コンテンツマーケは「小学校の教科書」で。インフォバーン流Webコンテンツ発想3つのフレーム
コンテンツマーケティングを実践するための、オウンドメディア向け「自社独自のコンテンツ」を考えるのに大切なポイントを解説します。
インフォバーン流「コンテンツ発想法」の3つのポイント、それは「小学校の教科書」「雑誌(の目次)」「人気のお店・スポット」。これであなたも敏腕編集長に。
漫画「四葉幸のハッピーオウンドメディア」で伝えた4つのポイント
漫画「四葉幸のハッピーオウンドメディア」では、8回の連載を通して、大きくまとめると、以下の4つのポイントをお伝えしました。
(まだ読んでいない方は、第1話「食いしん坊の幸とメディア化する企業」からどうぞ)
- オウンドメディアの重要性・必要性
- コンテンツの考え方
- 社内からの情報収集・協力体制づくり
- 継続の重要性とオウンドメディアの成功イメージ
今回は「四葉幸のハッピーオウンドメディア」を、皆さんの業務やサイト運営の中で、さらに活用していただけるよう、マンガ連載では十分に描き切れなかったことをフォロー記事としてお伝えします。
オウンドメディアのポイントを冒頭に4つ挙げましたが、この記事では2つ目の「コンテンツの考え方」に焦点を当てて解説します。
というのも、1つ目の「オウンドメディアの重要性・必要性」あるいはコンテンツマーケティングの重要性・必要性については、昨今、Web担当者Forumはもちろん、さまざまなサイトで叫ばれていますので、今回はあえて触れません。
また、3つ目の「社内からの情報収集・協力体制づくり」と4つ目の「継続の重要性とオウンドメディアの成功イメージ」は、皆さんが置かれている個別の状況による部分が多いので、これらも別の機会に譲ります。
さて、オウンドメディア向けの「コンテンツの考え方」のノウハウとはどんなものなのでしょうか?
「自社独自のコンテンツ」はどうすれば作れる?
企業がオウンドメディア、あるいはコンテンツマーケティング(以下、オウンドメディア)を進めていくには、いくつかの段階があります。
まず、オウンドメディアの重要性・必要性を認識し、さらに関係者や社内に理解を広げていくという準備段階があります。
その段階が済んだら、オウンドメディア向けのコンテンツを考えていくことが、実践へ向けた第一歩です。
幸たちも、第2話でインクバーンのプレゼンテーションを受けた後、「自社独自のコンテンツ」が展開できるかどうかで悩みました。中井部長のように、自社のことをよく知っている人ほど、「自社独自のコンテンツ」に頭を悩ませるかもしれません。
実際にオウンドメディアを立ち上げ、コンテンツを展開していく際にもっとも重要なポイントとなるのは、次の2点です。
- 自社の何を伝えるか?
- 他社にはない、どんな情報を発信するか?
これはつまり、「自社の独自性」「他社との差別化ポイント」を明確にすることにほかなりません。
オウンドメディア自体は、情報を発信するための「ツール」であり「場」に過ぎません。本当に大切なのは、その「場」を作ることではなく、そこにどのようなコンテンツを、どのような形で載せていくかなのです。
まずは自社の独自性・差別化ポイントを洗い出し、明確にすることが、コンテンツを考えるうえで最も大切なことです。
とはいえ、弊社インフォバーンがオウンドメディアのご相談を受ける際に、こんなリアクションをいただくことがあります。
本当にそうなのでしょうか?
もし御社のビジネスに独自性や差別化ポイントがないのならば、厳しい競争の中ですでに淘汰されてしまっているはずです。どこかに必ず独自性があるはずです。
オウンドメディアのコンテンツを考えるためには、必ずこのポイントを明確にしておく必要があります。逆に言うと、このポイントが出せなければ、コンテンツを考えられないのです。
会社やビジネスの独自性、差別化ポイントを明確にするところからインフォバーンとしてお手伝いすることもありますが、ここはまず自社内で整理してみてください。
「コンテンツ発想の切り口」3つのフレーム
では、前置きが長くなりましたが、いよいよコンテンツを考えていきましょう。
もちろん、どんなコンテンツがオウンドメディアに良いかは、どんなビジネスをどんな環境でどんなお客さん相手にしているかによって異なります。
しかし、コンテンツを考える際のヒントや切り口、少し大げさに言えば「フレーム」のようなものがあれば、考えやすくなるでしょう。
ここでは、そういったフレームを3つお伝えします。
- 小学校の教科書
- 雑誌(の目次)
- 人気のお店・スポット
「コンテンツ発想の切り口」として横文字のお洒落なキーワードを提示できるとカッコイイのですが、ここではベタな切り口です。
実際にオウンドメディアを立ち上げ、運用していく場合は、具体的なコンテンツ案は、マンガに登場したインクバーンのようなプロに依頼するケースが多くなることでしょう。
しかしそういった場合でも、プロに依頼する前に、まずは自分たちで考えてみることをオススメします。そうすることで、オウンドメディアに対してより明確なイメージを持つことができ、クリアすべき課題も明確になってきます。
コンテンツ発想法① 小学校の教科書
教科書、しかも小学校の教科書は、コンテンツを考えるときに、非常に有効なフレームになります。年代を問わず、共通のヒントにできることも教科書の利点です。
具体的に見ていきましょう。
社会科の教科書から発想する
小学校の主要教科は「国語」「算数」ですが、会社のことを考えやすいのは「社会」です。
社会の教科書や授業を思い出すと、まずは「工場見学」が思いつきます。日頃、ユーザーの目に触れる機会が少ない製造工程をアピールすることが、自社の独自性や強みをアピールすることにつながりませんか?
メーカー以外の業種であれば、サービスを支える研修制度や人事制度をテーマにすることはできないでしょうか。
そのまま伝えるだけでは通常の会社案内と同じになってしまいますが、たとえば地図帳や年表などの副読本を思い出しながら考えてみることにします。
たとえば次のような発想の仕方はいかがでしょうか?
研修制度を充実させてきた歩みを、年表形式、たとえば戦国大名が領土を拡げてきた様子になぞらえて表してみる
人事制度の変遷を、どこかの国の王族の歴史に例えてみる
担当者の顔を家系図のようにして紹介しつつ、その取り組みを紹介していく
理科の教科書から発想する
製造工程のディテールをより細かく紹介したり、研究開発の内容を紹介していくには、理科の教科書が参考になります。
製造工程のポイントを拡大して詳しく図解したり、研究開発の内容を実験で再現したり、あるいは「観察日記」的なコンテンツが準備できると、定期的な更新コンテンツとして使えます。
また、中学・高校と進むにつれて化学や物理、生物などの理科教科は、苦手意識を持つ人も多くなります。そんな人たちに向けてコンテンツを考えるのもいいでしょう。
優れた技術力を持つメーカーが、自社の製品や技術に絡めながらユニークで、わかりやすい学習コンテンツを提供できれば、すばらしいと思いませんか?
算数や国語の教科書から発想する
算数では、会社を「特徴的な数字」で紹介していくコンテンツはいかがでしょうか。おもしろさやユニークさとは対極にあるIRコンテンツを魅力的に見せることもできそうです。
売上、生産高、拠点数、従業員数といった基本的な数字はもちろん、メーカーであれば、使用する原材料やエネルギー(電力や水の量)の量、さらには、1つの製品が完成するまでに工場内を移動する距離とか、工場に設置されているロボットの数とか、センサーの数とか……。
ユニークな数字をアピールできる領域は、必ず会社の強みと重なってくるはずです。
国語では、専門用語の解説、辞書的なコンテンツが考えられます。あるいは、おもしろ味には欠けますが、製品マニュアルや取扱説明書、注意書きなどを、きちんとWeb上に展開しておくことはSEO的にも有効です。
また感想文や川柳を募集する企画は、国語的なコンテンツだと言えます。
コンテンツ発想法② 雑誌(の目次)
マスメディアの代表である雑誌も、オウンドメディアのコンテンツを考える際に参考になります。
まずはグラビアページ
雑誌の作りをイメージしてみてください。
たとえば男性誌であれば、巻頭にグラビアページがあります。
オウンドメディアにグラビアアイドルを登場させるわけにはいかないでしょうけれども、何か写真を中心としたコンテンツは作れないでしょうか。
写真を使ったコンテンツは、オウンドメディアからソーシャルメディア、特にFacebookに展開していく際に非常に強力なコンテンツになります。
続いて業界トレンドやニュースのページ
グラビアの次には、最新のトレンドやニュースをコンパクトに紹介するページが続きます。内容を深く掘り下げることが目的ではなく、新しいニュースや事例などをコンパクトに伝えるためのコンテンツです。
ここでは、雑誌が情報を扱う姿勢も発想の参考になります。
というのも、雑誌など従来のメディアでは、「特定の製品やサービスに偏らず、ニュートラルな第三者の視点で情報を提供する」という姿勢で情報を扱っています。
それに対して企業のオウンドメディアは、その成り立ちがそもそもニュートラルではありません。最終的には自社のビジネスに役立つことが目的ですから。
しかし、自社サイトを「オウンドメディア」として成長させるためには、「売るため」だけではない「ユーザーの役に立つ情報を提供する」ことが大切になるのです。
自社の製品やサービスに関するニュースや最新動向だけを扱うのではなく、雑誌のニュース欄のように、幅広い情報を提供していくのはいかがでしょうか? 直接的には自社製品やサービスには関係がなくても、読者であるユーザーの役に立つ情報を、積極的に広く提供していくのです。
そうすることで、ユーザーからの「あのサイトいいよね」という支持を得られるようになっていくのです。いわゆる「アドボカシーマーケティング(顧客支援)」の視点ですね。
そして、提供する情報は、オウンドメディア運営のために特別に収集する必要はないはずです。すでに社内の各部門で収集し蓄積してある情報(営業部門や研究開発部門が収集している情報)を活用すればいいはずです。
ちなみに、ユーザーの役に立つ情報を収集し、選別して提供していくということは、その業界の専門家だからできることです(一般のメディアは、そうした専門家に協力してもらってコンテンツを作っています)。専門家としての見識やノウハウに裏打ちされた情報が、中立的なメディアよりもユーザーの役に立つことも多いでしょう。
そして特集記事
ニュースやトピックスのあとには、特集記事が登場します。雑誌によっては、特集は1つだけではなく、第1特集、第2特集、第3特集というように複数で構成されているケースもあります。また逆に最近では、特集のテーマを1つに絞って掲載している雑誌も見られます。
特集コンテンツは、オウンドメディアを考える際の中核的なコンテンツになります。自社独自のコンテンツ、他社と差別化できるコンテンツとして、どのようなものが提供できるか。「自社の話を男性誌に展開する場合」「女性ファッション誌で取り上げる場合」あるいは「マンガにする場合」など、さまざまな雑誌をイメージして考えてみてください。
読者投稿や占いなど
その他のコンテンツとしては、連載記事、読者投稿、占いなどがあります。
読者投稿や占いは、雑誌の後半に配置されることが多いコンテンツなのですが、人気がないから後半に配置されるわけではありません。逆にここから目を通すという読者も少なくないのが実際です。
たとえば読者投稿は、オウンドメディアで考えると、お客様事例です。強力なコンテンツになることは言うまでもありません。
また占いも、うまく自社の製品やサービスと関連づけることができると、おもしろいコンテンツにできます。
このように、雑誌にはコンテンツ発想のヒントがたくさん詰まっています。自分の好きな雑誌はもちろん、日頃目を通さないような種類の雑誌もチェックしてみると、より多くのヒントが見つかるでしょう。
しかし、全ページに目を通すと時間がかかります。その場合は、「目次」に注目してください。情報を取り上げて紹介する方法、繰り返して紹介する際のバリエーションの出し方など、具体的なヒントが見つかります。
でも、こんな風に弱気になってしまうこともあるでしょう。
うちのビジネスからそんなにたくさんの切り口や見せ方は考えられないよ……。
そういう場合は、結婚情報誌や住宅情報誌を参考にしてみてはどうでしょうか。そうした雑誌では、同じようなトピックでもさまざまな切り口を出したり、トレンドに応じて扱う角度を変えたりして、うまく工夫しているものです。
コンテンツ発想法③ 人気のお店・スポット
最後は、少し応用編になります。あなたが良く行くお気に入りのお店や、雑誌やテレビで話題の人気のお店・話題のスポットから、コンテンツを考えてみましょう。
なぜあなたはそのお店がお気に入りなのでしょうか?
- 好みの商品、欲しい商品が置いてあるから?
- 新しくできたお店だから?
- 常連だから?
- 店員さんのコーディネートが参考になるから?
- 雑誌やテレビで紹介されたから?
- 何となく楽しく、心地よくなるから?
- 新しいものと出会えそうだから?
- みんなが行くから?
いろいろな理由が挙げられそうです。
たとえば、「そこに行くと、何となく心地よくなる」としたら、それはなぜでしょうか。そのお店に行くと、なぜ心地よくなるのですか。
提供される商品のクオリティが高いからですか。内装やレイアウトが素敵だからですか。店員さんの対応が心地良いからですか。それとも、流れていBGMの選曲がいいからですか。
あなたが足を向けたくなる理由が、そこにあるはずです。では、その「足を向けたくなる理由」を、同じようにオウンドメディアで実現するにはどうすればいいのでしょうか。
提供する情報のクオリティ、デザインやレイアウトのテイスト、表示のスピード、ユーザーとのコミュニケーション……。実現方法はいろいろあるはずです。
たとえば、これから作りあげようとしているオウンドメディアについて、「人気の遊園地のような場所にする」と考えたら、目指す方向がわかりやすくなりますし、チームでイメージを共有しやすくなります。
あるいは、老若男女にたくさん来てもらう遊園地ではなく、「人通りの少ない路地裏にあるけど、コアなユーザーには熱狂的な人気を誇るお店」という設定はどうでしょうか。では、そのお店は、どんな品揃えで、どんな店主がいるのでしょうか。
これは、個別のコンテンツというよりは、お店(つまりオウンドメディア全体)のコンセプトを考える手法だといえるかもしれません。
どういうコンセプトのもとに、どういうコンテンツを並べるのか。さらにお店の内装や商品、この場合はコンテンツの置き方(レイアウト)はどうするか。店主や店長のキャラクタやホスピタリティは、どう設定するか……。お店を例にして考えると、わかりやすくなります。
小学校の教科書、雑誌(の目次)、人気のお店・スポットと、オウンドメディアのコンテンツを考えるときに、ヒントやフレームとなるものを紹介してきました。
もちろんWebメディアであるオウンドメディアを実際に構築し運営していく際には、教科書や雑誌といった紙メディア、お店やスポットの手法がそのまま使えるわけではありません。特に紙メディアの考え方や手法は、Webメディアでは逆効果となるケースもありますので、注意が必要です(この話は、機会があればどこかで……)。
「幸のハッピーオウンドメディア」の中で、インクバーンの北条も言ってましたが、オウンドメディアの目的は「メディアを作ること」ではありません、ユーザーとのコミュニケーションを作り出し、コミュニケーションし続けていくことが目的です。
何のためのコミュニケーションなのか。そのためには、どのようなコミュニケーションが必要なのか。ぜひ、ここに上げた3つのフレームなどを参考にしながら、考えてみてください。
なお、インフォバーンでは、オウンドメディアやコンテンツマーケティングに関して、弊社コアスタッフがリレー形式でお伝えする「インフォバーン コラム」を6月にスタートさせました。
インフォバーンが提供するコンテンツマーケティングの考え方やその全体像、コンテンツマーケティングを成功に導くユーザー中心発想、コンテンツをユーザーに届け、拡げる仕組み(これ、忘れがちになります)など、さまざまな切り口で記事をアップしていきます。ぜひ、アクセスしてみてください。
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