検索とドメイン名の微妙な関係、再び/知って得するドメイン名のちょっといい話 #21
テレビCMや雑誌広告など、さまざまな場面で「○○○で検索」という誘導が行われている。しかし、最近この検索による誘導でドメイン名を活用するという事例が出てきた。今回はこの新しい手法について考えてみたい。
※この記事は、レンタルサーバー完全ガイドの発行する雑誌『レンタルサーバー完全ガイドVol.22』(2010年8月30日発売)に掲載されたものを再編集して掲載しているものです。
「○○○で検索」について再び考える
3年ほど前に、この連載で「検索とドメイン名の微妙な関係」という話を書きました。ちょうど、テレビCMや新聞・雑誌の広告などでユーザーをウェブサイトへ誘導する手法として、アドレス(URL)入力に代わり「○○○で検索」という誘導が急速に広がりつつあった時期で、この新しい誘導手法についてのメリットとデメリットを考察した内容でした。
広告・宣伝は、人が商売を始めたときから存在する古い業務です。手法もキャッチコピーやポスター、ちらしなど、何世紀も前からあるものが今も多く使われています。というわけでこの分野はレガシーであるように見えますが、実は常に新しい技術を取り込み、そして新しい活用の仕方を発明していく、とても動きの早い分野です。そしてここ数年で、広告媒体が情報伝達だけでなく、ウェブへの誘導という役割を持つようになり、いかに確実に、そして効率的に誘導できるか、ということを追求して、検索による誘導が使われるようになったわけです。
その後、「○○○で検索」という手法はさらに進化しました。最近新たに見かけるようになった事例は「○○○.jp で検索」というものです。実はこれ、同じように見えて実はとてもよく考えられた誘導手法なのですが、なぜこの形に進化したのかを考えてみましょう。
検索誘導のメリットとデメリット
まずは、検索誘導による広告・宣伝のメリットとデメリットをおさらいしておきましょう。
もともと、URLを示してウェブサイトへ誘導する手法に代わって検索による誘導が使われるようになった理由のひとつは、URLは覚えてもらいにくい、というものです。商品名やサービス名を短く覚えやすいURLにしようと思っても、ローマ字や略称などにすると理解して記憶するのにひと手間かかってしまいます。検索誘導であれば、よく分からないアルファベットの羅列ではなく、分かりやすい言葉を前面に押し出すことができます。
もうひとつの理由は、URLは1文字でも間違えるとアクセスできない、というものです。見間違いや勘違い、タイプミスで1文字違うだけで、お客さんにそのウェブサイトに来てもらえないのです。しかし検索であれば少し間違えてもアクセスできる可能性が高く、また検索サービスの側が「もしかして」と正しい検索キーワードを示してくれたりもします。
逆に、検索誘導のデメリットは、確実性がないことです。「○○○で検索」という誘導を行うときには、検索されたときに上位表示されるようにSEOを駆使するか、SEMでお金を払ってスポンサー領域に表示されるようにするか、という行為がセットになります。検索した結果の画面で目立っていなければアクセスされないからです。それどころか、ライバル企業のウェブサイトに行ってしまうかもしれません。しかし、SEOで確実に最上位表示される確約はなく、他の検索結果に紛れてしまうリスクがあります。また、SEMでも他人が同じキーワードでリンク表示を行う可能性もあります。
検索誘導はユーザーにわかりやすい案内方式ですが、確実に自社のウェブサイトにアクセスしてくれる保証はないのです。忘れてならないことは、検索誘導するときにユーザーに示す検索キーワードは、あなただけのものではなく、他人も自由に使うことができる、ということです。
自分だけが使えるユニークな名前ドメイン名による検索
この検索誘導の大きなデメリットである不確実性を解消するために考えられた誘導方法が、「検索キーワードをドメイン名にする」というものです(図2)。
一見すると普通の検索誘導と変わりがないように見えます。逆に、ドメイン名なので文字列に「.jp」などのTLDがついている分だけ、ユーザーにとって不便ではないかと思うかもしれません。しかし、これが実によく考えられているのです。
一番のメリットは、検索誘導の不確実性を大きく減少させることができる、ということです。普通の検索キーワードと異なり、ドメイン名は自分だけがウェブサイトのアドレスとして利用できるものです。加えて、検索サービスでは、検索キーワードとドメイン名の一致性が評価されるため、ドメイン名を検索キーワードとすることで、SEOにおいてとても大きな効果が期待できます。
キーワード検索でありアドレス入力でもある
さらにそれ以上に大きな効果は、検索誘導と言いつつ、アドレス誘導にもなるという点です。
ウェブサイトにアクセスしてもらう手法として検索が主流になるにつれ、ウェブブラウザのユーザーインターフェイスも変わってきています。PCの場合、まずウェブブラウザのアドレスバーの隣に検索ボックスが置かれ、その後、アドレスバーでも検索ができるようになりました。Google Chromeにいたっては、アドレスバーと検索ボックスの区別すらなくなっています(図3)。
この状況において、ユーザーは検索でアクセスする際もアドレスバーに文字列を入力するようになっています。このため、ドメイン名を検索キーワードとして誘導すると、それがアドレスバーに入力された場合は検索ではなくアドレス入力として確実にウェブサイトにアクセスされることになります。
「.jp」とつけなければならないところがデメリット、と思われるかもしれません。ドメイン名が「インプレス.jp」のように日本語であった場合、「.jp」は半角英数に切り替える必要がある、と思うかもしれません。しかしこれは「インプレス。jp」とすべて全角入力しても構いません。携帯電話であれば多くの機種で「あなま」(数字キーで「1」「5」「7」)と入力して文字種変換するだけです。一度入力すれば、次回からは予測変換機能がサポートしてくれます。さらに、「.jp」をつけなかった場合でも、普通に検索キーワードとして扱われるため、アクセスできないということもありません。
検索キーワードとされたドメイン名は、アドレスでもあり、検索キーワードでもあるため、ブラウザのアドレスバーでも、ブラウザの検索バーでも、検索サイトの入力フォームでも、「どこに入力してもアクセスできる」便利な誘導方法であり、検索誘導のわかりやすさを使いつつ、アドレス誘導の確実さを提供できる、優れた方法であるといえます。
JPRSからのお知らせ 1.
昨年、本欄でご紹介したDNSのセキュリティ拡張機能であるDNSSECについて、2010年7月にICANNがルートDNSへの導入を行い、2011年1月にJPドメイン名へのサービス導入を行うこととなりました(その後、2011年1月16日よりJPドメイン名にDNSSECが導入されました)。詳しくは以下をご覧ください。
JPRSからのお知らせ 2.
DNSサーバーソフトウェアであるBINDで、BIND 9.7.1/9.7.1-P1を利用している場合にDNSSECを利用しようとする場合に不具合が発生することが、開発元のISCより報告されています。DNSサーバーを自身で運用されている方はご確認のうえ、必要な対処をお願いします。
※この記事は、レンタルサーバー完全ガイドの発行する雑誌『レンタルサーバー完全ガイドVol.22』(2010年8月30日発売)に掲載されたものを再編集して掲載しているものです。
コメント
打ち間違いのリスクは?
直接ドメインを入力するのは、打ち間違いによって類似ドメインへアクセスしてしまうリスクの方をメリットよりも強く感じる。
それを期待してドメインを取得する業者も出てくるだろうし。
検索であれば、「もしかして」機能もあるし、ある程度フィルタがかけられた状態でランキングも表示されるので、その点では安心感がある。
なので、現時点では素直に検索してもらう方が良いような……。