Web広告研究会セミナーレポート

旧ブラウザ対応よりもスマートデバイス対応が喫緊の課題、大手Webマスターが企業のスマホ対応を議論

「第5回 企業内Web閲覧環境調査」の結果を受けたパネルディスカッションを開催、各社はどんな対応をしているのか
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

企業ユーザーのWeb閲覧環境はどのようなものか、セミナー第一部の「企業内Web閲覧環境調査」の結果を受けて、第二部ではWeb広告研究会の企業広報委員会のメンバーによるパネルディスカッションが行われた。自身の企業は実際にどのような閲覧環境で、どんな対応を行っているかが話し合われた。

閲覧制限の現状は2005年から変わっていない?

日本ヒューレット・パッカード株式会社
菅原 裕氏
コクヨ株式会社
佐藤 詠美氏
日興アセットマネジメント株式会社
平山 かなえ氏
日本電気株式会社
田中 滋子氏

第二部では、日本ヒューレット・パッカードの菅原裕氏をモデレーターに、味の素の棗田眞次郎氏(企業広報委員会の立場で登壇)、日本電気の田中滋子氏、日興アセットマネジメントの平山かなえ氏、コクヨの佐藤詠美氏がパネリストとして登壇し、「スマート・デバイスへの対応が急務 ~『第5回 企業内Web閲覧環境調査』の結果から」と題されたパネルディスカッションが行われた。また、第一部で調査結果を発表した石村氏も引き続き登壇した。登壇者はすべて、Web広告研究会の企業広報委員会に属しているメンバーだ。

菅原氏は、2005年から5回目となる「企業内Web閲覧環境調査」の気づきとして、「閲覧制限の傾向は、調査開始以来ずっと変わらない」「スマートデバイスへのシフトが大きく進んでいる」という2点を掲げる。

まず閲覧制限に関して、「コクヨは閲覧制限を撤廃し、何でも見られるようになっている」と佐藤氏は話す。「一部のよくないアクセスのために、フィルタリングを会社全体にかけてバージョンアップを繰り返すためのコストのこともあり、もう制限するような時代でもないだろう考えて判断している」ことが理由だ。

閲覧制限が比較的厳しい、金融系企業である日興アセットマネジメントの平山氏は、「動画サイトでは社内からYouTubeは見られるなど、同じ金融系でも運用会社はそれほど厳しくない。以前勤務していた証券会社の方が閲覧制限は厳しかった」と話す。一方で、企業が株主総会などIR系の動画を提供するのは、アナリストなどが所属する金融系の企業だけを意識しているのではなく、株主全体に対して実施している側面が強いのではないかといったことも話し合われた。

IT企業である日本電気の田中氏は、「基本的には見る必要のあるサイトは、申請して許可をもらわなければならないし、業務に関係ないサイトは閲覧してはいけないことになっている。部門によって、閲覧できるサイトは異なる」と話す。

また、閲覧制限の傾向が2005年の調査からあまり変わっていないことについて、田中氏は「動画などはネットワーク負荷もあるので、会社によってはシステムに影響を与える動画閲覧に制限をかけ続けると感じている」と話した。

ブラウザの対応範囲はROIをもとに判断すべき

IE 6が主要なブラウザであると回答した割合が8.5%であったことに対して、菅原氏は「1~2%なら切り捨ててもよいと判断でき、10%以上ならしっかり対応しなければならないということになるが、8.5%というのは微妙な数字」と説明する。そのうえで菅原氏は、制作会社の立場でもある石村氏に、IE 6では閲覧できない表現方法について尋ねる。

株式会社ネコメシ
石村 雅賜氏

通常のコンテンツであれば、最新のブラウザでもIE 6でも閲覧できるようなサイトを作ることは簡単になってきたが、パララックス(視差効果)やレスポンシブWebデザインを使う場合は注意が必要となる。

レスポンシブWebデザインについてはIE 6に対応したライブラリが整理されてきており、追加作業は発生するが、大きく作り直すことはない。パララックスもIE 6に対応させようとする動きがあるが、実現する内容によってはIE 6用に完全に作り直す必要が出てくるため、コストが倍になるケースもある。不可能ではないが、ROIとしては成り立たない場合もある(石村氏)

パララックス効果とは、Webサイトの画面スクロールに合わせて背景画像やパーツを異なる早さで動かすことで、奥行きを表現する視覚効果。昨今、注目されている手法の1つで、NECの「宇宙から海底まで、体感するNECのCSR」などで利用されている。

続けて石村氏は、今後のIE 6への対応方針について次のように話す。

B2B企業などでは、IE 6でサイトが見られないという取引先を無視するわけにいかないかもしれないが、ROIで投資を判断すべき。リッチな表現が必要ないコンテンツや、全員が見られることが前提となっているコンテンツはIE 6に対応させたほうがよいが、これだけ減った利用者に対応するために大変な作業を行うことは、ROI的に成り立たなくなってきていると思う(石村氏)

リッチコンテンツがもたらすインパクト

続いて、企業サイトでリッチコンテンツをどのように活用しているかのコクヨの事例を佐藤氏が発表する。デジタルコミュニケーション時代のなかで、さまざまな広報活動をやって行こうと部内に働きかけている佐藤氏は、「動画で企業活動を紹介するコクヨチャンネルというサイトを一年前からやっている」と説明し、企業情報や商品情報を動画で伝えるだけでなく、リクルーティングにも活用し、お客様相談室と連携して電話などでは説明しにくい商品の使い方なども動画で伝えるようにしているという。

また、佐藤氏は他の企業の動画活用も例示。キヤノンが新たにデータセンターを開設したニュースリリースに動画が埋め込まれている例では、「主力商品のリリースでなくてもニュースに取り上げられ、インパクトを付けられ、多くの人がリンクすることでアクセスも増えている」と説明した。

その他、動画配信チャネルを自社サイト内に設ける日産の「日産チャンネル23 TV」も紹介。「テレビ局のような制作体制で、お金をかけないのが広報と言われてきた自分にとって憧れる取り組みの1つ」と佐藤氏は語った。

続けて佐藤氏は、過去にコクヨが実施した施策の経験を説明する。当時、コクヨでは企業のYouTubeの閲覧制限が多いため、別の動画配信サーバーを利用していた。しかし、その動画配信サーバーがFlashを使っていたためiPhoneなどで再生できず、急いでYouTubeに動画をアップロードしてリンクのボタンを付けたのだが、PCのサイトをそのままスマートフォンで表示する形ではボタンが小さすぎて気づかれにくかったという。このような失敗を経て、現在はスマートフォンでも視聴できる動画配信サーバーに切り替え、デバイスごとのデザインが最適化できるようにレスポンシブWebデザインを採用したという。

動画などの閲覧制限について、菅原氏は「現在は担当者に郵送で回答をもらっているが、閲覧制限については、オンラインアンケートなどで企業内個人からも聞いていくようにしないと見えてこない部分があると思う」と話している。

企業各社のスマートデバイス対応と考え方

味の素株式会社
棗田 眞次郎氏

スマートデバイスへのシフトが大きく進んでいることについては、まず棗田氏がモバイルコンピューティングの歴史を解説し、次のように現状が変わってきていることを指摘した。

また、棗田氏は企業サイトのスマートフォン対応状況に触れたD2Cの調査「2013年企業のモバイル広告利用動向調査」を示し、「スマートフォン対応していない/する予定がない」が約5割あるのに対し、約4割がさまざまな方法でスマートフォンに対応しようとしていることも示された。これを受けて、話題は各企業のスマートフォンへの対応に移っていく。

モバイルコンピューティングのおさらい

NECでは、企業サイト全体としてはスマートフォン対応をしていないが、スマートフォンやタブレットでも一応は閲覧できると考えている。コンテンツによってはスマートフォンに最適化するようにしており、営業ツールとしてタブレットで見せたいという要望があるコンテンツは個別に対応している。また、動画コンテンツはスマートフォンでも見られるようにしている(田中氏)

スマートフォンからのアクセスは、全体の1割くらいになってきた。現状のコーポレートサイトを対応させる予定はないが、新しく作るサイトはタブレットを意識したデザインにしている。また、我々の商品を販売する証券会社や銀行の販売員が情報収集のために見ることを想定して、販売員のための会員サイトをフィーチャーフォン向けに提供しているが、そのフィーチャーフォンサイトの利用者や新たな会員登録は減ってきている。会員サイトと合わせて、一般向けのフィーチャーフォンサイトもあるが、同期更新が手動であるため、今後検討する必要がある(平山氏)

日興アセットマネジメントでは、今秋にもユーザー行動分析を行うというが、平山氏によれば、これまで多いと想定されていた販売員からのアクセスは2割程度であることはすでにわかっていて、残りの8割の閲覧者が何を目的にして来訪しているかを調べるという。

続いて田中氏が、実際のNECサイトのアクセス状況を示しながら説明を行った。BtoBコンテンツであるため、平日昼間のアクセスが多いのが特徴だ。

ターゲットが企業向けであるため平日のアクセスが圧倒的に多く、休日は減少し、ビジネスパーソンが会社で見ていることが想定される。モバイルやタブレットからのアクセスも増えているが、その数は少ない。

また、経営マネジメントに役立つ情報を配信するWISDOMの場合は、月曜のメルマガ配信に連動してアクセスが増えている。企業サイトとは異なり、空き時間や休日にも見てもらいたいコンテンツを配信しているので、スマートフォン最適化も行っており、モバイルやタブレットの割合は増加傾向にある(田中氏)

佐藤氏は、コクヨのスマートフォンアクセスは全体で約20%となり、コンテンツ別に見ると、プレスリリースは約30%、企業情報は約10%、製品・サービス情報は約15%、サポート情報は約7%、IR情報は約6%、読み物は約30%と差があることを明かした。佐藤氏は「プレスリリースや読み物は、Facebookから誘導しているので、スマートフォンのアクセスが多いのではないか」と説明する。

ユーザーニーズを常に把握し、最適な情報発信形態を選択する

各社のスマートフォン対応や調査結果を受けて、菅原氏は企業コンテンツの閲覧環境の変化について、次のように述べる。

この調査を始めた2005年当時は、企業コンテンツは当然会社で見るもので、家のPCでプレスリリースなどを見ることはないと思っていたが、どうやら違ってきたように感じる。これからは、プレスリリースや企業広報コンテンツもスマートデバイスで見られることを考えていく必要があるかもしれない(菅原氏)

また、佐藤氏は「今後はできる限りスマートフォン対応を行いたいと考えていて、新しく作るコンテンツはなるべくスマートフォン対応も一緒にやるようにしている」と話した。2年前に初めてスマートフォン対応したときには、トップページと第二階層までを対応させたが、スマートフォンからアクセスしている訪問者7万人のうち、トップページから第二階層までにアクセスした人は10人程度しかいなかったという。そのため、現在は、Facebookから誘導しているページなど、スマートフォンからのアクセスが予想されるコンテンツのスマートフォン対応を進め、下層ページほどスマートフォン対応するように心がけているという。

一方、平山氏はスマートフォン対応を検討するには、まずユーザーニーズを把握すべきだと指摘する。

今後スマートフォン対応はしていくのだろうが、業態的にも最先端の技術やデバイスを使って我々のサイトを見に来る人よりも、会社のインフラが変わらず、IE 6などの古い技術を使って見に来る人のほうが多い。そのため、最先端のものを追いかけるよりも、我々のサイトを本当に見に来る人にきちんと情報を届けることができたらよいと考えている。ユーザーの動向と実態、情報のニーズを把握し続けることが重要だと思う(平山氏)

グローバルでページ数が多いため、スマートフォン対応を一気にやるわけにはいかない」と話す田中氏は、「やはり、見に来る人やターゲットの閲覧状況によって対応を変えていかなければならない。現在、スマートフォン対応しているコンテンツの結果なども踏まえて、どう展開していくかを決めていく」と話す。

棗田氏は、以前、オープンモバイルコンソーシアムでスマートフォン最適化をテーマにセミナーを行ったことを話し、今後は単にスマートフォン向けに見せ方を変えるだけの時代ではなくなってくるだろうと説明する。

一般消費財を扱う企業の人たちからは、スマートフォンでPCサイトが見られているケースが多いということが話題となった。大半の企業は、現在はPCサイトがあるので、そのサイトをスマートフォンでどのように見せるかということを考えている。また、スマートフォンに対してPCサイトのコンテンツを変えて出すことは基本的にしたくない、という意見もあった。

今、我々はPCのために作ったサイトをどのようにスマートフォンで見せるかということを考えているが、2~3年後にはモバイルデバイスを中心に考えていかなければならない時代となってくるし、ユーザーからすれば見たいものは見たいはず(棗田氏)

トライ&エラーを積み重ねて想定の精度を上げていく

講演の最後、石村氏は、調査結果およびパネルディスカッションでの議論を経て、今後の企業対応について次のように提言する。

今回の調査結果でさまざまな課題が浮き彫りにされた。そのなかでも大きいのは、IE 6に代表されるような古いブラウザへの対応をどうするのかということ。もう1つは、スマートフォンを中心としたデバイスへのシフトをどう対応するのか。

古いブラウザへの対応については、前述のように、ROIを考えて早期にどう対応するかを決める必要がある。営業部門の偉い人にサイトが崩れていて恥をかいたなどと言われると判断に悩むと思うが、古いブラウザを利用している企業の数を見たうえで、修正のコストをかけるべきかどうかを判断して粛々と対応しなければならない。

古いブラウザへの対応よりも、スマートデバイスへの対応のほうが非常に大変な課題として存在しているので、こちらについても今回の調査結果を参考にしてほしい。スマートデバイスによって一般の人の行動が変化するなか、企業は溢れるほどのコンテンツのなかから自社のコンテンツを届けるために、その行動の変化に対応しなければならない。そのためにはユーザーの行動を把握する必要があるが、行動が変化しているなかでは、答えを持っている人はあまりいない。

先行してトライしている人はその答えを持っているが、だれも先行していない場合は、求める答えがないこともある。とにかく小さくてもよいから早く始めて、ユーザーの行動を想定してトライ&エラーで知見を生み、想定の精度を上げるようにしなければならない。このような経験を積むために今回の調査結果を活用してほしいし、自社でスマートデバイス対応のプロジェクトを作るためのネタとしてほしい(石村氏)

国内のスマートフォン契約数は、2013年内に5,000万件を突破するとされており、来年にはWindows XPのサポートも終了する。今回の調査では、企業内のWeb閲覧環境にさほど変化は見られなかったが、2年後の次回調査までにユーザーの行動が変化していくことは確かだ。いち早くユーザーの行動変化を捉えるためにも、今回の調査を参考に、トライ&エラーを繰り返しながら知見を積み重ねていってもらいたいと、セミナーは幕を閉じた。

この記事は、2013年9月22日に開催されたWeb広告研究会月例セミナーのレポート第二部です。→第一部を読む

オリジナル記事はこちら:「旧ブラウザ対応よりもスマートデバイス対応が喫緊の課題、大手Webマスターが企業のスマホ対応を議論」2013年9月24日開催 月例セミナーレポート(2)

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