応
クレーマーとの対話は簡潔に
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