【レポート】ネットショップ担当者フォーラム セミナー

テレビ通販最大手が取り組む映像製作を活かした新たなEC/ジュピターショップチャンネル

テレビへの逆風にオムニチャネル化で挑む、新しい形のライブ通販への取り組み
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同じ通販というくくりであっても、テレビ通販とECはまったくの別物だ。ECサイトが集まるなかで異色とも言える基調講演となったジュピターショップチャンネルは、年商1272億円を稼ぎ出すTV通販の強みと課題、そして自社の映像制作能力を活かした新たな“ライブ通販”の形を紹介した。

通販といえどもテレビとECはまったく別もの

ジュピターショップチャンネル 代表取締役 篠原淳史氏
ジュピターショップチャンネル
代表取締
篠原淳史氏

ネットショップの関係者が多く集まるなか、大きな注目を集めたのが、ジュピターショップチャンネルの篠原淳史代表取締役による基調講演だ。ジュピターショップチャンネルは、CSやBSなどで通販専門チャンネルを持ち、24時間365日にわたり生放送による通販番組を放送している。2012年の売上高は1272億円に達し、創業以来16期連続での増収と好調だ。

テレビショッピングとECは同じ通販というくくりではあるが、チャネルや媒体の特性が異なることに加えて、主要な顧客層も異なっている。テレビ通販では、能動的にPCを利用して通販サイトを見る必要はなく、多くの家庭にあるフラットテレビで24時間365日、いつでも番組を見ることができる。

篠原氏は、このチャネル確保による潜在的なリーチそのものが大きな資産だと語る。現在、BSやCSの独自チャンネルや他の放送局の番組枠などをあわせると、日本の全世帯数の約半分にあたる約2700万世帯がすぐにでもジュピターショップチャンネルの通販番組を視聴可能な状態にあるという。

同チャンネルの基本的な番組構成は、1時間かけてひとつの商品を紹介するというものだ。これを24時間365日続けているため、品揃えはいくらあっても足りない状態だという。番組編成にも工夫があり、手元にある商品をランダムに紹介していくのではなく、毎日イベントを設け、その日一日はそのテーマに基づいた商品を集中して紹介し、視聴者を引きつけるようにしている

番組は脚本通りに進むわけではない。演出や進行は司令塔にあたる「セールス・プロデューサー」がコントロールし、状況に合わせて随時変更していく。その判断の基になるのが、2秒ごとに集計される販売データだ。今どのくらい売れているか、どの色が売れているかを逐次把握し、売り上げを最大化するためにセールス・プロデューサーが番組の演出をその場で指示していく。

注文が殺到し、コールセンターにつながりにくくなると、画面に「注文が集中しています」という表示を出し、ウェブからの注文に誘導することで、機会損失を減らす工夫もしている

こうした仕掛けに「上手く煽っていますね」と言われることもありますが、欲しいお客さまには是非お買い求めいただきたいという思いでやっていること。番組とお客様が一体となって呼吸が合ったときの番組は雰囲気が違う。売り上げも付いてくる(篠原氏)

つまり、テレビならではのライブ感を最大限活かす工夫を随所に施しているのだ。ここが、基本的に時間や場所を問わないECサイトと大きく異なるポイントだ。

テレビへの逆風にオムニチャネル化で挑む

一方で、テレビそのものへの逆風も存在する。特に若年層の視聴率低下と、それにともなう視聴者層の高齢化は大きな課題だ。ジュピターショップチャンネルも、40~60代の女性がユーザーの約75%を占めており、さらに売上高に占める割合はそれを超えるという。

テレビを見る人の数が減ると言うことは、前述の約2700万世帯という事業基盤の価値が失われると言うことだ。現実にショップチャンネルでも新規ユーザーの獲得が難しくなってきており、一方で主要顧客層も年齢を重ねることで離脱していく傾向にある。こうした状況を打破するために、ジュピターショップチャンネルではいくつもの施策を行っている。ウェブなどを含めたオムニチャネル化もそのひとつだ。

だが、ショップチャンネルの強みをそのままウェブに活かすのは簡単なことではない。現在放送している1時間単位の番組をインターネットでそのまま放映しても、そもそも見てもらえない。実際に、ジュピターショップチャンネルのウェブサイトでは、生放送中の番組をストリーミングで視聴できるが、視聴者数は極わずかだという。

その結果、現在のジュピターショップチャンネルの売り上げのうち、ECによるものは2割に止まり、その大半もコールセンターが混雑した際の代替の注文手段としての利用によるものだ。

映像ノウハウを活かした新しいECへの取り組み

では、同社はどのようにECに取り組んでいくのだろうか。

アマゾンのような品揃えによるロングテール戦略は、チャネルの特性上、おのずから無理だと思っている。ネットでしか買えない商品を用意せざるを得ない。しかしバイヤーの立場からすれば、今はまだテレビの方が売れるので、ネットをやりたがらない。そこのマインド転換に力をいれないといけない(篠原氏)

これを実現するために、同社はこの夏からマーチャンダイズの体制を変更し、バイヤーがテレビとネットの両方の商品仕入れに責任を持つようにした。また、ネット専売品も開始し、2013年12月からは商品点数も大きく増やす。このように体制を変えたことで、徐々にネットの売り上げも成果が上がってきており、スタッフのマインドにも変化が見られるという。

また、映像づくりというジュピターショップチャンネルの得意な部分をネットで活かす取り組みも始めている。2012年9月にスタートした「トルトコミテ」は、日本全国の旬の食品が「獲れる」瞬間をインターネットで生放送し、そのまま産直通販するという取り組みだ。スタッフが早朝から漁に出る漁船に乗り込み、実際の漁をストリーミングで中継し、漁港に戻り水揚げした魚をそのまま販売するなどライブ感にあふれている

“捕れる”瞬間を“見て”そのまま購入できる「トルトコミテ」
“捕れる”瞬間を“見て”そのまま購入できる「トルトコミテ」

実際に船に乗って漁をするため、魚が捕れないこともある。その時は販売できなかった。それがかえって信頼性があると話題になった(篠原氏)

トルトコミテは1年にわたって継続中で、最近では農産物も扱いだすなど軌道に乗ってきたという。漁港の方から声をかけられることも増えた。だが、商品数や単価の問題から、どうしてもひとつひとつの販売規模が小さくなってしまう。そのため、番組製作コストをいかに下げるかという課題もあり、漁師の方にカメラを回してもらうなど、オペレーションの現地化を図っているという。

トルトコミテは、長きにわたって通販に取り組んできたことによる全国の産地とのコネクションと、視聴者を飽きさせない映像作りのノウハウとを組み合わせ、上手くウェブへと落としむことができた番組だと篠原氏は胸を張る。これからも、このような得意な映像制作能力を使ってネット上でいろんな仕掛けをしていくという。

ジュピターショップチャンネルでは2012年4月に、「心おどる、瞬間を。」というカンパニータグラインを制定している。篠原氏は、この思いは、ECにおいても変わることはないとして、「ネットの強化について、アドバイスがあれば忌憚ないご意見を、アイデアがあればご提案いただき、ご一緒できることがあればご連絡を頂きたい」と、会場の多くのEC関係者へ呼びかけて講演を終えた。

セミナー風景
問い合わせ先

ジュピターショップチャンネル株式会社
http://www.shopch.jp/

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