Web広告研究会セミナーレポート

IE 6とWindows XPのシェアがサポート終了を前に大幅減、「第5回 企業内Web閲覧環境調査」

企業ユーザーのWeb閲覧環境はどのようなものか、2013年7月から8月に行われた調査結果を報告
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

9月24日に行われたWeb広告研究会の第6回月例セミナーでは、企業広報委員会が実施している「企業内Web閲覧環境調査」の結果が報告され、結果内容についての考察を行うパネルディスカッションも開かれた。2005年から2年ごとに行われている同調査の過去との比較も含め、現在の企業ユーザーがどのような環境でWebを閲覧しているかを知るセミナーとなった。

IE 6とWindows XPの利用がサポート切れの影響を受けて大幅減少

石村 雅賜氏
株式会社ネコメシ
石村 雅賜氏

企業広報委員会を代表し、第一部に登壇したネコメシの石村雅賜氏は、「第5回企業内Web閲覧環境調査」の調査結果のなかから、特筆すべきトピックをピックアップして解説した。

調査は2005年から2年ごとに行われており、今回の調査結果の概要については、Web広告研究会のプレスリリースで公表されている。第5回の調査期間は2013年7月8日から8月1日、日本アドバタイザーズ協会加盟企業およびWeb広告研究会加盟企業445社と官公庁101団体を対象に郵送調査を行い、回収数は165社(うち官公庁13団体)。

一部分の調査には足りない数ではあるが、大きな動きを見るには十分な数だと思う。今後の調査では、もっと多くの企業にご回答願えるとありがたい(石村氏)

調査結果から、まずOSとブラウザに関する調査のポイントが解説された。Web閲覧に関わるOSとブラウザのバージョンは、「以前からWeb担当者を悩ませてきた課題である」と話す石村氏は、「最も利用するOSは、企業の担当者に主要なOSは何かと聞いて回答した企業の割合を示しているため、一般的なOSのシェアとは異なる」と前置きする。

結果としては、Windows XPが27.9%で前回の70%から大幅ダウンしており、Windows 7が55.2%と前回の11.9%から大幅にアップしている。また、最新のWindows 8は1.8%の企業が主要なOSとしていることがわかった。

社内でもっとも多く利用されているオペレーティングシステム<単数回答>

大幅に減ったとはいえ、3割近くの企業が主要なOSとして利用しているWindows XPを業種別に細かく見ていくと、化学・医薬品(43.8%)、官公庁(38.5%)、卸売・小売業(55.6%)などが高い割合となっており、「これらの業種をターゲットとしている場合は注意が必要」と石村氏は説明する(サンプル数が少ない業種は除く)。

ブラウザのバージョンは、最も大きな課題となっているInternet Explorer 6(IE 6)以前が8.5%と、2年前の38.6%から大幅にダウンしている。IE 8が46.1%と、前回の24.2%から大幅にアップしており、今後の企業の主要なブラウザはIE 8になることがうかがえる。一方で、IE 10、Chrome、Firefox、Safariなどの最新版のブラウザを主要としている企業は、17%に留まっている。

IE 6を主要なブラウザとしている企業を規模別に見ていくと、2011年の前回調査では大企業の割合が高かったが、今回の調査では5,000人以上の規模の会社(11.1%)よりも1,000人から4,999人の規模の会社(19.4%)の割合が高くなっている。この結果から、2014年4月にWindows XPおよびIE 6のサポートが終了するため、大企業ではOSなどの入れ替えが進み、1,000人から4,999人の規模の企業はOSの入れ替えが少し遅れていることが見て取れる。

社内でもっとも多く利用されているインターネットのブラウザ<単数回答>

YouTubeなどのストリーミング系サービスは約3割の企業が制限

外部サイトやサービスへの閲覧制限に関する調査では、「YouTube」「ニコニコ動画」などのストリーミング系サービスについて約3割の企業が閲覧制限をかけており、2年前の調査とあまり変わっていない。SNS系では、「Facebook」が17.0%(前回14.4%)、「Twitter」が17.6%(前回11.8%)、「LinkedIn」が21.8%(前回13.7%)と、制限をかける企業が微増する結果となった。

また、今回から調査を始めた「食べログ」「価格.com」「アットコスメ」などのユーザー生成系のサイト閲覧を制限する企業は1割を切っており、前回調査した「OKWave」も8.5%と、前回の13.1%からダウンしている。石村氏は、「企業サイトのQ&AコンテンツとしてOKWaveを使っている企業が増えているが、こういった企業にとっては朗報だと言える」と話す。一方で、「2ちゃんねる」の閲覧制限は35.2%と高く、2011年の調査からあまり変わっていない。

社内で閲覧および書き込み可能なWebサービス<各単数回答>

「宅ふぁいる便」「Evernote」「Dropbox」「SlideShare」などのデータ共有系の閲覧制限はいずれも3割前後と高く、2011年よりも閲覧制限をかける企業が増える傾向にある。「SlideShareなどは、企業内個人のブランディングのために資料を公開するケースが増えているが、まだまだ企業の理解を得られていない」と石村氏は説明する。

さらに石村氏は、閲覧制限の傾向として、企業規模が大きくなるほど制限をかける割合が多く、金融・保険業界ではストリーミング、SNS、ファイル共有サービスはほぼ閲覧できず、官公庁、卸売・小売業、機器・機械も制限をかける割合が高いとまとめている。

スマートフォン、タブレット端末の業務支給にトライ

メールの制限に関する調査では、3MB未満に制限している企業が前回の16.9%から9.7%にダウンし、HTMLメールを表示不可としている企業も前回の14.3%から10.9%にダウンしており、「メールを使ったさまざまな施策がやりやすくなった」と石村氏は話す。

「Flash」「Adobe Reader」「Windows Media Player」などのプラグインの利用については、約80~90%の企業が利用可能で、2年前の調査からあまり変わっていない。プラグインやアプリの追加についても、「自由にできる」が22.4%、「制限付きでできる」が63.8%、「できない」が13.3%という比率になっており、こちらもあまり変化していない。

ストリーミング系のWebサービスに限らず、企業が自社サイトで公開している動画も含めた閲覧については、88.5%と高い割合で閲覧可能という結果となっている。ただし、金融・保険は60.0%、官公庁は69.2%と比較的低い割合となっているため、これらの業種をターゲットにする場合は注意が必要だ。

端末の制限に関する調査では、今回からスマートフォンやタブレットの支給についての調査が行われている。

スマートフォンおよびタブレット端末の支給に取り組む企業が増加しつつある

いずれも1~25%の社員に支給している企業が多く、社員の一部に配布するというトライを早くから始めている企業や、これからトライしようとする企業が多いことがわかる。また、今後のスマートフォン支給についての回答は、「増えると思う」が54.5%、「どちらとも言えない」が46.6%、「減少すると思う」が0.6%となっており、増加すると考える企業が半数以上いることもわかった。この傾向は、タブレットに関しても同様の結果となっている。

さらに、支給されたスマートフォンやタブレットで何ができるかを調査したところ、メール送受信や社外Webサイト閲覧が9割前後可能なのに対し、アプリダウンロードや社内イントラネット接続は5割前後に留まっている。

スマートデバイスの普及で進むBYOD

個人保有のデバイスを業務で活用するBYOD(Bring Your Own Device)に関する調査も今回から始まり、BYODを許可している企業の割合はPCで23.4%、スマートフォンで31.5%、タブレットで29.7%という結果となった。BYODのスマートフォンやタブレットの利用範囲についても調査が行われているが、「メール送受信」「社外Webサイト」「アプリダウンロード」「イントラネット接続」のいずれも、会社支給のデバイスよりも許可の割合が低く、個人利用デバイスのため、リスクが高いと評価されているのがうかがえる。

仕事上の目的でも個人のスマートフォンを利用

仕事上の目的で使用するデバイスは、「PC/スマートフォン/タブレット」のどれなのか、それは「会社支給/BYOD/個人端末」のどれなのか、という調査も今回初めて行われており、コンテンツ別に調査されている。また、前述の調査とは異なり、同調査は企業としてそのようにデバイスを使っているということではなく、調査に回答した担当者が個人的にどのように使っているかを聞いている点に注意が必要だ。

使用デバイスの調査結果から、プレスリリースの閲覧については、会社支給のデバイスではPCが93.9%と圧倒的であることがわかった。個人所有のPCで見ている人も29.7%と多く、会社以外でもプレスリリースを閲覧している人が多いことがうかがえる。また、スマートフォンでプレスリリースを見ている人も会社支給のデバイスで16%、個人所有ではPCよりも多い30.9%となっており、会社以外で見るという人も多い。

企業情報や製品・サービス情報についてもプレスリリースと似たような結果となっており、基本は会社のPCで見ているが、個人所有のPCやスマートフォンで見ている人もいる結果となっている。

サポート情報は、若干傾向が変わり、他のコンテンツに比べてPCでの閲覧が増え、スマートフォンが減っている。これは、情報量が多く、調べるためにPCを立ち上げることが多いためだと、石村氏は分析する。

IR情報は、スマートフォンの閲覧比率が下がり、全体的にも見る人が若干少なくなっている。企業の公式SNSは、PCの比率が若干下がり、スマートフォンが若干高く、特に個人所有のスマートフォンが高い。企業の読み物コンテンツについては、会社支給のPCで見ている人が多く、次いで個人所有のスマートフォンで読んでいる人が多い結果となった。

この記事は、2013年9月22日に開催されたWeb広告研究会月例セミナーのレポート第一部です。→第二部を読む

オリジナル記事はこちら:「IE 6とWindows XPのシェアがサポート終了を前に大幅減、検討が進むBYOD『第5回 企業内Web閲覧環境調査』」2013年9月24日開催 月例セミナーレポート(1)

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