SEO業界にしばらく身を置いている人なら、きっとこんな古い「格言」を耳にしたことがあるだろう。
ユーザーにとって正しいことをすれば、検索エンジンは順位の向上で報いてくれる。
あるいはこんな格言も。
ユーザーより検索エンジンに的を絞ったSEO戦略は操作的(ブラック/グレーハット)であり、信用の低下やペナルティにつながる。
僕に言わせれば、以上の意見はどちらもまったくの間違いだし、とても誤解を招くものだ。当然、SEOはユーザーがいて初めて成立するものだけど、検索エンジンに的を絞った(そして特化した)戦略だって、ものすごく重要だし無視することはできないのではないだろうか。
最近になってこの問題について改めて考えてみた当初は、おそらく何年か前の時点では上記のような意見も今よりは正しかったのだろうと思った。ところが、問題を視覚化してみると、その推測さえ当たってはいないことがわかった。
(注:いつものことだが、上のようなグラフはあくまで僕の個人的見解だ)
どちらのグラフでも、各戦略の価値は時間の経過につれて上がったり下がったりしている。ここから僕は、冒頭のようなアドバイスは初めから正しくなかったという結論に達した。
過去を振り返ってみると、僕自身、カンファレンスの席や顧客とのやり取りの中で、こういう誤った考えを何度も述べてきたはずだ。だから今ここでそのことを謝罪し、間違いを訂正したい。SEOとは、ユーザーと検索エンジンの双方から求められるものに対し、どちらに対しても同様に細心の注意を払うことが要求される仕事だ。それができなくては、優秀なSEO業者にはなれない。
SEOの作業のうち、検索エンジンがなかったならば絶対にやらないものを考えてみればわかるはずだ:
title要素――検索エンジンがなくても作成しているかもしれないが、キーワードの使用や配置、独自性、流れといったことにまで頭を悩ませているとは思えない。
metaタグ――検索エンジンがなかったら、ありえない。労力の無駄だ。
XMLサイトマップ――検索エンジンがなかったら、サイト上のページを分類する目的で、こんなファイルにアクセスする人間などいるはずがない。
ウェブマスターツールへの登録――検索エンジンがなかったら、そもそもこんなツールなど存在しない。
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キーワード調査――検索エンジンがなかったら、これはむしろ従来の広告コピーに近い作業になっていただろう。『マッドメン』(1960年代ニューヨークの広告業界を舞台にしたドラマ)の世界だ。
キーワードターゲティング――検索エンジンがなかったら、コンバージョン率を最適化するためでなければ、キーワードの配置のことなど気にする必要があるだろうか?
URL正規化――検索エンジンがなかったら、必要なし。正規化しようがしまいがビジターはコンテンツにアクセスしてくれる。
アクセスしやすいリンク構造――検索エンジンがなかったら、Flashを見られない2%余りのビジターのことを気にしない限り、好きなだけリッチアプリケーションを構築するといい。
robots.txtおよびmeta robotsタグ――検索エンジンがなかったら、検索エンジンのロボットを制御する理由もない。
リンク構築――検索エンジンがなかったら、関連性の高いトラフィックを引き込むという目的以外に、わざわざやる必要がどこにある?
垂直検索用のフィード作成――検索エンジンがなかったら、時間の無駄だ。
情報アーキテクチャ――ユーザーのために行うべきだと思われる作業も一部あるが、アクセシビリティとリンク階層に関する議論の大半は、検索エンジンがなければ意味のないものだ。
リダイレクト――検索エンジンがなかったら、JavaScriptでも、meta refreshタグでも、302リダイレクトでも、好きな方法を使えばいい。ユーザーには大した違いじゃない。
nofollow属性――検索エンジンがなかったら、サイト内リンクでも外部向けリンクでも、意味のない属性になる。
「ユーザーのために」という古典的なアドバイスの問題点は、それがとても説得力を帯びて聞こえること、それに、表面的には大いに理にかなっていることだ。しかし、警告させてもらおう。どんなアドバイスであれ、一見して筋が通っているように思えるからといって、それに固執してはいけない。知識や専門知識というものは、簡潔な言葉にまとめられるものではないかもしれない。でも、政治以外の世界では、正確であることのほうが、一言にまとめられることよりもはるかに重要なんだ。
追記:(原文に付けられた)コメント欄を見ると、僕がユーザーのことを考えたサイト構築を否定しているという印象を持った人が多いようだけど、これは完全な誤解だ。Webサイトは人々のために作られているのだから、ユーザーのことを考えて作業すべきなのは言うまでもない。この記事で僕がもっとも訴えたかったのは、あくまで検索エンジンを対象とする最適化作業に関する部分であって、検索エンジンに的を絞った戦略(XMLサイトマップ、アンカーテキスト、リンク構造、ウェブマスターツールの利用など)は、「ユーザーのため」ではないという理由で無視されるおそれがある、ということなんだ。上記のグラフや箇条書きは、「ユーザーを対象としたSEO」だけに注力していると、SEOのもう一方の大きなチャンスを逃してしまうことを説明するためのものだ。
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