DIGITAL&DIRECT NEWS

24時間パルコ=オムニチャネルをテナントと協同で構築

どのようにオムニチャネルをとらえ、構築しようとしているのかについて聞いた

この記事はD2Cが発行するDIGITAL&DIRECT NEWSの一部をWeb担当者Forum向けに特別公開したものです。

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昨今、流通各社のO2O、あるいはオムニチャネルへの取り組みが注目を集めている。そのためのキーコンセプトは何か、確実な送客を実現することに加え、単なる送客を超え顧客の生涯価値を高めるためにはどうしたらいいのかという点が重要な要素となる。

そこでパルコが掲げたコンセプトは“24時間パルコ”。テナントショップとの連携を強化し、ディベロッパーとして、かつ一つの大きなブランドとして、どのようにオムニチャネルをとらえ、構築しようとしているのかについて聞いた。

商品・サービスのターゲット層

ファッションなどのショッピングを好む顧客

背景と目的

ECを活用したパルコらしい、オムニチャネルの実現

特徴や訴求ポイント
  • テナントショップブログの開設
  • 全国のPARCOでSNSの公式アカウントを開設
  • PARCO SHOW WINDOWのスタート(テナントショップのECサイトとの連携)
  • PARCO Digital Information「P-WALL」の導入
  • スマートフォン向けアプリ「WEAR」を使った実証実験

テナントブログをサイトの主要コンテンツに

林 直孝 氏
林 直孝 氏
株式会社パルコ WEBコミュニケーション部 部長

パルコでは2012年、若手を中心にあるプロジェクトが発足した。Webを用いたプロモーション戦略を大きく見直すためのプロジェクトだ。パルコのWebサイトの閲覧は、すでに7割がスマートフォン経由となっている。

そのため、スマートフォンを通して的確な情報をしっかりと顧客に届ける仕組みを構築し、コミュニケーションを密にすることが重要だと考えた。さらに、巷でささやかれ始めていたオムニチャネルを意識して、Webと店舗の融合を急ぐ必要があると思われたからだ。

パルコというブランドで直接お客様とコミュニケーションして、お客様に店舗に来ていただくということが重要なわけですが、そのこと以上に、テナントの情報をより直接、お客様に伝える、そのために、テナントの方々に自主的に活用していただけるプラットフォームを提供することが必要だと考えました(林 直孝氏)

それまで宣伝部門が主管していたWeb業務を独立させ、Webコミュニケーション部を設立し、プロジェクトの事務局を担っていた林氏が部長に就任した。まず取り掛かったのが、全国に19あるパルコの店舗、それぞれのWebサイトのリニューアルだ。

パルコのスマートフォンサイトTOPページ
パルコのスマートフォンサイトTOPページ
パルコのテナント「JUNRed+」のブログTOPページ
パルコのテナント「JUNRed+」のブログTOPページ
「JUNRed+」のブログ
「JUNRed+」のブログ

ショップ単位でそれぞれのテナントさんのブログのアカウントを開設しました。ショップさんの日々のブログ更新をWebサイトのメインコンテンツとしたのです。2013年4月から取りかかって、10月末で全店舗のリニューアルが終了しました。約3,000のショップのブログアカウントを開設。現在、ファッション関連を中心に、1,000以上のショップが実際にブログを日常的に更新しています(林氏)

ブログの主な内容は、スタッフが商品を着用して撮影されたコーディネート例の紹介など。それぞれ、SNSでの拡散が可能なボタンを付けた。一方的な商品紹介ではなく、あくまでも肌感覚のあるコミュニケーションを日々行っていくためのプラットフォームを構築した。

それと並行して行ったのが、全19店舗のパルコ側のスタッフが運用するSNS(Facebook、Twitter、LINE@、Google+の4つのアカウント)の公式アカウントの開設。この導線によって、パルコとしての情報発信はもちろん、各テナントの発信するブログ情報を選択して、顧客に確実に広めることを目指した。

先行してFacebookやTwitterのアカウントを開設していた店舗もありましたが、一昨年の時点で合計10万人ほどのフォロワーなどを獲得していましたが、昨年11月末の時点には、その数は合計60万人を超えました。極めて重要な導線になったと思っています(林氏)

業界の常識を超えたSHOW WINDOWの完成

オムニチャネルを整備するためには、商品の在庫情報をこうしたプラットフォームから発信する必要がある。その際、店舗にある商品は店舗で購入していただくのが基本だが、店舗にない商品、あるいは店舗までこられないお客様も、24時間いつでもECサイトから購入できるというのが、“24時間パルコ=オムニチャネル”を構築するにはどうしても欠かせないサービスだ。そこでパルコでは、それまでの業界の常識にとらわれないチャレンジに踏み切る。

各ショップさんの持っているECサイトとつながることで、EC上の在庫情報をパルコのWebサイトに反映できるようにしました。つまり、パルコのサイト上で、各ショップのEC、そしてブログによって更新される店頭情報を発信することで、ディベロッパーとしてのオムニチャネルの一つの形ができるのだろうと考えたわけです(林氏)

パルコの各店舗のWebサイトには各ショップのECサイトへの窓があり、たとえばブログで紹介しているコーディネート商品が紹介されている。その商品をタッチすると、それぞれのECサイトに飛ぶ。

これは、各ECサイトに送客することになるので、流通業の考え方にはなかった取り組みである。オムニチャネル化を図る際に、常に大きな壁として立ちはだかる問題だ。それをパルコは難なくブレークスルーしてしまった。

各テナントさんのECサイトで詳しい情報を調べて、写真を見て、気にいったら店頭に来ていただきたいというのが、あくまでも趣旨です。しかし、そのままECサイトで購入されることを阻むものではありません。そこで導入したのがアフィリエイトの仕組みです。パルコのWebサイトという導線から各ECサイトに送客して、そこで購入が成立した段階で、フィーを発生させていただくという契約です。この仕組みを一部のテナントから始めて、徐々に広げています(林氏)

顧客は、場所や時間にとらわれずに、スマートフォンなどのデバイスを使って、24時間、いつでもパルコの、いわば接客を受けられる。その意味を込めて、このサービスは「PARCO SHOW WINDOW」と名付けられた。来店前に見ることのできるショーウインドウだ。

まだまだ広がるパルコ流接客の場

このSHOW WINDOWには、各テナントのECサイトからの情報に加え、オンラインモール「パルコシティモール」の商品情報も網羅されている。16万点以上の商品が紹介されていて、アイテムごとに、色や価格帯などで商品を絞り込むこともできる。たとえば”赤いセーター“という指定で、パルコにある商品の中から好みに合う商品を絞り込んでいけるわけである。

渋谷パルコのデジタルサイネージ「P-WALL」
渋谷パルコのデジタルサイネージ「P-WALL」

こうしたショーウインドウは、店頭にも用意された。渋谷パルコに登場したデジタルサイネージ「P-WALL」だ。デザイン性にもすぐれたこのサイネージには常時1,000種類に及ぶ、店舗ごとのテナントの商品が表示される。気になった商品をさわると、その写真が大きくなるとともに、ショップの場所などを閲覧することもできる。さらに、その商品が赤いセーターであれば、ショップに関係なく、同じようなアイテムの情報も閲覧できるという優れものだ。

さらに実験を始めたのが「WEAR」というスマートフォン・アプリ。これは、スタッフが投稿するコーディネート情報を見ることができ、さらに商品タグのバーコードをスキャンすることで、詳細な商品情報などにアクセスできるというものだ。

「店頭での接客だけでなく、Web上でのブログを通じた接客で来店促進を行っているショップさんは多数あります。私たちはそうした方々に学び、それをその他のショップさんに広げようとしています。これまでも、日々さまざまな研修会やロールプレイングコンテストを行っていますが、その1メニューとしてWebでの接客スキルも加えました。

ブログに長けた方にお越しいただいて、運用の仕方、さらにそのメリットなどをパルコ各店舗のWeb担当者にレクチャーしてもらって、その担当者が各店舗でその内容を広める。私たちも各店舗に出向いて、各ショップさんに説明するなど、地道な啓蒙活動を続けていますが、どのテナントさんも熱心で、こうした私たちの施策については、皆さん喜んでいただいています。そうした意味では、今後、集約される情報は増え、実際の購入情報や閲覧情報を加味することで、更に営業に役立つビッグデータとして活用することも可能だと考えています」と林氏は今後の展望を語った。

この記事は、株式会社D2Cが発行する小冊子 『DIGITAL&DIRECT NEWS』 Vol. 47のコンテンツの一部を、許諾を受けてWeb担当者Forumの読者さん向けに特別公開したものです。

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※『DIGITAL&DIRECT NEWS』を長らくご愛読いただきまして、ありがとうございました。

2014年10月発行のvol.50をもって刊行を終了し、オンラインサイトの「D2Cスマイル」を通して、デジタルマーケティングに関するさまざまな情報を提供していく。

モバイルを活用する企業のマーケティング活動全般におけるモバイル活用の「いま」を凝縮し、企業の明日のマーケティング活動のヒントとなる情報を提供しています。年4回(4、7、10、1月)発行。

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