DIGITAL&DIRECT NEWS

東京メトロ、列車位置情報をオープンデータとして無償提供するアプリ開発コンテストを開催。その狙いを探る!

列車位置情報がどんなサービスを生みだすか「オープンデータ活用コンテスト」その開催に至った経緯を東京地下鉄の田中氏に聞いた。

この記事はD2Cが発行するDIGITAL&DIRECT NEWSの一部をWeb担当者Forum向けに特別公開したものです。

イマコレ

日本の公共交通機関としては初めて、東京メトロが10周年記念事業の一環として列車位置情報などのリアルタイム情報(1分ごと)をオープンデータとして無償提供。総額200万円のコンテスト形式で、利用客の利便性に寄与するアプリを募集する。テーマは、「もっとうれしい」アプリ。どんなユニークなアプリが登場するか、楽しみだ。

point1 課題

政府や公共機関の保有するデータのオープン化は時代の流れ。そうした動きに先鞭をつけ、自社のサービス向上、さらに世の中の利便性をより高めるための実験的な意味合いでコンテストを行う。また、6年後のオリンピック・パラリンピック開催を見据えたサービスも検討したい。

point2 企画

東京メトロ創立10周年記念行事の一環として、総額200万円の賞金を懸けたコンテストを行う。登録手続きをした開発者に全線の列車位置情報や遅延情報などを提供、アプリマーケットでの無料アプリの公開を条件にアプリを募集し、グランプリ作品には賞金100万円を授与する。

田中 俊行 氏
東京地下鉄株式会社 総務部総務課長

どんな化学反応が起こるのか、期待しています!

行政や企業が保有するデータの公開が今の流れ

「オープンデータ」が世界的に注目を集めている。これは、行政や企業が保有するデータを広く公開して、そのデータを誰でも活用できるようにすることで、経済が活性化され、暮らしが便利に安全になり、社会がよりよいものになることを目指す。そんなムーブメントだ。日本では昨年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定され、2015年度末までには、他の先進国並みに公共データを公開することを目的とすることが確認された。

東京大学大学院情報学環 教授 YRPユビキタスネットワーキング研究所 所長である坂村健氏のプレゼンテーションでは、Live train map for the London Undergroundというロンドン地下鉄マップが「公共交通分野におけるオープンデータ化」の好例であると報告されている。

これはロンドン市交通局が公開した地下鉄列車位置のオープンデータを活用して、優秀な鉄道マニアであるハッカーが個人的に作り公開している情報提供アプリだ。

ロンドン市交通局のオープンデータ化のきっかけは、オリンピック開催で見込まれる外国人を含む多数、多様な観光客の訪問に対して、短期間かつ低コストでサービスを充実する必要性であった。

欧米では2009年以来、国家レベルの政府データのオープンデータ化が進んでいる。日本政府も、2020年のオリンピック・パラリンピック開催も踏まえ、その腰を上げたところだ。

総額200万円を懸けたオープンデータ活用コンテスト

この動きに機敏に対応した1社が、東京の地下鉄路線のうち、銀座線など9路線を運営する、東京地下鉄株式会社(以下、東京メトロ)だ。東京メトロ創立10周年(1941年に設立された特殊法人、帝都高速度交通営団が2004年に株式会社化されたもの)記念行事の一環として、列車の運行情報や位置情報などをオープンデータ化し、これを利用したアプリケーションコンテストを実施している。

オープンデータ活用コンテスト
オープンデータ活用コンテスト

応募期間は9月12日から11月17日。応募資格は特になく、個人でも法人でもいい。開発者サイトで登録後、オープンデータの提供を受け、アプリを開発、開発者サイト内に設置されている応募フォームから応募する。応募時にアプリはアプリマーケットで公開し、一般に利用できる状態とするのが条件。

ただし、公開するアプリは、コンテスト期間中は広告掲載やアプリ内課金が禁止される。つまり、無料アプリとしての公開が条件だ。

コンテストの賞金であるが、グランプリ1点に100万円+記念品、優秀賞1点に50万円+記念品など、総額200万円。

審査員は前出の坂村健教授のほか、岡本伸之立教大学名誉教授、竹沢えり子銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会事務局長、ほか。

提供されるオープンデータは別表を確認してほしい。

社会的実験でもあり、私たちの勉強の機会でもある

「コンテストを企画した背景は大きく二つあります」と田中総務課長は言う。

一つは10周年の記念行事。ただし、“10周年ありがとう”よりも、“今後10年のご愛顧をお願いします”という思いを込めて、各行事を行っています。もう一つは6年後のオリンピック・パラリンピックへの対応です。

世の中の流れもあり、実験的ではあるが、公共交通機関がオープンデータを出すということの社会的意義と、東京メトロとして、自分たちが思いつかないサービスアイデアを得られる期待を込めて、この企画を始めた。

今年の3月からJR東日本が自社アプリという形で、在来線などの在線情報などを出されていますが、それをオープンデータとして提供するというのは、確認できた限り、私たちが国内では初ということで、こうした取り組みの先鞭をつけるという意味もあると思っています。

また、オリンピックに向けた業務の総点検をして、これからどういう取り組みをするかの検討をしているところ。ロンドンの例と同じだが、オリンピック・パラリンピックには世界各国から多くの観光客が東京を訪れることが予想される。

その方々の利便性に寄与するサービスが必要ですが、資金や人材など私たちの持っているリソースで対応できるのか心配な面もあります。そこは外部の力も借りることで、より革新的なサービスも期待できる。そのための実験でもあるのです。

たとえば、オープンデータ化することで、各国の個人や法人が自国の観光客の利便性を高めるための自国語のアプリをそれぞれ開発してくれれば、自社のリソースを気にすることなく、十分な対応ができることになる。

コンテストを通じて、社内的にはこうしたことも踏まえた、将来のための知見やノウハウをため、また課題やリスクを予見する勉強の機会と位置付けている。

東京メトロが提供するアプリ
現在、東京メトロが提供している運行情報や駅情報などが検索できるアプリ

全く白紙で「どんなアプリが登場するか期待しています」

今回は、あくまでもコンテストとして考えています。その後、受賞作品と何らかの契約をするかどうか、コンテスト後の課金を許諾するかどうかなどについてはまだ何も現時点では決めていません。それはコンテスト終了後にアナウンスし、さらに個別のご相談をさせていただくこともあります。

オープンデータも、一応は来年の3月末までとしています。基本的にはその後も継続したいと考えていますが、そこも未定です。

また、登録されたものの、アプリの応募をしない方に関しては、応募期間終了後、確認して、データの提供を取りやめるつもりです。

では、どんな内容を求めているかというと、全くの白紙だと言う。自分たちが想像できないようなアプリを求めているからだ。ただし、あくまでも東京メトロ利用者の生活がより便利に、より快適になるようなものが求められる。

今回我々が提供するオープンデータだけではなくて、外部のさまざまなデータを組み合わせたサービスも期待しています。

たとえば、銀座駅構内には、複数の路線があるのだが、トイレは2か所しかない。そこで、周辺情報まで含めた使用可能なトイレ情報は役立つかもしれない。

そんなふうに、地下鉄を利用する人がどうしたらより便利か、快適かを考えたアイデアが求められている。もちろんARやGPS、加速度センサなど、さまざまな技術を使ったエンターテインメント性のある情報提供の方法なども考えられよう。

東京メトロの利便性向上にとって、また、日本の公共交通機関にとって、オープンデータがどんな化学反応を起こすかに期待しています。

コンテストで提供するオープンデータ一覧

東京メトロ全線の列車位置、遅延時間等に係るデータ
*今回初めてオープンデータ化。1分ごとに配信

  • 列車時刻表
  • 駅別乗降人員
  • バリアフリー
  • 列車位置
  • 遅延時間等に係る情報
    [方向、列車番号、列車種別(普通、急行、快速等)]
  • 始発駅・行先駅
  • 車両の所属会社
  • 在線位置(ホーム or 駅間)
  • 遅延時間(5分以上の場合)

上記データに加え列車・施設に関する多様なデータを提供
(従前よりホームページで公開している情報を、アプリ開発者が利用しやすいデータ形式に変えて提供)

  • 列車情報
    [列車時刻表、運賃表、駅間所要時間、各駅の乗降人員数、女性専用車両]
  • 施設情報
    [バリアフリー情報、駅出入口情報、車両ごとの最寄施設・出入口案内]

この記事は、株式会社D2Cが発行する小冊子 『DIGITAL&DIRECT NEWS』 Vol. 50のコンテンツの一部を、許諾を受けてWeb担当者Forumの読者向けに特別公開したものです。

DIGITAL&DIRECT NEWSについて

※『DIGITAL&DIRECT NEWS』を長らくご愛読いただきまして、ありがとうございました。

2014年10月発行のvol.50をもって刊行を終了し、オンラインサイトの「D2Cスマイル」を通して、デジタルマーケティングに関するさまざまな情報を提供していく。

モバイルを活用する企業のマーケティング活動全般におけるモバイル活用の「いま」を凝縮し、企業の明日のマーケティング活動のヒントとなる情報を提供しています。年4回(4、7、10、1月)発行。

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