Facebookに投稿すれば「いいね!」は100以上、キリンが挑戦するソーシャルメディア1億2000万人への拡散
徐々に盛り上がっていることは実感しています。Facebookでも投稿に対する“いいね!”が必ず100以上付くようになってきました。
リアルなキャンペーンを追跡していくのには、Facebookのタイムラインが最適です。
キリンホールディングスでは、2012年3月からグループ横断のユーザー参加型キャンペーンを実施している。これまでのキャンペーンは、マスマーケティングを中心に展開されることが多く、ソーシャルメディア連携を中心に考えられているのは、同社では珍しい事例だというが、キャンペーン開始時から盛り上がりを継続しており、今ではFacebookに投稿すれば必ず100以上の“いいね!”(最新の状況では400~500ほど)がつくほどだ。
新たな挑戦として、社内でも注目されているというキャンペーンの狙いについて聞いた。
キャンペーンの目的
オウンドメディアを中心にFacebookと連携
キリングループが2012年3月から開始している「100万人でつくろう元気のうた」キャンペーンは、歌詞や写真を募り、一曲の歌「元気のうた」を作り上げるユーザー参加型のキャンペーン。健康をキーワードに2010年に立ち上げられた新ブランド「キリン プラス-アイ(KIRIN Plus-i)」の認知拡大が大きな目的だ。まず、キリンホールディングスのサイトにキャンペーンサイトを立ち上げ、3月にユーザーから元気のうたの歌詞を募集する「元気をもらったひと言」を開始。5月にはプロモーション動画に使う写真を募集する「元気のポーズ」を開始し、10月の楽曲完成を目指して現在も継続している。
「社内でもWebやソーシャルへの取り組みは始まっているが、やはり各商品ブランドはマスマーケティングが中心
」だと話す浅野氏は、Web中心のキャンペーンを行った理由の1つを次のように説明する。
限られた予算のなかで、単に認知を上げるだけでなく、共感を獲得するためには、必然的に現在の生活者の情報環境に合ったキャンペーンを行うことになります(浅野氏)。
一方で、今回のWebとソーシャルメディアを中心としたキャンペーン展開を新たな挑戦と捉え、社内事例の1つとしたり、キリンの新たなファンを獲得することも考えられた。
このキャンペーンで新たな層を開拓したいという考えはありましたが、そのハードルは非常に高いものです。実際、当初はキャンペーンサイトへの流入は、キリンビバレッジやキリンビールのメールマガジンの効果が高いと感じました(浅野氏)。
このように話す浅野氏だが、Webやソーシャルメディアで徐々に盛り上がっていくことで、「従来のキリンのファンも含めて拡げて行くことで、新しいユーザーを獲得していくことが重要
」だと考えるようになっている。
また、ソーシャルメディアを中心に今回のキャンペーンを企画・サポートするグランドデザイン&カンパニーの小川和也氏は、次のように話した。
生活者参加型のキャンペーンにするということが重要なテーマでした。そのため、ソーシャルメディアの使い方が大きなキーポイントとなり、Webを通じて生活者とどのようなタッチポイントを作るか、というのが鍵でした(小川氏)。
“元気”をキーにして新しい出会い、共感へとつなげる
キリン プラス-アイは、キリンビバレッジ、キリンビール、キリン協和フーズ、小岩井乳業など、グループ会社横断で“健康”をキーワードに進められている「健康・機能性食品事業推進プロジェクト」だ。
ラインアップは、しじみの成分として注目されているオルニチンを配合した「回復系アミノ酸オルニチン配合シリーズ」6製品、ユーカリや焙煎大麦を配合した「からだ想い茶シリーズ」2製品など。これらを「キリン プラス-アイ」ブランドとして健康をサポートしている。そのためにしっかりとした研究部門を設け、エビデンス(実証)に基づいた商品開発を行っていることも特徴的だ。
健康食品やサプリメントを販売するというのではなく、基本的には楽しくて美味しい商品に“健康”という要素をプラスして、日常的に手軽に飲食してもらえるものを提供しようと考えました(浅野氏)。
従来のようなマスメディア中心のマーケティング施策ではなく、ソーシャルメディア連携を前提としてキャンペーンが計画されたのには、共感を通じて新しい顧客との関係を築いていきたい、という思いもあったという。
そして、「日常的に機能的な食品を楽しみながら摂ってもらうなかで、“元気”をサポートするようなキャンペーンでブランドに共感してもらいたい
」と話す浅野氏が始めたのが、ユーザー参加によって一曲の歌「元気のうた」を作り上げる「100万人でつくろう元気のうた」キャンペーンだ。2012年3月から10月末までの長期にわたり展開している。
歌詞の募集を継続しながら、7月13日には曲の一部を公開し、お手本の振り付けに合わせて踊った動画を募集する「元気のダンス」も開始した。もちろん、これらの動画もプロモーションビデオに活用される。総合プロデューサーに武部聡志さん、アーティストにKANさん、キマグレンさん、一青窈さんの3組を抜擢し、一流のプロデューサーとアーティストが投稿されたひと言をもとに歌詞を作り、メロディにのせて楽曲を作るというのもこのキャンペーンの魅力の1つだ。
震災などもあって人のつながりなどが注目されるなか、自分だけ元気になるのではなく、みんなが元気だと自分も元気になれる、そんなキャンペーンを行いたいと考えました。日本の元気を集めて拡げていくようなことができないか、と考えているなかで、みんなで飲んで食べて一緒に歌う“歌”を作るという企画が生まれました(浅野氏)。
運営体制
運営方針は、広告主×代理店×コンサルの会議で決める
キャンペーンサイトに投稿されたひと言や写真には「元気をプラスボタン」が付けられ、いいと思ったユーザーや元気をもらったと思うユーザーがクリックすることで「元気数」が増えていく。またFacebookで集まった投稿への「いいね」数や動画や楽曲の再生数も「元気数」にカウントされ、100万元気を集めることがこのキャンペーンの1つの目標にもなっている。
キャンペーンサイトへの誘導は、主にWebのリスティング広告とバナー広告、グループ各社のメールマガジンでの紹介、交通広告などが使われている。情報の拡散や発信のためにFacebookと連動させたり、「2012ひろしまフラワーフェスティバル」「アースデイ東京2012」「第7回ロハスデザイン大賞2012」などにブースを出展してリアルなイベントも行っており、参加者の写真をサイトにアップすることなども行われている。
このプロジェクトで作る楽曲は、平成を代表するような元気ソングにしたいと考えています。キリン プラス-アイの歌というだけでなく、みんなで作ったみんなの歌にしなければなりません。そのためには、Facebookなどで消費者とのエンゲージメントをどのように高めるのかが重要で、1つひとつの投稿のキメを細かくするように注意しています(小川氏)。
キャンペーンの運営は、キリンホールディングス、グランドデザイン&カンパニー、広告代理店の三者が毎週行う編集会議をもとに進められている。会議では、エンゲージメント率を計算して今後の投稿をどのように行うかを決めたり、流入率やPVを見てリスティング広告やバナー広告のクリエイティブ変更などを決めたりする。
投稿する内容は編集会議で決めており、毎日必ず投稿する決まりです。投稿時間によって反応が大きく変わる場合もあるので、投稿する時間帯にも気をつけています。曜日ごとにテーマを決めて、歌作りに限らず、キリン プラス-アイについて親近感を持って認知してもらうことも心掛けていますね(小川氏)。
と小川氏が説明するように、プラス-アイのロゴをモチーフにしたおにぎりの写真を投稿するなど、投稿のバラエティを幅広くして興味を持ってもらえるようにし、どのような投稿がエンゲージメントを上げるかを判断しながら修正を繰り返しているのだ。
その結果、「徐々に盛り上がっていることは実感しています。Facebookでも投稿に対する“いいね!”が必ず100以上付くようになってきました
」と浅野氏が話すように、キャンペーン開始から3か月以上経った現在では元気数も50万を超え、効果を実感できるようになったという。
Facebookインサイトで測定するエンゲージメント率も、標準的なWebに比べて1.5倍~2倍くらいとなっています。プロジェクト全体が消費者目線で作られ、みんなで参加して楽しんでもらっていることがエンゲージメントを高めていると思いますね。1つひとつの投稿をチェックして、平均値と比較して、いいものは伸ばしていくようにしています(小川氏)。
一方で気になるのは、ユーザーからの反応にどのように答えているかだ。「コメントはなるべくタイムラグのないように返したほうがよい
」と話す小川氏だが、キリンホールディングスのような大企業では、表現チェックも厳しくなりがちだ。「元気ひろげ隊の飛丸隊長というキャラクターを立ててユーザーとのコミュニケーションを行っていますが、常に全体のコンセンサスを取りながら、基本的なポリシーに従い、タイムラグが発生しないようにコメントを返すようにしています
」と小川氏は説明する。
投稿内容は編集会議で決めるのが基本方針だが、特に大きな問題ではない場合は、キリンホールディングス側のチェックを通さずにコメントを返すことができる。クライアント側と制作側との信頼関係の下で、必要であれば連絡を取り合いながら柔軟な対応が行われており、これも定期的に毎週の編集会議で顔を合わせて、現状の課題に両社が真摯に取り組んでいる効果の1つといってもよいだろう。
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