ECサイトは“やるべきことをやる”だけで売上が伸びる/ワークスアプリケーションズ
O2O、オムニチャネル、Facebookコマース、SNS連携、オウンドマーケティング、レコメンドシステム……ECサイト向けの売上向上施策は多岐にわたるが、すべてを採用することは工数的にもコスト的にも困難だ。それよりもまず取り組むべきことは「基本施策の積み重ね」だ。
真新しい施策よりも重要なのは「やるべきこと」の確認
日頃から大手企業のEC・通販サイトの運営に携わり、数多くのECサイトを見てきたワークスアプリケーションズの小嵜秀信氏。彼は「EC・通販事業規模10億円からのEコマース戦略~現役ECコンサルタントのノウハウを大公開~」と題した講演の中で、その経験から得た数々の成功法則を紹介した。
小嵜氏の主な業務は、ECサイトの売上向上に向けた支援だ。その際に、クライアント企業からよく相談を受けるのが、次のようなものだ。
代理店や業者が、SNS連携や、最近ではO2O連携、オムニチャネル、その他オウンドマーケティングやレコメンドシステムなど、さまざまな施策を提案してくるが、すべてを採用することはできない。どれをやったらよいのか。
これに対して小嵜氏は、次のように回答するのだという。
それぞれの施策はすばらしいものだが、それ以前に、ECサイトとしてきちんとやるべきことをやっているのか。そのチェックの方が重要だ。
ほとんどのECサイトは、本来「やるべきこと」が基礎としてできておらず、それを実施するだけで、売上を伸ばすことができる。オムニチャネルといった新しい取り組みは、「やるべきこと」をすべて実施して売上が伸びたその次のフェーズとして、既存の施策とシナジーが高いものから取り組むべきだ、と同氏は断言する。
ECサイトは「アクセス数×購入率(コンバージョン)×客単価」で売上がつくられるというのは、EC事業者であれば誰もが知る計算式だが、「売上が上がらないと相談を受ける内容の多くが、『アクセス数が増えずに悩んでいる』というもの
」(小嵜氏)なのだという。
もちろんアクセス数は重要な指標だが、それだけを増加させるには限界がある。売上2倍の目標を掲げて「アクセス数」を2倍にしようとするのは大変な努力が必要となる。だが、視点を変えて、「アクセス数」「コンバージョン」「客単価」のそれぞれを1.26倍にすることで、より簡単に売上が2倍になるのだ。
そのために、「やるべきこと」に注力をすれば、各指標を効率よく向上させることができ、多くの場合はすばやく成果が出る。これが小嵜氏のECサイト売上向上の基本戦略だ。
売上増加につながる数値の向上は基本施策の積み重ね
では、具体的な「やるべきこと」とは何か。
まずはアクセス数について、増加のための手法は限られており、大きく分けると広告とSEOの2つとなる。そこにもう1つ加えるとすれば、「リピートを促す仕組み作り」だ。どれもこれまで繰り返されてきた話である。
小嵜氏も、アフィリエイト広告とリスティング広告は、すばやくアクセス数増加の効果が得られるため、よく利用するという。
ただし、アフィリエイトに関しては、ただお金をかければ成果が出るというものではない。アフィリエイトは取り組み方で結果がはっきりと分かれる手法のため、ネットごしにやりとりするのではなく、担当者と直接顔を合わせて要望を伝えることが大事であり、それによって担当者から得られる情報の量や質がまったく異なるのだという。
さらにアフィリエイトに関して小嵜氏が指摘するのは、初期に料率設定をしてバナーを入稿した後、そのまま放置するECサイトが多い点だ。「イベントカレンダーに基づいて、アフィリエイトの内容に手を入れないとだめ。せめて、季節に合わせたバナーくらいは用意すべき
」と苦言を呈した。
リスティング広告は、予算さえ確保できれば、短期間でアクセス数増加が見込め成果を得やすい。利用していない事業者はいないだろう。
だからこそ、検索されやすいキーワード、いわゆる「ビッグワード」に需要が集中しがちで、その分どうしても費用対効果は悪くなる。そこで小嵜氏が提案するのが「『スモールワード』の効果的な運用」だ。具体的には、アクセス解析ツールのオーガニック検索で、検索キーワードの中から自社名・サイト名・ブランド名などの自社を指すキーワードを除いた500~1000語を抽出し、そのワードを低単価でリスティング広告に出向するのだという。
メールマガジンの運用に関しても、小嵜氏から具体的な事例が紹介された。
最近の風潮として、購読しているメルマガが不要になった場合に、放置するのではなく配信中止を申請するユーザーが増加している。これに対して「メルマガの配信自体を解除されても、ポイントの残高通知メールは、お客様の資産を通知する目的で、定期的にすべてのユーザーに配信できる。実際、ポイントに関するメールは、開封率とコンバージョンが他と比べ驚くほど良い
」のだという。
ECサイトの役割を明確にして、事業計画を立案する
小嵜氏は、以上のような具体的な施策をふまえ、それらを包括した事業計画策定の重要性を強調し、事業計画を立案するうえで、2つの考え方を提示した。
- EC事業をどのように展開していくか ⇒ 内部要因 = 独自性
- ECを取り巻く環境がどのように変化するか ⇒ 外部要因 = トレンド
前者の内部要因は、端的に言えばそのECサイトの独自性であり、「お客様がそのサイトで買う理由」と言い換えることができる。ECサイトのコンセプトと、企業の事業全体を見た場合におけるEC事業の役割に紐付く。小嵜氏は、ECサイトを単純な販売店舗の拡大ではなく、サポートコストの削減と位置付けた事例を紹介した。
その企業では、売上の拡大に伴い、付属部品に関する問い合わせが増加したため、コールセンターが巨大化してしまった。そこで、コールセンターのオペレーターが対応していたQ&Aや付属部品購入の申込などをECサイト上で実現することにより、直接サイトを利用するお客様を増やし、コールセンターの省力化に成功した(小嵜氏)
このように、ECサイトに求めるものは事業者ことに大きく異なるため、事業計画も異なり、さらに取るべき施策も異なってくるのだ。
後者の外部要因は、業界や社会全体の動向だ。たとえば、ヤフーや楽天といった大型ショッピングモールとの付き合い方や、ソーシャルやスマートフォンアプリなどのトレンド機能を取り込むことが含まれる。
このように、ECサイトの役割は企業によって大きく異なるため、それによりECサイトの事業計画も、さらにはそれらをふまえて取るべき施策も異なってくるのだ。
最後に小嵜氏はこう語った。
事業計画で策定した数値目標を達成するためには、“お客様がこのサイトで買う理由”と、“その理由を理解した運営スタッフの売る気”が大切。これを会議のたびに話して、全員で頑張っていこうという雰囲気作りをすること。携わるスタッフのモチベーションで売上は変わります。
小嵜氏が紹介した個別の施策について、すでに知っている担当者も多いと思われる。だが、それを実際に部内できちんと運営して、数字を実行目標まで落とし込みチェックし続けている企業は少ない。“やるべきことをやる”というECサイトの基本にきちんと取り組み、運営し続けることが大切だと言えるだろう。
同社では、大規模事業向けEC・通販パッケージ「COMPANY」ECシリーズを提供している。
株式会社ワークスアプリケーションズ
http://company-ec.worksap.co.jp/
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